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雪の大地と氷の剣士
第62話
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イサムたちが静かに見守る中、ネルタクが泣き止むまでそれ程時間は掛からなかった。ゆっくりとエリュオンから顔を離して今迄の経緯を話し始める。
「エリュオン…本当にごめんなさい…僕は、償いきれない罪を犯してしまった。闇に殺せと言われるがままに都の人達を……そして目覚めた時、僕は闇のコロニーの中だった。別のコロニーから外に飛び出したと聞いたエリュオンを追おうとしたが、ノイズにこの場所の管理を命じられ今に至る…僕は…僕は…」
また涙が溢れるネルタクにエリュオンも涙を堪えながら首を振る。
「それでも貴方に出会えただけでも嬉しいわ……」
「でも僕は自分が許せない! 今でも僕は、父様を…君の母様を殺した感触が手に! お願いだ! 僕を殺して欲しい!」
パン!
エリュオンはネルタクの頬を叩いた。突然叩かれた彼女の白い頬は見る見る赤くなる。
「貴方もメテラスと同じなの!? 自分を責めてこの世界から逃げようとしてるわ! いえ…メテラスはこの世界から既に逃げてしまった! 貴方がするべき事は死ぬ事じゃない…陥れた闇を倒す事よ!」
「エリュオン…うぅぅぅ……うあぁぁぁぁぁぁ!」
大声を上げ泣き叫ぶネルタクを抱きしめて一緒に涙を流すエリュオン。仲間達もそれを見ながら元凶ノイズへ恨みを募らせる。
「聞いてネルタク、ノイズは私達の国に居た女性よ。あいつが引き込んだ闇のせいで国は滅んだわ…」
「私達もマノイ…いえ…ノイズを許さない、一緒に倒しましょう」
メルもノルも彼女に恨みがある、それを聞いたネルタクが声を出さずに頷く。
「だけど、そのノイズの居場所が分からないな。どうやって調べるんだ?」
「ロロ様に聞いた方が良いでしょう、もしかしたら調べる方法があるかもしれません」
「案外向こう側から接触してくる可能性もありそうですね、ネルタクがこちらの仲間になった事で何らかの行動を起こすはずです」
その話を聞いて、泣き止んだネルタクが声を絞り出しながら答える。
「あいつの居場所を知っている……恐らくエルフ族の国だ…アールヴのエルフとダークエルフの間で最近いざこざが多くなっていると笑いながら話していた。あいつの仕業かもしれないな…」
「今回乗った列車の終着駅がアールヴだったな。戦争する国に行きたくないって言ったが、ノイズが関係しているなら無視出来ないか…でも乗り込んでどうにか出来る国なのか?」
イサムのイメージではエルフはプライドが高い種族だと考える。実際に列車に乗った時にみたエルフ達は気位が高そうに見えた。それにノルが答える。
「難しいでしょう。あの国に行くと分かりますが、何故あのような国の形なのか想像がつきませんし、もしエルフ族と話をするとしてもロロ様から助言を頂いた方が宜しいかと思います」
「私もそれが良いと思います。そのまま行けばノイズに辿り着けないかもしれません」
ノルとメルもまずは大迷宮に戻り策を練った方が良いと判断する。
「そうだな、皆もそれでいいか?」
「いや、ちょっと待ってくれ」
マコチ―が急に話に入って来る。
「この山に来た理由だ! ミケット覚えているだろう?」
「マコチ―…一回死んでるのにまだ覚えていたのかにゃん…」
「当たり前だ! あれを食べなきゃ死んでも死にきれない!」
「マコチ―…あれか…メメルメ―か……」
マコチ―とミケットがジヴァ山に来た理由、それは高級食材メメルメ―の肉である。その肉を取りに来た為に捕まり二人とも死に目にあったのにマコチ―は未だに肉を取りに行きたいらしい。
それを聞いていたユキがイサムに尋ねて来る。
『主様、メメルメーをこのドワーフは取りに来たのですか?』
「そうなんだ、それで死に目にあったんだけどな…もしかして生息場所しってるとか?」
『知ってるも何も私の居城の入口に沢山居ますよ。あの子達は外敵が居ないので、増えて来たら定期的に駆除しないと増えすぎて人里を襲います』
「マジかよ……じゃぁその駆除したのってどうしてるんだ?」
『凍らして埋めてますね。恐らく巷に流れるメメルメ―の肉は、その凍らせた肉が流出したのでしょう』
