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case4 ~漁師町の雪女~ ―other side― #3
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「…また話が脱線したから戻しますけど、今の俺達にとって先決なのは姉ちゃんの信頼を得る事…そのためには、もっと内面に踏み込んでいく必要があるって事っス。」
「内面に踏み込む…ったって、そりゃ無理な話だべ?特便内ではプライベートな質問なんて出来ねえし、外で話そうにも条例違反になっちまうだ。」
「そう...そこなんスよね・・・。」
閉鎖的で男だらけなこの町にやって来る清掃員の女なんてのは、ハイエナの群れのド真ん中に放り込まれる生肉みてえなモンだ――。そんな状態じゃあ、姉ちゃんが無事では済まないことも、多くの血が流れることも容易に想像された…。そこで自治会によって制定されたのが【○△町清掃員不可侵条例】だ。
"清掃員"不可侵条例とあるように、全ての清掃員を保護する目的で作られた条例だが、この町の清掃員は「姉ちゃん」一人であるため、実質姉ちゃんの為だけに作られた条例と言える。
その内容は主に特便外での男側からの姉ちゃんへの接触を抑止するもので、特別な用事がある場合を除き、俺達は話しかける事も必要以上に近づく事も出来ない。その他にも多くの決まりが存在し、違反者には罰金が課せられるそうだが・・・その裏では、拷問を受けたり…遥か北の海へカニ漁に行かされる…なんて噂もあるが、真偽は定かではない・・・。
「中では法律、外では条例で守られてて、俺達の付け入る隙は全くねぇ。まさにガードの固てえ女って感じだべ・・・。」
「…まあ、本人はそんなつもりはないんでしょうけどね。」
「・・・知り合いの女に協力してもらって、色々訊いてもらうのはどうだ・・・?」
「…悪くねえアイデアだが、お前...女の知り合いなんて居るのか?」
「・・・オラは居ねえだ・・・」
「居ねえのかよ!…ゲンさんは居ないんスか?」
「そりゃあ…俺だって居ねえだよ…。
んじゃあ、そういうお前はどうなんだよ!」
「いや…俺っちも居ないっスけど…。」
「全滅じゃねえかっ!ていうかタツ!おめぇはそんだけチャラチャラしてんだから、せめて女友達の一人くれぇ居ろよ!!」
「どんな理屈っスか!」
「・・・自分で言い出しといて何だが・・・この町の人間には、オラ達が姉ちゃんの情報を集めてる事は、あまり知られない方がいいんじゃないだか・・・?」
「確かにそうだべ…。情報を集める事自体に関しては条例じゃあ明言されてねえけんども、姉ちゃんとお近づきになろうとしてる…なんて事が知れれば、何をされるか分かったもんじゃねえだ…。」
「それなら外部の人間から情報を募るのはどうっスか?あんだけ綺麗な姉ちゃんが掃女だったってんなら、他に知ってる奴が居ても何もおかしくはねえっスよ。」
「いんや、それは条例違反だーよ。」
「へ...?そんな規則ありましたっけ?」
「ほら、ここの禁則事項の最後の方にあんべ?
"甲(○△町に籍を置く清掃員)について、その所在,個人情報,外見的特徴等を、SNSや匿名掲示板を用いて拡散する行為"ってよ。」
「ホントだ・・・。
ゲンさんって馬鹿の割に、変に細かいトコばっか見てたりしますよね…。」
「おめぇはいちいち一言余計だ!」
「・・・所在,個人情報は何となく分かるが・・・外見的特徴って何だ・・・?」
「そりゃあ...俺っちがやろうとしてたみたいに、『謎のSS級美人掃女が○△町に居る』…なんて書き込んだら、こんな辺境の地にまで足を運ぶような物好きも居るからじゃねえの?」
「・・・なるほど・・・」
「しかし、まあ...改めて見ると禁則事項ってメチャクチャ細かく決められてるんスね。あんまり細かいから、とにかく姉ちゃんには近づいたら駄目!くらいに覚えてましたよ…。」
「実際、ほとんどの奴がそんくれぇの認識だと思うだよ。」
「この..."甲の居住地より半径20メートル以内に住所を持たない乙(○△町に籍を置く満18歳以上の男性)の、特別な理由のない場合における当該エリアへの5分以上の滞在"…なんて、誰がどうやって判断するんスか・・・。」
「そういう判断が難しかったり、場合によっちゃあ守ることがほぼ不可能なルールについては、本人にその気が無けりゃ、注意だけで済んだり見逃されるケースが殆どらしいぞ。」
「そういやゲンさんの親父さんって自治会役員なんでしたっけ?それでやけにその辺の事情に詳しいんスね…。」
「まあな。だが、俺達みてぇに"その気"がある人間が『禁』に触れちまうと1発アウトだ。それは役員だろうがその家族だろうが、妻子持ちの既婚者だろうが例外はねえ。ライバルを少しでも減らす為に、目ぇ光らせてる連中だってわんさか居るんだ...迂闊なことはしねぇ方が身のためだべさ。」
「ひぇ~...おっかねーっスねえ…。」
そう・・・これがこの町の現状だ。姉ちゃんを狙ってる男は山のように居るが、条例に縛られている限りは特便の一利用者の域を出ることはない。自分が手を出せない以上、他の誰にも抜け駆けはさせまい…と互いが互いを監視し、少しでも怪しい動きや条例に違反する行為をすれば即密告・・・そんな極度の膠着状態がここ一年は続いている。
…だが、条例の最後にはこうも記載されている―――。
