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第2話 2日目
しおりを挟む高校1年生の2日目がやってきた。
普通であれば清々しい気分で登校することになるのだけれど……
俺にはある悩ましい問題があった。
それは……
「奏多君、今日は筆箱を忘れてしまって。よかったら文房具とか貸してほしいな」
来たよ来たよ来たよ!!!
隣の席の女の子、浜辺麻衣さんが俺に甘い声でおねだりしてきている。
「おーい。聞こえてるー? かなたく~ん」
授業中なので浜辺さんは小さな声で囁くように語りかけてくる。
その甘い囁き声を聞いていると、お尻の方がぞわぞわってしてくる。わかるだろうか、この感覚。
美容室や床屋へ行ったときに耳元の近くをハサミか何かで刺激されたときに、お尻の方がムズムズっとして声を出して反応していまい、恥ずかしい思いをする。あのときと似たような感触だ。
「お~い」
どうせ浜辺さんは文房具なんて忘れてきていないだろう。
見た目は清楚華憐で優等生そのもの。
忘れ物など絶対にしない部類の人間のはずだ。
だから俺はシカトを決め込むことにした。
もちろん、可哀そうだとは思っている。
だってまだ入学して一日しか経っていない。
そんなときに隣の席の子に無視されるのは辛すぎる。
俺だったら登校初日で不登校コースだね。
「あ、そうなんだ。私のこと無視するんだ~」
しかし、浜辺さんはこれといってショックを受けている様子はない。むしろ、意地の悪い声で俺のことを挑発してくる。
もしかすると、このままシカトを続けたら俺に何かするつもりなのだろうか……
入学初日の清々しい気持ちのときに、俺に黒パンツを不意に見せつけた彼女なら何かとても悪いことを考えていそうな気がしてならない。
ここは思い切って彼女の方を向くべきか?
文房具を貸してあげるべきか?
俺は少しのあいだ悩んだあげく、自分にとって一番被害が少ないであろう選択肢を取ることにした。
「仕方ないな……。本当に忘れたんだよね? 浜辺さん?」
「うん。ほんとに忘れちゃったの。だから、ね。お願い」
まだこのときは彼女のほうを向いていない。
文房具を渡すその瞬間だけ、その一瞬だけ彼女の方を向く。
こうしないとまた俺は、彼女のパンツを不意に見てしまうかもしれない。
二度同じ過ちを繰り返さないのが俺のポリシーだ。
見ていろ! 浜辺麻衣!!
「はい、これ。シャーペンと消しゴム。追加で欲しかったらまた声をかけて」
俺はそう言いながら彼女の方へ素早く視線を移した。
そこには……
「ありがと! 奏多君!」
いたって普通の様子の浜辺さんがいた。
俺は、どういうわけかパンツを見せつけている浜辺さんの姿を予想していたものだから、少し拍子抜けしてしまった。
いや!! これが普通なんだけどね!!
浜辺さんの白いたおやかな手がこちらへと伸びてくる。
文房具を俺から直接に受け取る魂胆のようだ。
しかし、このときの俺は完全に油断しきっていた。
不意のパンツアタックを無事に回避できたことが、よほど嬉しかったのだろう。
ふにっとした柔らかい感触が俺の両手に伝わってきた。
「ふ、ふぁっ……」
「ふふふ……奏多君、変な声」
浜辺さんは文房具を受け取ると見せかけて、俺の手をいやらしくニギニギしてきたのだ!!
もちろん、文房具は見事に俺の手から滑り落ちた!!(シャー芯折れてたら弁償だからね!!(笑))
これはもうアウト!!
エロすぎる!! えっちぃ!!
完全に恋人つなぎ!!
彼女いない歴=年齢の俺には刺激が強すぎるよ……
もしかして、そこまで見通して俺の手をニギニギしていたりするのかな!?
「あっちょっと……。そんなに手を絡ませないでよ、浜辺さん……」
「あれ? もしかして、奏多くん……。初めてだったりする? 女の子の手ニギニギするの……」
「そ、そんなの……。初めてに決まってるよ……ううう」
「じゃあ、私が奏多君の初めて……だねっ」
浜辺さんは俺の耳元まで来て小さな声で囁いた。
おっふ……。これあかんやつや……。
パンツのチラ見せの次は、恋人つなぎと耳攻め(少し意味がちがう)ですか……。
浜辺さん……まだ二日目ですよ?
入学して一日しか経ってませんよ?
こんなペースで俺のことを誘惑して、一体どうしようと思ってるんですか??
幸いなことに、彼女と俺のやり取りは小声で行われていることもあり、みんなにはバレていないようだ。
ほんとうに心臓に悪いからやめて欲しいんだけど……
しかしどういうわけか、俺の口からその言葉は全く出てこないのだ。
不思議だね!!(世界三大七不思議のひとつだよこれ!!)
こうして俺は二日目も浜辺さんの罠に見事にはまってしまうのだった。
※ちなみに浜辺さんは本当に文房具を忘れていたようです
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