14 / 49
第13話 まともに看過できません
しおりを挟む
『真実の目』……真実を見抜く目。これがあれば、どんな幻であろうと隠された嘘であろうと見抜くことができる。戦闘においては、どんな敵にも騙されない比類なき安定感を発揮する。反面、すべて見えてしまうためドッキリやサプライズが味わえない。初めから見えているため、「ああ、なんだ。そういうことか」と興ざめになる。そういう人は目を閉じて他の感覚を研ぎ澄ませてみるんだ。内なる何かが目覚め、小宇宙が爆発するかもしれない。
王都にいた俺達は比較的近くにある村が魔王の手先に襲われたという話を聞きつけ現場に急行した。
そこは――
「何にも起きてませんね?」
「平和そのものだね」
クレアやメイシャは呑気にそう言った。俺はしばらくの間呆然としていたが、気を取り直して村の中央に歩いていく。
「本当にのどかな村だな」
「子供たちが元気に走り回ってますね」
俺は吐き気を抑えながら二人の会話を聞く。人影が近づいてくる。
「おや? 旅の方? いや、勇者様ですかな?」
「あなたは?」
ギリギリのところで俺は受け答えをする。正直限界が近い。
「私はここの村長です」
「そうですか。村長、一つお願いがあるのですが……」
俺は普通にしゃべった。魔法は発動しない。どうやら効かないようだ。
「まあ、立ち話もなんですから……」
村長と名乗るものは背を向けて歩き出す。
「いえ、すぐに終わるんで」
「勇者様? いくらなんでも……」
クレアの制止も聞かず、俺は素早く剣を抜くと村長の背中に突き刺した。
「ギャアアアァァァァ!!!!」
「ちょ、勇者! 一体何してんだい!?」
メイシャは焦りの声を上げる。
しかし次の瞬間、村長だったものが段々と魔物の姿の変わっていく。
「これは!?」
クレアも驚きの声を上げる。
「グッ……!? ナゼダ……ナゼ、バレタ?」
「いいから、くたばれよ外道が!」
俺はもう一度剣を突き刺す。断末魔の叫びを上げて魔物は絶命した。
「こ、こいつは……」
メイシャの顔が青ざめていく。どうやら原因となる魔物を倒したお陰で村の風景が現実の風景に変わっていくようだ。俺には初めから見えていたが……。
「ひどい……」
目の前の風景。牧歌的な風景など微塵もなかった。
燃えさかる家々。
うず高く積み上げられた村人達の死骸。
地獄絵図がそこにはあった。
「勇者様には初めから見えていたのですね」
「ああ、どうやら俺には幻とか嘘とか通用しないらしい」
しばらく呆然としていたメイシャであったが、ふと気がついて慌てて胸を隠した。
いや、初対面の時から気付いてました。あなたの胸の嘘は。
それにしても魔王め……。
絶対許さん。
―――――――――――――――――――
女神への質問コーナー
Q 魔王は絶対許さない。
A あの……それは質問でしょうか? きっと何かがあったのですね? 女神はとっても心配です。女神は見守ることしかできません。でも、あなたがそう決めたのですから、きっと成し遂げるのでしょうね。女神はいつでも応援してます。
王都にいた俺達は比較的近くにある村が魔王の手先に襲われたという話を聞きつけ現場に急行した。
そこは――
「何にも起きてませんね?」
「平和そのものだね」
クレアやメイシャは呑気にそう言った。俺はしばらくの間呆然としていたが、気を取り直して村の中央に歩いていく。
「本当にのどかな村だな」
「子供たちが元気に走り回ってますね」
俺は吐き気を抑えながら二人の会話を聞く。人影が近づいてくる。
「おや? 旅の方? いや、勇者様ですかな?」
「あなたは?」
ギリギリのところで俺は受け答えをする。正直限界が近い。
「私はここの村長です」
「そうですか。村長、一つお願いがあるのですが……」
俺は普通にしゃべった。魔法は発動しない。どうやら効かないようだ。
「まあ、立ち話もなんですから……」
村長と名乗るものは背を向けて歩き出す。
「いえ、すぐに終わるんで」
「勇者様? いくらなんでも……」
クレアの制止も聞かず、俺は素早く剣を抜くと村長の背中に突き刺した。
「ギャアアアァァァァ!!!!」
「ちょ、勇者! 一体何してんだい!?」
メイシャは焦りの声を上げる。
しかし次の瞬間、村長だったものが段々と魔物の姿の変わっていく。
「これは!?」
クレアも驚きの声を上げる。
「グッ……!? ナゼダ……ナゼ、バレタ?」
「いいから、くたばれよ外道が!」
俺はもう一度剣を突き刺す。断末魔の叫びを上げて魔物は絶命した。
「こ、こいつは……」
メイシャの顔が青ざめていく。どうやら原因となる魔物を倒したお陰で村の風景が現実の風景に変わっていくようだ。俺には初めから見えていたが……。
「ひどい……」
目の前の風景。牧歌的な風景など微塵もなかった。
燃えさかる家々。
うず高く積み上げられた村人達の死骸。
地獄絵図がそこにはあった。
「勇者様には初めから見えていたのですね」
「ああ、どうやら俺には幻とか嘘とか通用しないらしい」
しばらく呆然としていたメイシャであったが、ふと気がついて慌てて胸を隠した。
いや、初対面の時から気付いてました。あなたの胸の嘘は。
それにしても魔王め……。
絶対許さん。
―――――――――――――――――――
女神への質問コーナー
Q 魔王は絶対許さない。
A あの……それは質問でしょうか? きっと何かがあったのですね? 女神はとっても心配です。女神は見守ることしかできません。でも、あなたがそう決めたのですから、きっと成し遂げるのでしょうね。女神はいつでも応援してます。
0
お気に入りに追加
708
あなたにおすすめの小説
婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる