異世界転移したら婚約破棄されてる真っ最中でした

ねんごろ

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 私は一度生まれ変わったら、とってもかわいい美少女になって周りからちやほやされる人生を送るんだ。


 もう誰にも馬鹿にされない、そんな素敵な人生を送るんだ。


 男の人とも何回も何回もデートしてエッチして……


 一回でもいいから、陰口でヤリマンビッチって言われてみたいんだ!!


 だからお願いします、神様!!!


 私を超絶美少女、都会のイケイケJKに生まれ変わらせてくれえええええ!!!!



「辞世の一句はこれくらいにしておいて……」


 私はこころのなかで思いっきりに願望をぶちまけて、そしてビルの屋上から飛び降りた。


 死後の世界がないなんて、死んでみないと分からないのに、それが世間の常識になってしまっている。


 だから、私が証明してやる。


 今の何もかも絶望しかないこの私が!!!


 生まれ変われるってことを証明してやる!!!!


「やぶれかぶれだああああああああ!!!!!!」



 こうして私はこの宇宙の物理法則に従って真っ逆さまに落下していった……



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★




 とてもとても長い間、私は落下していた。


 そして、その衝撃はついにやってきた。


 が……



 それは私が別の人格を弾き飛ばした瞬間だった……



「わ、わあああああああ!!!!!!!」


 私はその人格が入れ替わった、脳天を稲妻で打ちぬかれるような衝撃に耐え切れず、奇声を発してしまう。


 どうやら、私は異世界転生ではなく、異世界転移してしまったようだ。


 しかしながら、転移早々、私はひとつの困難に立ち向かっているようだった。


「そ、そんなに悲しがっても、もう僕の気持ちは変わらないんだからな。影でこそこそ僕の陰口言ってたの知ってるんだからな!!!!!」



「な、なに??? いきなり何をいってるの???」


「と、とぼけるな!!!! ぼ、ぼくはもう決めたんだ!!! 君と婚約破棄するんだああああああああ!!!!!」



 どうやら、私は婚約破棄という修羅場の真っ最中に転移してしまったようです。


 しかし、本当に成功してしまうとは。


 いろいろと驚きが一気に私に襲いかかってきて、もう何がなんだか……



「君みたいに綺麗で美しいひとは、僕の気持ちなんてわからないだろう!!!!!」


「え? いま私のこと、きれいって……」


「ああ!! そうだよ!!! 君は本当に美しい女性だよ。悔しいけどね!!!」


「ああ……私は転移して、その上に美貌まで手に入れてしまったのですね」


「また始まった……。その妄想癖なんとかしてくれよ!!!!」


「あらら、もうそんなことはどうでもいいのではなくって?」


 私は段々とこの体の持ち主の趣味嗜好、考え方に馴染んできた。


 そのためか、彼との過去も、この体の持ち主の過去も名前も全てが脳裏に鮮明に思い起こされるようになっていった。


「そ、そうだったな。そうだよ!! 本当にまったく、君のその奔放で破天荒な性格には付き合いきれない……。もう一度言わせてもらうよ……君とは」



 私は婚約者がそう、言いかけたので。


 私は先に言われるのも癪だと思ったので……


 転移直後に華やかに散ってもらおうと、


 彼にはその役目を果たしてもらおうと……



 そう決意して。。。。



「美しく散れ……」



 私はそう小さく呟いてから……



「き、き、君とはここここここ、こんややややっくううう」



「こっちから願い下げじゃあああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」


 
 下からすくいあげるような、華麗で見事なアッパーを婚約者の顎に食らわしてやったのでした……



『ごふぅぅぅぅぅぅ』



「わっはははあははははははははは!!!!!!!」


 なんだか、私うまくやっていけそうです。


 こんどこそ。


 私は私の生きたいように生きてやるのです。


 お母さん、お父さん。


 ごめんなさい。


 本当に、ごめんなさい。



 でも私、こっちで元気に楽しくやっていくからさ。。。



 どうか悲しまないで。


 
 私の新しい人生をどうか、どうか。。。。



「あはははは、あはは、ははっは……」




「ごめんね、お父さん、お母さん」



 私は顎を打ちぬかれてぴくぴくと芋虫のように痙攣している、婚約者を後ろに残し。


 涙を少しだけ目に溜めながら、次なる人生へと



 後悔のない人生へと



 踏み出していくのでした。


【了】
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