「え! じゃぁあの俺が食べたメメルメ―って解凍肉!? めちゃくちゃ美味かったのに!」
今まで食べた事の無い程の旨さの肉が解凍肉だった事実にショックを受けながらも、凍らせる前のメメルメ―を食べてみたいとイサムも食べたくなる。
「ユキ……ちなみに…メメルメ―が居る場所って遠いのか?」
「イサム! 何を言ってるのよ! こっこんな時に!」
「良いじゃないかエリュオン! お前も食べたくないのか!」
「そっそれは……!」
「イサム! 分かってくれたか!」
その会話を見て、ノルとメルとテテルは遠くを見る目でイサム達を見ているがミケットの尻尾は揺れている。ネルタクは泣き疲れてぼーっとしている。その会話を見ながらユキが答える。
『メメルメ―が居る場所ならそれ程遠くはありませんし、居城の入口ですので転移で飛べますが如何します?』
その話を聞いて、イサムとエリュオンとマコチ―の三人がノル達を無言で見る。この一体感にミケットも慌ててノルを見る。
「はぁ…しょうがないですね。直ぐに倒してこの山を出ましょう」
「あっちょっと待ってくれ! マク族をどうするんだ?」
「それは我々が処理しましょう。貴殿方のお蔭でこの山の膿を取り除く事が出来ました」
「そうか…分かった。そこは俺らの関わる事じゃないからな。ユキ転移頼めるか?」
ウゾ族の兵士長にマク族の処理を頼み、ユキにメメルメ―の場所までの転移を頼む。
『畏まりました。転移される方々はこちらへ』
ウゾ族から離れた場所にイサム達を誘導し転移の魔法を唱える。そして視界が変わり、大きな崖の淵に移動する。そこでマコチ―が声を上げる。
「そうだ! 若い時に見た場所だ! 俺がメメルメ―に襲われた氷の滝がある!」
『メメルメ―を捕獲しようとする輩も下りますが、未だに捕獲した者は居りませんね』
崖の下を見下ろすと、水牛の様な角を持ち豚の様な鼻でフワフワな体毛を持つ謎の生物がウジャウジャと居る。しかも一体一体がイサムの知るどの動物よりも大きい。
「おいおい、ウゾ族の倍位の大きさじゃないか? デカすぎだろ!」
「いやイサム、あの毛を逆立てて襲って来るから更に大きくなるぞ!」
「しかも大量にいるし……」
『そうですね、最近あの子に憑りついていましたので凍らす事を忘れていました』
「うう…すみません…」
エリュオンの後ろに謝りながらネルタクが隠れる。
「まぁ良いじゃないか、そのおかげでエリュンとも仲直り出来たんだから。で、どうする? 俺が行っても多分役に立ちそうになさそうだが…」
「イサム様、逃げ腰では駄目です。まずは挑戦して下さい!」
メルの言葉に少し反省する、自分は弱いといつも思ってしまうのは悪い癖だなと。
「そうだな! まずは挑戦してみよう。俺が行くから、待機しててくれ!」
イサムは数回屈伸して覚えたての移動補助魔法を使い壁を走る。それに気が付いたメメルメ―が体毛を逆立たせて、転がりながら襲い掛かって来る。
「来た来た来た―! これどうやって避けんだ―!」
巨大な猛獣の数は見渡す限りで数十匹は居る、しかも互いがぶつかるとバウンドして更に勢いが上がる。大きな崖を下りた巨大な広場はメメルメ―のピンボール状態で、イサムでは収拾がつかない状態になっていた。しかし、それを見ながら仲間達は頷いている。
「イサム…それも経験よ!」
「エリュオンの言う通りです。経験不足を何処かで補う必要がありますからね」
「イサム様、怪我をしたら私が回復します」
「助けにきたイサムのかっこよさがまったくないにゃん…」
「イサム…俺の為にありがとよ…」
「おいエリュオン…助けなくていいのか?」
『主様、頑張って下さい! 応援して下ります!』
「妾も応援して下ります!」
「時間が無いのに何を遊んでいるのでしょう」
それぞれが思い思いに話ているが、誰もイサムを助けに行かない。タチュラはちゃっかりとユキの肩の上に乗っていた。右へ左へと飛ばされるイサムがもう十分だと助けを求める。それを合図にマコチ―だけを崖の上に残し全員が崖を下りる。
それはメメルメ―にとっては悪夢の時間だっただろう。一匹の人と言う種族が縄張りに入って来たから攻撃をした。それがごく自然の事であり、仲間を守る為に必要な事だ。しかし目の前で起きているのはその仲間達が次々と空を飛び、地に打ち付けられている。そして数分後には仲間達は隅に生きたまま積み上げられている。
