【R18】夜明けのアイオライト

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　寒さに身を震わせてシェドは目覚めた。どのくらい眠っていたかわからないが、おそらく一、二時間程度だろう。外は明るいが、街はまだ活動を始めていない。
　昨夜の吹雪で寸断されてしまったであろう街道の復旧。これが本日の急務だ。直接確認したわけではないが、きっとそうなる。状況は、想像に難くない。
　リトスは、まだ眠っている。隣で、まるで子どものように、すやすやと。
　顔にかかった黒髪をかき上げ、あらわとなった頬を撫でる。何度手の腹を往復させても、少しも起きる気配がない。やはり、体への負担は相当大きかったようだ。
「……ッ！」
　突然、深く抉られるような痛みに襲われた。かつて右目があったところ。今は、潰されて開かないところ。
　たまに、ごくたまに、こんなふうに疼くことがある。そのたびに、シェドは思い出すのだ。奴の顔を。
　国王を殺し、リトスから王座を奪った、あの裏切り者の顔を。
　信頼できる筋から、奴が周辺諸国に対し侵略を企図しているという情報を得た。国に牙をむくほどの非道な奪掠者だ。それくらい考えて当然だろう。自国の民も、他国の民も、あの男にとっては都合のいいただの駒なのだ。
　離れているとはいえ、いつこの街も餌食となるか……なんとしても、奴の謀略を打ち砕かねば。
　奴を王の座から引き摺り下ろし、しかるべき報いを——。
「……これから私がすることに、貴女は怒るだろうか」
　安らかな寝顔に問いかける。声にできるのは、返答がないとわかっているからこそ。
　復讐、などではない。そんな愚かな行為ではない。
「ずっと貴女の傍にいます、リトス姫。……否、女王陛下」
　国を離れて一年。
　機は、熟した。

　貴女の菫青石に、今一度、誇りと栄光を——。


　＜了＞