そんな離婚の理由、初めて聞きました。いいです、もう私の方から出て行きます。

ねんごろ

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「俺はお前の姿を見るだけで吐き気がするんだ。毎日、毎日家にずっと引きこもって。俺がどれだけ汗水流して働いていると思ってるんだ!」


 私の目の前で夫が吠えている。ワンワン、ワンワン、まるで犬みたい。昔はこんな彼じゃなかったのにな。


「仕方ないでしょ。私たちには子供がいるんだから。それにあなたはこの子を保育園に預けるのが嫌なんでしょ。だから私が面倒見るしかないじゃない……」


「俺が言いたいのはそう言うことじゃない!!! この分からず屋!!!!」


 夫は私に吐き掛けるように、その拙い言葉を残して玄関を飛び出して行きました。


 私はまた1人。


 ボロボロのアパートに1人。


 残されるのでした。


「ねぇ、たっくん」


 ゆりかごのなかですやすやと、気持ちよさそうに眠る、2人の間に生まれた子供。


 私たちの半分が合わさって一つになった命。


「2人でどこか遠くのところに行こっか」


 言葉もまだ理解できないような、そんな赤ちゃんに向かって私はまた独り言つのでした。
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