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マリアンヌの世界
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ぼーっとする。
今日がいつなのかは分からない。
ただ、甘い香りのする暗い世界で私は息をしている。
ここがどこなのかも、私が何者なのかも知らない。
「アンヌ、寝れたかい?」
私の世界は目の前の男のみで構成されている。
目の前の男曰く、私はとても大きな罪を犯したらしい。
この国の皇太子殿下の大切な人を危険な目に合わした罪。
その時の記憶はない。
「なんで、私は記憶が無いの?」
そう目の前の男に聞くと、
「それだけお前は悪質な性格だったのだ。
記憶を無くせば、その性格ですらも失う。
最期の時くらい、穏やかに居られるようにする為の優しさだ。」
と切なそうに言う。
この男は私を愛していたらしい。
だからこそ、最期に私に愛をくれる。
「ねえ、今日も私といてくださる?」
何回目か分からない言葉を彼に言う。
駄目なのは分かっている。
でも、今はこの男に溺れて、不安を無くしたい。
私が何者なのかという不安も、
今後への不安も全て知らないフリして、
目の前の愛おしい人に身体を預ける。
「今日も君は綺麗だ…
君を助けられない僕を許してくれ…」
私の中に自身を埋め込みながら、
彼は悔しそうに私に言う。
彼は私の愛しい人だったらしい。
記憶が無いからそれが本当なのか嘘なのかは知らない。
だから私が喘いでいる間に厭らしくニヤついているなんて知らないし、
私を貶めている張本人なんて知らない。
この国の人たちはいい人しかいない。
私は悪者のはずなのに、
最期に愛おしい彼と居させてくれるんだから。
今日も何も考えずにずっと目の前の男を愛し続ける。
この男のモノが私の中で爆発する度に愛おしさに殺られる。
心が苦しくなる。
弾けてそのまま私もこの男の腕の中で溶けて消えれたら、いいのに。
この生活に慣れて、
ただ欲望のままに彼を求め続けてどれくらい経っただろうか?
「ついに今日ね……」
私はこの世から去るらしい。
らしいというのは実感がないから。
処刑される日らしい。
昨日苦しそうに男が言っていた。
私が意識を飛ばすまで男は最期だからと私の身体を貪り続けた。
この男とずっと居たいのにもう私はこの世から去る。
「なあ、最後にひとつだけ…」
目の前の男はいつも通りの紅い目から、
黒い目に変わって言う。
「お前が愛していると錯覚した俺は、
お前を陥れた、お前を罪人に仕立てた男だよ」
そう言うと男は…
私が忘れてた記憶の中の男のように
いやらしい笑顔を私に向けた。
あぁ…
思い出してしまった。
私は…私は………
「いやぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁあ」
今日がいつなのかは分からない。
ただ、甘い香りのする暗い世界で私は息をしている。
ここがどこなのかも、私が何者なのかも知らない。
「アンヌ、寝れたかい?」
私の世界は目の前の男のみで構成されている。
目の前の男曰く、私はとても大きな罪を犯したらしい。
この国の皇太子殿下の大切な人を危険な目に合わした罪。
その時の記憶はない。
「なんで、私は記憶が無いの?」
そう目の前の男に聞くと、
「それだけお前は悪質な性格だったのだ。
記憶を無くせば、その性格ですらも失う。
最期の時くらい、穏やかに居られるようにする為の優しさだ。」
と切なそうに言う。
この男は私を愛していたらしい。
だからこそ、最期に私に愛をくれる。
「ねえ、今日も私といてくださる?」
何回目か分からない言葉を彼に言う。
駄目なのは分かっている。
でも、今はこの男に溺れて、不安を無くしたい。
私が何者なのかという不安も、
今後への不安も全て知らないフリして、
目の前の愛おしい人に身体を預ける。
「今日も君は綺麗だ…
君を助けられない僕を許してくれ…」
私の中に自身を埋め込みながら、
彼は悔しそうに私に言う。
彼は私の愛しい人だったらしい。
記憶が無いからそれが本当なのか嘘なのかは知らない。
だから私が喘いでいる間に厭らしくニヤついているなんて知らないし、
私を貶めている張本人なんて知らない。
この国の人たちはいい人しかいない。
私は悪者のはずなのに、
最期に愛おしい彼と居させてくれるんだから。
今日も何も考えずにずっと目の前の男を愛し続ける。
この男のモノが私の中で爆発する度に愛おしさに殺られる。
心が苦しくなる。
弾けてそのまま私もこの男の腕の中で溶けて消えれたら、いいのに。
この生活に慣れて、
ただ欲望のままに彼を求め続けてどれくらい経っただろうか?
「ついに今日ね……」
私はこの世から去るらしい。
らしいというのは実感がないから。
処刑される日らしい。
昨日苦しそうに男が言っていた。
私が意識を飛ばすまで男は最期だからと私の身体を貪り続けた。
この男とずっと居たいのにもう私はこの世から去る。
「なあ、最後にひとつだけ…」
目の前の男はいつも通りの紅い目から、
黒い目に変わって言う。
「お前が愛していると錯覚した俺は、
お前を陥れた、お前を罪人に仕立てた男だよ」
そう言うと男は…
私が忘れてた記憶の中の男のように
いやらしい笑顔を私に向けた。
あぁ…
思い出してしまった。
私は…私は………
「いやぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁあ」
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