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くまどり電車
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「あ、あの…神様。モトクマがどうなったかご存知でしょうか?オコゼさん達に食べられたと思うのですが。」
今までの電車とは違い、乗客は男性と山の神様しかいない。
電車のガタンゴトンという音が、やけにいつもより大きく聞こえる。
「部下はあやつを食べてなどおらぬ。お前から引き離して天国に連行したのじゃ。人間をこちらの世界へ連れてくるという殺人未遂の容疑でな。それに、あれだけ大きな騒ぎを起こしたのじゃ。しばらく人間界行きの切符は発行できんな。」
「待ってください!私を助けようとしてくれた事なんです。モトクマはずっと人間になるのが夢だったんです。なんとかこの電車に乗せて貰えませんか?」
「ならぬ。あやつの切符でお主が帰れば、殺人未遂は未遂で終わるので良い。しかし、切符を持たぬあやつを乗せる訳にはいかぬ。あのホームにいた動物達の半数は、皆転生を目指して地道に頑張ってきたのだ。その者達を無視して、巨大化して駄々をこねたお主らに、簡単に切符を発行する訳にはいかぬ。」
もっともな意見だ。
棚ぼたの自分が感情論で手に入れて良いような切符では無い。
「分かりました。」
「あやつとのパートナー契約は一度解除する。罪人をこの神聖なくまどり電車に乗せる訳にはいかない。修行した後、新人と同様に筆記試験からやり直しじゃ。再びあやつが努力して、成果を上げるのを待つよりあるまい。」
2回目のチャンスは与えてくれると言う事なのか。
山の神様は厳しいようで実は優しい。
ガタン…ゴトン…。
電車が徐々に速度を落としてゆく。
もう人間界に着いたのだろうか。
きちんとみんなにお別れを言えなかった。
というより、ありがとうを言えなかった事が残念だ。
あんなに沢山の動物が自分を応援してくれたのに……。
「…!?どうした、なぜ止まる!」
神様が少し慌てた様子で運転席へ近づいた。
ここは目的地ではないのだろうか。
「電車すれ違いのための待機です。」
運転手のオコゼが神様に答えた。
「いつもはあちら側の藍色電車が待機しているはずだろう!」
「それが、7つの車両でシステムトラブルが起きているようで、大幅な遅延が発生しています。」
「どう言う事じゃ!?」
「ただ今エンジニアが各電車へ移動し、対応しております。詳しくはそちらから…。」
そう言うと運転手は、手にしていたスマホをスピーカーフォンに切り替えた。
「あ、お疲れ様です山神様。」
「どういう状況じゃ?」
「それがですね。7つの車両の両替機からお金があふれて止まらないんですよ。」
電話の相手であるモグラのエンジニアは、パソコンを片手に、紫電車の両替機を開いている所だった。
両替機の硬貨排出口からは絶えずお金が出ている。
モグラの横ではネズミ車掌がスマホを持ち、モグラの声を拾いやすいようにしていた。
滅多にないトラブルに興味を持った一般の動物達は、電車の外から様子をうかがっている。
「何じゃそれは!原因は?」
「それが…誰かが書いたレポートの価値が、ぐーんと上がった事が原因のようです。」
「レポートと言うと、動物達が車内で書いているものか?人間達の願いや夢を解析している?」
「はい。そのレポートが天国まで送信され、ひらめきのかけらとなって地上に降り注ぎますよね。どうやらそれを受け取った人間が、絵本を書いて投稿サイトにアップしたようです。」
「それで?」
「その絵本自体は、全然大した事は無いようです。ですが、それの読者に素晴らしい人が多いようで、読んだ人間がそれぞれの目標に向かって努力した結果、“世の中が少し良い方へ変わる”という未来のルートが出来たようです。その功績がとても大きなものだと算出されたようで、追加の報酬が機械から溢れ出ているんですな、コレ。」
「そのような事があるのか!?」
「通常追加報酬は、連動している財布に自動振り込みされるはずです。これも滅多にない事ですけどね。きっとレポート報告者の財布がパンパンなのでしょう。各車両に逆流しちゃってますからねw」
「一体誰なのじゃ…?」
山神は腕組みをしていた右手を口元へ当てて考えた。
「あの…すみません。」
男性が恐る恐る、山神に声をかける。
「ん?何じゃ。」
「なんか、財布が噴水なんですケドモ…。」