「イサム様、これくらい自分で出来る様になって下さい」
「いや無理だろ! メルお前片手で角を掴んで持ち上げただろ! 俺らの世界じゃ居ないからなそんな女子!」
「イサム! そんなの普通に出来なきゃこの世界じゃ生きていけないわ!」
エリュオンも同じ様に片手でメメルメ―を持ち上げ投げる。いや、ミケットもネルタクも同じ様に投げてテテルだけは両手だったがそれでも六メートル程の巨体を投げているのでイサムの想像を完全に超えている。タチュラは動けない様に糸で縛る係りの様だ。しかし、無事にメメルメ―を生きたまま獲してイサムはアイテムボックスに数匹しまう。
「全部狩るとこの山の生態系が変わるだろ? マコチ―も数匹いれば満足するだろ」
「そうですね。それでは他のは糸を取り逃がしましょう」
イサムとメルの話を聞きながら、積み上げられたメメルメ―達は、ユキ以上の初めて出会う自分よりも強い生物に恐怖で死んだマネをしている。それを見ながらユキが呟く。
『私…主様と契約して良かったです……そのまま敵対していたらどうなっていたのやら……』
ふと身震いしたユキがこの場所から逃げ出しているメメルメ―を横目にイサム達の元へと戻る。マコチ―もミケットが掴んで崖から下りてきた。
『では麓の町の近くまで転移致します。皆さん集まって下さい』
先程と同じ様に目の前の空間が歪み場所が変わり始める。その時にノルの後ろに黒い靄が現れる、それに気が付いたイサムが声を上げる。
「おいノル! 後ろに黒い靄が!」
その瞬間場所が変わり麓の町の近くにイサム達が現れる、しかしその中にノルの姿が見えなかった。
「おいユキ! もう一度さっきの場所に飛ばしてくれ! ノルが闇に捕まったかもしれない!」
「お姉様! 駄目! 念話が通じない!」
『わかりました! 行きます!』
すぐさま転移魔法でメメルメ―が居た広間へと戻るがそこには誰も居なかった。
「まずいな! 近くに反応なんて無かったぞ!」
「ミケも匂いがしなかったにゃん…」
「イサム様落ち着いて下さい! まずはロロ様に連絡を取りましょう」
自分の姉が居なくなり不安なメルが周りを落ち着かせる、イサムも頷きそれに従う。マップを限界まで広げ探しているが、仲間を表す水色の表示は何処にも見当たらなかった。
「エリュオン…本当にごめんなさい…僕は、償いきれない罪を犯してしまった。闇に殺せと言われるがままに都の人達を……そして目覚めた時、僕は闇のコロニーの中だった。別のコロニーから外に飛び出したと聞いたエリュオンを追おうとしたが、ノイズにこの場所の管理を命じられ今に至る…僕は…僕は…」
また涙が溢れるネルタクにエリュオンも涙を堪えながら首を振る。
「それでも貴方に出会えただけでも嬉しいわ……」
「でも僕は自分が許せない! 今でも僕は、父様を…君の母様を殺した感触が手に! お願いだ! 僕を殺して欲しい!」
パン!
エリュオンはネルタクの頬を叩いた。突然叩かれた彼女の白い頬は見る見る赤くなる。
「貴方もメテラスと同じなの!? 自分を責めてこの世界から逃げようとしてるわ! いえ…メテラスはこの世界から既に逃げてしまった! 貴方がするべき事は死ぬ事じゃない…陥れた闇を倒す事よ!」
「エリュオン…うぅぅぅ……うあぁぁぁぁぁぁ!」
大声を上げ泣き叫ぶネルタクを抱きしめて一緒に涙を流すエリュオン。仲間達もそれを見ながら元凶ノイズへ恨みを募らせる。
「聞いてネルタク、ノイズは私達の国に居た女性よ。あいつが引き込んだ闇のせいで国は滅んだわ…」
「私達もマノイ…いえ…ノイズを許さない、一緒に倒しましょう」
メルもノルも彼女に恨みがある、それを聞いたネルタクが声を出さずに頷く。
「だけど、そのノイズの居場所が分からないな。どうやって調べるんだ?」
「ロロ様に聞いた方が良いでしょう、もしかしたら調べる方法があるかもしれません」
「案外向こう側から接触してくる可能性もありそうですね、ネルタクがこちらの仲間になった事で何らかの行動を起こすはずです」
その話を聞いて、泣き止んだネルタクが声を絞り出しながら答える。
「あいつの居場所を知っている……恐らくエルフ族の国だ…アールヴのエルフとダークエルフの間で最近いざこざが多くなっていると笑いながら話していた。あいつの仕業かもしれないな…」
「今回乗った列車の終着駅がアールヴだったな。戦争する国に行きたくないって言ったが、ノイズが関係しているなら無視出来ないか…でも乗り込んでどうにか出来る国なのか?」
イサムのイメージではエルフはプライドが高い種族だと考える。実際に列車に乗った時にみたエルフ達は気位が高そうに見えた。それにノルが答える。
「難しいでしょう。あの国に行くと分かりますが、何故あのような国の形なのか想像がつきませんし、もしエルフ族と話をするとしてもロロ様から助言を頂いた方が宜しいかと思います」
「私もそれが良いと思います。そのまま行けばノイズに辿り着けないかもしれません」
ノルとメルもまずは大迷宮に戻り策を練った方が良いと判断する。
「そうだな、皆もそれでいいか?」
「いや、ちょっと待ってくれ」
マコチ―が急に話に入って来る。
「この山に来た理由だ! ミケット覚えているだろう?」
「マコチ―…一回死んでるのにまだ覚えていたのかにゃん…」
「当たり前だ! あれを食べなきゃ死んでも死にきれない!」
「マコチ―…あれか…メメルメ―か……」
マコチ―とミケットがジヴァ山に来た理由、それは高級食材メメルメ―の肉である。その肉を取りに来た為に捕まり二人とも死に目にあったのにマコチ―は未だに肉を取りに行きたいらしい。
それを聞いていたユキがイサムに尋ねて来る。
『主様、メメルメーをこのドワーフは取りに来たのですか?』
「そうなんだ、それで死に目にあったんだけどな…もしかして生息場所しってるとか?」
『知ってるも何も私の居城の入口に沢山居ますよ。あの子達は外敵が居ないので、増えて来たら定期的に駆除しないと増えすぎて人里を襲います』
「マジかよ……じゃぁその駆除したのってどうしてるんだ?」
『凍らして埋めてますね。恐らく巷に流れるメメルメ―の肉は、その凍らせた肉が流出したのでしょう』
「え! じゃぁあの俺が食べたメメルメ―って解凍肉!? めちゃくちゃ美味かったのに!」
今まで食べた事の無い程の旨さの肉が解凍肉だった事実にショックを受けながらも、凍らせる前のメメルメ―を食べてみたいとイサムも食べたくなる。
「ユキ……ちなみに…メメルメ―が居る場所って遠いのか?」
「イサム! 何を言ってるのよ! こっこんな時に!」
「良いじゃないかエリュオン! お前も食べたくないのか!」
「そっそれは……!」
「イサム! 分かってくれたか!」
その会話を見て、ノルとメルとテテルは遠くを見る目でイサム達を見ているがミケットの尻尾は揺れている。ネルタクは泣き疲れてぼーっとしている。その会話を見ながらユキが答える。
『メメルメ―が居る場所ならそれ程遠くはありませんし、居城の入口ですので転移で飛べますが如何します?』
その話を聞いて、イサムとエリュオンとマコチ―の三人がノル達を無言で見る。この一体感にミケットも慌ててノルを見る。
「はぁ…しょうがないですね。直ぐに倒してこの山を出ましょう」
「あっちょっと待ってくれ! マク族をどうするんだ?」
「それは我々が処理しましょう。貴殿方のお蔭でこの山の膿を取り除く事が出来ました」
「そうか…分かった。そこは俺らの関わる事じゃないからな。ユキ転移頼めるか?」
ウゾ族の兵士長にマク族の処理を頼み、ユキにメメルメ―の場所までの転移を頼む。
『畏まりました。転移される方々はこちらへ』
ウゾ族から離れた場所にイサム達を誘導し転移の魔法を唱える。そして視界が変わり、大きな崖の淵に移動する。そこでマコチ―が声を上げる。
「そうだ! 若い時に見た場所だ! 俺がメメルメ―に襲われた氷の滝がある!」
『メメルメ―を捕獲しようとする輩も下りますが、未だに捕獲した者は居りませんね』
崖の下を見下ろすと、水牛の様な角を持ち豚の様な鼻でフワフワな体毛を持つ謎の生物がウジャウジャと居る。しかも一体一体がイサムの知るどの動物よりも大きい。
「おいおい、ウゾ族の倍位の大きさじゃないか? デカすぎだろ!」
「いやイサム、あの毛を逆立てて襲って来るから更に大きくなるぞ!」
「しかも大量にいるし……」
『そうですね、最近あの子に憑りついていましたので凍らす事を忘れていました』
「うう…すみません…」
エリュオンの後ろに謝りながらネルタクが隠れる。
