4 / 26
第1章
疑惑
しおりを挟む
───朝議の間で重臣たちが人員配置について、てんやわんやしている頃
アランは子猫に食事をとらせると、私室の居間で軽食をとった。腹ごなしに少し手にじゃれつかせて遊んでやりひと息ついていると、王専属の老医師がやってきた。
空腹が満たされ、膝の上でうとうとまどろむ子猫をソファの上におろす。
離れがたい気持ちになり、そのまま頭を撫でていると、老医師が子猫のけがの有無と健康状態をすばやく確認する。
性別はオスのオメガと断定された。それはアランもわかっていたが、気になるのは子猫があとどれくらいで成獣になるかだ。
「ツガイ様はおそらく生後6~7ヶ月ごろかと思います。人年齢に換算して約9~15さいくらいかと」
「ずいぶん開きがあるな」
「育ってきた環境と種類により個体差がありますので。ですが体はほんのひとまわり大きくなる程度で、ほぼ成獣に近いようです」
アランは目を見開いた。──こんなに小さいのに? 老医師が重々しくうなずく。
「猫というのは獣種としては小型の部類ですので、このくらいが普通です。王や騎士団長などからしたら赤子も同然でしょうが」
「発情するのはいつ頃からだ?」
「オスであられますのでまだ少し早いですが、あとふた月もすればあるいは」
「ふた月か……」
子猫は思ったより成長過程にあったが、あとふた月と言われると長く感じてしまう。いますぐにでもツガイの絆を結びたいアランとしては、毎日この可愛らしい姿を前に、はたして忍耐が持つか不安だ。
見下ろす先では、子猫が仰向けの四肢を伸ばしたばんざいのポーズでピすピす鼻をならしている。老医師につぎつぎとからだの向きを変えられても構わずに寝続けていた。
するとパチリと子猫の目が開いた。さっと起き上がり、ソファの上でソワソワしはじめる。尿意か便意をもよおしたのだろう。老医師が呼び鈴を鳴らし、外に控えていた助手を呼んだ。助手は黒ウサギの獣人だった。顔には出さなかったが猫科でないことにアランは密かに安堵した。
助手は丸く平たい桶のようなものを私室内に運びいれた。その中には砂が敷き詰められている。床に置かれたものを示し、老医師が「ツガイ様、どうぞこちらをお使いください」と言うと子猫が固まった。なにやらショックを受けているようだが気のせいだろうか。
使い方がわからないのかと思い、アランがその身を桶の中にひょいと入れてやると、子猫は素早くそこから脱出した。つかまえ再び入れようと手を伸ばすとさっと飛びのき、アランの手の届かないところまで走っていった。必死に逃げる後ろ姿が微笑ましい。
「どうした、これではいやか?」
「ミャアッ!」
憤慨したように一声鳴き、浴室につながる扉の取っ手に飛び付いた。目を見張るアランたちの前で見事に扉を開けると、すとっ、と身軽に着地しすばやく中に入っていく。また扉の開く音。
まさか、と見に行けば子猫はアランの人型用のトイレの便器のふちにすわり、用を足していた。ゆらゆら前後に揺れると、ぽちゃん、と水音がした。ふーっと満足げな子猫。アランの背後では「あぁ、そんな…」と老医師のとまどうようなつぶやき。
子猫は便器から降りるとすぐに横座りして片足をぴんと高く上げた。尻の汚れをキレイに舐めとろうとして固まる。自分のそこをのぞきこみ、なにやら尻込みしているようだ。
しばらく様子を見ていると、キョロキョロあたりを見まわし、汚れを拭き取るための紙を見つけそこに手を伸ばした。たしっと手をかけ、また固まる。猫の手ではそれをつかみ取り、汚れを拭くことなど無理な話だ。こちらを見上げ「ミー」と鳴く。うるんだアメジストの瞳を見つめながら、アランは黙って紙をつかむとそっと拭いてキレイにしてやった。その頭の中は疑問でいっぱいだった。
自分が幼獣だった頃はこんなにも自我がはっきりしていただろうか?
いくら思い出そうとしても人化できるようになる前の頃のことなど覚えていない。はじめての用足しは誰に教わったかなど些末なこと過ぎて記憶にないのだ。
子猫は森で一人きりだった。首には身元を示すためのメダリオンはなく、身よりはないものと思ったが、それはアランの願望がそう思い込ませただけで、本当はどこかで大切に育まれていたのだろうか?
