チート能力をもらいすぎて、まともに冒険できません。

第４１話 まともに採用できません

『絶対者』……その世界において絶対的な力を持つ者に与えられる称号のような何か。これを持っている者は、本人がスゴイか、その人のパパがスゴイ。つまり生まれながらに持っていることが多い。これさえあれば、どんな無茶も押し通すことが可能。思いつきで振り回される部下の身になってほしい。バカがっ……！ 足らんわっ…… まるで……！！



「それでは定例会議を行いたいと思います」

　魔王城定例会議が始まった。
　議題の内容は『勇者現る』についてだ。
　とうとう、この世界に新たな勇者が現れたか。
　この勇者が話の分かる奴なら良いのだが……。

「勇者は即刻、殺すべきだ！」
「いや、まずは勇者を支援する人間の村を――」

　議会がヒートアップし始める。
　我はうかつに発言できない。
　この間、冗談で「人間の村を滅ぼしてこい」って言ったら、こいつら本気で滅ぼしてきたからな。
　こいつらの意見も簡単に採用するわけにもいかない。

「ええい！　では、せめて勇者の様子見だけでも！」
「魔王様！　裁可を！」

　ふむ。
　様子見か……。
　そうだな、せめて勇者がどんな奴かを見極めなければなるまい。
　じゃあ、適当な奴に――。

「おい、お前」
「ハッ！　私ですか？　私は百八柱の一人、恐怖のフレ――」
「いや、名前は別にどうでもいい」

　我が軍団は人が多すぎる。
　いちいち名前など覚えていられない。

「お前、ちょっと勇者の相手をしてこい！」
「か、畏まりました！　場合によっては倒してしまっても構いませんか？」
「好きにしろ」

　意気揚々と勇者に向かっていった。
　馬鹿め。
　そういうのはフラグと言うのだ。



　後日、半分ミンチになって送り返されてきた。
　予想した通りであったな。
　まあ、一命を取り留めていたことは褒めてやる。
　流石は百八柱の……え～と、なんだっけ？
　まあ、どうでもいいや。
　とにかく、勇者もしっかり実力はあるということか……。
　困ったな。
　脳筋でなければ良いのだが。




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魔王様への意見具申コーナー
Ｑ　魔王様、最近体の鍛錬が疎かになっているのではありませんか？　共に汗を流しませんか？

Ａ　我が魔王軍の四分の三が脳筋だぞ？　むしろ足りないのは頭の鍛錬だろ。我が頼んでおくから、死神に教授してもらえ。