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第2章
不快な本
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「あの本はどうやって手に入れた?」
翌日早朝、アランは朝議の間にガレウスを呼び出した。本の入手経路等を確認するためだった。
昨夜手にした本の内容は異世界転生者についてのものではなかった。獣人同士の子で自然人化しなかったものたちを強制的に人化させるための方法が書かれたもので、内容はひどいものだった。成獣になりたてのものを痛め付け生命の危機を利用したり、むりやり性的な刺激を与え発情を促したりと、獣人の尊厳を無視したものだった。
フィリーが冒頭から先へ読んでいなかったのは時間がなかったからではないのだ。きっと読むに耐えないものだったからなのだろう。本は他国での行いについてのものだったが──まさかこの国でも同じようなことが行われているのだろうか?
不愉快な問いを投げると、床に片ひざをつき頭をたれたままガレウスが静かに答えた。
「いえ、人化しないことはあまりないのですが、そういった場合我が国では、そういう運命なのだと受け入れる親がほとんどです」
「そうか……」
自然人化しないものたちがいることなどアランは知らなかったし、考えたこともない。猫に出会うまで転生者について深く考察する機会もなかった。ツガイのいない独り身であったため、世の親たちが我が子の人化にこれほどやきもきするなど想像もしなかったのだ。
たしかに人化しない猫にもどかしさは感じる。できることならすぐにでも人化し、ツガイとなってほしい。しかしだからといってあの本にかかれていたことをするつもりはない。アランには愛しいものを痛めつけることはできないし、他のものにも許さない。そう明言すると、ガレウスは「はっ」と平伏した。
そのとき突然朝議の間の扉が開いた。姿をあらわしたのはフィリーだった。
「ガレウス様をお責めにならないでください。私が頼んだ本なのです」
「フィリー」
許しも得ずに足早に入ってきたフィリーに、ヒロキはどうしたと聞けば「王医さまが朝の検診をなさっておいでです」との答え。
出すぎた真似をするなとガレウスが目で咎めるが、アランは「そのまま続きを」と先をうながした。
「ツガイさまが成獣におなりでないうちは、人化がうまくいかないだけの獣人の幼獣の可能性も捨てきれなかったため、異世界転生者のもののみならずそういった本も探していただいていたのです」
どんなことでも人化の可能性に繋がるならとの思いからそうしたと。
「他国であんなことが行われているとは知りませんでしたが、なにもしないまま諦めることはできないのでしょう。……幼獣やツガイを失うのはとてもつらいことですから」
「…………」
アランとガレウスは沈黙した。
実際にツガイを亡くしたフィリーに言われると言葉が続かないが、やはり決意は変わらない。
とにかく、あの本の内容については他言無用で猫にもなにもしてはならない、と再度言い含める。二人は静かに頷いたが、ですが…とフィリーが口を開いた。
「ツガイさまのお名前が判明したことにより、元ニンゲンであると確定されました。王はニンゲンに明確な発情期が無いのはご存じでしょうか?」
「知っている。異世界転生者についての本にもそう記述があった」
獣人にはそれぞれの獣種によって発情しやすい時期というものがある。犬や猫なら暖かい季節、狼は寒いこれからの時期で、うさぎは季節に関係なく一年中発情しやすい。
本当の獣とは違い、発情しやすくなるというだけで、それ以外の時期でも性行為は可能だ。事実、獣種の違うツガイ同士で発情時期の異なるものはたくさんいる。だが、本来の発情期に起こる発情は「ヒート」と呼ばれ、強烈な性衝動に駆り立てられる。ツガイがいればよいが、ツガイのいない独り身では発散するのに苦労するのだ。
