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36「初めて好きになった子~改~」
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どうして僕は君と出会ってしまったのだろうか。
そんな運命論的な考えを巡らすほどに、僕は君という存在と出会ったことを後悔している。
君と出会わずに、普通の女の子と一緒に時を過ごしていれば、どれだけ普通の人生を遅れていただろうか。
でも、もう遅い。
今になってはもう遅すぎる。
僕はもう昔の僕ではない。
君にすっかり従順になってしまった、哀れな迷える羊。
『Stray Sheep』なのだから。
★★★★★★★★★★
きみが僕の目の前に現れたのは突然だった。
「付き合って」
僕は昔、それほど気が強い人間ではなくて、クラスのなかでも特段浮いている存在だった。
だから、こうして告白をされることなんて、めったになかったし、話しかけられることだって本当に珍しいことだったんだ。
だから、僕は黙り込んでしまった。当然のことだろう。
だって、男の子ともまともに話せない人間なんだ。こんな突然、なんの関わりもない女の子に告白でもされたことなら、当然こうなってしまう。いや、こうなってしまったんだ。
「返事は言葉でも行動でもどっちでもいいから。早めに聞かせて」
僕が顔を見る前に、その女の子は行ってしまった。
本当に時のような存在の子だった。少しも止まってくれない。そんな印象を、僕は謎の罪悪感のなかでぼんやりと考えていた。
★★★★★★★★
今もだいたいの時間を、僕はぼんやりと過ごしているけれど、中学生のときはもっとぼんやりと無為に一日を過ごしていたと思う。
小説の主人公のような理路整然としたものの考え方なんて、もちろんできないし、日常の会話のような簡単なものでも、じっくり集中して聞かないと何も意味を理解できないほどだった。
そんな僕だったから。
僕はあの告白の返事を十分に考えられなかった。
たぶん、そうなのだろう。
僕はそれほど考えずにあの告白にOKをした。
いや、考えることなく、ということではなく、考えるほどの余裕が僕にはなかったのだと思う。それも、その余裕は能力的なものであるし、焦りからくるものでもあった。
「返事は?」
その女の子は、またやってきた。
僕のもとに。
今度ははっきりと彼女の顔を見ることができた。
とてもきれいな美しい人だった。
中学生の子供っぽさなんて、何一つ感じさせない、完全な大人の女性。そういっていいほどに、彼女は完成された存在のように見えた。
「いいよ」
僕は何様なんだろう。そんな返事をすることしかできなかった。
それでも彼女は、なにも問題なかったかのように。
「そう。ありがと」
その大人っぽい顔を少しだけ赤らめて、僕という存在に、告白が受け入れられたという事実に、赤面したのだ。
★★★★★★★★
彼女がおかしいと気づき始めたのは、結構はやいタイミングだった。
僕たちはまだ中学生だというのに、もうそういうエッチなことを体験しようとしていた。でもただのエッチだけであれば、それほどおかしいことでもない。中学生の間に初体験をすます人たちなんてごまんといる。
彼女がおかしかったのは、その性的思考だった。もはや、中学生のそれではなかった。どうして彼女が、そんなことを知っているのか、どうして知ることになったのか、どういう経緯で彼女という人格が形成されていったのか。
僕はそういうことを考えてしまう。でも怖くて聞けない。聞いてはダメなような気がする。性的事象に僕は驚くほどに臆病だ。
彼女がおかしいのもそうだが、僕もたいがい、おかしい部類の人間なのかもしれない
そうだ、僕もおかしいんだ。僕も悪いんだ。
「ねぇ、喉奥まで突っ込んで」
また彼女の過激な欲求が僕の心の奥底まで降りてきた。
どうして、そんな苦しいことをわざわざ自分から求めるんだろう。
僕には考えられなかった。
「ねぇ、やめようよ。こんなこと。もっと普通なエッチがしたい」
「これっていけないこと?だめなこと?私のこと嫌い?」
僕が否定的なことを言うと、彼女はすぐにそんなずるいことを言う。その美貌で、そんなおかしなこと言う。
でも僕には、彼女のことを強く否定する言葉がなかった。頭がなかった。
ぼんやりと生きてきたせいで、そういうことに対して、言葉が紡がれなくなったのだろうか。
もう、何もかもわからない。
ぼくは、どうしてこんなにも何も言えない人間になってしまったのか。
どうして恋人のひとりにさえも、こんなことは嫌だと言えない人間になってしまったのか。
いや、恋人だから……言えないのかもしれない。
「わかった」
僕はそう言って、また自分のペニスを彼女の口のなかに突っ込んだ。
「もっと乱暴にして」
彼女の言うとおりに、乱暴に突っ込んだ。
こつんと、喉の生暖かい壁に亀頭が当たった。
彼女の唾液がたくさん、ぼくのペニスにまとわりついた。
「おおおおえええええええぇ……」
彼女は大きな嗚咽を、なんの恥ずかしみもなく、した。
彼女の目がぱちぱちと、瞬きしている。星でも舞っているのだろうか。
「大丈夫?」
「続けて」
僕は今日も彼女のいいなりだ。
でも、そんないいなりであっても。
僕は彼女との行為のなかで、とんでもないくらい大きな快感を得ている。
本当はしたくもない、エッチなのに。
どうして、こんなにもペニスと理性は乖離しているのか。
どうして、こんな一本の棒の快感も意図して制御することができないのか。
僕は今日も彼女に乱されていく。
彼女の共感しがたい快楽のなかに、僕もだんだんと滑り込んでいく。
そして、僕は今日も無自覚に、ペニスに思考を支配されていく。
なにも考えられなくなるまで。
深く、その底の知れない闇のなかへ。
僕は彼女と一緒に落ちていくと思いながら……
実際には、ひとりでに、落ちていっていたんだ。
【完】
そんな運命論的な考えを巡らすほどに、僕は君という存在と出会ったことを後悔している。
君と出会わずに、普通の女の子と一緒に時を過ごしていれば、どれだけ普通の人生を遅れていただろうか。
でも、もう遅い。
今になってはもう遅すぎる。
僕はもう昔の僕ではない。
君にすっかり従順になってしまった、哀れな迷える羊。
『Stray Sheep』なのだから。
★★★★★★★★★★
きみが僕の目の前に現れたのは突然だった。
「付き合って」
僕は昔、それほど気が強い人間ではなくて、クラスのなかでも特段浮いている存在だった。
だから、こうして告白をされることなんて、めったになかったし、話しかけられることだって本当に珍しいことだったんだ。
だから、僕は黙り込んでしまった。当然のことだろう。
だって、男の子ともまともに話せない人間なんだ。こんな突然、なんの関わりもない女の子に告白でもされたことなら、当然こうなってしまう。いや、こうなってしまったんだ。
「返事は言葉でも行動でもどっちでもいいから。早めに聞かせて」
僕が顔を見る前に、その女の子は行ってしまった。
本当に時のような存在の子だった。少しも止まってくれない。そんな印象を、僕は謎の罪悪感のなかでぼんやりと考えていた。
★★★★★★★★
今もだいたいの時間を、僕はぼんやりと過ごしているけれど、中学生のときはもっとぼんやりと無為に一日を過ごしていたと思う。
小説の主人公のような理路整然としたものの考え方なんて、もちろんできないし、日常の会話のような簡単なものでも、じっくり集中して聞かないと何も意味を理解できないほどだった。
そんな僕だったから。
僕はあの告白の返事を十分に考えられなかった。
たぶん、そうなのだろう。
僕はそれほど考えずにあの告白にOKをした。
いや、考えることなく、ということではなく、考えるほどの余裕が僕にはなかったのだと思う。それも、その余裕は能力的なものであるし、焦りからくるものでもあった。
「返事は?」
その女の子は、またやってきた。
僕のもとに。
今度ははっきりと彼女の顔を見ることができた。
とてもきれいな美しい人だった。
中学生の子供っぽさなんて、何一つ感じさせない、完全な大人の女性。そういっていいほどに、彼女は完成された存在のように見えた。
「いいよ」
僕は何様なんだろう。そんな返事をすることしかできなかった。
それでも彼女は、なにも問題なかったかのように。
「そう。ありがと」
その大人っぽい顔を少しだけ赤らめて、僕という存在に、告白が受け入れられたという事実に、赤面したのだ。
★★★★★★★★
彼女がおかしいと気づき始めたのは、結構はやいタイミングだった。
僕たちはまだ中学生だというのに、もうそういうエッチなことを体験しようとしていた。でもただのエッチだけであれば、それほどおかしいことでもない。中学生の間に初体験をすます人たちなんてごまんといる。
彼女がおかしかったのは、その性的思考だった。もはや、中学生のそれではなかった。どうして彼女が、そんなことを知っているのか、どうして知ることになったのか、どういう経緯で彼女という人格が形成されていったのか。
僕はそういうことを考えてしまう。でも怖くて聞けない。聞いてはダメなような気がする。性的事象に僕は驚くほどに臆病だ。
彼女がおかしいのもそうだが、僕もたいがい、おかしい部類の人間なのかもしれない
そうだ、僕もおかしいんだ。僕も悪いんだ。
「ねぇ、喉奥まで突っ込んで」
また彼女の過激な欲求が僕の心の奥底まで降りてきた。
どうして、そんな苦しいことをわざわざ自分から求めるんだろう。
僕には考えられなかった。
「ねぇ、やめようよ。こんなこと。もっと普通なエッチがしたい」
「これっていけないこと?だめなこと?私のこと嫌い?」
僕が否定的なことを言うと、彼女はすぐにそんなずるいことを言う。その美貌で、そんなおかしなこと言う。
でも僕には、彼女のことを強く否定する言葉がなかった。頭がなかった。
ぼんやりと生きてきたせいで、そういうことに対して、言葉が紡がれなくなったのだろうか。
もう、何もかもわからない。
ぼくは、どうしてこんなにも何も言えない人間になってしまったのか。
どうして恋人のひとりにさえも、こんなことは嫌だと言えない人間になってしまったのか。
いや、恋人だから……言えないのかもしれない。
「わかった」
僕はそう言って、また自分のペニスを彼女の口のなかに突っ込んだ。
「もっと乱暴にして」
彼女の言うとおりに、乱暴に突っ込んだ。
こつんと、喉の生暖かい壁に亀頭が当たった。
彼女の唾液がたくさん、ぼくのペニスにまとわりついた。
「おおおおえええええええぇ……」
彼女は大きな嗚咽を、なんの恥ずかしみもなく、した。
彼女の目がぱちぱちと、瞬きしている。星でも舞っているのだろうか。
「大丈夫?」
「続けて」
僕は今日も彼女のいいなりだ。
でも、そんないいなりであっても。
僕は彼女との行為のなかで、とんでもないくらい大きな快感を得ている。
本当はしたくもない、エッチなのに。
どうして、こんなにもペニスと理性は乖離しているのか。
どうして、こんな一本の棒の快感も意図して制御することができないのか。
僕は今日も彼女に乱されていく。
彼女の共感しがたい快楽のなかに、僕もだんだんと滑り込んでいく。
そして、僕は今日も無自覚に、ペニスに思考を支配されていく。
なにも考えられなくなるまで。
深く、その底の知れない闇のなかへ。
僕は彼女と一緒に落ちていくと思いながら……
実際には、ひとりでに、落ちていっていたんだ。
【完】
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