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第三章『君には届かない』
とても大きくて太い河
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あれから数時間ほど、ひたすらに豚を狩り続け、気づけばアイテムボックスの中には百どころではすまないほどの豚素材が溢れていた。
ちなみに、その半分以上が豚足だったりする。
「……狩りすぎた」
「だ、だにゃー……」
もちろん、すでに呪符はなくなっており、途中からは斬ったり、蹴り飛ばしたりと、まさに獅子奮迅の如く豚を狩っていた。
獅子が豚を狩るのはどうかと思うけど、獅子はウサギを捕らえるにも全力を尽くすって言うし、あながち間違いではないはず。
「で、セツナ。呪符はどうだったかにゃー?」
「んー、面白いと思う。事前に準備さえしておけば、いざという時に使えるだろうしねー。それにMP消費が無いから、【幻燈蝶】とも相性がいいよね」
「うむうむ。その通りだぜー。もしセツナが気に入ったなら、スキルを取っておくのもいいと思うにゃー。呪符の効果も上がるらしいし」
「うん。そうしとくよー」
というわけで、スキルウィンドウを開いて、習得可能リストにすでに上がっていた【符術】を習得。
これで、今のスキルは8個目になった。
少数精鋭って感じだ。
「んー、でも【秘刃】は、ちょっと使いにくいなぁ……」
「【秘刃】って、イベントの時に、トーマスさんの槍を弾いたり、グレンさんの剣を弾いたりしたやつだっけ?」
「そうそう。空間に斬撃を置いておけるっていうスキルなんだけど、先にその場所を斬っておかないといけないから、ちょっと難しくて」
「あー、なるほどねー。セツナは手数よりも、一発を重視するタイプの戦闘スタイルだし、あんまり向いてないかもねー」
ケートが言うには、手数で戦うミシェルとかなら、攻撃の合間を縫って発動しても、そこまで目立たず設置ができるけど、私みたいな、あまり攻撃の回数が多くない戦い方をしてる人がやると、そこになにかを仕掛けたのがバレバレになるってことらしい。
だからこそ、本選でグレンに一発でバレてしまったって感じかー。
うーむ……。
「まあ、スキルを習得してても、表示が増えてちょっと邪魔っぽくなるだけで、デメリットはほとんどないし、気にしなくてもいいんじゃない?」
「それはそうなんだけどねー。ほら、せっかく取得したんだし、使えるようになりたいなーとは思うでしょ?」
「分かるけどにゃー。使うなら、なにか別の手を考えるしかないと思うにゃー」
そう言って肩をすくめたケートに、私はむぅと頬を膨らませてみせる。
私のそんな反応が面白かったのか、ケートは少し笑って、頬をつついてきた。
ええい、つつくな!
「ま、とりあえず……そろそろ、大河に向かうべー。あんまり遅くなっても、調べられないしにゃー」
「はーい」
□
目の前に流れる大量の水。
目を凝らしても向こう岸は見えない……まさに、大河と呼ぶに相応しい太さの河が目の前にあった。
「大きいねー……」
「大きいにゃー……」
かれこれ五分はこうしてここに突っ立っている。
それでも、その感想しかでてこないほどに、大きな河なのだ。
「あ、セツナ。河になんかいるね」
「……ワニじゃない? あれ」
「ワニかー」
深緑色のゴツゴツした背中に、大きな口。
赤い口内に尖った牙がギラリと光る。
うん、どこからどうみてもワニだ。
「ワニがいるとなると、水中の探索は難しいねー」
「だにゃー。入った瞬間スプラッタ映像になっちゃうぜ」
「サメ映画的な感じ?」
「そうそう、シャーック! って感じの」
サメはシャークとは鳴かないよ?
「細けえことはいいんだよ! とりあえず、あのワニをどうするかにゃー」
「斬る?」
「戦闘民族は、一度刀から手を離しなさい。まあ、とりあえずは少し離れて周囲の散策かねえ」
「うん。北と南、どっちに向かう?」
「南で」
というわけで、川下の方へ歩きつつ、河の周辺を散策していく。
サイが現れた!
