107 / 111
第四章『ボタン』
中二病患者と初心者
しおりを挟む
「次は自分の番っスね! まだまだ少ないっスけど、どれも面白いと思うっスよ!」
スキルに面白いっていう表現はどうかと思うんだけど……。
まあ、本人が納得してるなら良いかー。
――――――――
名前:ナイン
所持スキル:【弓術Lv.15】【影走術Lv.12】【低燃費Lv.13】【複合化Lv.10】【希薄Lv.8】
――――――――
「……これ、なんなの?」
「見事に変なスキルしか持ってないにゃー。レアスキルなのに、【影走術】が霞むレベルにゃ……」
「ナイン様、これらはどういったスキルなのですか?」
「あ、私も気になるかな。名前からだとよく分かんないし」
シロの問いに乗っかる形で、私もナインにそう伝える。
するとナインは「そうっスよねぇ……」と苦笑いを浮かべ、「んじゃ、説明するっスよ」と紅茶を軽く口に含んだ。
「【低燃費】はMPの消費を抑えられるスキルっス。【影走術】は消費MPが多いっスから、めちゃくちゃ相性が良いんスよ。【複合化】はモノとモノと合体させるスキルっス。合成と違って、ふたつのものを見た目がひとつのものにするスキルっスね」
「……えっと、それってどういうこと?」
「あー、やってみた方が分かりやすいっスね。ちょっと見てて欲しいっス」
そう言ってナインはアイテムボックスから二本の矢を取り出す。
そして、「【複合化】」と短く宣言すると……手に持っていた矢が融合し……さっきまでと同じ見た目の一本の矢になった。
……えっと?
「手に取って、元の矢と同じものと見比べて欲しいっス」
「どれどれ……ん?」
「なるほどにゃー。見た目は一本で、効果は二本の矢になってるのかー」
「そうっス! だからこの矢で敵を撃つと……二本分のダメージが入るって感じっス」
つまり単純に考えて、威力が二倍になるということ。
ただ、元々二本の矢だったことを考えれば、消費が減ったわけでもなく……使える状況は限定的になるかな?
まあ、ナインの【影走術】とはかなり相性が良さそうだけど。
影に潜んで、相手の死角から【複合化】した矢で射貫く。
完全に一撃必殺の暗殺者スタイルだ。
「えげつない戦い方にゃ」
「うん。すごい卑怯だと思う」
「ナイン様……」
「な、なんで責められてるっスか!?」
そりゃ、戦い方が卑怯だからだと思う。
「まあ良いっス。最後の【希薄】は、薄くなるスキルっス。気配はもちろん、周囲のモノの存在も薄くするっス」
「……卑怯だにゃー」
「正々堂々戦うっていう考えは無いの?」
「ナイン様……」
もうなんか、ナインの株がどんどん下がっていく。
なんだ、ナインは暗殺者になりたいのか?
「なんにせよ、ナイン君は暗殺者ってことが分かって良かったにゃ。黒づくめの装備だから、中二病患者まっしぐらだしにゃ」
「できれば一緒に歩きたくないタイプだよねー」
「ひ、ひどいっスよ!?」
「ナイン様、私は気にしておりませんので……」
わめくナインを、シロが横からなだめる。
そんなシロに「ありがとうっス……」と、ナインは珍しくしみじみとした声でお礼を言っていた。
「そんなわけで、最後はシロちゃんだにゃー」
「はい。……こちらになります」
「えーっと……?」
――――――――
名前:シロ
所持スキル:【薙刀術Lv.8】【戦陣Lv.4】【天候予測Lv.4】
――――――――
うん、まだ始めたばっかりって感じだねー。
「【薙刀術】と【天候予測】は分かるけど、【戦陣】ってどんなスキルなの?」
「【戦陣】は、近接武器の間合いの中であれば、気配察知が強く働くようになるスキルです。間合い内の感覚強化、と言われておりました」
「なるほどにゃー。薙刀なら間合いも広いし、相性は良さそうなスキルだぜ」
「はい。このスキルのおかげで、相手の攻撃を捌きやすくなっており、とても重宝しております」
あー、なるほど。
