12 / 12
エピローグ
しおりを挟む
『春男元気にしてるっぺ?』
「ああ母ちゃんか、オラ元気にしてるよ。父ちゃんはどうしてるだ?」
『父ちゃんは相変わらず酒飲んで寝て、食っちゃ寝て、ちょっと働いて酒飲んでるべよ。今年のキャベツの収穫も間もなく終わるもんだから気楽なもんだべよ』
「ははっ、そりゃー父ちゃんらしいな」
久しぶりの故郷の母からの電話に、春男は照れ臭さを感じる。
『そう言えば母ちゃん最近ゲームソフト買ったっぺよ』
「ゲームソフト? ああ、そう言えば母ちゃんゲーマーだもんな。面白かったっぺ?」
『それがびっくりしちまったのよ。なんだかあんたにそっくりなブサカワっちゅうのかね? 瓶底メガネの太った四男坊が出てきてさ、あんれまーこんなキワモノキャラ出しちまってどうしちまったんだべさ、と思ったって事』
「そりゃーさぞかしイケメンだったんだべな。母ちゃんえがったなぁ」
『それが全然良くながったのよ!』
母の語尾がキレ気味だったので春男はギョッとする。
春男の母は大のBL好きだ。呪いの藁人形の様な見た目の割に美しいものが好きで、美しいものには目がない。
『初回特典プロダクトコード付きの限定版買ったっぺよ! 14800円。通常版は5900円だもんでさ期待してたんだけんど……』
「けんど?」
『震える手で特設サイトの入力画面からコード入力したらさ、びっくらこいちまって。何が起こっだと思う?』
「わからねぇ」
春男の母である春子は呆れた様に言い放った。
『四男坊の屁の音が聞けるっちゅう特典だったのよ。母ちゃんアーヴァイン様の裸体でも拝めるんじゃないかと思って期待してたのにびっくらこいちまった。本当ふざけてるよな、プレイしてなかったら返品してきてぇぐらいだっぺよ』
「母ちゃん、そりゃー災難だったなー」
春男はまさか自分がその放屁に関わっているとは夢にも思っていない様子で春子に同情する。
『まぁ、ハッピーエンドだったから良かったんだけどね。でもやっぱり美しくなきゃダメだべよ。侯爵家シリーズの次回作はもう買わないかもしれねぇ』
「そんな事があると仕方ないべな」
春子はまだ不満をぶつけたそうだったが、春男はお客が来ているからと告げて電話を切った。
リビングに戻るとそこには見慣れた人物達が美味しそうに鶏ガラちゃんを啜っていた。
「あら、マールちゃんお電話は終わったの。この鶏ガラちゃんって言う食べ物は癖になるお味ねー」
「マールよ、お代わりをもらっていいか?」
座布団に座りなれない様子のバーバラとハミルトンは、窮屈そうに身を寄せ合っている。
「お代わりさっきもあげたと思うんすけども……そんないっぺー食われたらオラの分なくなっちまう」
「マールよ、硬い事言わずに父上にお代わりをお願い申す」
何処で覚えたのか座布団の上で正座をしたアーヴァインが春男に頭を下げる。
「いいな親父だけ、俺もお代わり!」
「……あ、ボクも」
釣られてお願いするカッツアとリバースに向って
「これで最後っすからね。全くもう」
と春男は台所に向かう。戸棚から鶏ガラちゃんを3っつ取り出してお湯を沸かしていると何やら楽しそうな談笑が聞こえてくる。
「それにしてもマールは随分とこじんまりとした屋敷に住んでいるんだな。辺境伯のお屋敷より更に小さいぞ」
「でも、あなたマールちゃんが自立しようと頑張っているのだから邪魔してはダメよ」
「それもそうだな」
ワハハッ、と楽しそうな笑い声を上げながら各々好き放題に喋っている。
春男はそれを聞きながら、苦笑する。
本当はまたこの人達に会えて嬉しいと思っている自分がいる。
無事ハッピーエンドを迎え眩い光に包まれたその後、気づくと春男は自室に倒れていた。鶏ガラちゃんのスープは少し温くなっていたものの、まだかすかに蒸気を上げていた。
それにしても不思議な夢だったと春男は思ったが、何事もなかったかの様に日常の生活に戻った。
忙しく警備の仕事に精を出す春男にある日【プレゼント】と印字されたハガキが届く。
【侯爵家の秘め事をクリアーされましたお客様へ】と題されたハガキにはプロダクトコードが記載されていた。
春男は不思議に思いながらも記載されていたURLにアクセスしてプロダクトコードを入力した。
しばらくしてパソコンの画面が暗転したかと思うと光を放ち、パソコンの画面から5人が飛び出してきた。春男は度肝を抜かれ固まってしまったが、その5人が夢の中で出会った人達だと気付いた瞬間安堵した。
久しぶりの再会に驚き今に至る。
出来上がった鶏ガラちゃんを持ってリビングに戻ると、5人が満面の笑みで迎えてくれる。
春男は鶏ガラちゃんをテーブルに置くと、自分の眼鏡が曇っている事に気づく。
それが、鶏ガラちゃんが放つ湯気によるものなのか、瓶底メガネ越しの自分の瞳から流れた涙が蒸発したものなのか春男は自分でも良く解らない。
ただ一つ言えるのは、この人達の事が凄く好きなんだという事を春男は胸の奥で実感していた。
fin
「ああ母ちゃんか、オラ元気にしてるよ。父ちゃんはどうしてるだ?」
『父ちゃんは相変わらず酒飲んで寝て、食っちゃ寝て、ちょっと働いて酒飲んでるべよ。今年のキャベツの収穫も間もなく終わるもんだから気楽なもんだべよ』
「ははっ、そりゃー父ちゃんらしいな」