あの森はたびたび騎士やアランが巡回しているが、大型の野性動物もいるし、今日のように流れ者の獣人もいる。こんなに綺麗な子猫がひとりきりで生きていける場所ではない。事実、子猫は空腹だった。自力では食料を確保できないのだ。捨てられていたのだとも考えられない。理由が思い付かないからだ。
腑に落ちないアランに老医師がそっと目配せをしてきた。内密で話があると。
水を飲んでいる子猫を残し、書斎に移動すると老医師がひそめた声で告げた。
「──ツガイ様は異世界転生者かもしれません」
聞きなれない言葉にアランは眉をひそめた。たしか──
「転生者とは、前世の記憶を保持するもの…だったか?」
「はい。…前世の記憶があるとしても、この国に生まれたものならば、自分の身元を表すメダリオンを所持しているはずです。それが無く、ある日突然この世界に姿を現すのが異世界転生者と呼ばれるものです。ツガイ様は未発達な幼獣にもかかわらず知能が高すぎますし、われわれの言葉も完全に理解しておられるようですので」
「ふむ。よくわからないのだが……仮にそうだったとして、ほかの獣人の幼獣となにが違うのだ。その異世界転生者は──」
─── もしや人化できないのか……?
この世界の獣人たちは幼獣から成獣になるとはじめて人化できるようになる。言葉が通じるようになり、人型での生活が安定すると半身となるツガイを探しだす。無事見つけて相思相愛となり、お互い発情をして体を繋げればツガイ関係が成立する。
つまり、人化できなければツガイ関係を結ぶことはできない。それがたとえ強固な結びつきを確約された《運命のツガイ》であってもだ。
アランは壁に手をつき、ぐらついた体を支えた。すがるような目で老医師を見る。まさか…
─── ツガイになれないかもしれない、のか……?
「それは…」
口にするのも恐ろしい王の問いに、老医師の顔が青ざめた。目を伏せ言いよどむ。
「…申し訳ありません。わたくしも実際にあいまみえたことはないのでこれ以上のことはわかりかねます。取り急ぎ王宮書庫にある文献を探しますので、また明日の朝議にて──」
アランは老医師のことばを遮った。
「朝議の間ではだめだ。その前にこちらに来てくれ。その時点でわかったことのみでいいから…報告を待っている」
「……かしこまりました」
書斎から居間へ戻り、子猫を見ればソファでまるくなっている。今度こそ熟睡したようだ。
老医師は子猫を起こさないよう扉をノックし助手を呼ぶと、不要である桶を持たせ急ぎ足で退出していった。
アランはため息をついてソファに腰かけた。振動にも気づかず子猫はすやすや眠っている。その小さく上下する腹から背中に指を滑らせながら物思いに耽った。
森で見つけた子猫。異世界転生。そして老医師の青ざめた顔──
アランは再び書斎へ行き、自身の書棚におさめられた本のタイトルに目を走らせる。だがそれらにまつわるようなものは無かった。かわりに紙とペンを手にして子猫のそばに戻った。考えてもわからないことに時間を無駄にはできない。できることはやっておく。まずはアランの名を刻んだメダリオンと子猫のサイズに合う首輪をいくつか用意しなければ。
明日は子猫に朝食をとらせ、老医師の報告を聞き、朝議に行く。──そのあいだ子猫はどうする?
ほかのものには極力会わせたくない。アルファは当然のこと、ツガイのいないベータもだ。アランが戻るまで子猫はひとりでおとなしく待っていられるだろうか? ──だめだ、子猫が大丈夫でもアランにはできない。そんなに長い時間離れることなど心配すぎて無理だ。世話もすべてこの手でみずからしてやりたいが、アランにも王としての責務がある。嫌でたまらないがもうひとり補助的な役割をするものが必要だ。
子猫の世話がかりについての要望をしたためる。そういえば、さきほどの老医師が従えていた黒ウサギの獣人には警戒心が働かなかった、と気づく。おそらくオメガなのだ。城内に出入りできるというのならツガイのいる発情周期の安定したオメガ……。そう、世話係はオメガにしよう。ツガイのいる身元のしっかりしたもの。もちろんオメガでも猫科でないことは第一前提だ。
乱れる心のままペンを走らせたせいでなにやらまとまりのない文章になってしまったが、清書する気になれず、書き上がったそれを急ぎザラスの元へ届けるよう警護の兵士に言いつけた。
うわのそらで子猫のそばに戻り、あたたかな腹部に顔をうずめた。青ざめた老医師の顔が脳裏に焼き付いてはなれない。
