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02 悲しみの魔導研究所

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「……………」

 私は翌日、悲しみの涙を心のなかで流しながら、職場の国立魔導研究所にやってきました。

 机のうえに広げられている資料は、今取り掛かっている研究のための参考文献。


『レッドドラゴンの魔力変換機構とその利用価値について』

『ハイオークの繁殖期における魔力出力の増大について』

『アインバーク古代遺跡の最深部への到達可能性とその手段』


 くしゃくしゃになった参考資料。
 
 昨日まで、熱心に研究に取り組んでいた自分の姿が脳裏に蘇ってくる。

 しかし、

「…………私は何のために研究所で働いているの」

 
 今の私には何の気力もない。
 何から手を付ければいいか、さっぱり分からない。


「どうしてなの、アベルド……」


 気が付けば、またしても元婚約者の名前が呟かれる。
 昨日まで婚約者だった彼の名前が……

 これで何回目になるかも分からない。


 私は本当にどうかしてしまったみたいだ。


「ううううぅぅぅっっ……」


 また涙が溢れてしまう。

 その姿を見た同僚が声をかけてくれる。
 どうしたの??
 どこか体調が悪いのって……


「ごめんなさい……なんでもないの。気にしないで?」


 私はまだ、昨日の出来事を誰かに話す勇気がない。


「本当に辛くて耐えられなかったら、いつでも頼ってくれていいからね」


 職場の同僚の方たちは本当に優しい人ばかりだ。


 ありがとう、と心のなかで私はそう呟くのだった。
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