無駄な紅葉は散り濡れる.

桜夢 柚枝*さくらむ ゆえ

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悲しみに咲く

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あの日から
征人のことが頭の中から離れない。

ずっと征人の事ばかり考えている。

紅葉を咲子と呼んだあの人に会いたい。
逢いたいと泣き叫ぶ。

心が泣いている。

泣き叫んでいる。


そんなときだった

「東宮の宴で舞えといわれたのは…」

正直、
頭の中は征人のことで
いっぱいで
舞える状態ではなかった。

でも、相手は断りたくても
断ることはできない東宮だ。
舞うしかない。

どう舞えばいいのよ。
今の心で…

出てくるのは国の栄華など
関係ないただ征人を懐かしむ
そんな歌ばかりなのだ。

これでなにを歌えというのか。

どうしようもない
この気持ちも
捨てなきゃいけない。

正直どうしようもない
この気持ちさえ
捨てられれば
征人への想いも
一緒に消すことが
出来るのに…

なぜこの想いは
断ち切りたくても
断ち切れないのだろうか。

逢えなければ
逢えないほど
想いは募ってしまった。

いつのまにか、
東宮の宴の日になってしまっていた。

女房に舞台へと
案内される。

お辞儀をして
顔を上げた時だった。

東宮の隣にいた男と
目があった。

驚いた表情の愛しき人
あの人の口が
あたしの名前に
動く。

一瞬出てきた疑いは
すぐ消えた。

征人があたしを
東宮に売ろうとしたわけじゃない
征人はしらなかったんだから。



その瞬間喜びとともに
悲しみは
一層深くなる。


舞うのは
征人のため.

そう思ったら
言葉は
歌は
出てきた.


舞ひて散るもの
    悲しみに
      溺れし溺れ
        吾(わが)恋は
 寂しさ宿る
    紅葉なり
      悲しみに咲く
          紅葉なり


ねぇ、征人ならこの思い分かるよね.
でも、わからないふりしてほしい。

身勝手だってこともわかっている。
だけど、あたしの
頭の中は征人でいっぱいなんだ。

大好きの気持ちが
溢れてしまう。

だけど、それを
東宮は理解してくれなかった。

舞い終えて
最初に言った言葉に
あたしは出家を考えてしまった。

「やはり、そなたは私に必要な存在だ。
 更衣などにしよう!!」

嫌だ。

そういいたいのに
言うことは死を意味する。

「明日、父上に
 相談しにいこう。
 征人、そなたは来なくてよいからな」

そう言って東宮は
艶やかに笑みを零した。




ここで
嫌だと叫べれば
いいのに……。

あたしは
京極 咲子と
叫べればいいのに……。

そしたら、
征人と結ばれる?

馬鹿ね、
そんなことありえないのに……。


帝のところへ
連れて行かれる…
あと少しで……。

あたしは東宮のものに
されてしまう!

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