「ニンゲンは発情期が無い、というよりは気が高ぶればいつでも発情可能な生態のようですので、ツガイさまもいつ、何をきっかけに発情するかわかりません。これからは常に王がお側におられた方がよいと思います」
部屋からなるべく出したくないアランは渋ったが、この半年、一度朝議の間に行ったきり部屋から出ていないのもよくないのかもと言われると返す言葉に窮した。
「なにがきっかけになるかはわかりません。我らにやれることはすべてやってみましょう」
私室は広いがやはり窓から見える外の景色にツガイ様が関心を示すこともあるので、と言われればアランも負い目を感じずにはいられない。
フィリーを私室へ戻らせ、その後に始まった朝議にて、猫を連れて外出する案を検討するよう重臣たちに言い渡した。
これまで私室から外へ出そうとしなかった王の突然の言葉に、重臣たちは戸惑いを隠せなかった。ザラスが代表して王の真意を問うと、アランは静かに答えた。
「人化へのきっかけやなにかよい刺激が得られればとの考えから、いままでの暮らしを少し見直そうかと思う」
「さようでございますか…。わかりました、少しずつツガイ様の世界を広げていきましょう…」
警備のしやすさから、まずは城内をアランとともに行動することとなった。毎日昼食を中庭でとるようにし、慣れたら城外へという案でアランも納得した。猫本人だけでなく、アラン自身や警護のものたちも猫と行動することに慣れなくてはならない。
私室へ戻り「昼食は外で食べようか」と声をかけると、はじめはきょとんとしていたヒロキが、丸くなっていたソファからアランのもとへ矢のように飛んできた。盛大に喉をならし、なんどもぶつけるように体をこすりつけてくる。
アランはしゃがみ、両手で耳のあたりの毛を掻いてやった。うっとりとされるがままのヒロキに苦笑する。
「そんなに嬉しいのかい?」
「ンナー!」
「そうか…。首輪をつけてもらうけどいいかな」
「ナ~」
「私からはなれて遠くへは行かないと約束できるかい?」
「ナッ!」
首輪とメダリオンをつけ、昼食までの時間を執務室で過ごすことにした。
私室から出てきた王が猫を抱いているのを目にし、部屋の警護をしていた騎士たちが目を丸くして一瞬立礼が遅れた。何を思ったかヒロキが「ナ~!」と元気よく鳴くと、騎士たちはさらに深く腰を折った。
どうしたらよいのかと戸惑っているのが手に取るようにわかり、アランは微笑んだが、騎士二人が頬を染めているのに気づきすぐに憮然とした。さっと上着の裾をひるがえし、足早にその場を去る。
私室から執務室へはさほどはなれてはいなかったが、人払いをしなかったため何人かと行き合った。
みなアランを目をすると手や足を止め、王が視界から消えるまで立礼でやり過ごすのだが、私室の警護の騎士たち同様に猫に気づき興奮が隠せていない。顔を伏せながら上目使いで盗み見たり、耳がアランではなく猫に向けられていたりと興味津々である。
城のほとんどのものは猫の存在を知ってはいる。だが、実際目にするのははじめてのものたちばかりなのだ。
ヒロキも出会うものにいちいち元気よく「ナ~!」と呼び掛けるのがいけない。おそらく「おはよう!」とあいさつをしているのだろうが、王のツガイに声をかけられ喜ばないものはいないのだ。興奮が興奮を呼び、平素は静かなただの回廊が異様な熱気を帯びていく。
アランは獣型に転化して駆け抜けたい気持ちをなんとかおさえて執務室へと急いだ。警護の騎士が扉を開けるやいなや中に入ると、いつもはしない施錠をした。
ガチャン、という閂の音に高ぶっていた気持ちが少しおさまる。
腕の中からヒロキを解放してやり、壁ぎわの棚に置いてある水差しからグラスに水を注いだ。はじめての空間に興味津々のヒロキが、家具やカーペットの匂いを熱心に嗅いで回るのを見つめながら喉を潤す。はじめて私室に入ったときのようにあらゆる所に頬をこすりつけ、匂いづけにいそしんでいる。
