異世界転移したら婚約破棄されてる真っ最中でした

ねんごろ

文字の大きさ
上 下
1 / 1

01

しおりを挟む
 
 私は一度生まれ変わったら、とってもかわいい美少女になって周りからちやほやされる人生を送るんだ。


 もう誰にも馬鹿にされない、そんな素敵な人生を送るんだ。


 男の人とも何回も何回もデートしてエッチして……


 一回でもいいから、陰口でヤリマンビッチって言われてみたいんだ!!


 だからお願いします、神様!!!


 私を超絶美少女、都会のイケイケJKに生まれ変わらせてくれえええええ!!!!



「辞世の一句はこれくらいにしておいて……」


 私はこころのなかで思いっきりに願望をぶちまけて、そしてビルの屋上から飛び降りた。


 死後の世界がないなんて、死んでみないと分からないのに、それが世間の常識になってしまっている。


 だから、私が証明してやる。


 今の何もかも絶望しかないこの私が!!!


 生まれ変われるってことを証明してやる!!!!


「やぶれかぶれだああああああああ!!!!!!」



 こうして私はこの宇宙の物理法則に従って真っ逆さまに落下していった……



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★




 とてもとても長い間、私は落下していた。


 そして、その衝撃はついにやってきた。


 が……



 それは私が別の人格を弾き飛ばした瞬間だった……



「わ、わあああああああ!!!!!!!」


 私はその人格が入れ替わった、脳天を稲妻で打ちぬかれるような衝撃に耐え切れず、奇声を発してしまう。


 どうやら、私は異世界転生ではなく、異世界転移してしまったようだ。


 しかしながら、転移早々、私はひとつの困難に立ち向かっているようだった。


「そ、そんなに悲しがっても、もう僕の気持ちは変わらないんだからな。影でこそこそ僕の陰口言ってたの知ってるんだからな!!!!!」



「な、なに??? いきなり何をいってるの???」


「と、とぼけるな!!!! ぼ、ぼくはもう決めたんだ!!! 君と婚約破棄するんだああああああああ!!!!!」



 どうやら、私は婚約破棄という修羅場の真っ最中に転移してしまったようです。


 しかし、本当に成功してしまうとは。


 いろいろと驚きが一気に私に襲いかかってきて、もう何がなんだか……



「君みたいに綺麗で美しいひとは、僕の気持ちなんてわからないだろう!!!!!」


「え? いま私のこと、きれいって……」


「ああ!! そうだよ!!! 君は本当に美しい女性だよ。悔しいけどね!!!」


「ああ……私は転移して、その上に美貌まで手に入れてしまったのですね」


「また始まった……。その妄想癖なんとかしてくれよ!!!!」


「あらら、もうそんなことはどうでもいいのではなくって?」


 私は段々とこの体の持ち主の趣味嗜好、考え方に馴染んできた。


 そのためか、彼との過去も、この体の持ち主の過去も名前も全てが脳裏に鮮明に思い起こされるようになっていった。


「そ、そうだったな。そうだよ!! 本当にまったく、君のその奔放で破天荒な性格には付き合いきれない……。もう一度言わせてもらうよ……君とは」



 私は婚約者がそう、言いかけたので。


 私は先に言われるのも癪だと思ったので……


 転移直後に華やかに散ってもらおうと、


 彼にはその役目を果たしてもらおうと……



 そう決意して。。。。



「美しく散れ……」



 私はそう小さく呟いてから……



「き、き、君とはここここここ、こんややややっくううう」



「こっちから願い下げじゃあああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」


 
 下からすくいあげるような、華麗で見事なアッパーを婚約者の顎に食らわしてやったのでした……



『ごふぅぅぅぅぅぅ』



「わっはははあははははははははは!!!!!!!」


 なんだか、私うまくやっていけそうです。


 こんどこそ。


 私は私の生きたいように生きてやるのです。


 お母さん、お父さん。


 ごめんなさい。


 本当に、ごめんなさい。



 でも私、こっちで元気に楽しくやっていくからさ。。。



 どうか悲しまないで。


 
 私の新しい人生をどうか、どうか。。。。



「あはははは、あはは、ははっは……」




「ごめんね、お父さん、お母さん」



 私は顎を打ちぬかれてぴくぴくと芋虫のように痙攣している、婚約者を後ろに残し。


 涙を少しだけ目に溜めながら、次なる人生へと



 後悔のない人生へと



 踏み出していくのでした。


【了】
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

王子の呪術を解除したら婚約破棄されましたが、また呪われた話。聞く?

十条沙良
恋愛
呪いを解いた途端に用済みだと婚約破棄されたんだって。ヒドクない?

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。

さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。 忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。 「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」 気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、 「信じられない!離縁よ!離縁!」 深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。 結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。

BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。 しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。 その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

嫌われ聖女は魔獣が跋扈する辺境伯領に押し付けられる

kae
恋愛
 魔獣の森と国境の境目の辺境領地の領主、シリウス・レングナーの元に、ある日結婚を断ったはずの聖女サラが、隣の領からやってきた。  これまでの縁談で紹介されたのは、魔獣から国家を守る事でもらえる報奨金だけが目当ての女ばかりだった。  ましてや長年仲が悪いザカリアス伯爵が紹介する女なんて、スパイに決まっている。  しかし豪華な馬車でやってきたのだろうという予想を裏切り、聖女サラは魔物の跋扈する領地を、ただ一人で歩いてきた様子。  「チッ。お前のようなヤツは、嫌いだ。見ていてイライラする」  追い出そうとするシリウスに、サラは必死になって頭を下げる「私をレングナー伯爵様のところで、兵士として雇っていただけないでしょうか!?」  ザカリアス領に戻れないと言うサラを仕方なく雇って一月ほどしたある日、シリウスは休暇のはずのサラが、たった一人で、肩で息をしながら魔獣の浄化をしている姿を見てしまう。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

処理中です...