"甲に対して身体的及びに精神的な充足感を与える能力を持ち、尚且つ、甲が特便外での自身へ接近を認めた乙については、本条例の適応外となる。"・・・と。
つまり…俺たちは姉ちゃんを絶頂へと導き、本人から認めてもらうことで初めて、姉ちゃんにアプローチする権利を得ることが出来るのだ―――。
「内面に踏み込む…ったって、そりゃ無理な話だべ?特便内ではプライベートな質問なんて出来ねえし、外で話そうにも条例違反になっちまうだ。」
「そう...そこなんスよね・・・。」
閉鎖的で男だらけなこの町にやって来る清掃員の女なんてのは、ハイエナの群れのド真ん中に放り込まれる生肉みてえなモンだ――。そんな状態じゃあ、姉ちゃんが無事では済まないことも、多くの血が流れることも容易に想像された…。そこで自治会によって制定されたのが【○△町清掃員不可侵条例】だ。
"清掃員"不可侵条例とあるように、全ての清掃員を保護する目的で作られた条例だが、この町の清掃員は「姉ちゃん」一人であるため、実質姉ちゃんの為だけに作られた条例と言える。
その内容は主に特便外での男側からの姉ちゃんへの接触を抑止するもので、特別な用事がある場合を除き、俺達は話しかける事も必要以上に近づく事も出来ない。その他にも多くの決まりが存在し、違反者には罰金が課せられるそうだが・・・その裏では、拷問を受けたり…遥か北の海へカニ漁に行かされる…なんて噂もあるが、真偽は定かではない・・・。
「中では法律、外では条例で守られてて、俺達の付け入る隙は全くねぇ。まさにガードの固てえ女って感じだべ・・・。」
「…まあ、本人はそんなつもりはないんでしょうけどね。」
「・・・知り合いの女に協力してもらって、色々訊いてもらうのはどうだ・・・?」
「…悪くねえアイデアだが、お前...女の知り合いなんて居るのか?」
「・・・オラは居ねえだ・・・」
「居ねえのかよ!…ゲンさんは居ないんスか?」
「そりゃあ…俺だって居ねえだよ…。
んじゃあ、そういうお前はどうなんだよ!」
「いや…俺っちも居ないっスけど…。」
「全滅じゃねえかっ!ていうかタツ!おめぇはそんだけチャラチャラしてんだから、せめて女友達の一人くれぇ居ろよ!!」
「どんな理屈っスか!」
「・・・自分で言い出しといて何だが・・・この町の人間には、オラ達が姉ちゃんの情報を集めてる事は、あまり知られない方がいいんじゃないだか・・・?」
「確かにそうだべ…。情報を集める事自体に関しては条例じゃあ明言されてねえけんども、姉ちゃんとお近づきになろうとしてる…なんて事が知れれば、何をされるか分かったもんじゃねえだ…。」
「それなら外部の人間から情報を募るのはどうっスか?あんだけ綺麗な姉ちゃんが掃女だったってんなら、他に知ってる奴が居ても何もおかしくはねえっスよ。」
「いんや、それは条例違反だーよ。」
「へ...?そんな規則ありましたっけ?」
「ほら、ここの禁則事項の最後の方にあんべ?
"甲(○△町に籍を置く清掃員)について、その所在,個人情報,外見的特徴等を、SNSや匿名掲示板を用いて拡散する行為"ってよ。」
「ホントだ・・・。
ゲンさんって馬鹿の割に、変に細かいトコばっか見てたりしますよね…。」
「おめぇはいちいち一言余計だ!」
「・・・所在,個人情報は何となく分かるが・・・外見的特徴って何だ・・・?」
「そりゃあ...俺っちがやろうとしてたみたいに、『謎のSS級美人掃女が○△町に居る』…なんて書き込んだら、こんな辺境の地にまで足を運ぶような物好きも居るからじゃねえの?」
「・・・なるほど・・・」
「しかし、まあ...改めて見ると禁則事項ってメチャクチャ細かく決められてるんスね。あんまり細かいから、とにかく姉ちゃんには近づいたら駄目!くらいに覚えてましたよ…。」
「実際、ほとんどの奴がそんくれぇの認識だと思うだよ。」
「この..."甲の居住地より半径20メートル以内に住所を持たない乙(○△町に籍を置く満18歳以上の男性)の、特別な理由のない場合における当該エリアへの5分以上の滞在"…なんて、誰がどうやって判断するんスか・・・。」
「そういう判断が難しかったり、場合によっちゃあ守ることがほぼ不可能なルールについては、本人にその気が無けりゃ、注意だけで済んだり見逃されるケースが殆どらしいぞ。」
「そういやゲンさんの親父さんって自治会役員なんでしたっけ?それでやけにその辺の事情に詳しいんスね…。」
「まあな。だが、俺達みてぇに"その気"がある人間が『禁』に触れちまうと1発アウトだ。それは役員だろうがその家族だろうが、妻子持ちの既婚者だろうが例外はねえ。ライバルを少しでも減らす為に、目ぇ光らせてる連中だってわんさか居るんだ...迂闊なことはしねぇ方が身のためだべさ。」
「ひぇ~...おっかねーっスねえ…。」
そう・・・これがこの町の現状だ。姉ちゃんを狙ってる男は山のように居るが、条例に縛られている限りは特便の一利用者の域を出ることはない。自分が手を出せない以上、他の誰にも抜け駆けはさせまい…と互いが互いを監視し、少しでも怪しい動きや条例に違反する行為をすれば即密告・・・そんな極度の膠着状態がここ一年は続いている。
…だが、条例の最後にはこうも記載されている―――。
"甲に対して身体的及びに精神的な充足感を与える能力を持ち、尚且つ、甲が特便外での自身へ接近を認めた乙については、本条例の適応外となる。"・・・と。
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