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第6話 崩壊
しおりを挟む俺は今、何を見ているんだろう……
あまりもの衝撃に正気を失っている。
正常な思考が働かない。
俺は今、何をしようとしていたんだっけ……
「おにいちゃん、どうしたの?」
気が付けば顔を少しだけ赤く染めた伊月が目の前まで来ていた。
「そんなところにずっと立ってちゃ、風邪ひいちゃうよ」
雪のように真っ白な体はお湯のせいか、少しだけ桃色に色づいている。
「ほら、はやく……って、おにいちゃん? どうしたの。体がとっても冷たいわよ」
伊月の心配そうな顔が目の前で作られる。
「もう……おにいちゃんたっら……。さっきから全然しゃべってくれない」
伊月が少し拗ねたように口を尖らせる。
俺はその姿をただ眺めることしかできなかった。
不思議なことに俺には全くと言っていいほど、抵抗する意思がない。伊月の露わになった裸を見ているというのに、目を逸らすことさえもできない、いやしない……のかもしれない。
「ほらっ。はやくこっちにきて……おにいちゃん」
俺は伊月に誘われるかのようにお風呂場へと入っていくのだった。
しばらくして……
俺はやっと自分の置かれている状況を把握できるようになってきた。
これはかなりやばいんじゃないか!?
俺は今、伊月に背中を流してもらっている。
もう一度言うけど、これは兄としてあるまじき行動なのでは!?
「ねえ……おにいちゃん。ここ最近、私のこと避けてたでしょ?」
伊月から唐突に核心を突く質問をされる。
俺が今日の帰りに考えていたことを先に伊月から切り出してきたみたいだ。
そうか、伊月はやっぱり俺の素っ気ない態度に気づいてたってことか……
「やっぱり伝わってたか……。ごめんな伊月。俺、伊月のことちょっとだけ避けてたかも」
「そう………」
伊月は少しだけ悲しそうな顔をした。
久しぶりにみた妹の悲痛な表情に、俺は心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚えた。
「本当にごめん……」
俺は兄として本当に情けない。
一人の大切な妹にこんな悲しい顔をさせてしまうなんて。
「どうして私のこと避けるようなこと、したの?」
「それは、その……」
「私がおにいちゃんにエッチなことするから?」
「…………」
「はぁ……。やっぱりね。私もそうなのかな~って薄々気づいてたの」
「そ、そうだったんだ」
「ねえ……。おにいちゃん……」
伊月が唐突に胸を背中に押し付けてくる。
「こ、こらっ。伊月!!」
俺は背中に柔らかい感触を感じながら、せめてもの抵抗を試みる。
伊月は全体重を俺の背中にあずけているために、俺としては下手に動くことができない。
今、急に俺が動いたとしたら伊月がバランスを崩して大けがをしてしまうかもしれない。
「やめない……。おにいちゃんが私の話を聞いてくれないのなら、やめない……」
背中で押しつぶされたそれの感触がいやと言うほどに伝わってくる。
「わ、わかったから。なんでも伊月の話を聞くから」
伊月の息遣いが耳元ではっきりと感じられる。
今、伊月はどんな顔をしているのだろうか……
「…………」
少しの間の沈黙がやけに長く感じられる。
「おにいちゃんは私がエッチなことするの、どうして嫌なの?」
「そ、それは俺たちが兄弟だからだ」
「なんで兄弟だと駄目なの?」
「世の中でそういうことはタブー視されているからだ」
伊月はどうしてこんな当たり前のことが分からないんだ!!
「お兄ちゃんは周りの目を気にしているから、私のことを拒絶するの?」
そうだよ!! そうだとも!!
周りから軽蔑された目で見られるから俺は伊月と距離を取ったんだよ……
「そうだ」
「それじゃあ、周りの人たちにバレなきゃ、私がエッチなことしても怒らない?」
「ああ、バレなきゃ俺だって伊月としたいさ!!!!!」
あれ…………
俺、今なんて言った??
「…………ふふふふふ」
伊月の妖艶な笑みが後ろから聞こえてくる。
「あ……れ……。俺、いまなんて……」
「やっと、やっと、やっと…………」
伊月の腹の底から絞り出すような声が耳元で囁かれる。
「お兄ちゃんと、エッチできるんだね……」
耳元で囁かれた甘い言葉の意味が分からないまま、俺は深く深く、底の見えない沼の奥底へと沈んでいった。
俺の体はすでに十分に温まっていた……
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