また、つまらぬものを斬ってしまった……で、よかったっけ? ~ 女の子達による『Freelife Frontier』 攻略記

一色 遥

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第四章『ボタン』

中二病患者と初心者

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「次は自分の番っスね! まだまだ少ないっスけど、どれも面白いと思うっスよ!」

 スキルに面白いっていう表現はどうかと思うんだけど……。
 まあ、本人が納得してるなら良いかー。

――――――――

 名前:ナイン

 所持スキル:【弓術Lv.15】【影走術Lv.12】【低燃費Lv.13】【複合化Lv.10】【希薄Lv.8】

――――――――

「……これ、なんなの?」

「見事に変なスキルしか持ってないにゃー。レアスキルなのに、【影走術】が霞むレベルにゃ……」

「ナイン様、これらはどういったスキルなのですか?」

「あ、私も気になるかな。名前からだとよく分かんないし」

 シロの問いに乗っかる形で、私もナインにそう伝える。
 するとナインは「そうっスよねぇ……」と苦笑いを浮かべ、「んじゃ、説明するっスよ」と紅茶を軽く口に含んだ。

「【低燃費】はMPの消費を抑えられるスキルっス。【影走術】は消費MPが多いっスから、めちゃくちゃ相性が良いんスよ。【複合化】はモノとモノと合体させるスキルっス。合成と違って、ふたつのものを見た目がひとつのものにするスキルっスね」

「……えっと、それってどういうこと?」

「あー、やってみた方が分かりやすいっスね。ちょっと見てて欲しいっス」

 そう言ってナインはアイテムボックスから二本の矢を取り出す。
 そして、「【複合化】」と短く宣言すると……手に持っていた矢が融合し……さっきまでと同じ見た目の一本の矢になった。
 ……えっと?

「手に取って、元の矢と同じものと見比べて欲しいっス」

「どれどれ……ん?」

「なるほどにゃー。見た目は一本で、効果は二本の矢になってるのかー」

「そうっス! だからこの矢で敵を撃つと……二本分のダメージが入るって感じっス」

 つまり単純に考えて、威力が二倍になるということ。
 ただ、元々二本の矢だったことを考えれば、消費が減ったわけでもなく……使える状況は限定的になるかな?
 まあ、ナインの【影走術】とはかなり相性が良さそうだけど。

 影に潜んで、相手の死角から【複合化】した矢で射貫く。
 完全に一撃必殺の暗殺者スタイルだ。

「えげつない戦い方にゃ」

「うん。すごい卑怯だと思う」

「ナイン様……」

「な、なんで責められてるっスか!?」

 そりゃ、戦い方が卑怯だからだと思う。

「まあ良いっス。最後の【希薄】は、薄くなるスキルっス。気配はもちろん、周囲のモノの存在も薄くするっス」

「……卑怯だにゃー」

「正々堂々戦うっていう考えは無いの?」

「ナイン様……」

 もうなんか、ナインの株がどんどん下がっていく。
 なんだ、ナインは暗殺者になりたいのか?

「なんにせよ、ナイン君は暗殺者ってことが分かって良かったにゃ。黒づくめの装備だから、中二病患者まっしぐらだしにゃ」

「できれば一緒に歩きたくないタイプだよねー」

「ひ、ひどいっスよ!?」

「ナイン様、わたくしは気にしておりませんので……」

 わめくナインを、シロが横からなだめる。
 そんなシロに「ありがとうっス……」と、ナインは珍しくしみじみとした声でお礼を言っていた。

「そんなわけで、最後はシロちゃんだにゃー」

「はい。……こちらになります」

「えーっと……?」

――――――――

 名前:シロ

 所持スキル:【薙刀術Lv.8】【戦陣Lv.4】【天候予測Lv.4】

――――――――

 うん、まだ始めたばっかりって感じだねー。

「【薙刀術】と【天候予測】は分かるけど、【戦陣】ってどんなスキルなの?」

「【戦陣】は、近接武器の間合いの中であれば、気配察知が強く働くようになるスキルです。間合い内の感覚強化、と言われておりました」

「なるほどにゃー。薙刀なら間合いも広いし、相性は良さそうなスキルだぜ」

「はい。このスキルのおかげで、相手の攻撃を捌きやすくなっており、とても重宝しております」

 あー、なるほど。
 技術的にはそんなに上手くないのに、受け流しや弾きが上手いのは、このスキルのおかげかー。
 私の刀を受けたりできるのに、ハヤブサの速度にはついて行けないのは、間合いの外だからかも。

「こうして見ると、ナイン君は攻撃特化で、シロちゃんは防御特化って感じだにゃー」

「あー、確かに。そういう意味なら、シロには【カウンター】のスキルは相性いいかもねー」

「【カウンター】ですか? たしかセツナ様が持たれていたスキルですよね?」

「うん。カウンター攻撃がやりやすくなるし、効果も上がるからねー。でも、天空王の試練を抜けるなら、まずは攻撃の仕方を考えるべきだろうけど」

 天空王の試練が、持続ダメージの中で攻撃を当てることだったのは、シロが防御型なのを見抜いていたからなのだろう。
 だからこそ、足りない部分を試練として出してきたという感じかもしれない。
 まあ、その辺は憶測に過ぎないんだけど。

「天空王の試練かー。私とセツナは得意部分を更に上げさせられた感じだったにゃー」

「うん。私なんて、ハヤブサと速さ勝負してたしねー」

「刀を抜いたのが、全く見えなかったんだよにゃー。ハヤブサの羽が斬り落とされて、ようやく抜いたのに気付いたくらいだぜー」

「あの時は自分でも無茶をしたって思ったし……上手くいって良かったけど」

 そういえばアレ以降、【八極拳】と【蝶舞一刀】、【抜刀術】の合わせ技ってやってない気がする。
 また今度どこかで練習しておかないとなー。
 たぶん、必殺技みたいになりそうだし……。

「……セツナがなんだか、あくどい顔してるにゃ」

「だ、大丈夫なんスか?」

「セツナ様……」

「こういう時は触れない方が良いにゃ。天才、危うきに近寄らず、にゃ」

-----

 名前:セツナ
 所持金:105,040リブラ

 武器:居合刀『紫煙』
 防具:戦装束『無鎧』改

 テイム:ブラックスコーピオン(幼体)『ハクヤ』

 所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
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