瓶底メガネデブが人気BLゲーム【侯爵家の秘め事】の愛され四男に!?

ぴよこ合唱団

文字の大きさ
上 下
2 / 12

1. じ、時間さ止まっちまったべさ!

しおりを挟む
「あ、いてぇ!!」

 ドスンッ、と鈍い音と立てて春男は派手に尻もちをつく。
 打ち付けたプリンとした肉厚な尻の周りには、一瞬だがいくつもの星が登場しその衝撃を物語る。
 
 春男は打ち付けた尻を撫でながら辺りを見回し息を飲む。

 豪華なシャンデリアにロココ調の椅子や机などのアンティーク家具が並べられたその広い部屋は、貴族達がアフタヌーンンティーを楽しむような優雅な雰囲気の佇まいだった。

「なんだが、外国に来ちまったみてぇだべさ」

 尻を摩りながら立ち上がる春男を、恍惚とした表情で見ている美しい青年がいた。
 モトグリフ家嫡男のアーヴァイン・モトグリフである。

「会いにきてくれたのだな、愛する弟よ」

 程よく筋肉のついた長い腕を目一杯に伸ばし、185センチの長身のアーヴァインが春男にゆっくりと近づいてくる。
 その所作は、まるでダンスを踊っているように華麗で美しいのだが、身長170センチの春男にしてみれば長身の男が迫ってくるその様は恐怖であった。

 春男は痛む尻を押さえながら後ずさる。

「いや、なんすか。なんなんすか。こっち来ないでくだせぇよー」

 後ずさる春男をよそに、アーヴァインがじりじりと間合いを詰める。
 春男の団子鼻を白く透き通った指で小突くと、抱きしめる。

 春男の鼻に、アーヴァインの香水の匂いが届く。春に咲く花のような生命力に満ち溢れた匂いに、春男は少し戸惑いを感じる。

(……なんだか、小せぇ時に父ちゃんに抱きしめてもらった時を思い出すな)

「懐かしいな、この感触。肉厚で柔らかい。そして発酵した酵母の様な匂い。間違いなくマールだ」
「いや、俺はマールなんて名前じゃねぇんですよ。春男です春男」
「ハルオ?」

 アーヴァインが眉間に皺をよせ訝しむ。
 しかし、すぐに表情を緩め

「家を出ている間に、寂しさから記憶がおかしくなってしまったのだな。可哀想に……」
 
 と、憂いを帯びた瞳で一人納得する。
 そして、アーヴァインは優雅な笑みを浮かべて言い放つ。

「マールよ、おっぱいを揉ませてくれぬか?」
「え、いや、ちょ、えぇぇ!? ど、どうゆう事っすか!? なんでここで、【おっぱい】が出てくるんですか!?」

 驚いている春男をよそに突如、けたたましいアラーム音が聞こえてくる。

 ――バッドエンドルート分岐に差し掛かりました。アーヴァインからのおっぱい催促を受けますか?

 突如聞こえてくる無機質な電子音声に、春男はビクッと体を震わせる。
 そして何より驚いたのが、目の前のアーヴァインがおっぱいを揉もうとしている仕草のまま固まっているのである。

「んぇぇぇ! じ、時間さ止まっちまったべさ!」

 時間が止まった事に驚く春男に追い打ちをかけるかの様に、春男の目の前に【はい】【いいえ】の文字が浮かび上がる。

「ほんと、何が起こっちまったのか、さっぱり理解が追いつかねぇ」

 ――はい、いいえ、どちらを選択されますか。選択される方をタッチして下さい。

「いや、そんな事急に言われても、おらホルスタイン乳牛じゃねぇもんで、おっぱいなんて揉まれてもこまるべさ。はんずかしいもんそんなの」

 と春男は必至の抵抗をする。

 ――では、おっぱいを揉ませる気はないのですね。いいえ、をタッチして下さい。

「そりゃ、揉ます気なんてありませんよ。男のおっぱい触ったって、ミルクさ、出ねぇですからね。はいはい、いいえね。解りましたタッチすればえがったのね」

 春男は電子音の言う通りに【いいえ】を選択する。
 止まっていた時間が動き出す。
 アーヴァインは乳モミポーズをしている手を元に戻し、捨て犬のように項垂れた。

「揉ませてもらえぬのか、残念だ……。またの機会にお願いする事にしよう」
「いや、またの機会とかねぇっすから!」

 春男がホッと一息つくと、先ほどの電子音声が

――バッドエンドルート回避しました。

 と、告げたのであった。
 春男は気づいていないが、無意識にバッドエンドルートを回避している。

 もしアーヴァインに少しでもおっぱいを揉ませてしまった場合アーヴァインが発情し、春男はモトグリフ家の倉庫になっている地下室に連れていかれ、一晩中おっぱいを揉まれ凌辱されるというバッドエンドになっていた。
 
 春男は無自覚にバッドエンドを回避したのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ヤバい薬、飲んじゃいました。

はちのす
BL
変な薬を飲んだら、皆が俺に惚れてしまった?!迫る無数の手を回避しながら元に戻るまで奮闘する話********イケメン(複数)×平凡※性描写は予告なく入ります。 作者の頭がおかしい短編です。IQを2にしてお読み下さい。 ※色々すっ飛ばしてイチャイチャさせたかったが為の産物です。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

騎士は魔王に囚われお客様の酒の肴に差し出される

ミクリ21
BL
騎士が酒の肴にいやらしいことをされる話。

処理中です...