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めでたし、めでたし、マサカリ石
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二人は辺りを警戒しながら小走りをしていると、先程のストーカーが一軒の家を覗いているのを見つけた。
「この家が女性のお家かな?」
「まあ、そうだろうな。」
男は何やら独り言をぶつぶつ言っている。
二人はバレない様に、男に近づいてみた。
「今日こそ告白しようと思ったのに……。ああ、勇気が出ない……。もう、夜になってしまった、どうしよう……。うん、大丈夫。僕なら出来る。よし、告白するぞ!」
男は女性の家へと近づいていった。
「ねえ、兄ちゃん。人間って、寝ている間に突然起こされても怒らないの?(小声)」
「いや、普通に迷惑だぞ?(小声)」
「だよね?(小声)」
二人は男の後を追った。
男は玄関目掛けて一直線に、どんどん歩いていく。
……と思いきや、いきなりピタッと止まった。
そしてくるっと向きを変えて庭へ入って行き、垣根の影に身を潜めた。
「あいつ何やっているんだ?(小声)」
「兄ちゃん見て、縁側に誰かいる。(小声)」
縁側を見てみると、確かに誰かいる。
暗くてよく見えないが、シルエット的に昼間の女性だろう。
縁側の下にしゃがんでいる誰かに、昔っぽいから傘の帽子を被せている。
「もう、慌てん坊の彼氏ねほんと。傘を忘れて行くなんて。」
やはり、昼間聞いた声が聞こえた。
改めて聞くと、見た目だけではなく声も美しい女性なんだなと男性は思った。
そんな事を考えていると、横からトントンとモトクマに肩を叩かれた。
少し不安げな顔をして、男の方を指さしている。
見ると男は、下を向いてうずくまり、ぶつぶつ言いながら怒りで体を震わせていた。
「こ、こんな夜更けに、じょ、女性の家に来るなんて……。な、なんて非常識な!!」
(「お前が言う?」)
(「お前が言う?」)
二人の心の中の声がぴったり合った。
月にかかった分厚い雲が動き、辺りの様子が少し見えやすくなってきた。
もちろん、男のやばい顔も見える。
すると、若干引いている男性の視界の片隅に、何やら光る物を見つけた。
畑仕事道具や薪が積み上げられている庭の横には……。
「斧……。いや、あれはマサカリか!?」
男性が「まずい!」と思って振り返ったが、すでに男は駆け出していた後だった。
マサカリ目掛けて一直線に走り出した男は、
それを手にすると天高く振りかざし、
勢いそのままに、
から傘目掛けて
振り下ろした。
「うおぉーー!!」
「おい、やめろーー!!」
ガチーン!!!
男の腕には大きな衝撃が、そして辺り一体にはマサカリと石がぶつかった大きな音が響き渡った。
月を覆っていた雲が完全に晴れた。
我々が彼氏だと思っていたのは、庭先にある少し大きめの石だった。
女性は彼氏の忘れ物を、分かりやすい所に置いておこうとしただけなのである。
一瞬の出来事で訳がわからなかった女性だったが、ヤバい顔の男が刃物を持って立っている状況を見て、恐ろしい事態になっている事だけは分かった。
「キャーー!!」
「どうした!?何事だ!?」
女性の家族が家の中でうろたえている声が聞こえる。
男は興奮…というより、混乱している様子で、目を見開いて女性を見ていた。
いったいどういう感情なのかは、表情からは分からなかった。
女性の事も手にかけようとしているのだろうか。
とりあえず男性は、熊の姿をフル活用して男を威嚇した。
それを見て驚いた男は、慌ててその場から逃げていったのだった。
また襲ってきたりしないだろうかと男性は不安に思った。
だがその心配は、モトクマの言葉によって打ち消された。
「安心してくださいお嬢さん。今後は襲われる事はありません。そういうシナリオは無いので。」
モトクマがいい終わる辺りで、家族が家の中から包丁を持って出てきた。
「なんだなんだ?熊か?お前は家の中に隠れていなさい!」
「やばい、モトクマ。撤収するぞ!」