「「お前かい!!」」
山神とオコゼは、どんどん硬貨が溢れ出る七宝柄のがまぐち財布を見て、男性につっこんだ。
今までの電車とは違い、乗客は男性と山の神様しかいない。
電車のガタンゴトンという音が、やけにいつもより大きく聞こえる。
「部下はあやつを食べてなどおらぬ。お前から引き離して天国に連行したのじゃ。人間をこちらの世界へ連れてくるという殺人未遂の容疑でな。それに、あれだけ大きな騒ぎを起こしたのじゃ。しばらく人間界行きの切符は発行できんな。」
「待ってください!私を助けようとしてくれた事なんです。モトクマはずっと人間になるのが夢だったんです。なんとかこの電車に乗せて貰えませんか?」
「ならぬ。あやつの切符でお主が帰れば、殺人未遂は未遂で終わるので良い。しかし、切符を持たぬあやつを乗せる訳にはいかぬ。あのホームにいた動物達の半数は、皆転生を目指して地道に頑張ってきたのだ。その者達を無視して、巨大化して駄々をこねたお主らに、簡単に切符を発行する訳にはいかぬ。」
もっともな意見だ。
棚ぼたの自分が感情論で手に入れて良いような切符では無い。
「分かりました。」
「あやつとのパートナー契約は一度解除する。罪人をこの神聖なくまどり電車に乗せる訳にはいかない。修行した後、新人と同様に筆記試験からやり直しじゃ。再びあやつが努力して、成果を上げるのを待つよりあるまい。」
2回目のチャンスは与えてくれると言う事なのか。
山の神様は厳しいようで実は優しい。
ガタン…ゴトン…。
電車が徐々に速度を落としてゆく。
もう人間界に着いたのだろうか。
きちんとみんなにお別れを言えなかった。
というより、ありがとうを言えなかった事が残念だ。
あんなに沢山の動物が自分を応援してくれたのに……。
「…!?どうした、なぜ止まる!」
神様が少し慌てた様子で運転席へ近づいた。
ここは目的地ではないのだろうか。
「電車すれ違いのための待機です。」
運転手のオコゼが神様に答えた。
「いつもはあちら側の藍色電車が待機しているはずだろう!」
「それが、7つの車両でシステムトラブルが起きているようで、大幅な遅延が発生しています。」
「どう言う事じゃ!?」
「ただ今エンジニアが各電車へ移動し、対応しております。詳しくはそちらから…。」
そう言うと運転手は、手にしていたスマホをスピーカーフォンに切り替えた。
「あ、お疲れ様です山神様。」
「どういう状況じゃ?」
「それがですね。7つの車両の両替機からお金があふれて止まらないんですよ。」
電話の相手であるモグラのエンジニアは、パソコンを片手に、紫電車の両替機を開いている所だった。
両替機の硬貨排出口からは絶えずお金が出ている。
モグラの横ではネズミ車掌がスマホを持ち、モグラの声を拾いやすいようにしていた。
滅多にないトラブルに興味を持った一般の動物達は、電車の外から様子をうかがっている。
「何じゃそれは!原因は?」
「それが…誰かが書いたレポートの価値が、ぐーんと上がった事が原因のようです。」
「レポートと言うと、動物達が車内で書いているものか?人間達の願いや夢を解析している?」
「はい。そのレポートが天国まで送信され、ひらめきのかけらとなって地上に降り注ぎますよね。どうやらそれを受け取った人間が、絵本を書いて投稿サイトにアップしたようです。」
「それで?」
「その絵本自体は、全然大した事は無いようです。ですが、それの読者に素晴らしい人が多いようで、読んだ人間がそれぞれの目標に向かって努力した結果、“世の中が少し良い方へ変わる”という未来のルートが出来たようです。その功績がとても大きなものだと算出されたようで、追加の報酬が機械から溢れ出ているんですな、コレ。」
「そのような事があるのか!?」
「通常追加報酬は、連動している財布に自動振り込みされるはずです。これも滅多にない事ですけどね。きっとレポート報告者の財布がパンパンなのでしょう。各車両に逆流しちゃってますからねw」
「一体誰なのじゃ…?」
山神は腕組みをしていた右手を口元へ当てて考えた。
「あの…すみません。」
男性が恐る恐る、山神に声をかける。
「ん?何じゃ。」
「なんか、財布が噴水なんですケドモ…。」
「「お前かい!!」」
山神とオコゼは、どんどん硬貨が溢れ出る七宝柄のがまぐち財布を見て、男性につっこんだ。
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