10 / 41
オレンジ電車乗車
しおりを挟む
「はぁ~っ!疲れた~。」
男性は地面にお尻をぺたんとついた。
「兄ちゃん、やるじゃん!初めての昔話解析としては、いい結果だよ!?」
モトクマが拳を天に上げたり下げたりしながら、男性を褒めた。
「特に、物語が通常とは違う流れになった時の対応はさすがだね!普通は一回、仮想空間から電車に戻って、話をリセットしてから再開するのに。」
「え?待って。リセットする方法あったの??」
男性の声色が、一段階低くなる。
「てことは、わざわざ馬集めしなくても良かったって事?あんなに頑張ったのに?」
「まあ、そうかもだけど…。」
腕を組んで考えるモトクマの横で、男性はショックのため横方向に崩れていた。
目は白目を向いている。
「あわわ!で、でもね。聞いて兄ちゃん。結果的にいい判断だったよ!」
ほんと?とたずねる男性の目は、まだ白目のままだ。
「まず第一にね、あのトラブルが無ければ飼い主と話す機会もそんなに無かったんだよ。」
「そうだったのか?じゃあリセットしたら、マタギであるという個人情報も聞けなかったかもしれないのか。」
「そう!まさにそれなんだよ。」
モトクマは指をパチンと鳴らして、男性に指をさした。
「その、飼い主がマタギ設定ってのを聞けたのは、兄ちゃんのファインプレイなポイントその2だよ。」
男性は黒目を取り戻した。
モトクマが手でVサインを作り、前に突き出しているのが見える。
「まあね、たまたまマタギの忍耐力と生命力の話になったから、今までとは違う報告書が書けたんだと思う、多分。ボートソリ大変だったけど、やってよかったな。」
「それ!そのボートソリが、兄ちゃんファインプレイポイントその3だよ!」
「あー体力的にきつかったなー。熊の筋肉が無いと無理だったかも。」
それを聞いたモトクマは手を横に振って、違う違うとジェスチャーをする。
「いや、体力もすごいけど、もっとすごいのは馬に手綱を付けれた事だよ!」
男性は馬に手綱がついた時の事を思い出してみた。
確かあの時は、二人ともつけ方が分からず途方に暮れていたら、不思議な力で勝手に装着されていたはず。
男性は笑いながらモトクマに尋ねた。
「いや、あれはモトクマが魔法か何かを使ったんだろ?仮想空間だから、そういうのはできるんじゃないの?」
男性の言葉に、モトクマは先程以上の速度で手を横に振った。
「いやいや、駒爪石は魔法使える系の昔話じゃないから出来ないんだよ!それでも出来たのは、兄ちゃんが“生きている人間”要素をまだ持っているからだと思うんだ。」
「え?どゆこと?」
「昔話ってのは特殊で、生きている人間達の伝言ゲームで出来上がっているんだ。どんどん設定が付け加えられたり、逆に省かれたりしていく、過去から現在までの人間達の合作なんだよ。だから、あの時半分生きてる兄ちゃんが“手綱を付けた馬”を想像したから、その設定が追加されたんだ。」
「おぉ、俺生きてて良かったぁ…。半分だけど。」
「でもまだ生きてる。今回の手綱設定は世の中に浸透しないから多分話としては残らないけど、頑張って書いた報告書は誰かに届くかもしれないよ!?」
若干落ち込む男性を見て、モトクマは真剣に励ました。
「お、おう。そうだな!とりあえず、1個目はクリアだ!この調子でどんどん行くぞー。」
「おーー!」
張り切る大声に驚き、ホームにいる数匹が二人を見た。
「ねーコイジイさん。あの二人変だよー?」
コイジイに隠れて様子を伺う子ダヌキが、ホームにいる全員の気持ちを代弁する。
「ホッホッホ。そうじゃのう。皆んな、大目に見てやってくれ。」
大ベテランのコイジイがそう言うならと、ホームの動物達のざわつきは徐々に収まっていく。
モトクマはコイジイに向かって、ありがとうと小声で言い、手を合わせた。
そんなこんなをしているうちに数分が過ぎ、いつの間にか次の電車がホームに近づいて来た。
前回は赤色だったが、今回の車両はオレンジ色だ。
モデルとなっている人間界の電車と同じ、カラフルでかわいい一両電車である。
「あ、おかあさんバスきた!」
「電車よポン太。」
狸の親子に続いて、男性とモトクマは本日二つ目の電車に乗り込んだ。
男性は地面にお尻をぺたんとついた。
「兄ちゃん、やるじゃん!初めての昔話解析としては、いい結果だよ!?」
モトクマが拳を天に上げたり下げたりしながら、男性を褒めた。
「特に、物語が通常とは違う流れになった時の対応はさすがだね!普通は一回、仮想空間から電車に戻って、話をリセットしてから再開するのに。」
「え?待って。リセットする方法あったの??」
男性の声色が、一段階低くなる。
「てことは、わざわざ馬集めしなくても良かったって事?あんなに頑張ったのに?」
「まあ、そうかもだけど…。」