アランはため息をついた。
たったあれだけの距離でこんなに疲弊するとは思わなかった。自分でもどうかしていると呆れるが、今日からさっそく昼食を外で食べると言ってしまったことが悔やまれてならない。
ひととおり部屋を見回り、気が済んだヒロキが足元へやって来た。アランが片肘を付きもたれている棚に飛び乗り、水差しに鼻をチョンとつけ見上げてくる。喉が乾いたのだろう。
背の低いグラスの縁いっぱいまで水を注いでやるとヒロキがピチャピチャと飲みはじめた。そのしっぽはピンと高くのび、まだまだ興奮がおさまらないことをあらわしている。こんなに喜んでいるツガイに、やっぱり私室で昼食をとろうとはいまさら言えやしない。
アランの視線に気づいたヒロキが顔をあげ、じっと見つめ返してきた。またしても不安を感じ取られてしまったのだろう。
こちらの胸の内を見透かすようなアメジストの瞳から目をそらすと、アランの腕に手をかけのびあがり抱っこをせがんできた。
無視することもできず抱いてやると、ゴロゴロと喉をならしてあごにすり寄ってくる。たったそれだけのことでアランの苛立ちは霧散した。
──まったく。と、単純なおのれに自嘲する。
昼食は予定通り中庭でとった。
執務室へ迎えにきたフィリーが「人払いは済ませてあります」と請け負い、給仕もひとりでこなしてくれた。
警護のためそばに控えるのはガレウスのみで、背中を向け彫像のように微動だにしない。
ヒロキはやはりガレウスにも「ナー!」と元気よくあいさつしたが、相手から返ってきたのはそっけない黙礼だけでまったく関心を示してこないので、それ以上そばへ行こうとはしなかった。
日差し避けの天幕を張っていたため、遠巻きに眺めるものたちの視線もあまり気にならず、アランも愛しいツガイとの食事を心から楽しむことができた。
こういう形でなら、これから毎日中庭で食事をとるのも悪くない。──そう思っていたのだが。
そんな平和な日々は長くは続かなかった。
アランに重い発情期がやってきたのである──
翌日早朝、アランは朝議の間にガレウスを呼び出した。本の入手経路等を確認するためだった。
昨夜手にした本の内容は異世界転生者についてのものではなかった。獣人同士の子で自然人化しなかったものたちを強制的に人化させるための方法が書かれたもので、内容はひどいものだった。成獣になりたてのものを痛め付け生命の危機を利用したり、むりやり性的な刺激を与え発情を促したりと、獣人の尊厳を無視したものだった。
フィリーが冒頭から先へ読んでいなかったのは時間がなかったからではないのだ。きっと読むに耐えないものだったからなのだろう。本は他国での行いについてのものだったが──まさかこの国でも同じようなことが行われているのだろうか?
不愉快な問いを投げると、床に片ひざをつき頭をたれたままガレウスが静かに答えた。
「いえ、人化しないことはあまりないのですが、そういった場合我が国では、そういう運命なのだと受け入れる親がほとんどです」
「そうか……」
自然人化しないものたちがいることなどアランは知らなかったし、考えたこともない。猫に出会うまで転生者について深く考察する機会もなかった。ツガイのいない独り身であったため、世の親たちが我が子の人化にこれほどやきもきするなど想像もしなかったのだ。
たしかに人化しない猫にもどかしさは感じる。できることならすぐにでも人化し、ツガイとなってほしい。しかしだからといってあの本にかかれていたことをするつもりはない。アランには愛しいものを痛めつけることはできないし、他のものにも許さない。そう明言すると、ガレウスは「はっ」と平伏した。
そのとき突然朝議の間の扉が開いた。姿をあらわしたのはフィリーだった。
「ガレウス様をお責めにならないでください。私が頼んだ本なのです」
「フィリー」
許しも得ずに足早に入ってきたフィリーに、ヒロキはどうしたと聞けば「王医さまが朝の検診をなさっておいでです」との答え。
