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1「無関心に対する安心による劣情のその先へ」
しおりを挟む私は自分のことを「オカシイ」と感じている。
周りとは明らかに異なる趣味嗜好。私だけがありのままの性欲に従って生きているだけという可能性もあるのだけれど。
とにもかくにも。私の周りには、こんなふうに主人の無関心な表情で快楽に溺れていく顔に発情をするという人はまずいない。いや、まず、主人のように全くといっていいほど顔の表情が変わらないひとはいない。
エッチをしているのに。セックスをしているのに。どうして、ここまで表情が変化しないのか。まるで、人生のなかにおいて、全くの価値がない行為だと暗示しているかのような、その表情。
しかし快楽はしっかりと感じていると分かる、その膨張。これだけは確かだ。
主人は私のなかで興奮して、あそこを固くしている。これだけは確かなんだ。
しかし、無関心なんだ。性欲はあるのだけれど、それはどこまでも受動的であって。。。
白い液体も、受動的なものなんだ。自らの意志で出したのではなく、出したいなどこれっぽちも思っていないのだろう。ただ、体が勝手に出しただけ。それに従ったまで。
はぁ……
私はそんな、無気力で、何もかも無関心な主人に……
怒るなんて気持ち少しも沸いてこないのだ。
むしろ……
そのこの世に精神がないかのような、まるで心を別次元においているかのような、浮世離れ、そう。。。
そんな非現実的な主人との情事が、たまらなく興奮してしまうんだ。
主人は私と違って落ち着いている。というか何回もいうが、表情の一切が死んでいる。
その顔を見て、私は何度も何度もいってしまう。
どこまでもいけてしまう。
不思議なことに。
お互いの気持ちが通いあわないこと。その不思議な安心感。
ああ、ずっとずっと……
私はあなたを独り占めできるのね、そんな言葉が無限に心の奥底から生じてくる。
主人の無関心な表情から、今日もまた、ドロドロとした真っ白な液体があふれだした。
私は、それを自らの穴から掬い取って、主人のくちのなかへ含ませた。
……
……
主人のほうけた顔。
緩んでいる口の端から、白濁がただただ、その粘性のなかで流れをゆるくしながら、滑り落ちていった。
私はそれをなめとった。
……
……
そして、それを繰り返した。
かっぽじって。
口移しで、私の舌だけが主人のなかで動き回る。
私だけが求めている、この安心感。
誰からも求められず、ただただ私が好きなだけ求めてもいい、この安心感。
……
……
今日もまた、主人の顔が、無表情のかおが、
生きていない目の視線の延長線上にいる私が……
主人の永遠の無表情に発情していた。
……
……
……
二人を白い白い。
大きな白い空間が、ただ囲んでいた。
果てのない、境目のない。
空間が二人を閉じ込めていた。
【完】
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