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6. 買い物

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 時刻は17時55分――エコバッグ片手に、西日を背に受けながら近所のスーパーへと向かう。ちなみに今は帽子を被っていない。この時間帯であれば日もいい感じに傾いて、僕のような日陰者でも日光浴を楽しむことが可能だ。人体はビタミンDを生成するのに日光を浴びる必要があるなんて話も聞くし…苦手だからといって毛嫌いばかりせず、浴びれる時には存分に浴びておくのがいいだろう。


 スーパーに到着し、少し肌寒いくらいの店内を順路に沿って回っていく。
 青果(野菜・果物)のコーナーは、特に何か作る予定のない時は基本的には素通りだが、軽く水洗いするだけでそのまま使えるカット野菜は便利なのでよく買っている。数種類の野菜がミックスされた千切りキャベツとお目当ての豆腐を2丁、ついでに普段より少し安くなっていた納豆をカゴに入れて先へ進む。
 鮮魚・精肉のコーナーでは特売品だけチェックして、料理初心者の僕でも使いやすそうなものなら取り敢えず買っておく。青果類と比べると、冷凍しておけば長期保存が出来る分、使いどころが無くて腐らせてしまう…なんてことが少ないのが魅力だ。豚の細切れ肉をカゴに入れ、ここで脇に逸れて菓子類のコーナーへ向かう。
 ウチは一家全員甘党である。中でもチョコレートには目がない。そのため、物心ついたときには既に、家には常にチョコレートが置いてある生活が当たり前になっていた。ファミリーサイズのチョコレート1袋と、安さの割に質の良い――1箱12粒入りで約100円のホワイトチョコをカゴに入れて順路へと戻る。
 総菜売り場には特に用はないので素通りする。家事を始めたての頃は、タイムセールで割引されたものを選んで買ったりもしていたが、慣れてきてからは余程楽をしたい時以外には使わなくなった。
 途中の乾麺,缶詰,レトルト食品等の商品棚に立ち寄り、を幾らか買い足しておく。"保険"というのは、朝起きられずに時間がなかったり、どうしようもない位にやる気が起きないときなんかに重宝する、言わば非常食だ。今日みたいに、朝は早めに起きられ、それなりにやる気のある日ならば、皆の朝食と合わせて母の昼食まで準備する余裕もあるが…なかなか毎日そう上手くはいかないのが現実だ。少なくとも今の僕には難しく、改めて母の偉大さを痛感する日々を送っている…。ドライフルーツ入りのグラノーラ、レトルトパウチの牛丼の具、これからの季節に嬉しいそうめんをカゴに入れて先へ進む。
 最後にパンコーナーをグルっと一周見て回る。菓子パン類は、朝ごはんの保険やおやつ、小腹が空いたときの軽食としても使える万能品だ。消費期限の迫った割引品を買うことが多いが、大抵一日も経てば誰かしらが食べ切るので、そこはあまり関係ない。プライベートブランドの食パン、割引シールの貼られたクリームパンとジャムパンをカゴに入れ、レジへと向かう――。
 
 余談だが、米や2Lサイズの水,ボトル飲料等、重めの商品は基本的にスーパーでは買わない。家まで運ぶのが大変だから…というのもあるが、そもそも買う必要がない。
 …というのも、父方の実家は兼業で米農家をしているため、連絡を寄越せば精米済みの状態で送ってもらえるのだ。本当に有難い限りである…。
 嗜好品としてのジュース類は買うことがあっても、飲み水に関しては浄水器があるのでそれで事足りる。お茶やコーヒー、スポーツドリンク等もティーバッグや粉末タイプのものを買っているので、わざわざ重い荷物を持って家まで歩く必要はない。正に浄水器様様である。

 会計を済ませ、買ったものをエコバッグに詰めていく。
 豆腐,千切りキャベツ,豚肉の細切れ,納豆,レトルト牛丼,そうめん,グラノーラ,食パン,菓子パンにチョコレート――こうして改めて買ったものを見てみると、主婦(/夫)というよりは一人暮らしの大学生や社会人といった感じだ。
 母から受け継いだこの買い物袋が、以前の母のような洗練されたものになるのは、一体いつのことだろうか…。
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