アランは嫌な予感に身を震わせた。自分と同じ石鹸のかおりを胸いっぱいに吸い込む。
老医師の報告が待ち遠しく、同時に恐ろしかった。
翌日、いっそう青ざめ憔悴したようすで老医師があらわれ、アランに一冊の本を差し出した───
アランは子猫に食事をとらせると、私室の居間で軽食をとった。腹ごなしに少し手にじゃれつかせて遊んでやりひと息ついていると、王専属の老医師がやってきた。
空腹が満たされ、膝の上でうとうとまどろむ子猫をソファの上におろす。
離れがたい気持ちになり、そのまま頭を撫でていると、老医師が子猫のけがの有無と健康状態をすばやく確認する。
性別はオスのオメガと断定された。それはアランもわかっていたが、気になるのは子猫があとどれくらいで成獣になるかだ。
「ツガイ様はおそらく生後6~7ヶ月ごろかと思います。人年齢に換算して約9~15さいくらいかと」
「ずいぶん開きがあるな」
「育ってきた環境と種類により個体差がありますので。ですが体はほんのひとまわり大きくなる程度で、ほぼ成獣に近いようです」
アランは目を見開いた。──こんなに小さいのに? 老医師が重々しくうなずく。
「猫というのは獣種としては小型の部類ですので、このくらいが普通です。王や騎士団長などからしたら赤子も同然でしょうが」
「発情するのはいつ頃からだ?」
「オスであられますのでまだ少し早いですが、あとふた月もすればあるいは」
「ふた月か……」
子猫は思ったより成長過程にあったが、あとふた月と言われると長く感じてしまう。いますぐにでもツガイの絆を結びたいアランとしては、毎日この可愛らしい姿を前に、はたして忍耐が持つか不安だ。
見下ろす先では、子猫が仰向けの四肢を伸ばしたばんざいのポーズでピすピす鼻をならしている。老医師につぎつぎとからだの向きを変えられても構わずに寝続けていた。
するとパチリと子猫の目が開いた。さっと起き上がり、ソファの上でソワソワしはじめる。尿意か便意をもよおしたのだろう。老医師が呼び鈴を鳴らし、外に控えていた助手を呼んだ。助手は黒ウサギの獣人だった。顔には出さなかったが猫科でないことにアランは密かに安堵した。
助手は丸く平たい桶のようなものを私室内に運びいれた。その中には砂が敷き詰められている。床に置かれたものを示し、老医師が「ツガイ様、どうぞこちらをお使いください」と言うと子猫が固まった。なにやらショックを受けているようだが気のせいだろうか。
使い方がわからないのかと思い、アランがその身を桶の中にひょいと入れてやると、子猫は素早くそこから脱出した。つかまえ再び入れようと手を伸ばすとさっと飛びのき、アランの手の届かないところまで走っていった。必死に逃げる後ろ姿が微笑ましい。
「どうした、これではいやか?」
「ミャアッ!」
憤慨したように一声鳴き、浴室につながる扉の取っ手に飛び付いた。目を見張るアランたちの前で見事に扉を開けると、すとっ、と身軽に着地しすばやく中に入っていく。また扉の開く音。
まさか、と見に行けば子猫はアランの人型用のトイレの便器のふちにすわり、用を足していた。ゆらゆら前後に揺れると、ぽちゃん、と水音がした。ふーっと満足げな子猫。アランの背後では「あぁ、そんな…」と老医師のとまどうようなつぶやき。
子猫は便器から降りるとすぐに横座りして片足をぴんと高く上げた。尻の汚れをキレイに舐めとろうとして固まる。自分のそこをのぞきこみ、なにやら尻込みしているようだ。
しばらく様子を見ていると、キョロキョロあたりを見まわし、汚れを拭き取るための紙を見つけそこに手を伸ばした。たしっと手をかけ、また固まる。猫の手ではそれをつかみ取り、汚れを拭くことなど無理な話だ。こちらを見上げ「ミー」と鳴く。うるんだアメジストの瞳を見つめながら、アランは黙って紙をつかむとそっと拭いてキレイにしてやった。その頭の中は疑問でいっぱいだった。
自分が幼獣だった頃はこんなにも自我がはっきりしていただろうか?
いくら思い出そうとしても人化できるようになる前の頃のことなど覚えていない。はじめての用足しは誰に教わったかなど些末なこと過ぎて記憶にないのだ。
子猫は森で一人きりだった。首には身元を示すためのメダリオンはなく、身よりはないものと思ったが、それはアランの願望がそう思い込ませただけで、本当はどこかで大切に育まれていたのだろうか?