技術的にはそんなに上手くないのに、受け流しや弾きが上手いのは、このスキルのおかげかー。
私の刀を受けたりできるのに、ハヤブサの速度にはついて行けないのは、間合いの外だからかも。
「こうして見ると、ナイン君は攻撃特化で、シロちゃんは防御特化って感じだにゃー」
「あー、確かに。そういう意味なら、シロには【カウンター】のスキルは相性いいかもねー」
「【カウンター】ですか? たしかセツナ様が持たれていたスキルですよね?」
「うん。カウンター攻撃がやりやすくなるし、効果も上がるからねー。でも、天空王の試練を抜けるなら、まずは攻撃の仕方を考えるべきだろうけど」
天空王の試練が、持続ダメージの中で攻撃を当てることだったのは、シロが防御型なのを見抜いていたからなのだろう。
だからこそ、足りない部分を試練として出してきたという感じかもしれない。
まあ、その辺は憶測に過ぎないんだけど。
「天空王の試練かー。私とセツナは得意部分を更に上げさせられた感じだったにゃー」
「うん。私なんて、ハヤブサと速さ勝負してたしねー」
「刀を抜いたのが、全く見えなかったんだよにゃー。ハヤブサの羽が斬り落とされて、ようやく抜いたのに気付いたくらいだぜー」
「あの時は自分でも無茶をしたって思ったし……上手くいって良かったけど」
そういえばアレ以降、【八極拳】と【蝶舞一刀】、【抜刀術】の合わせ技ってやってない気がする。
また今度どこかで練習しておかないとなー。
たぶん、必殺技みたいになりそうだし……。
「……セツナがなんだか、あくどい顔してるにゃ」
「だ、大丈夫なんスか?」
「セツナ様……」
「こういう時は触れない方が良いにゃ。天才、危うきに近寄らず、にゃ」
-----
名前:セツナ
所持金:105,040リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
テイム:ブラックスコーピオン(幼体)『ハクヤ』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
スキルに面白いっていう表現はどうかと思うんだけど……。
まあ、本人が納得してるなら良いかー。
――――――――
名前:ナイン
所持スキル:【弓術Lv.15】【影走術Lv.12】【低燃費Lv.13】【複合化Lv.10】【希薄Lv.8】
――――――――
「……これ、なんなの?」
「見事に変なスキルしか持ってないにゃー。レアスキルなのに、【影走術】が霞むレベルにゃ……」
「ナイン様、これらはどういったスキルなのですか?」
「あ、私も気になるかな。名前からだとよく分かんないし」
シロの問いに乗っかる形で、私もナインにそう伝える。
するとナインは「そうっスよねぇ……」と苦笑いを浮かべ、「んじゃ、説明するっスよ」と紅茶を軽く口に含んだ。
「【低燃費】はMPの消費を抑えられるスキルっス。【影走術】は消費MPが多いっスから、めちゃくちゃ相性が良いんスよ。【複合化】はモノとモノと合体させるスキルっス。合成と違って、ふたつのものを見た目がひとつのものにするスキルっスね」
「……えっと、それってどういうこと?」
「あー、やってみた方が分かりやすいっスね。ちょっと見てて欲しいっス」
そう言ってナインはアイテムボックスから二本の矢を取り出す。
そして、「【複合化】」と短く宣言すると……手に持っていた矢が融合し……さっきまでと同じ見た目の一本の矢になった。
……えっと?
「手に取って、元の矢と同じものと見比べて欲しいっス」
「どれどれ……ん?」
「なるほどにゃー。見た目は一本で、効果は二本の矢になってるのかー」
「そうっス! だからこの矢で敵を撃つと……二本分のダメージが入るって感じっス」
つまり単純に考えて、威力が二倍になるということ。
ただ、元々二本の矢だったことを考えれば、消費が減ったわけでもなく……使える状況は限定的になるかな?