出すぎた真似をするなとガレウスが目で咎めるが、アランは「そのまま続きを」と先をうながした。
「ツガイさまが成獣におなりでないうちは、人化がうまくいかないだけの獣人の幼獣の可能性も捨てきれなかったため、異世界転生者のもののみならずそういった本も探していただいていたのです」
どんなことでも人化の可能性に繋がるならとの思いからそうしたと。
「他国であんなことが行われているとは知りませんでしたが、なにもしないまま諦めることはできないのでしょう。……幼獣やツガイを失うのはとてもつらいことですから」
「…………」
アランとガレウスは沈黙した。
実際にツガイを亡くしたフィリーに言われると言葉が続かないが、やはり決意は変わらない。
とにかく、あの本の内容については他言無用で猫にもなにもしてはならない、と再度言い含める。二人は静かに頷いたが、ですが…とフィリーが口を開いた。
「ツガイさまのお名前が判明したことにより、元ニンゲンであると確定されました。王はニンゲンに明確な発情期が無いのはご存じでしょうか?」
「知っている。異世界転生者についての本にもそう記述があった」
獣人にはそれぞれの獣種によって発情しやすい時期というものがある。犬や猫なら暖かい季節、狼は寒いこれからの時期で、うさぎは季節に関係なく一年中発情しやすい。
本当の獣とは違い、発情しやすくなるというだけで、それ以外の時期でも性行為は可能だ。事実、獣種の違うツガイ同士で発情時期の異なるものはたくさんいる。だが、本来の発情期に起こる発情は「ヒート」と呼ばれ、強烈な性衝動に駆り立てられる。ツガイがいればよいが、ツガイのいない独り身では発散するのに苦労するのだ。
「ニンゲンは発情期が無い、というよりは気が高ぶればいつでも発情可能な生態のようですので、ツガイさまもいつ、何をきっかけに発情するかわかりません。これからは常に王がお側におられた方がよいと思います」
部屋からなるべく出したくないアランは渋ったが、この半年、一度朝議の間に行ったきり部屋から出ていないのもよくないのかもと言われると返す言葉に窮した。
「なにがきっかけになるかはわかりません。我らにやれることはすべてやってみましょう」
私室は広いがやはり窓から見える外の景色にツガイ様が関心を示すこともあるので、と言われればアランも負い目を感じずにはいられない。
フィリーを私室へ戻らせ、その後に始まった朝議にて、猫を連れて外出する案を検討するよう重臣たちに言い渡した。
これまで私室から外へ出そうとしなかった王の突然の言葉に、重臣たちは戸惑いを隠せなかった。ザラスが代表して王の真意を問うと、アランは静かに答えた。
「人化へのきっかけやなにかよい刺激が得られればとの考えから、いままでの暮らしを少し見直そうかと思う」
「さようでございますか…。わかりました、少しずつツガイ様の世界を広げていきましょう…」
警備のしやすさから、まずは城内をアランとともに行動することとなった。毎日昼食を中庭でとるようにし、慣れたら城外へという案でアランも納得した。猫本人だけでなく、アラン自身や警護のものたちも猫と行動することに慣れなくてはならない。
私室へ戻り「昼食は外で食べようか」と声をかけると、はじめはきょとんとしていたヒロキが、丸くなっていたソファからアランのもとへ矢のように飛んできた。盛大に喉をならし、なんどもぶつけるように体をこすりつけてくる。
アランはしゃがみ、両手で耳のあたりの毛を掻いてやった。うっとりとされるがままのヒロキに苦笑する。
「そんなに嬉しいのかい?」
「ンナー!」
「そうか…。首輪をつけてもらうけどいいかな」
「ナ~」
「私からはなれて遠くへは行かないと約束できるかい?」
「ナッ!」
首輪とメダリオンをつけ、昼食までの時間を執務室で過ごすことにした。