斬った!
「ブヒィィ……」
「サイの鳴き声じゃないよね、これ」
「まあ、ファンタジーだし」
そんなことを話しつつ、さらに南下していく。
イーリアスドッグが現れた!
ケートに焼かれた。
「こいつら突っ込んでくるから、進行上に『フレアウォール』で一掃できるにゃー」
「……使い方おかしくない?」
「縦置き火の壁は、古来から受け継がれし技よ……ふぉっふぉっふぉ」
古来からって。
まあ、ちゃんと殲滅できてるし、いいんだけど。
「やっぱり南に向かうと、南側の敵が出てくるにゃー」
「まあ、それは仕方ないよね」
「うむうむ。たぶんそろそろサンドゴレーム辺りも出てくると思う。あ、でもサボテンは東側の奥だし、サボテンはでてこないかにゃー」
そういってケートはまた魔法を放ち、視界の端にいたイーリアスドッグを先制攻撃で倒しきる。
一層の敵に比べれば強いけど、まだまだ苦戦するって程じゃないから、楽なもんだよねー。
まあ、周囲の風景が荒野か大河しかないのは飽きるけど。
「んー、これはなにも無さそうだにゃー」
「だねー」
「こうなってくると、ほんとに水中か……あとは時間的なものかって感じになってくるにゃー」
「時間?」
時間でなにか変化が起きるってこと?
でも、それ、探すのかなり大変じゃない?
「まあ、そうなんだけどにゃー。もし時間なら、ちょっと気になってることもあるし、その辺を確認していく感じだぜー」
「気になってること? なにかヒントでもあったの?」
「んー、まだ確定じゃないし、その辺は裏がとれてから教えるぜー」
そう言って苦笑するケート。
その後ろに、私は予想外のものを見つけてしまった……。
「……サボテン?」
そう、あの軟体動物……サボテンダンサーの姿を。
-----
名前:セツナ
所持金:210,740リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.7】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.10】【秘刃Lv.2】【符術Lv.1】
ちなみに、その半分以上が豚足だったりする。
「……狩りすぎた」
「だ、だにゃー……」
もちろん、すでに呪符はなくなっており、途中からは斬ったり、蹴り飛ばしたりと、まさに獅子奮迅の如く豚を狩っていた。
獅子が豚を狩るのはどうかと思うけど、獅子はウサギを捕らえるにも全力を尽くすって言うし、あながち間違いではないはず。
「で、セツナ。呪符はどうだったかにゃー?」
「んー、面白いと思う。事前に準備さえしておけば、いざという時に使えるだろうしねー。それにMP消費が無いから、【幻燈蝶】とも相性がいいよね」
「うむうむ。その通りだぜー。もしセツナが気に入ったなら、スキルを取っておくのもいいと思うにゃー。呪符の効果も上がるらしいし」
「うん。そうしとくよー」
というわけで、スキルウィンドウを開いて、習得可能リストにすでに上がっていた【符術】を習得。
これで、今のスキルは8個目になった。
少数精鋭って感じだ。
「んー、でも【秘刃】は、ちょっと使いにくいなぁ……」
「【秘刃】って、イベントの時に、トーマスさんの槍を弾いたり、グレンさんの剣を弾いたりしたやつだっけ?」
「そうそう。空間に斬撃を置いておけるっていうスキルなんだけど、先にその場所を斬っておかないといけないから、ちょっと難しくて」
「あー、なるほどねー。セツナは手数よりも、一発を重視するタイプの戦闘スタイルだし、あんまり向いてないかもねー」
ケートが言うには、手数で戦うミシェルとかなら、攻撃の合間を縫って発動しても、そこまで目立たず設置ができるけど、私みたいな、あまり攻撃の回数が多くない戦い方をしてる人がやると、そこになにかを仕掛けたのがバレバレになるってことらしい。
だからこそ、本選でグレンに一発でバレてしまったって感じかー。
うーむ……。
「まあ、スキルを習得してても、表示が増えてちょっと邪魔っぽくなるだけで、デメリットはほとんどないし、気にしなくてもいいんじゃない?」
「それはそうなんだけどねー。ほら、せっかく取得したんだし、使えるようになりたいなーとは思うでしょ?」
「分かるけどにゃー。使うなら、なにか別の手を考えるしかないと思うにゃー」
そう言って肩をすくめたケートに、私はむぅと頬を膨らませてみせる。
私のそんな反応が面白かったのか、ケートは少し笑って、頬をつついてきた。
ええい、つつくな!
「ま、とりあえず……そろそろ、大河に向かうべー。あんまり遅くなっても、調べられないしにゃー」
「はーい」
□
目の前に流れる大量の水。
目を凝らしても向こう岸は見えない……まさに、大河と呼ぶに相応しい太さの河が目の前にあった。
「大きいねー……」
「大きいにゃー……」
かれこれ五分はこうしてここに突っ立っている。
それでも、その感想しかでてこないほどに、大きな河なのだ。
「あ、セツナ。河になんかいるね」
「……ワニじゃない? あれ」
「ワニかー」
深緑色のゴツゴツした背中に、大きな口。
赤い口内に尖った牙がギラリと光る。
うん、どこからどうみてもワニだ。
「ワニがいるとなると、水中の探索は難しいねー」
「だにゃー。入った瞬間スプラッタ映像になっちゃうぜ」
「サメ映画的な感じ?」
「そうそう、シャーック! って感じの」
サメはシャークとは鳴かないよ?
「細けえことはいいんだよ! とりあえず、あのワニをどうするかにゃー」
「斬る?」
「戦闘民族は、一度刀から手を離しなさい。まあ、とりあえずは少し離れて周囲の散策かねえ」
「うん。北と南、どっちに向かう?」
「南で」
というわけで、川下の方へ歩きつつ、河の周辺を散策していく。
サイが現れた!
斬った!
「ブヒィィ……」
「サイの鳴き声じゃないよね、これ」
「まあ、ファンタジーだし」
そんなことを話しつつ、さらに南下していく。
イーリアスドッグが現れた!
ケートに焼かれた。
「こいつら突っ込んでくるから、進行上に『フレアウォール』で一掃できるにゃー」
「……使い方おかしくない?」
「縦置き火の壁は、古来から受け継がれし技よ……ふぉっふぉっふぉ」
古来からって。
まあ、ちゃんと殲滅できてるし、いいんだけど。
「やっぱり南に向かうと、南側の敵が出てくるにゃー」
「まあ、それは仕方ないよね」
「うむうむ。たぶんそろそろサンドゴレーム辺りも出てくると思う。あ、でもサボテンは東側の奥だし、サボテンはでてこないかにゃー」
そういってケートはまた魔法を放ち、視界の端にいたイーリアスドッグを先制攻撃で倒しきる。
一層の敵に比べれば強いけど、まだまだ苦戦するって程じゃないから、楽なもんだよねー。
まあ、周囲の風景が荒野か大河しかないのは飽きるけど。
「んー、これはなにも無さそうだにゃー」
「だねー」
「こうなってくると、ほんとに水中か……あとは時間的なものかって感じになってくるにゃー」
「時間?」
時間でなにか変化が起きるってこと?
でも、それ、探すのかなり大変じゃない?
「まあ、そうなんだけどにゃー。もし時間なら、ちょっと気になってることもあるし、その辺を確認していく感じだぜー」
「気になってること? なにかヒントでもあったの?」
「んー、まだ確定じゃないし、その辺は裏がとれてから教えるぜー」
そう言って苦笑するケート。
その後ろに、私は予想外のものを見つけてしまった……。
「……サボテン?」
そう、あの軟体動物……サボテンダンサーの姿を。
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名前:セツナ
所持金:210,740リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.7】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.10】【秘刃Lv.2】【符術Lv.1】
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