「ラジャー!」
二人は仮想空間の出口である窓へと走って行った。
「この家が女性のお家かな?」
「まあ、そうだろうな。」
男は何やら独り言をぶつぶつ言っている。
二人はバレない様に、男に近づいてみた。
「今日こそ告白しようと思ったのに……。ああ、勇気が出ない……。もう、夜になってしまった、どうしよう……。うん、大丈夫。僕なら出来る。よし、告白するぞ!」
男は女性の家へと近づいていった。
「ねえ、兄ちゃん。人間って、寝ている間に突然起こされても怒らないの?(小声)」
「いや、普通に迷惑だぞ?(小声)」
「だよね?(小声)」
二人は男の後を追った。
男は玄関目掛けて一直線に、どんどん歩いていく。
……と思いきや、いきなりピタッと止まった。
そしてくるっと向きを変えて庭へ入って行き、垣根の影に身を潜めた。
「あいつ何やっているんだ?(小声)」
「兄ちゃん見て、縁側に誰かいる。(小声)」
縁側を見てみると、確かに誰かいる。
暗くてよく見えないが、シルエット的に昼間の女性だろう。
縁側の下にしゃがんでいる誰かに、昔っぽいから傘の帽子を被せている。
「もう、慌てん坊の彼氏ねほんと。傘を忘れて行くなんて。」
やはり、昼間聞いた声が聞こえた。
改めて聞くと、見た目だけではなく声も美しい女性なんだなと男性は思った。
そんな事を考えていると、横からトントンとモトクマに肩を叩かれた。
少し不安げな顔をして、男の方を指さしている。
見ると男は、下を向いてうずくまり、ぶつぶつ言いながら怒りで体を震わせていた。
「こ、こんな夜更けに、じょ、女性の家に来るなんて……。な、なんて非常識な!!」
(「お前が言う?」)
(「お前が言う?」)
二人の心の中の声がぴったり合った。
月にかかった分厚い雲が動き、辺りの様子が少し見えやすくなってきた。
もちろん、男のやばい顔も見える。
すると、若干引いている男性の視界の片隅に、何やら光る物を見つけた。
畑仕事道具や薪が積み上げられている庭の横には……。
「斧……。いや、あれはマサカリか!?」
男性が「まずい!」と思って振り返ったが、すでに男は駆け出していた後だった。
マサカリ目掛けて一直線に走り出した男は、
それを手にすると天高く振りかざし、
勢いそのままに、
から傘目掛けて
振り下ろした。
「うおぉーー!!」
「おい、やめろーー!!」
ガチーン!!!
男の腕には大きな衝撃が、そして辺り一体にはマサカリと石がぶつかった大きな音が響き渡った。
月を覆っていた雲が完全に晴れた。
我々が彼氏だと思っていたのは、庭先にある少し大きめの石だった。
女性は彼氏の忘れ物を、分かりやすい所に置いておこうとしただけなのである。
一瞬の出来事で訳がわからなかった女性だったが、ヤバい顔の男が刃物を持って立っている状況を見て、恐ろしい事態になっている事だけは分かった。
「キャーー!!」
「どうした!?何事だ!?」
女性の家族が家の中でうろたえている声が聞こえる。
男は興奮…というより、混乱している様子で、目を見開いて女性を見ていた。
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女性の事も手にかけようとしているのだろうか。
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それを見て驚いた男は、慌ててその場から逃げていったのだった。
また襲ってきたりしないだろうかと男性は不安に思った。
だがその心配は、モトクマの言葉によって打ち消された。
「安心してくださいお嬢さん。今後は襲われる事はありません。そういうシナリオは無いので。」
モトクマがいい終わる辺りで、家族が家の中から包丁を持って出てきた。
「なんだなんだ?熊か?お前は家の中に隠れていなさい!」
「やばい、モトクマ。撤収するぞ!」
「ラジャー!」
二人は仮想空間の出口である窓へと走って行った。
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