私室から出てきた王が猫を抱いているのを目にし、部屋の警護をしていた騎士たちが目を丸くして一瞬立礼が遅れた。何を思ったかヒロキが「ナ~!」と元気よく鳴くと、騎士たちはさらに深く腰を折った。
どうしたらよいのかと戸惑っているのが手に取るようにわかり、アランは微笑んだが、騎士二人が頬を染めているのに気づきすぐに憮然とした。さっと上着の裾をひるがえし、足早にその場を去る。
私室から執務室へはさほどはなれてはいなかったが、人払いをしなかったため何人かと行き合った。
みなアランを目をすると手や足を止め、王が視界から消えるまで立礼でやり過ごすのだが、私室の警護の騎士たち同様に猫に気づき興奮が隠せていない。顔を伏せながら上目使いで盗み見たり、耳がアランではなく猫に向けられていたりと興味津々である。
城のほとんどのものは猫の存在を知ってはいる。だが、実際目にするのははじめてのものたちばかりなのだ。
ヒロキも出会うものにいちいち元気よく「ナ~!」と呼び掛けるのがいけない。おそらく「おはよう!」とあいさつをしているのだろうが、王のツガイに声をかけられ喜ばないものはいないのだ。興奮が興奮を呼び、平素は静かなただの回廊が異様な熱気を帯びていく。
アランは獣型に転化して駆け抜けたい気持ちをなんとかおさえて執務室へと急いだ。警護の騎士が扉を開けるやいなや中に入ると、いつもはしない施錠をした。
ガチャン、という閂の音に高ぶっていた気持ちが少しおさまる。
腕の中からヒロキを解放してやり、壁ぎわの棚に置いてある水差しからグラスに水を注いだ。はじめての空間に興味津々のヒロキが、家具やカーペットの匂いを熱心に嗅いで回るのを見つめながら喉を潤す。はじめて私室に入ったときのようにあらゆる所に頬をこすりつけ、匂いづけにいそしんでいる。
アランはため息をついた。
たったあれだけの距離でこんなに疲弊するとは思わなかった。自分でもどうかしていると呆れるが、今日からさっそく昼食を外で食べると言ってしまったことが悔やまれてならない。
ひととおり部屋を見回り、気が済んだヒロキが足元へやって来た。アランが片肘を付きもたれている棚に飛び乗り、水差しに鼻をチョンとつけ見上げてくる。喉が乾いたのだろう。
背の低いグラスの縁いっぱいまで水を注いでやるとヒロキがピチャピチャと飲みはじめた。そのしっぽはピンと高くのび、まだまだ興奮がおさまらないことをあらわしている。こんなに喜んでいるツガイに、やっぱり私室で昼食をとろうとはいまさら言えやしない。
アランの視線に気づいたヒロキが顔をあげ、じっと見つめ返してきた。またしても不安を感じ取られてしまったのだろう。
こちらの胸の内を見透かすようなアメジストの瞳から目をそらすと、アランの腕に手をかけのびあがり抱っこをせがんできた。
無視することもできず抱いてやると、ゴロゴロと喉をならしてあごにすり寄ってくる。たったそれだけのことでアランの苛立ちは霧散した。
──まったく。と、単純なおのれに自嘲する。
昼食は予定通り中庭でとった。
執務室へ迎えにきたフィリーが「人払いは済ませてあります」と請け負い、給仕もひとりでこなしてくれた。
警護のためそばに控えるのはガレウスのみで、背中を向け彫像のように微動だにしない。
ヒロキはやはりガレウスにも「ナー!」と元気よくあいさつしたが、相手から返ってきたのはそっけない黙礼だけでまったく関心を示してこないので、それ以上そばへ行こうとはしなかった。
日差し避けの天幕を張っていたため、遠巻きに眺めるものたちの視線もあまり気にならず、アランも愛しいツガイとの食事を心から楽しむことができた。
こういう形でなら、これから毎日中庭で食事をとるのも悪くない。──そう思っていたのだが。
そんな平和な日々は長くは続かなかった。
アランに重い発情期がやってきたのである──
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