腕を組んで考えるモトクマの横で、男性はショックのため横方向に崩れていた。
目は白目を向いている。
「あわわ!で、でもね。聞いて兄ちゃん。結果的にいい判断だったよ!」
ほんと?とたずねる男性の目は、まだ白目のままだ。
「まず第一にね、あのトラブルが無ければ飼い主と話す機会もそんなに無かったんだよ。」
「そうだったのか?じゃあリセットしたら、マタギであるという個人情報も聞けなかったかもしれないのか。」
「そう!まさにそれなんだよ。」
モトクマは指をパチンと鳴らして、男性に指をさした。
「その、飼い主がマタギ設定ってのを聞けたのは、兄ちゃんのファインプレイなポイントその2だよ。」
男性は黒目を取り戻した。
モトクマが手でVサインを作り、前に突き出しているのが見える。
「まあね、たまたまマタギの忍耐力と生命力の話になったから、今までとは違う報告書が書けたんだと思う、多分。ボートソリ大変だったけど、やってよかったな。」
「それ!そのボートソリが、兄ちゃんファインプレイポイントその3だよ!」
「あー体力的にきつかったなー。熊の筋肉が無いと無理だったかも。」
それを聞いたモトクマは手を横に振って、違う違うとジェスチャーをする。
「いや、体力もすごいけど、もっとすごいのは馬に手綱を付けれた事だよ!」
男性は馬に手綱がついた時の事を思い出してみた。
確かあの時は、二人ともつけ方が分からず途方に暮れていたら、不思議な力で勝手に装着されていたはず。
男性は笑いながらモトクマに尋ねた。
「いや、あれはモトクマが魔法か何かを使ったんだろ?仮想空間だから、そういうのはできるんじゃないの?」
男性の言葉に、モトクマは先程以上の速度で手を横に振った。
「いやいや、駒爪石は魔法使える系の昔話じゃないから出来ないんだよ!それでも出来たのは、兄ちゃんが“生きている人間”要素をまだ持っているからだと思うんだ。」
「え?どゆこと?」
「昔話ってのは特殊で、生きている人間達の伝言ゲームで出来上がっているんだ。どんどん設定が付け加えられたり、逆に省かれたりしていく、過去から現在までの人間達の合作なんだよ。だから、あの時半分生きてる兄ちゃんが“手綱を付けた馬”を想像したから、その設定が追加されたんだ。」
「おぉ、俺生きてて良かったぁ…。半分だけど。」
「でもまだ生きてる。今回の手綱設定は世の中に浸透しないから多分話としては残らないけど、頑張って書いた報告書は誰かに届くかもしれないよ!?」
若干落ち込む男性を見て、モトクマは真剣に励ました。
「お、おう。そうだな!とりあえず、1個目はクリアだ!この調子でどんどん行くぞー。」
「おーー!」
張り切る大声に驚き、ホームにいる数匹が二人を見た。
「ねーコイジイさん。あの二人変だよー?」
コイジイに隠れて様子を伺う子ダヌキが、ホームにいる全員の気持ちを代弁する。
「ホッホッホ。そうじゃのう。皆んな、大目に見てやってくれ。」
大ベテランのコイジイがそう言うならと、ホームの動物達のざわつきは徐々に収まっていく。
モトクマはコイジイに向かって、ありがとうと小声で言い、手を合わせた。
そんなこんなをしているうちに数分が過ぎ、いつの間にか次の電車がホームに近づいて来た。
前回は赤色だったが、今回の車両はオレンジ色だ。
モデルとなっている人間界の電車と同じ、カラフルでかわいい一両電車である。
「あ、おかあさんバスきた!」
「電車よポン太。」
狸の親子に続いて、男性とモトクマは本日二つ目の電車に乗り込んだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
平凡なサラリーマンのオレが異世界最強になってしまった件について
楠乃小玉
ファンタジー
上司から意地悪されて、会社の交流会の飲み会でグチグチ嫌味言われながらも、
就職氷河期にやっと見つけた職場を退職できないオレ。
それでも毎日真面目に仕事し続けてきた。
ある時、コンビニの横でオタクが不良に集団暴行されていた。
道行く人はみんな無視していたが、何の気なしに、「やめろよ」って
注意してしまった。
不良たちの怒りはオレに向く。
バットだの鉄パイプだので滅多打ちにされる。
誰も助けてくれない。
ただただ真面目に、コツコツと誰にも迷惑をかけずに生きてきたのに、こんな不条理ってあるか?
ゴキッとイヤな音がして意識が跳んだ。
目が覚めると、目の前に女神様がいた。
「はいはい、次の人、まったく最近は猫も杓子も異世界転生ね、で、あんたは何になりたいの?」
女神様はオレの顔を覗き込んで、そう尋ねた。
「……異世界転生かよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる