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第四章『ボタン』
第111話 頭を使ってほしい
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「シロ達はまだかかりそうだし……もう少し訓練しようか」
「キュル」
ハクヤを撫でつつ、一応とスキルを確認してみれば、【神速】がレベル2になっていた。
あれだけ動けてレベル2って……レベルが上がったらどうなっちゃんだろう……。
「んー、じゃあ次は、攻撃を受ける練習をしよっかー。さっきのは回避重視だったからねー」
「キュル」
「今度は動かないようにしてねー。私がハクヤに向けて鞘を振るから、それをしっかり受け流すように。ちゃんと手加減するけど、失敗したら吹っ飛ぶくらいの力は入れるからね?」
「キュ、キュル!」
一瞬怖じ気づいたみたいに固まりつつも、ハクヤは気合いを入れるように鳴く。
まあ攻撃を受けるのも受け流すのも初めてだろうし、最初は優しくやろうかな。
「じゃ、いくよー。ほいっ」
「キュルッ」
「ほいほい」
「ッ、キュルル!」
軽く振った鞘を、ハクヤはハサミを動かし弾く。
連続で振り下ろせば、対応できなかった攻撃は、尻尾で流していた。
ふむ、ちょっと甘いかなー。
「ハクヤ、ハサミで受けるの大変でしょ?」
「キュル……」
「受け流す時っていうのは、基本的に“流れを変えてやる”ことを意識してね。弾くと弾いた分だけの衝撃が返ってきちゃうし、それは次の動作に影響が出ちゃうよね? だから、弾くんじゃなくて、流すの」
「キュルル……」
分かりやすいように説明したつもりだったけど、ハクヤにはピンとこなかったみたいで、尻尾が少し落ちぎみだった。
そこで私は、ちょうど一試合終わったらしいケートにお願いして、石を魔法で打ち出してもらうことに。
「いくぜー。『ロックショット』」
「ほいっ」
私の顔めがけてまっすぐに打ち出された石の塊を、私は素手で軌道を逸らす。
結果、石の塊は頭の右上を通過し、少し後ろの方へと落ちていった。
ま、これくらいなら容易いね。
「ハクヤ、分かった?」
「キュル!」
「んじゃ、やってみよっかー」
「キュルル!」
□
side.ケート
セツナに撃った魔法は、あまり魔力を込めてないにしても、触れれば肌を抉り取るくらいの威力は込めていた。
それをこともなしに……しかも素手で逸らしてみせるセツナに、私は内心“相変わらずめちゃくちゃだにゃー”と呆れてしまう。
まあ、もう慣れたけどもさー。
「さて、シロちゃん。どうするかにゃ?」
「もう一度、お願いします。あと少しでなにかが掴めそうなのです」
「ふむ」
決闘システムの中の模擬戦なだけに、全損したHPも使ったMPも、模擬戦が終われば回復している。
しかし実際に連戦すれば、やはり何かしらの疲労がたまるのか……シロちゃんは肩で息をしていた。
ま、ここいらで一度休憩かにゃ。
「りょーかいにゃ。ただ、少し休憩しようぜー」
「いえ、大丈夫です。HPも全快していますので……」
「だーめにゃ。私も少し疲れたからにゃ、ちょっと休憩させてもらうぜー」
「え、あ、はい」
案の定聞き入れてくれなかったシロちゃんに、私はわざとらしいくらいに疲れたアピールをして、どかっと地面に座り込む。
正直言えば、これっぽっち疲れてはないんだけど、こういう失敗はループするし、ループすればするだけ後からトラウマみたいに襲いかかってくるのだ。
だからこそ、ここは泥を被ってでも無理矢理断ち切るのが正解だぜー。
「実際、シロちゃんの動きは良くなってきてると思うにゃ。もう少しで捉えられそうになった瞬間も多々あったぜ」
「ありがとうございます……しかし、まだ手が届いていないのが事実ですから」
「だにゃー。でも、そこをいきなりどうにかするってのは無謀というか、無理だと思うぜー。そんなに簡単にクリアできる試練を出してくるとは思わないからにゃー」
「そう、なのでしょうか……」
少し納得いかないって顔をしてるし、実際の気持ちとしては『うるさいわ、ぼけー』みたいな気持ちなのかもしれない。
もちろんシロちゃんがそんな言葉を使うとは思えないけど……この子、心アマゾネスだし、理屈で無理って言っても折れなさそうなんだよねー。
しかし、そこはまあ、やり方次第だにゃ。
「シロちゃんは三本の矢の教えって知ってるかにゃ?」
「え、えっと、ことわざ……ですよね?」
「ま、そんなところだにゃ。実際にはそんなこと言ってないとかなんとかあるけど、まあそこは置いといてにゃ。一本の矢だと容易く折れるけど、三本まとめればなかなか折れない。つまり、目的を達成するためには色んなものの協力があってこそ、って話だぜ」
「はい。……ですが、それが今回とどんな関係が……?」
「頭が固いにゃー。要は、今シロちゃんは試練を越えるために、せっせと一本の矢を磨きあげてるだけってことだぜー」
それはつまり、実際の試練で届かなかったら、またゼロから始めなきゃいけなくなるってこと。
あまりにも効率が悪いにゃー。
セツナは感覚特化タイプだから、失敗したらしたで何かを得られるから問題ない! みたいな感じに考えてそうだし、シロちゃんもそんなタイプな気がするにゃー。
……戦闘民族っていうよりも、ただの脳筋の可能性もあるかもしれないにゃ。
-----
名前:セツナ
所持金:102,040リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
テイム:ブラックスコーピオン(幼体)『ハクヤ』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
「キュル」
ハクヤを撫でつつ、一応とスキルを確認してみれば、【神速】がレベル2になっていた。
あれだけ動けてレベル2って……レベルが上がったらどうなっちゃんだろう……。
「んー、じゃあ次は、攻撃を受ける練習をしよっかー。さっきのは回避重視だったからねー」
「キュル」
「今度は動かないようにしてねー。私がハクヤに向けて鞘を振るから、それをしっかり受け流すように。ちゃんと手加減するけど、失敗したら吹っ飛ぶくらいの力は入れるからね?」
「キュ、キュル!」
一瞬怖じ気づいたみたいに固まりつつも、ハクヤは気合いを入れるように鳴く。
まあ攻撃を受けるのも受け流すのも初めてだろうし、最初は優しくやろうかな。
「じゃ、いくよー。ほいっ」
「キュルッ」
「ほいほい」
「ッ、キュルル!」
軽く振った鞘を、ハクヤはハサミを動かし弾く。
連続で振り下ろせば、対応できなかった攻撃は、尻尾で流していた。
ふむ、ちょっと甘いかなー。
「ハクヤ、ハサミで受けるの大変でしょ?」
「キュル……」
「受け流す時っていうのは、基本的に“流れを変えてやる”ことを意識してね。弾くと弾いた分だけの衝撃が返ってきちゃうし、それは次の動作に影響が出ちゃうよね? だから、弾くんじゃなくて、流すの」
「キュルル……」
分かりやすいように説明したつもりだったけど、ハクヤにはピンとこなかったみたいで、尻尾が少し落ちぎみだった。
そこで私は、ちょうど一試合終わったらしいケートにお願いして、石を魔法で打ち出してもらうことに。
「いくぜー。『ロックショット』」
「ほいっ」
私の顔めがけてまっすぐに打ち出された石の塊を、私は素手で軌道を逸らす。
結果、石の塊は頭の右上を通過し、少し後ろの方へと落ちていった。
ま、これくらいなら容易いね。
「ハクヤ、分かった?」
「キュル!」
「んじゃ、やってみよっかー」
「キュルル!」
□
side.ケート
セツナに撃った魔法は、あまり魔力を込めてないにしても、触れれば肌を抉り取るくらいの威力は込めていた。
それをこともなしに……しかも素手で逸らしてみせるセツナに、私は内心“相変わらずめちゃくちゃだにゃー”と呆れてしまう。
まあ、もう慣れたけどもさー。
「さて、シロちゃん。どうするかにゃ?」
「もう一度、お願いします。あと少しでなにかが掴めそうなのです」
「ふむ」
決闘システムの中の模擬戦なだけに、全損したHPも使ったMPも、模擬戦が終われば回復している。
しかし実際に連戦すれば、やはり何かしらの疲労がたまるのか……シロちゃんは肩で息をしていた。
ま、ここいらで一度休憩かにゃ。
「りょーかいにゃ。ただ、少し休憩しようぜー」
「いえ、大丈夫です。HPも全快していますので……」
「だーめにゃ。私も少し疲れたからにゃ、ちょっと休憩させてもらうぜー」
「え、あ、はい」
案の定聞き入れてくれなかったシロちゃんに、私はわざとらしいくらいに疲れたアピールをして、どかっと地面に座り込む。
正直言えば、これっぽっち疲れてはないんだけど、こういう失敗はループするし、ループすればするだけ後からトラウマみたいに襲いかかってくるのだ。
だからこそ、ここは泥を被ってでも無理矢理断ち切るのが正解だぜー。
「実際、シロちゃんの動きは良くなってきてると思うにゃ。もう少しで捉えられそうになった瞬間も多々あったぜ」
「ありがとうございます……しかし、まだ手が届いていないのが事実ですから」
「だにゃー。でも、そこをいきなりどうにかするってのは無謀というか、無理だと思うぜー。そんなに簡単にクリアできる試練を出してくるとは思わないからにゃー」
「そう、なのでしょうか……」
少し納得いかないって顔をしてるし、実際の気持ちとしては『うるさいわ、ぼけー』みたいな気持ちなのかもしれない。
もちろんシロちゃんがそんな言葉を使うとは思えないけど……この子、心アマゾネスだし、理屈で無理って言っても折れなさそうなんだよねー。
しかし、そこはまあ、やり方次第だにゃ。
「シロちゃんは三本の矢の教えって知ってるかにゃ?」
「え、えっと、ことわざ……ですよね?」
「ま、そんなところだにゃ。実際にはそんなこと言ってないとかなんとかあるけど、まあそこは置いといてにゃ。一本の矢だと容易く折れるけど、三本まとめればなかなか折れない。つまり、目的を達成するためには色んなものの協力があってこそ、って話だぜ」
「はい。……ですが、それが今回とどんな関係が……?」
「頭が固いにゃー。要は、今シロちゃんは試練を越えるために、せっせと一本の矢を磨きあげてるだけってことだぜー」
それはつまり、実際の試練で届かなかったら、またゼロから始めなきゃいけなくなるってこと。
あまりにも効率が悪いにゃー。
セツナは感覚特化タイプだから、失敗したらしたで何かを得られるから問題ない! みたいな感じに考えてそうだし、シロちゃんもそんなタイプな気がするにゃー。
……戦闘民族っていうよりも、ただの脳筋の可能性もあるかもしれないにゃ。
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名前:セツナ
所持金:102,040リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
テイム:ブラックスコーピオン(幼体)『ハクヤ』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
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