久しぶりの故郷の母からの電話に、春男は照れ臭さを感じる。
『そう言えば母ちゃん最近ゲームソフト買ったっぺよ』
「ゲームソフト? ああ、そう言えば母ちゃんゲーマーだもんな。面白かったっぺ?」
『それがびっくりしちまったのよ。なんだかあんたにそっくりなブサカワっちゅうのかね? 瓶底メガネの太った四男坊が出てきてさ、あんれまーこんなキワモノキャラ出しちまってどうしちまったんだべさ、と思ったって事』
「そりゃーさぞかしイケメンだったんだべな。母ちゃんえがったなぁ」
『それが全然良くながったのよ!』
母の語尾がキレ気味だったので春男はギョッとする。
春男の母は大のBL好きだ。呪いの藁人形の様な見た目の割に美しいものが好きで、美しいものには目がない。
『初回特典プロダクトコード付きの限定版買ったっぺよ! 14800円。通常版は5900円だもんでさ期待してたんだけんど……』
「けんど?」
『震える手で特設サイトの入力画面からコード入力したらさ、びっくらこいちまって。何が起こっだと思う?』
「わからねぇ」
春男の母である春子は呆れた様に言い放った。
『四男坊の屁の音が聞けるっちゅう特典だったのよ。母ちゃんアーヴァイン様の裸体でも拝めるんじゃないかと思って期待してたのにびっくらこいちまった。本当ふざけてるよな、プレイしてなかったら返品してきてぇぐらいだっぺよ』
「母ちゃん、そりゃー災難だったなー」
春男はまさか自分がその放屁に関わっているとは夢にも思っていない様子で春子に同情する。
『まぁ、ハッピーエンドだったから良かったんだけどね。でもやっぱり美しくなきゃダメだべよ。侯爵家シリーズの次回作はもう買わないかもしれねぇ』
「そんな事があると仕方ないべな」
春子はまだ不満をぶつけたそうだったが、春男はお客が来ているからと告げて電話を切った。
リビングに戻るとそこには見慣れた人物達が美味しそうに鶏ガラちゃんを啜っていた。
「あら、マールちゃんお電話は終わったの。この鶏ガラちゃんって言う食べ物は癖になるお味ねー」
「マールよ、お代わりをもらっていいか?」
座布団に座りなれない様子のバーバラとハミルトンは、窮屈そうに身を寄せ合っている。
「お代わりさっきもあげたと思うんすけども……そんないっぺー食われたらオラの分なくなっちまう」
「マールよ、硬い事言わずに父上にお代わりをお願い申す」
何処で覚えたのか座布団の上で正座をしたアーヴァインが春男に頭を下げる。
「いいな親父だけ、俺もお代わり!」
「……あ、ボクも」
釣られてお願いするカッツアとリバースに向って
「これで最後っすからね。全くもう」
と春男は台所に向かう。戸棚から鶏ガラちゃんを3っつ取り出してお湯を沸かしていると何やら楽しそうな談笑が聞こえてくる。
「それにしてもマールは随分とこじんまりとした屋敷に住んでいるんだな。辺境伯のお屋敷より更に小さいぞ」
「でも、あなたマールちゃんが自立しようと頑張っているのだから邪魔してはダメよ」
「それもそうだな」
ワハハッ、と楽しそうな笑い声を上げながら各々好き放題に喋っている。
春男はそれを聞きながら、苦笑する。
本当はまたこの人達に会えて嬉しいと思っている自分がいる。
無事ハッピーエンドを迎え眩い光に包まれたその後、気づくと春男は自室に倒れていた。鶏ガラちゃんのスープは少し温くなっていたものの、まだかすかに蒸気を上げていた。
それにしても不思議な夢だったと春男は思ったが、何事もなかったかの様に日常の生活に戻った。
忙しく警備の仕事に精を出す春男にある日【プレゼント】と印字されたハガキが届く。
【侯爵家の秘め事をクリアーされましたお客様へ】と題されたハガキにはプロダクトコードが記載されていた。
春男は不思議に思いながらも記載されていたURLにアクセスしてプロダクトコードを入力した。
しばらくしてパソコンの画面が暗転したかと思うと光を放ち、パソコンの画面から5人が飛び出してきた。春男は度肝を抜かれ固まってしまったが、その5人が夢の中で出会った人達だと気付いた瞬間安堵した。
久しぶりの再会に驚き今に至る。
出来上がった鶏ガラちゃんを持ってリビングに戻ると、5人が満面の笑みで迎えてくれる。
春男は鶏ガラちゃんをテーブルに置くと、自分の眼鏡が曇っている事に気づく。
それが、鶏ガラちゃんが放つ湯気によるものなのか、瓶底メガネ越しの自分の瞳から流れた涙が蒸発したものなのか春男は自分でも良く解らない。
ただ一つ言えるのは、この人達の事が凄く好きなんだという事を春男は胸の奥で実感していた。
fin
2
お気に入りに追加
69
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい
パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け
★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です
X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載


イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる