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7. あんた、よく解らなねぇけんどもその高飛車な態度気にくわねぇ!
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「それではマール、私達は王都の病院に行ってくる。くれぐれも留守を頼んだぞ」
モトグリフ家の家主であるハミルトン・モトグリフのお願いに春男は気まずそうに答える。
「いやー、何かえれぇーすんません。オラ頭に血が上ると自分を抑えられなくなる闘牛タイプっちゅうか、怪我させちまったみてぇで」
それを優雅な表情で聞いていたバーバラがすかさず諭す。
「マールちゃんは何も悪くないのよ、私達がいけないの。私達の隠蔽体質が生んだ悲劇なのよ。だからどうか自分を責めないで頂戴」
「そ、そうっすか。そう言ってもらえてオラほっと一安心ですよ」
優雅に春男を諭すバーバラの顔面には、手形の青アザがくっきりと張り付いている。透き通る様な白い肌故に、被害を受けた他の4人よりも顕著だ。
「母上の言う通りだ。マールは気にせず屋敷で気楽に過ごしていなさい」
「土産には肉を飼ってくるぜ!」
「ありがてぇす。楽しみにしてるっすよ!」
美しい相貌を優しく細め微笑みながら春男を気遣うアーヴァイン。その隣のカッツアも春男の好物を土産にしようという優しさがある。
そんな二人の高く美しい鼻の穴には、鼻の穴の大きさに裁断された布が詰まっている。その様子から一晩明けても鼻血が止まらないのではないかという疑問が浮上する。
「……マール行ってくるよ」
「おいっす。気を付けるっすよ」
リバースは恥ずかしそうに春男に声をかける。昨夜春男から受けた張り手の応酬によりモトグリフ家の人々は傷を負った。だが、それが功を奏し負傷して呂律が回らない状態だったが家族会議が行われたのであった。
家族皆の一致でマールを仲間外れにしない。どんな事があっても話し合い問題と向き合うと固く誓い合ったのだ。その一部始終を修羅の表情で聞いていた春男は草食動物の様な優しい目に戻り、モトグリフ家の人々と握手を交わしたのだ。
リバースも昨日までとは違う穏やかな表情になっていた。自ら春男に声かけするその姿に春男に対する敵意はない。
モトグリフ一家を見送った春男は寝室でひと眠りしようかと欠伸をする。
ぶわぁー、と獣の雄たけびの様な欠伸をした春男に使用人のクロークが声をかける。
「マール様来客なのですが、どうしましょう……」
玄関口をそっと閉め、困った様な表情を浮かべるクロークに春男が言う。
「どうするも何も、お客様なら対応するのが普通っしょ。大丈夫っすよオラが対応しますから」
「いや、でも……」
「どうしたんすか?」
口ごもるクロークに、促す様に春男が尋ねる。クロークは苦虫を嚙み潰した様な表情で言う。
「それが、いらっしゃったのはマリーお嬢様なのですよ……」
☆
「ねぇ、家畜。アーヴァイン様は何処にいるの。わざわざこのワタクシがいらっしゃって差し上げたのよ。お茶の一つで帰すつもり?」
当然の如く玄関を押し開けて堂々と屋敷に入ってきたその令嬢は、貴族界隈でいわくつきの人物だった。影で悪役令嬢と噂される彼女の名は、マリー・シュヴァルツ。モトグリフ家に次ぐ大富豪であるシュヴァルツ家は、この辺り一帯の農場を所有する農場主だ。
この世界で獲れる農産物の50%以上はシュバルツ家の所有する畑で獲れたものである。
農場主と聞くと素朴で柔らかい雰囲気を連想するかもしれないが、シュヴァルツ家は引退した農場主の農地を安く買い上げ富を築いた一族である。
中には維持費用がかかる農地を所有するだけ無駄だと諭され、タダ同然で農地を引き渡した農場主もいる。
そんな強引なやり方で名を上げたシュヴァルツ家の令嬢であるマリーもまた、その強引な気質を受け継いでいた。
「ねぇ、聞こえてるの家畜。あんたのその汗臭そうな体見てるだけで吐き気がするわ。本当にアーヴァイン様の弟なの?」
高そうな羽扇子で自身を扇ぎ、見下した様な表情で春男に言い放つ。春男はそれを黙って聞いている様に見えたが内心はらわたが煮えくり返りそうになっていた。
「あんた、よく解らなねぇけんどもその高飛車な態度気にくわねぇ!」
「はっ、あんたワタクシが誰だかご存じよね?」
「オラ知らねぇ!」
知らないと言い放つ春男を、マリーは小馬鹿にする様に鼻で笑う。
「シュヴァルツ家の嫡女の、マリー・シュヴァルツよ。家畜、あんた私を敵に回したらどうなるか解ってるの?」
口元が歪むその笑い方にマリーの醜悪さが見て取れる様だと春男は思う。
今対峙しているこの相手が、春男を恐怖のどん底に突き落とす可能性があるという事を春男はこの時まだ知らずにいた。
モトグリフ家の家主であるハミルトン・モトグリフのお願いに春男は気まずそうに答える。
「いやー、何かえれぇーすんません。オラ頭に血が上ると自分を抑えられなくなる闘牛タイプっちゅうか、怪我させちまったみてぇで」
それを優雅な表情で聞いていたバーバラがすかさず諭す。
「マールちゃんは何も悪くないのよ、私達がいけないの。私達の隠蔽体質が生んだ悲劇なのよ。だからどうか自分を責めないで頂戴」
「そ、そうっすか。そう言ってもらえてオラほっと一安心ですよ」
優雅に春男を諭すバーバラの顔面には、手形の青アザがくっきりと張り付いている。透き通る様な白い肌故に、被害を受けた他の4人よりも顕著だ。
「母上の言う通りだ。マールは気にせず屋敷で気楽に過ごしていなさい」
「土産には肉を飼ってくるぜ!」
「ありがてぇす。楽しみにしてるっすよ!」
美しい相貌を優しく細め微笑みながら春男を気遣うアーヴァイン。その隣のカッツアも春男の好物を土産にしようという優しさがある。
そんな二人の高く美しい鼻の穴には、鼻の穴の大きさに裁断された布が詰まっている。その様子から一晩明けても鼻血が止まらないのではないかという疑問が浮上する。
「……マール行ってくるよ」
「おいっす。気を付けるっすよ」
リバースは恥ずかしそうに春男に声をかける。昨夜春男から受けた張り手の応酬によりモトグリフ家の人々は傷を負った。だが、それが功を奏し負傷して呂律が回らない状態だったが家族会議が行われたのであった。
家族皆の一致でマールを仲間外れにしない。どんな事があっても話し合い問題と向き合うと固く誓い合ったのだ。その一部始終を修羅の表情で聞いていた春男は草食動物の様な優しい目に戻り、モトグリフ家の人々と握手を交わしたのだ。
リバースも昨日までとは違う穏やかな表情になっていた。自ら春男に声かけするその姿に春男に対する敵意はない。
モトグリフ一家を見送った春男は寝室でひと眠りしようかと欠伸をする。
ぶわぁー、と獣の雄たけびの様な欠伸をした春男に使用人のクロークが声をかける。
「マール様来客なのですが、どうしましょう……」
玄関口をそっと閉め、困った様な表情を浮かべるクロークに春男が言う。
「どうするも何も、お客様なら対応するのが普通っしょ。大丈夫っすよオラが対応しますから」
「いや、でも……」
「どうしたんすか?」
口ごもるクロークに、促す様に春男が尋ねる。クロークは苦虫を嚙み潰した様な表情で言う。
「それが、いらっしゃったのはマリーお嬢様なのですよ……」
☆
「ねぇ、家畜。アーヴァイン様は何処にいるの。わざわざこのワタクシがいらっしゃって差し上げたのよ。お茶の一つで帰すつもり?」
当然の如く玄関を押し開けて堂々と屋敷に入ってきたその令嬢は、貴族界隈でいわくつきの人物だった。影で悪役令嬢と噂される彼女の名は、マリー・シュヴァルツ。モトグリフ家に次ぐ大富豪であるシュヴァルツ家は、この辺り一帯の農場を所有する農場主だ。
この世界で獲れる農産物の50%以上はシュバルツ家の所有する畑で獲れたものである。
農場主と聞くと素朴で柔らかい雰囲気を連想するかもしれないが、シュヴァルツ家は引退した農場主の農地を安く買い上げ富を築いた一族である。
中には維持費用がかかる農地を所有するだけ無駄だと諭され、タダ同然で農地を引き渡した農場主もいる。
そんな強引なやり方で名を上げたシュヴァルツ家の令嬢であるマリーもまた、その強引な気質を受け継いでいた。
「ねぇ、聞こえてるの家畜。あんたのその汗臭そうな体見てるだけで吐き気がするわ。本当にアーヴァイン様の弟なの?」
高そうな羽扇子で自身を扇ぎ、見下した様な表情で春男に言い放つ。春男はそれを黙って聞いている様に見えたが内心はらわたが煮えくり返りそうになっていた。
「あんた、よく解らなねぇけんどもその高飛車な態度気にくわねぇ!」
「はっ、あんたワタクシが誰だかご存じよね?」
「オラ知らねぇ!」
知らないと言い放つ春男を、マリーは小馬鹿にする様に鼻で笑う。
「シュヴァルツ家の嫡女の、マリー・シュヴァルツよ。家畜、あんた私を敵に回したらどうなるか解ってるの?」
口元が歪むその笑い方にマリーの醜悪さが見て取れる様だと春男は思う。
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