瓶底メガネデブが人気BLゲーム【侯爵家の秘め事】の愛され四男に!?

ぴよこ合唱団

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エピローグ

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『春男元気にしてるっぺ?』
「ああ母ちゃんか、オラ元気にしてるよ。父ちゃんはどうしてるだ?」
『父ちゃんは相変わらず酒飲んで寝て、食っちゃ寝て、ちょっと働いて酒飲んでるべよ。今年のキャベツの収穫も間もなく終わるもんだから気楽なもんだべよ』
「ははっ、そりゃー父ちゃんらしいな」
 
 久しぶりの故郷の母からの電話に、春男は照れ臭さを感じる。

『そう言えば母ちゃん最近ゲームソフト買ったっぺよ』
「ゲームソフト? ああ、そう言えば母ちゃんゲーマーだもんな。面白かったっぺ?」
『それがびっくりしちまったのよ。なんだかあんたにそっくりなブサカワっちゅうのかね? 瓶底メガネの太った四男坊が出てきてさ、あんれまーこんなキワモノキャラ出しちまってどうしちまったんだべさ、と思ったって事』
「そりゃーさぞかしイケメンだったんだべな。母ちゃんえがったなぁ」
『それが全然良くながったのよ!』

 母の語尾がキレ気味だったので春男はギョッとする。
 春男の母は大のBL好きだ。呪いの藁人形の様な見た目の割に美しいものが好きで、美しいものには目がない。

『初回特典プロダクトコード付きの限定版買ったっぺよ! 14800円。通常版は5900円だもんでさ期待してたんだけんど……』
「けんど?」
『震える手で特設サイトの入力画面からコード入力したらさ、びっくらこいちまって。何が起こっだと思う?』
「わからねぇ」

 春男の母である春子は呆れた様に言い放った。

『四男坊の屁の音が聞けるっちゅう特典だったのよ。母ちゃんアーヴァイン様の裸体でも拝めるんじゃないかと思って期待してたのにびっくらこいちまった。本当ふざけてるよな、プレイしてなかったら返品してきてぇぐらいだっぺよ』
「母ちゃん、そりゃー災難だったなー」

 春男はまさか自分がその放屁に関わっているとは夢にも思っていない様子で春子に同情する。

『まぁ、ハッピーエンドだったから良かったんだけどね。でもやっぱり美しくなきゃダメだべよ。侯爵家シリーズの次回作はもう買わないかもしれねぇ』
「そんな事があると仕方ないべな」

 春子はまだ不満をぶつけたそうだったが、春男はお客が来ているからと告げて電話を切った。
 
 リビングに戻るとそこには見慣れた人物達が美味しそうに鶏ガラちゃんを啜っていた。

「あら、マールちゃんお電話は終わったの。この鶏ガラちゃんって言う食べ物は癖になるお味ねー」
「マールよ、お代わりをもらっていいか?」

 座布団に座りなれない様子のバーバラとハミルトンは、窮屈そうに身を寄せ合っている。

「お代わりさっきもあげたと思うんすけども……そんないっぺー食われたらオラの分なくなっちまう」
「マールよ、硬い事言わずに父上にお代わりをお願い申す」

 何処で覚えたのか座布団の上で正座をしたアーヴァインが春男に頭を下げる。

「いいな親父だけ、俺もお代わり!」
「……あ、ボクも」
 
 釣られてお願いするカッツアとリバースに向って

「これで最後っすからね。全くもう」

 と春男は台所に向かう。戸棚から鶏ガラちゃんを3っつ取り出してお湯を沸かしていると何やら楽しそうな談笑が聞こえてくる。

「それにしてもマールは随分とこじんまりとした屋敷に住んでいるんだな。辺境伯のお屋敷より更に小さいぞ」
「でも、あなたマールちゃんが自立しようと頑張っているのだから邪魔してはダメよ」
「それもそうだな」

 ワハハッ、と楽しそうな笑い声を上げながら各々好き放題に喋っている。
 春男はそれを聞きながら、苦笑する。
 本当はまたこの人達に会えて嬉しいと思っている自分がいる。

 無事ハッピーエンドを迎え眩い光に包まれたその後、気づくと春男は自室に倒れていた。鶏ガラちゃんのスープは少し温くなっていたものの、まだかすかに蒸気を上げていた。

 それにしても不思議な夢だったと春男は思ったが、何事もなかったかの様に日常の生活に戻った。
 
 忙しく警備の仕事に精を出す春男にある日【プレゼント】と印字されたハガキが届く。

 【侯爵家の秘め事をクリアーされましたお客様へ】と題されたハガキにはプロダクトコードが記載されていた。
 
 春男は不思議に思いながらも記載されていたURLにアクセスしてプロダクトコードを入力した。

 しばらくしてパソコンの画面が暗転したかと思うと光を放ち、パソコンの画面から5人が飛び出してきた。春男は度肝を抜かれ固まってしまったが、その5人が夢の中で出会った人達だと気付いた瞬間安堵した。

 久しぶりの再会に驚き今に至る。

 出来上がった鶏ガラちゃんを持ってリビングに戻ると、5人が満面の笑みで迎えてくれる。
 
 春男は鶏ガラちゃんをテーブルに置くと、自分の眼鏡が曇っている事に気づく。

 それが、鶏ガラちゃんが放つ湯気によるものなのか、瓶底メガネ越しの自分の瞳から流れた涙が蒸発したものなのか春男は自分でも良く解らない。

 ただ一つ言えるのは、この人達の事が凄く好きなんだという事を春男は胸の奥で実感していた。

 fin
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