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02 サイトウとの出会い
しおりを挟むあれは雲一つない快晴の日でした。
私はいつもの日課の朝のお散歩に出かけていました。
森の中を抜け、見晴らしのよい湖のほとりに出て、そこで一息つく。
それがとっても心地よくて……
でも、その日は湖に着いたとき、いつもとは違う光景がありました。
光景というよりも……
湖に人が、全裸の男性の方が浮かんでいるのが見えたのです。
「だ、大丈夫ですか!!!!」
私は思わず駆け出しました。
溺れて死んでしまっているのではないか……
そんな恐ろしい結果が頭のなかに浮かびましたが、私はなりふり構わず全力で駆け出したのです……
「うううううっっっ……私は泳げないのだ……誰かぁ……」
すると、その全裸の男性が微かな声を出して助けを求めているではありませんか。
しかもよく見ると、とってもイケメンです。
この国の人間とは違う顔立ちをしていますが、とにかくイケメンでした。
「い、いま助けますからっ、そのまま安静に!!!」
私はそう言って、彼のことを助けたのでした。
でも、そのとき、なぜか私の脇腹に固いものが押し付けられていました。
今思えば、あれは彼のおちんちんだったのでしょう。
生物のなかには、死に際に射精する種がいると図鑑かなにかで読みましたが、それの類だったのしょう……
ええ、きっとそうに違いありません。
「あ、あなたのお名前は何ですか?? 分かりますか??」
私は正常な判断ができるかどうか、彼の目を覗き込んで確認します。
あら、本当にイケメンだわ……
無遠慮にそう思ってしまうほどのイケメンでした。
「わ、私の名前は……スケベ・サイトウだ」
「スケベ・サイトウ……??」
「ああ、スケベ・サイトウ。助けてくれてありがとう。本当に感謝する」
私は初めて聞く、その変わった名前を心のなかで反芻して、記憶の回路に刻み込むのでした。
これが、私の婚約者、スケベ・サイトウとの出会いでした。
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