織畑ナズナの姐さん飯

KUROGANE Tairo

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織畑ナズナの姐さん飯-16[ほうれん草と挽肉のラー油炒め]

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投稿日:2021.12.28

【ほうれん草と挽肉のラー油炒め】


 あー……年末に胃が痛い。

 なんで仕事納めの日に葛の葉様が来るんですか。お母様、ママ友だからって本当に余計なことしないでください。

 母のセンシティブメイド服に憧れて、自分も新コスチュームが欲しいと言い出して母に連れてこられたこの銀髪狐美女は海音ルリ。またの名を白狐の稲荷、[葛の葉]様。稲荷神最上位にして、稲荷世界のレジェンドです。息子の晴明君、安倍晴明の方が人間の世界では有名でしょうか。

 母親と幼い頃に別れた晴明君の場合は、父の血が濃くて一度定命を生きた後に、祀られたことで神として神界にきてから再会。今では神界と稲荷世界に分かれて生活しているので、葛の葉様は寂しい思いを……

 してません。

 息子の2度目の独り立ちを見届けて吹っ切れたのか、稲荷達の統括しつつ、とにかく自由に生きている方です。フレンドリーに接してくれる方ですが、葛の葉の立場上、皆丁重に扱ってしまいます。私も稲荷神としては同じ階級ですけど、レジェンドとの差がありますので友人扱いは難しいですよ。稲荷世界の者で彼女を『ルリちゃん』と呼んで女子高の同級生のように接するのは、ママ友のお母様だけでしょう。

 最近ではお母様の影響でコスプレ趣味に目覚めたようで。晴明君、うちの母が本当に申し訳ない。先日、『もっと親孝行していればよかった。』と懺悔メールしてきたけど、キミは悪くないからね。

 今日はお母様が設計・制作したコスプレを渡す日です。テンションが上った勢いで十二単をすぽーんっと脱ぎ捨て、生まれたときの姿に。慣れない手付きの葛の葉様に母が手伝って着せたのは和風ゴスロリ。お母様のセンシティブメイド服の構造を流用して作られたので、上半身からパンツに当たる部分は1枚のレオタード構造。ここにスカートを装着しています。絶対領域に見えるのは、レオタードとハイソックスを繋ぐガーターベルト。センシティブメイド服と同じように、スカートを外してレオタードタイプのコスプレとしても使えます。

 同じメイド服ではなく、和風ゴスロリになったのはキャラ被り回避とのこと。後発デザインの長所と言うべきでしょうか?体型へのフィット率は上がり、グラマラスなボディーに真空パックの如く吸着しています。ラインがよりくっきりと。正直に言うと大ボリュームの胸と引き締まったお尻がエロいです。センシティブメイド服と比べると、かなり低露出なんですが。(※一般的な低露出とは言ってない。)

 癖のないストレートな銀髪は、お母様が三編みにしました。

 我々としてグッジョブですけど、帰省した晴明君がどんな顔するか……。人間の世界で、と○やの羊羹でも買っておきましょうか。

 しかしまあ、年寄の話の長いこと。主に昔の話を引っ張り出すんですよね。葛の葉様がうちは幼い頃に別れて息子を可愛がって上げる時間がなかったと言えば、お母様はずっといるのもイヤイヤ期や反抗期で大変よとか言うし。

 これがまた、同じ話をループさせてずっと喋るんですよ。合間合間にレンカの話を私にふってくるし。言い方を変えた同じ内容の質問を何度もされても、回答バリエーション無くなりますってば。

 この空気が辛くなってきたので、客間から離れて何か作ることにしました。店に戻るのは露骨な避難行動ですからね。晩ごはんにはまだ早いので、冷蔵庫の中身を調べてご飯のお供系を作りましょう。

 サチコさんお土産の中に挽肉がありあました。野菜室に未使用のほうれん草もあります。まあ、どちらも今夜の料理の材料ですが……多めにあるのでちょっとくらいはいいでしょう。

[1]ほうれん草を切って茹でる。
 茹でなくてもよいという説もありますが、とりえず切ってから茹でます。熱が通ると縮むので、ざっくりと適当に切りましょう。熱湯入れて柔らかくなったら、引き上げます。

[2]ほうれん草と挽肉を炒める。
 フライパンに適量のオリーブオイルを引いて、ほうれん草と挽肉を炒めます。挽肉に火が通ったところで火を止めます。

[3]食べるラー油を混ぜる。
 混ぜて全体に広げるので、少量入れてください。入れすぎるとラー油の油分が強くなりすぎます。予熱で温めながら混ぜたら出来上がりです。


 ご飯のお供としてもができました。ラーメンのトッピングとしても使えます。食べるラー油ににんにくが含まれているので、相性の良いカップ麺は多いと思います。ラー油が苦手な方は、代わりに胡椒やブラックペッパーを入れても合いますよ。代用品の場合も入れすぎず、少なめを意識してください。

 連休中はたまには手を抜いて、皆で好きなカップ麺を選んだランチでも良いですね。

 いつの間にか気配を消した葛の葉様が後ろに立っていたことに気づいたので、思わず尻尾の毛が逆立ちました。一呼吸置いて落ち着いてから、完成したご飯のお供のを詰めた瓶を持って振り返ります。

 えー……葛の葉様も欲しいのでしょうか?違う?ここでバイトしたい?それは、スタッフ一同気を使いすぎて胃が痛いどころが、吐血します。いっそ、気絶したほうが楽になりますよ?
 
 人間の世界で言えば、皇族がウチで働くようなものなんですよ?

 いつでも遊びに来ていいので……と濁して帰ってもらうのが精一杯でした。あの人、本当に着ますけど。もうここが妥協点です。お供物のお裾分けの中身が豪華なのだけが救いですよ。 それから今回作った御飯のお供、物欲しそうに見ていた葛の葉様が持って帰りました。可愛いけど威厳台無しの顔で、好奇心旺盛な子供のような目をされたら駄目とは言えません。
 
 お店の方は明日から連休に入ります。

 まあ、休みは休みで騒がしいのでネタには困りませんけど。

 それではまた次回、よろしくお願いします。


【ほうれん草と挽肉のラー油炒め:材料(空き瓶1つ分)】
・ほうれん草…小量の束売り
・挽肉…小パック(ほうれん草と同量か少なめがよい)
・食べるラー油…少々(油分が強くならないように少なめ)
・オリーブオイル…少々

※空き瓶1つのイメージとしては、深い取り皿1つ分くらいです。
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