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ギンはお留守番
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男性とモトクマとギンの3人は、ユメノ鉄道の緑電車に乗った。
「ついて来ないでよ、ギン。」
モトクマが面倒くさそうに言った。
「いいじゃねーか。もう1人仮想空間に入るくらい。」
「あんまり人数入ると、仮想空間の処理速度が落ちるから、控えてほしいんですけど。」
「はぁ…。そうだったっけか?俺が本職じゃないからって、適当な事言ってないか?」
「ホッホッホ。ほんとじゃよ。」
大ベテランのコイジイが、笑いながら通り過ぎてゆき、近くのボックスシートに腰を下ろした。
「…コイジイが言うなら…本当か。わかったよ。じゃあ俺は、椅子から見てるよ。お前達が戻ってきたら、散々ダメ出ししてやる。」
ギンは座席にどかっと座り、にやっと意地悪そうに笑った。
「あの、ギンさん。ありがとうございます。私達のために色々気にかけて下さって。」
男性はギンにお礼を言った。
「別に、お兄さんのためじゃないっすよ。こいつをからかうのが楽しいだけっす。」
ギンは目を合わせずに答えた。
「そうですか…。あっ!では行ってきます。」
緑電車がゆっくりと動き始めた。
「モトクマ、昔話の時間だ。」
「了解兄ちゃん。」
モトクマは窓際に、持っていた石をセッティングした。
「いざ!秋田の昔話“はり木石”の世界へー!」
男性とモトクマの体が、窓ガラスへと吸い込まれていく。
さっきまでの騒がしさは無くなり、ボックスシートにはギンだけが残された。
ガタンゴトンという緑電車の音が車内に響き渡る。
「友達が突然遠くに行ったみたいで寂しいかの?」
コイジイがギンに声をかけた。
「まさかwあいつが遠くに行く事なんか、俺は前から知ってるっつうの。お別れ会なんか先週済ませたわw」
ギンはコイジイに笑って返した。
「逆に、人間界に旅立ったはずのあいつが、まだこんな所にいるのかが問題なんだよ。しかもちょっと楽しそうに。」
ギンの眉間にしわが増えてきた。
「モトクマが連れてんの、あれ、人間だろどうせ。」
「ほう。驚いたわい。ギンは一般客なのにするどいのう。」
「友達何年やってると思ってるんだよ。ふざけやがって。人間をペットにすんのか?ペットにされた恨みをここで晴らそうってのか?」
ギンは貧乏ゆすりをし始めた。
「ギンは、モトクマが人間に復讐すると思うのか?」
コイジイが、イライラしているギンの背中に、そっと手を置いた。
手の暖かさが、背中から優しく伝わってくる。
「思わねぇよ……。モトクマはいいやつだ。」
ギンの耳が少し垂れた。
「分かんねー。だってこのままいったらあの兄ちゃんは、モトクマに支配されるぞ?この世界で死にかけの人間に取り憑くって事は、そう言う事だ。あいつも分かってるはずなんだけどな…。」
「でもモトクマは、あの人間を人里に返す気らしいぞ?」
「どうやってだよ。」
「さあ、わしにも破天荒の考えている事は分からん。とりあえず見守ってあげようとわしは思っているよ。」
コイジイはギンの背中をさするのをやめて自分の座席に戻り、窓ガラスの中へと入って行った。
「お前は優しいから、大事な事は言ってくれないんだよなー。」
そう言ってギンは、男性とモトクマが吸い込まれた窓ガラスを見つめた。
「ついて来ないでよ、ギン。」
モトクマが面倒くさそうに言った。
「いいじゃねーか。もう1人仮想空間に入るくらい。」
「あんまり人数入ると、仮想空間の処理速度が落ちるから、控えてほしいんですけど。」
「はぁ…。そうだったっけか?俺が本職じゃないからって、適当な事言ってないか?」
「ホッホッホ。ほんとじゃよ。」
大ベテランのコイジイが、笑いながら通り過ぎてゆき、近くのボックスシートに腰を下ろした。
「…コイジイが言うなら…本当か。わかったよ。じゃあ俺は、椅子から見てるよ。お前達が戻ってきたら、散々ダメ出ししてやる。」
ギンは座席にどかっと座り、にやっと意地悪そうに笑った。
「あの、ギンさん。ありがとうございます。私達のために色々気にかけて下さって。」
男性はギンにお礼を言った。
「別に、お兄さんのためじゃないっすよ。こいつをからかうのが楽しいだけっす。」
ギンは目を合わせずに答えた。
「そうですか…。あっ!では行ってきます。」
緑電車がゆっくりと動き始めた。
「モトクマ、昔話の時間だ。」
「了解兄ちゃん。」
モトクマは窓際に、持っていた石をセッティングした。
「いざ!秋田の昔話“はり木石”の世界へー!」
男性とモトクマの体が、窓ガラスへと吸い込まれていく。
さっきまでの騒がしさは無くなり、ボックスシートにはギンだけが残された。
ガタンゴトンという緑電車の音が車内に響き渡る。
「友達が突然遠くに行ったみたいで寂しいかの?」
コイジイがギンに声をかけた。
「まさかwあいつが遠くに行く事なんか、俺は前から知ってるっつうの。お別れ会なんか先週済ませたわw」
ギンはコイジイに笑って返した。
「逆に、人間界に旅立ったはずのあいつが、まだこんな所にいるのかが問題なんだよ。しかもちょっと楽しそうに。」
ギンの眉間にしわが増えてきた。
「モトクマが連れてんの、あれ、人間だろどうせ。」
「ほう。驚いたわい。ギンは一般客なのにするどいのう。」
「友達何年やってると思ってるんだよ。ふざけやがって。人間をペットにすんのか?ペットにされた恨みをここで晴らそうってのか?」
ギンは貧乏ゆすりをし始めた。
「ギンは、モトクマが人間に復讐すると思うのか?」
コイジイが、イライラしているギンの背中に、そっと手を置いた。
手の暖かさが、背中から優しく伝わってくる。
「思わねぇよ……。モトクマはいいやつだ。」
ギンの耳が少し垂れた。
「分かんねー。だってこのままいったらあの兄ちゃんは、モトクマに支配されるぞ?この世界で死にかけの人間に取り憑くって事は、そう言う事だ。あいつも分かってるはずなんだけどな…。」
「でもモトクマは、あの人間を人里に返す気らしいぞ?」
「どうやってだよ。」
「さあ、わしにも破天荒の考えている事は分からん。とりあえず見守ってあげようとわしは思っているよ。」
コイジイはギンの背中をさするのをやめて自分の座席に戻り、窓ガラスの中へと入って行った。
「お前は優しいから、大事な事は言ってくれないんだよなー。」
そう言ってギンは、男性とモトクマが吸い込まれた窓ガラスを見つめた。
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