5 / 11
3
親睦会
しおりを挟む「え?!それホントに朝田さんと春日井くん?」
「いや、そんなはっきりと確認した訳じゃないけど、2人共似てたんだよな…」
「佐崎くん、朝田さんのこと大好きだし見間違いとかは無さそうよね」
「…はあ?違いますけど」
連れ添って繁華街の方へと消えて行った2人を目撃した後、火の着いていないタバコを咥えたまま呆然としている俺を見て、おせっかいの気のある同期が心配
そうに声を掛けてきた。そのまま引きずられる様にして近くの飲み屋へと連れ込まれ、事の顛末を吐かされた。
そういえば広田も誰かと約束があったんじゃないのかと尋ねてみると「乗り気じゃなかったから断ったの。佐崎くんの恋バナ聞く方が楽しいし」と返された。いやいや、そんな甘ったるくて可愛い話ではない。
「え?だってちゃんと付き合ってるのよね?」
「……うー、ん?」
「嘘でしょ?あんな真面目そうなタイプの子で遊んだら捨てる時に絶対刺されるよ」
「いやいや!別に遊びのつもりはないし、あいつも男を刺すほど依存するタイプじゃ無さそう」
「ふーーん」
運ばれてきた鶏皮を齧りながら、広田は俺の顔をじっと見つめている。表情やしぐさから本心を探ろうとする様な目付きで。こういう時の女の尋問は本当に苦手だ。誤魔化す様にグラスを傾けて視線を逸らした。
アルコールが回ったせいもあり、思考が鈍って何か余計な事まで口走ってしまうかもしれない。解散を切り出すタイミングを企んでいると、スマホを弄っていた広田が「あ」と声を上げた。
「なに?」
「…朝田さん、今春日井くんと2人で飲んでるんだって」
「…どういうこと?」
「いや、いつも偉そうな佐崎くんが確認出来ずにウジウジしてるからさ、私が善意で朝田さんに聞いてあげただけ」
「なんて?」
「『今何してる?まだ会社の近くにいるならご飯行かない?』って」
「そしたら?」
「『すいません、今春日井くんと飲んでます』って返ってきた」
「……マジかよ」
やっぱり見間違いでは無かったのか。そして俺をドタキャンしておいて春日井と飲みに行っている、と。何だそれは。流石にキレそう。いや、怒りよりも悲しいかもしれない。大きなため息をついて黙り込む俺に、広田は同情の目で次々と冷めた焼き鳥を差し出してくる。食欲は全く無いので、可哀想だと思うなら逆にそれ全部食べてくれよ。
「あ!!」
「…うるさい。俺もう帰っていい?」
「いや、何か誘われたけど。朝田さんに。『良ければ広田さんも一緒に飲みませんか?』って」
「何だそれ。どういう飲み会だよ」
「うーん。もしかしたら朝田さん、深く考えて無いんじゃない?多分。私行こっかな。朝田さんと春日井くんの方」
「何しに行くんだよ。余計な事言うなよ」
「分かってるよ!佐崎くんが落ち込んでたとか一切言わない。ただ後輩達と親睦を深めてくるよ」
広田はサッとテーブルを片付けると、料理が残った皿をこちらにグイグイと押し付け「勿体ないから残さないでね~」と笑って五千円を置いて店から出て行ってしまった。
本当に行くんかよ。え、俺は?
それでもパサついてしまった肉に罪は無いので、空になったグラスを横目に、何とか酒で流し込もうと呼び出しボタンを押した。
2
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

練習なのに、とろけてしまいました
あさぎ
恋愛
ちょっとオタクな吉住瞳子(よしずみとうこ)は漫画やゲームが大好き。ある日、漫画動画を創作している友人から意外なお願いをされ引き受けると、なぜか会社のイケメン上司・小野田主任が現れびっくり。友人のお願いにうまく応えることができない瞳子を主任が手ずから教えこんでいく。
「だんだんいやらしくなってきたな」「お前の声、すごくそそられる……」主任の手が止まらない。まさかこんな練習になるなんて。瞳子はどこまでも甘く淫らにとかされていく
※※※〈本編12話+番外編1話〉※※※
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~
伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華
結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空
幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。
割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。
思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。
二人の結婚生活は一体どうなる?

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる