1 / 1
垣間見える月
しおりを挟む
深夜に独り、気晴らしにと外を歩く。街灯の乏しい辺りは月明かりをやけに誇張する。
もう希望なんて見えない。そう思っても、いつもまたどこかで見えてしまう。おそらくは明かりの灯るその雑然と建ち並んだ中で顔を覗かせてはまた隠れる月。
「もう疲れた」
歩くのをやめ、立ち止まって顔を上げる。その明かりは、まだ道は途絶えていないのではと執拗に思わせてくる。
「もういいよ」
心の中に攻め入ってくるその明かりを振り払おうとする。気が付けばまた歩を進めている。それも先程より速く。
「全てを終わらせたい」
本当に疲れたんだ、楽になりたいんだ。思うほどに何かがつっかえる。
もともと走るのは苦手な性だった。自分の歩幅でゆっくり歩きたい。今でもそう思っている。しかし現実は思うように歩けない。
「焦るな。先のことばかり考えすぎだ」
つくづく自分に言い聞かせている。
誰にでも夢はあるものだ。皆それに向かって歩いている。ときには走り、疲れたら休む。そしてまた歩き始める。
しかし、その循環が上手くいかない人もいる。つまり、余裕が無いのだ。
「何もできない」
暗いため息がそんな言葉を紡ぐ。
仕事も、友人も、家族も、何もかも。
走り続けなければ生きられない。こういうのを社会不適応というのかもしれない。
何処かに拠り所が欲しい。一つだけでいい、明かりの灯る居場所が。
切に願いながら、それでもまた歩を止めてしまう。
闇夜に浸かる心は明かりに善がり、夢への道を探る。
自分には関係の無い、そんな在り来りな建物を掻い潜り、この身を照らす月。
「また見えた」
その明かりは一向に消えない。
心に望む灯への道、おそらくはそう信じているからだろう。
もう希望なんて見えない。そう思っても、いつもまたどこかで見えてしまう。おそらくは明かりの灯るその雑然と建ち並んだ中で顔を覗かせてはまた隠れる月。
「もう疲れた」
歩くのをやめ、立ち止まって顔を上げる。その明かりは、まだ道は途絶えていないのではと執拗に思わせてくる。
「もういいよ」
心の中に攻め入ってくるその明かりを振り払おうとする。気が付けばまた歩を進めている。それも先程より速く。
「全てを終わらせたい」
本当に疲れたんだ、楽になりたいんだ。思うほどに何かがつっかえる。
もともと走るのは苦手な性だった。自分の歩幅でゆっくり歩きたい。今でもそう思っている。しかし現実は思うように歩けない。
「焦るな。先のことばかり考えすぎだ」
つくづく自分に言い聞かせている。
誰にでも夢はあるものだ。皆それに向かって歩いている。ときには走り、疲れたら休む。そしてまた歩き始める。
しかし、その循環が上手くいかない人もいる。つまり、余裕が無いのだ。
「何もできない」
暗いため息がそんな言葉を紡ぐ。
仕事も、友人も、家族も、何もかも。
走り続けなければ生きられない。こういうのを社会不適応というのかもしれない。
何処かに拠り所が欲しい。一つだけでいい、明かりの灯る居場所が。
切に願いながら、それでもまた歩を止めてしまう。
闇夜に浸かる心は明かりに善がり、夢への道を探る。
自分には関係の無い、そんな在り来りな建物を掻い潜り、この身を照らす月。
「また見えた」
その明かりは一向に消えない。
心に望む灯への道、おそらくはそう信じているからだろう。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる