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33「流れのなかにある純愛~改~」

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 ひぐらしの鳴き声があたりに響いている。

 私は太陽の傾く時分の渓流の流れのなかであなたとの時を過ごしている。あなた以外にはなにもいらないと言い合った時はすでに数年前の出来事になって、今はそんなかつてのあなたの面影を探しながら、体を触りあい、お互いの存在を確かめ合っている。

 あなたの体は昔とは大きく変わってしまった。二つの胸の膨らみは私のそれよりも大きくて形がよくて、乳首はきれいな桃色をしていた。

 私はあなたとは異なりすぎていた。まったくもって美しくない体へとなり果てた。どうしてこうなってしまったのだろうか。あなたと一緒のときを過ごして、同じ場所で同じ気持ちを確かめ合って、あなたの温かさを内に取り込んできたというのに。

「浮かない顔をしないでよ」

 あなたは私の顔を見てそんなことを言う。それもいつもと変わらない。ただ変わらないことはそれだけだった。

「どうして私はこんなにも醜くなってしまったんだろう。あなたと同じ景色を快楽を身に染みて感じてきたというのに」

 今日もまた私はあなたを困らせてしまう。流れのなかで。今日という時間のなかの一瞬で。私はあなたを引き留めることに必死だ。それなのに、私はあなたが困るようなことを言ってしまう。こんな自分嫌いなのに。私は何を守ろうとしているのだろうか。いや、守ろうとするものなどもはや何もないくらいに私は何も考えていないだけなのだろうか。

「私はあなたが好きよ。ただそれだけよ。それ以下でもそれ以上でもない。ただそれだけは確か。まっすぐにあなたを思っているわ」

 あなたはそう言って、私の乳首を吸った。幼いころのピンク色をしたそれから変色してしまった黒色の乳首。あなたはそれを丁寧に舌先で転がすように舐めた。

「んんんっ」

 あなたを感じる。あなたの温かさを感じる。あなたはまだ私を求めてくれる。ただそれだけが私の欲望を満たしてくれる。あなたは私のすべて。

「いつまでも私のあなたでいて欲しい」

 控え目な私を引き留めるようにあなたは言葉をどんどんと紡いでいく。私のこの不均衡な美しくない体を必死で食い止めようとしてくれる。私はあなたのその心にある純愛を―純愛と呼べるのなら純愛と呼ぼう―感じて今日も不安になる。

「ずっとそばにいてね、お願いだから」

 純愛が私を伝って川の流れへと、まるで溶けていくかのように。

 私は今日もあなたの純愛を流れのなかに垂れ流し、あなたの手や舌や熱い息をその不明瞭な感覚のなかで受け止めることができず、あなたの瞳の奥に移った自分を見つめていた。

【完】
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