まあ、ナインの【影走術】とはかなり相性が良さそうだけど。
影に潜んで、相手の死角から【複合化】した矢で射貫く。
完全に一撃必殺の暗殺者スタイルだ。
「えげつない戦い方にゃ」
「うん。すごい卑怯だと思う」
「ナイン様……」
「な、なんで責められてるっスか!?」
そりゃ、戦い方が卑怯だからだと思う。
「まあ良いっス。最後の【希薄】は、薄くなるスキルっス。気配はもちろん、周囲のモノの存在も薄くするっス」
「……卑怯だにゃー」
「正々堂々戦うっていう考えは無いの?」
「ナイン様……」
もうなんか、ナインの株がどんどん下がっていく。
なんだ、ナインは暗殺者になりたいのか?
「なんにせよ、ナイン君は暗殺者ってことが分かって良かったにゃ。黒づくめの装備だから、中二病患者まっしぐらだしにゃ」
「できれば一緒に歩きたくないタイプだよねー」
「ひ、ひどいっスよ!?」
「ナイン様、私は気にしておりませんので……」
わめくナインを、シロが横からなだめる。
そんなシロに「ありがとうっス……」と、ナインは珍しくしみじみとした声でお礼を言っていた。
「そんなわけで、最後はシロちゃんだにゃー」
「はい。……こちらになります」
「えーっと……?」
――――――――
名前:シロ
所持スキル:【薙刀術Lv.8】【戦陣Lv.4】【天候予測Lv.4】
――――――――
うん、まだ始めたばっかりって感じだねー。
「【薙刀術】と【天候予測】は分かるけど、【戦陣】ってどんなスキルなの?」
「【戦陣】は、近接武器の間合いの中であれば、気配察知が強く働くようになるスキルです。間合い内の感覚強化、と言われておりました」
「なるほどにゃー。薙刀なら間合いも広いし、相性は良さそうなスキルだぜ」
「はい。このスキルのおかげで、相手の攻撃を捌きやすくなっており、とても重宝しております」
あー、なるほど。
技術的にはそんなに上手くないのに、受け流しや弾きが上手いのは、このスキルのおかげかー。
私の刀を受けたりできるのに、ハヤブサの速度にはついて行けないのは、間合いの外だからかも。
「こうして見ると、ナイン君は攻撃特化で、シロちゃんは防御特化って感じだにゃー」
「あー、確かに。そういう意味なら、シロには【カウンター】のスキルは相性いいかもねー」
「【カウンター】ですか? たしかセツナ様が持たれていたスキルですよね?」
「うん。カウンター攻撃がやりやすくなるし、効果も上がるからねー。でも、天空王の試練を抜けるなら、まずは攻撃の仕方を考えるべきだろうけど」
天空王の試練が、持続ダメージの中で攻撃を当てることだったのは、シロが防御型なのを見抜いていたからなのだろう。
だからこそ、足りない部分を試練として出してきたという感じかもしれない。
まあ、その辺は憶測に過ぎないんだけど。
「天空王の試練かー。私とセツナは得意部分を更に上げさせられた感じだったにゃー」
「うん。私なんて、ハヤブサと速さ勝負してたしねー」
「刀を抜いたのが、全く見えなかったんだよにゃー。ハヤブサの羽が斬り落とされて、ようやく抜いたのに気付いたくらいだぜー」
「あの時は自分でも無茶をしたって思ったし……上手くいって良かったけど」
そういえばアレ以降、【八極拳】と【蝶舞一刀】、【抜刀術】の合わせ技ってやってない気がする。
また今度どこかで練習しておかないとなー。
たぶん、必殺技みたいになりそうだし……。
「……セツナがなんだか、あくどい顔してるにゃ」
「だ、大丈夫なんスか?」
「セツナ様……」
「こういう時は触れない方が良いにゃ。天才、危うきに近寄らず、にゃ」
-----
名前:セツナ
所持金:105,040リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
テイム:ブラックスコーピオン(幼体)『ハクヤ』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
8
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?
水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

動物大好きな子が動物と遊んでいたらいつの間にか最強に!!!!
常光 なる
ファンタジー
これは生き物大好きの一ノ瀬夜月(いちのせ ないと)が有名なVRMMOゲーム
Shine stay Onlineというゲームで
色々な生き物と触れて和気あいあいとする
ほのぼの系ストーリー
のはずが夜月はいつの間にか有名なプレーヤーになっていく…………

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる