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16. ヒビ割れ
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翌朝――。カーテン越しでも分かるほど、強烈な日差しで目を覚ます。
(うぅ...眩し…。
――ん?眩しい・・・?)
慌てて飛び起き、時間を確認すると既に7時40分をまわっていた。
(ヤバっ・・・学校遅れる。急いで準備しないと…)
隣には千夜子の姿はなかった。時間的にはもう一人で、菓子パンなりシリアルなり何かしら食べている頃かもしれない。
「ごめん、遅くなった・・・って…?」
キッチンに入ると香ばしい匂いが漂ってきた。食卓にはトースターで焼かれた食パン数枚と、ジャム,はちみつ,マーガリンが並べてあった。
「おはよー、おにぃ。…今のわたしじゃ、こんなものしか用意出来ないけど…よかったら食べて。」
「ああ…。えっと...母さんは?」
「まだ寝てる。わたしはもう食べ終わったし、これから起こしてくるからおにぃは食べてて。」
「そうだ!洗濯…」
「回しといたよ。後は干すだけ。」
「そっか...ありがとう。それじゃあ僕干してくるよ。」
「大丈夫。わたしが干しておくから、それ食べてて。」
「でも…。」
「いいから食べろ。」
「ハイ・・・」
甘えることも覚えるとは言ったが…早速、小学生の妹に甘えることになってしまった…。
(これじゃあ…千夜子の中の【責任感があって頼りになる"お兄ちゃん"像】は、もう崩れ始めているのかもしれないな。
いや...そんなもの初めから無かったのかもしれないけど――。)
慌ただしい朝が過ぎ、学校もいつの間にか終わっており、気付いた頃には帰りの通学路を一人で歩いていた。
(あーあ...期末テストまで残り一週間もないっていうのに、全然集中出来なかったなぁ…。同じクラスの向田さんにも、「ずっと虚空を見つめてたよ。」って心配されたし…自分が思ってる以上に疲れてるのかもしれないな。)
「……や~。おい、夕也!」
バシッ―――。
突然背中を叩かれる。
「おお・・・っ!!ビックリした...って、なんだ翔か…。」
(ああ…そっか。今はテスト期間中で、大体どの部活も休みなんだっけ…。)
「俺で悪かったな。…で、随分と真剣に考え込んでたみたいだけど、どうしたんだ?」
「ん…?まあ、テストの事とかいろいろな…。」
「いろいろって、他には?」
「え…?んー...母さんの事とか…夕飯の献立とか…?」
「・・・お前、ホントに大丈夫か?」
「大丈夫・・・って、何が?」
「何って、そりゃ...千夜子ちゃんの事だよ!昨日、俺と二人っきりで出掛けたばっかだっていうのに…」
「ああ、それな…。ツッコミ待ちだったのか、すまんすまん…。
・・・で、もしかしてなんかした?なら○すけど。」
「いや、雑っ!こんなのシスコンのお前らしくもない…。相当疲れてるんじゃないのか?」
「失礼な!僕の千夜子を想う気持ちは、ちょっとやそっと疲れたくらいじゃ雑になんかなったりしないぞ!」
「ムキになるとこおかしくね!? シスコンを否定しろよ!!」
「・・・・・・。
ちょっとは元気出た?」
「・・・うん、ありがとな。
…ちょっと...いや、だいぶコテコテだったけど。」
「うるせえ。」
茜さんや千夜子はともかく…向田さんや、あの翔にさえも心配されてしまった…。
(・・・やっぱり、あの頃の母さんみたいにはいかないな…。)
僕だってまだ大人じゃない。誰にも心配かけずに一人で頑張るだなんて、子供の僕には最初から無理な話だったんだ。
いや…そんなこと、きっとオトナだって無理だ。だからこそ母さんは事故に遭ってしまった――。
無理は無理だから無理なんだ。そんなことを続けていると…必ずどこかで、無理矢理にでも皺寄せがくる。
(うぅ...眩し…。
――ん?眩しい・・・?)
慌てて飛び起き、時間を確認すると既に7時40分をまわっていた。
(ヤバっ・・・学校遅れる。急いで準備しないと…)
隣には千夜子の姿はなかった。時間的にはもう一人で、菓子パンなりシリアルなり何かしら食べている頃かもしれない。
「ごめん、遅くなった・・・って…?」
キッチンに入ると香ばしい匂いが漂ってきた。食卓にはトースターで焼かれた食パン数枚と、ジャム,はちみつ,マーガリンが並べてあった。
「おはよー、おにぃ。…今のわたしじゃ、こんなものしか用意出来ないけど…よかったら食べて。」
「ああ…。えっと...母さんは?」
「まだ寝てる。わたしはもう食べ終わったし、これから起こしてくるからおにぃは食べてて。」
「そうだ!洗濯…」
「回しといたよ。後は干すだけ。」
「そっか...ありがとう。それじゃあ僕干してくるよ。」
「大丈夫。わたしが干しておくから、それ食べてて。」
「でも…。」
「いいから食べろ。」
「ハイ・・・」
甘えることも覚えるとは言ったが…早速、小学生の妹に甘えることになってしまった…。
(これじゃあ…千夜子の中の【責任感があって頼りになる"お兄ちゃん"像】は、もう崩れ始めているのかもしれないな。
いや...そんなもの初めから無かったのかもしれないけど――。)
慌ただしい朝が過ぎ、学校もいつの間にか終わっており、気付いた頃には帰りの通学路を一人で歩いていた。
(あーあ...期末テストまで残り一週間もないっていうのに、全然集中出来なかったなぁ…。同じクラスの向田さんにも、「ずっと虚空を見つめてたよ。」って心配されたし…自分が思ってる以上に疲れてるのかもしれないな。)
「……や~。おい、夕也!」
バシッ―――。
突然背中を叩かれる。
「おお・・・っ!!ビックリした...って、なんだ翔か…。」
(ああ…そっか。今はテスト期間中で、大体どの部活も休みなんだっけ…。)
「俺で悪かったな。…で、随分と真剣に考え込んでたみたいだけど、どうしたんだ?」
「ん…?まあ、テストの事とかいろいろな…。」
「いろいろって、他には?」
「え…?んー...母さんの事とか…夕飯の献立とか…?」
「・・・お前、ホントに大丈夫か?」
「大丈夫・・・って、何が?」
「何って、そりゃ...千夜子ちゃんの事だよ!昨日、俺と二人っきりで出掛けたばっかだっていうのに…」
「ああ、それな…。ツッコミ待ちだったのか、すまんすまん…。
・・・で、もしかしてなんかした?なら○すけど。」
「いや、雑っ!こんなのシスコンのお前らしくもない…。相当疲れてるんじゃないのか?」
「失礼な!僕の千夜子を想う気持ちは、ちょっとやそっと疲れたくらいじゃ雑になんかなったりしないぞ!」
「ムキになるとこおかしくね!? シスコンを否定しろよ!!」
「・・・・・・。
ちょっとは元気出た?」
「・・・うん、ありがとな。
…ちょっと...いや、だいぶコテコテだったけど。」
「うるせえ。」
茜さんや千夜子はともかく…向田さんや、あの翔にさえも心配されてしまった…。
(・・・やっぱり、あの頃の母さんみたいにはいかないな…。)
僕だってまだ大人じゃない。誰にも心配かけずに一人で頑張るだなんて、子供の僕には最初から無理な話だったんだ。
いや…そんなこと、きっとオトナだって無理だ。だからこそ母さんは事故に遭ってしまった――。
無理は無理だから無理なんだ。そんなことを続けていると…必ずどこかで、無理矢理にでも皺寄せがくる。
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