「まぁ良いじゃないか、そのおかげでエリュンとも仲直り出来たんだから。で、どうする? 俺が行っても多分役に立ちそうになさそうだが…」
「イサム様、逃げ腰では駄目です。まずは挑戦して下さい!」
メルの言葉に少し反省する、自分は弱いといつも思ってしまうのは悪い癖だなと。
「そうだな! まずは挑戦してみよう。俺が行くから、待機しててくれ!」
イサムは数回屈伸して覚えたての移動補助魔法を使い壁を走る。それに気が付いたメメルメ―が体毛を逆立たせて、転がりながら襲い掛かって来る。
「来た来た来た―! これどうやって避けんだ―!」
巨大な猛獣の数は見渡す限りで数十匹は居る、しかも互いがぶつかるとバウンドして更に勢いが上がる。大きな崖を下りた巨大な広場はメメルメ―のピンボール状態で、イサムでは収拾がつかない状態になっていた。しかし、それを見ながら仲間達は頷いている。
「イサム…それも経験よ!」
「エリュオンの言う通りです。経験不足を何処かで補う必要がありますからね」
「イサム様、怪我をしたら私が回復します」
「助けにきたイサムのかっこよさがまったくないにゃん…」
「イサム…俺の為にありがとよ…」
「おいエリュオン…助けなくていいのか?」
『主様、頑張って下さい! 応援して下ります!』
「妾も応援して下ります!」
「時間が無いのに何を遊んでいるのでしょう」
それぞれが思い思いに話ているが、誰もイサムを助けに行かない。タチュラはちゃっかりとユキの肩の上に乗っていた。右へ左へと飛ばされるイサムがもう十分だと助けを求める。それを合図にマコチ―だけを崖の上に残し全員が崖を下りる。
それはメメルメ―にとっては悪夢の時間だっただろう。一匹の人と言う種族が縄張りに入って来たから攻撃をした。それがごく自然の事であり、仲間を守る為に必要な事だ。しかし目の前で起きているのはその仲間達が次々と空を飛び、地に打ち付けられている。そして数分後には仲間達は隅に生きたまま積み上げられている。
「イサム様、これくらい自分で出来る様になって下さい」
「いや無理だろ! メルお前片手で角を掴んで持ち上げただろ! 俺らの世界じゃ居ないからなそんな女子!」
「イサム! そんなの普通に出来なきゃこの世界じゃ生きていけないわ!」
エリュオンも同じ様に片手でメメルメ―を持ち上げ投げる。いや、ミケットもネルタクも同じ様に投げてテテルだけは両手だったがそれでも六メートル程の巨体を投げているのでイサムの想像を完全に超えている。タチュラは動けない様に糸で縛る係りの様だ。しかし、無事にメメルメ―を生きたまま獲してイサムはアイテムボックスに数匹しまう。
「全部狩るとこの山の生態系が変わるだろ? マコチ―も数匹いれば満足するだろ」
「そうですね。それでは他のは糸を取り逃がしましょう」
イサムとメルの話を聞きながら、積み上げられたメメルメ―達は、ユキ以上の初めて出会う自分よりも強い生物に恐怖で死んだマネをしている。それを見ながらユキが呟く。
『私…主様と契約して良かったです……そのまま敵対していたらどうなっていたのやら……』
ふと身震いしたユキがこの場所から逃げ出しているメメルメ―を横目にイサム達の元へと戻る。マコチ―もミケットが掴んで崖から下りてきた。
『では麓の町の近くまで転移致します。皆さん集まって下さい』
先程と同じ様に目の前の空間が歪み場所が変わり始める。その時にノルの後ろに黒い靄が現れる、それに気が付いたイサムが声を上げる。
「おいノル! 後ろに黒い靄が!」
その瞬間場所が変わり麓の町の近くにイサム達が現れる、しかしその中にノルの姿が見えなかった。
「おいユキ! もう一度さっきの場所に飛ばしてくれ! ノルが闇に捕まったかもしれない!」
「お姉様! 駄目! 念話が通じない!」
『わかりました! 行きます!』
すぐさま転移魔法でメメルメ―が居た広間へと戻るがそこには誰も居なかった。
「まずいな! 近くに反応なんて無かったぞ!」
「ミケも匂いがしなかったにゃん…」
「イサム様落ち着いて下さい! まずはロロ様に連絡を取りましょう」
自分の姉が居なくなり不安なメルが周りを落ち着かせる、イサムも頷きそれに従う。マップを限界まで広げ探しているが、仲間を表す水色の表示は何処にも見当たらなかった。
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