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10 寄り道
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「なぁ……ちょっとさ、あそこの薬局寄ってかない?」
「うーん、別にいいけど……どうして?」
美玖は不思議そうな顔をこちらに向ける。
それもそのはずだ。
俺たちは今まで薬局にあまり立ち寄ったことがなかった。
まぁ、当たり前といえば当たり前だろう。
薬局に行くのなんて風邪をひいたときくらいだ。
毎日が健康そのものの高校生にとって、めったにお世話にならない場所が薬局。
そういう認識が俺たちの中には存在していた。
美玖ひとりの場合にはどうか分からないが……
「ちょっとさ、コンドーム見てきたいなって思って」
「ちょっと……声大きいって」
「ああ……ごめん」
美玖は俺の声の大きさを気にしているらしい。
普通に人とすれ違う高校から駅までの道のり。
美玖は結構、人の目を気にするタイプなのだ。
「ど、どうして……私持ってるけど」
「ああ、それは知ってるんだけどさ」
「な、なによ……」
「美玖がくれたコンドーム財布のなかに入ってたよな?」
「そ、そうだけど」
「それ、だめらしいぞ」
「ど、どうして? 何がいけないの?」
美玖は少しだけ恥ずかしそうに、小声になって俺に問い返してくる。
美玖の体が俺のすぐ傍まで近づいてくる。
ふわっと柑橘系の香水の香りが鼻の奥にまで広がる。
うん、良い匂いだ。
すれ違う人が美玖のほうをチロチロと目線だけで追っている。
逆にそうやって俺に近づいてるほうが、人目を引くと思うんだけどな。
俺はそう思ったが、美玖のためにも言わないでおく。
「コンドームって結構もろいらしい。財布に入れてる間に小銭とか色んなもので衝撃を受けて、知らず知らずのうちに破れてて……」
「う、うん……」
「最悪の場合は、望まぬ……に……」
「わ、わ、わ、わかったっっから」
美玖がその先の言葉を理解して、顔を真っ赤にしながら、俺の唇を右手で抑えた。
「そ、そういうことなら……ほら。はやくいきましょ」
美玖はそう言うと、駅前にある薬局へと足早に一人で歩いていくのだった。
「もう、そういうところは本当にしっかりしてるんだから……」
美玖がぼそっと呟いた言葉は陸人に聞こえることなく、青い空のなかへ溶けていった。
陸人の好感度アップの瞬間であった。
「うーん、別にいいけど……どうして?」
美玖は不思議そうな顔をこちらに向ける。
それもそのはずだ。
俺たちは今まで薬局にあまり立ち寄ったことがなかった。
まぁ、当たり前といえば当たり前だろう。
薬局に行くのなんて風邪をひいたときくらいだ。
毎日が健康そのものの高校生にとって、めったにお世話にならない場所が薬局。
そういう認識が俺たちの中には存在していた。
美玖ひとりの場合にはどうか分からないが……
「ちょっとさ、コンドーム見てきたいなって思って」
「ちょっと……声大きいって」
「ああ……ごめん」
美玖は俺の声の大きさを気にしているらしい。
普通に人とすれ違う高校から駅までの道のり。
美玖は結構、人の目を気にするタイプなのだ。
「ど、どうして……私持ってるけど」
「ああ、それは知ってるんだけどさ」
「な、なによ……」
「美玖がくれたコンドーム財布のなかに入ってたよな?」
「そ、そうだけど」
「それ、だめらしいぞ」
「ど、どうして? 何がいけないの?」
美玖は少しだけ恥ずかしそうに、小声になって俺に問い返してくる。
美玖の体が俺のすぐ傍まで近づいてくる。
ふわっと柑橘系の香水の香りが鼻の奥にまで広がる。
うん、良い匂いだ。
すれ違う人が美玖のほうをチロチロと目線だけで追っている。
逆にそうやって俺に近づいてるほうが、人目を引くと思うんだけどな。
俺はそう思ったが、美玖のためにも言わないでおく。
「コンドームって結構もろいらしい。財布に入れてる間に小銭とか色んなもので衝撃を受けて、知らず知らずのうちに破れてて……」
「う、うん……」
「最悪の場合は、望まぬ……に……」
「わ、わ、わ、わかったっっから」
美玖がその先の言葉を理解して、顔を真っ赤にしながら、俺の唇を右手で抑えた。
「そ、そういうことなら……ほら。はやくいきましょ」
美玖はそう言うと、駅前にある薬局へと足早に一人で歩いていくのだった。
「もう、そういうところは本当にしっかりしてるんだから……」
美玖がぼそっと呟いた言葉は陸人に聞こえることなく、青い空のなかへ溶けていった。
陸人の好感度アップの瞬間であった。
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