あの森はたびたび騎士やアランが巡回しているが、大型の野性動物もいるし、今日のように流れ者の獣人もいる。こんなに綺麗な子猫がひとりきりで生きていける場所ではない。事実、子猫は空腹だった。自力では食料を確保できないのだ。捨てられていたのだとも考えられない。理由が思い付かないからだ。
腑に落ちないアランに老医師がそっと目配せをしてきた。内密で話があると。
水を飲んでいる子猫を残し、書斎に移動すると老医師がひそめた声で告げた。
「──ツガイ様は異世界転生者かもしれません」
聞きなれない言葉にアランは眉をひそめた。たしか──
「転生者とは、前世の記憶を保持するもの…だったか?」
「はい。…前世の記憶があるとしても、この国に生まれたものならば、自分の身元を表すメダリオンを所持しているはずです。それが無く、ある日突然この世界に姿を現すのが異世界転生者と呼ばれるものです。ツガイ様は未発達な幼獣にもかかわらず知能が高すぎますし、われわれの言葉も完全に理解しておられるようですので」
「ふむ。よくわからないのだが……仮にそうだったとして、ほかの獣人の幼獣となにが違うのだ。その異世界転生者は──」
─── もしや人化できないのか……?
この世界の獣人たちは幼獣から成獣になるとはじめて人化できるようになる。言葉が通じるようになり、人型での生活が安定すると半身となるツガイを探しだす。無事見つけて相思相愛となり、お互い発情をして体を繋げればツガイ関係が成立する。
つまり、人化できなければツガイ関係を結ぶことはできない。それがたとえ強固な結びつきを確約された《運命のツガイ》であってもだ。
アランは壁に手をつき、ぐらついた体を支えた。すがるような目で老医師を見る。まさか…
─── ツガイになれないかもしれない、のか……?
「それは…」
口にするのも恐ろしい王の問いに、老医師の顔が青ざめた。目を伏せ言いよどむ。
「…申し訳ありません。わたくしも実際にあいまみえたことはないのでこれ以上のことはわかりかねます。取り急ぎ王宮書庫にある文献を探しますので、また明日の朝議にて──」
アランは老医師のことばを遮った。
「朝議の間ではだめだ。その前にこちらに来てくれ。その時点でわかったことのみでいいから…報告を待っている」
「……かしこまりました」
書斎から居間へ戻り、子猫を見ればソファでまるくなっている。今度こそ熟睡したようだ。
老医師は子猫を起こさないよう扉をノックし助手を呼ぶと、不要である桶を持たせ急ぎ足で退出していった。
アランはため息をついてソファに腰かけた。振動にも気づかず子猫はすやすや眠っている。その小さく上下する腹から背中に指を滑らせながら物思いに耽った。
森で見つけた子猫。異世界転生。そして老医師の青ざめた顔──
アランは再び書斎へ行き、自身の書棚におさめられた本のタイトルに目を走らせる。だがそれらにまつわるようなものは無かった。かわりに紙とペンを手にして子猫のそばに戻った。考えてもわからないことに時間を無駄にはできない。できることはやっておく。まずはアランの名を刻んだメダリオンと子猫のサイズに合う首輪をいくつか用意しなければ。
明日は子猫に朝食をとらせ、老医師の報告を聞き、朝議に行く。──そのあいだ子猫はどうする?
ほかのものには極力会わせたくない。アルファは当然のこと、ツガイのいないベータもだ。アランが戻るまで子猫はひとりでおとなしく待っていられるだろうか? ──だめだ、子猫が大丈夫でもアランにはできない。そんなに長い時間離れることなど心配すぎて無理だ。世話もすべてこの手でみずからしてやりたいが、アランにも王としての責務がある。嫌でたまらないがもうひとり補助的な役割をするものが必要だ。
子猫の世話がかりについての要望をしたためる。そういえば、さきほどの老医師が従えていた黒ウサギの獣人には警戒心が働かなかった、と気づく。おそらくオメガなのだ。城内に出入りできるというのならツガイのいる発情周期の安定したオメガ……。そう、世話係はオメガにしよう。ツガイのいる身元のしっかりしたもの。もちろんオメガでも猫科でないことは第一前提だ。
乱れる心のままペンを走らせたせいでなにやらまとまりのない文章になってしまったが、清書する気になれず、書き上がったそれを急ぎザラスの元へ届けるよう警護の兵士に言いつけた。
うわのそらで子猫のそばに戻り、あたたかな腹部に顔をうずめた。青ざめた老医師の顔が脳裏に焼き付いてはなれない。
アランは嫌な予感に身を震わせた。自分と同じ石鹸のかおりを胸いっぱいに吸い込む。
老医師の報告が待ち遠しく、同時に恐ろしかった。
翌日、いっそう青ざめ憔悴したようすで老医師があらわれ、アランに一冊の本を差し出した───
23
お気に入りに追加
840
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる