また、つまらぬものを斬ってしまった……で、よかったっけ? ~ 女の子達による『Freelife Frontier』 攻略記

一色 遥

文字の大きさ
上 下
56 / 111
第三章『君には届かない』

呪われそうなやつ

しおりを挟む
「え、ケート……今、なんて?」

 聞こえなかった訳ではないけれど、頭の処理が追い付かなかった私は、気づけばそう聞き返していた。
 いや、だって、ねえ?

「だから、少しの間、刀を置いてみない? って言ってるの。もちろんずっとじゃなくて、一時的にね」

「な、なんで?」

「んー……説明しにくいんだけど、今のセツナって、刀に頼りすぎな部分がある気がするから、かな? ナイン君はアレとして、グレンさんやミシェルさんみたいに、トップを走ってる人達はみんな、複数の手を持ってる人達ばかりなんだよね」

 言われてみれば、グレンは大盾と片手剣、ミシェルは双剣と弓を扱える。
 それに実は、グレンのパーティーメンバーで刀使いのゴンザブローも、【刀術】と【投擲とうてき】の2種類を使い分けていたのだ。
 ……そうやって考えれば、たしかに攻撃手段が多ければその分戦術の幅は広がる。
 でも、私にそれが出来るんだろうか?

「今、セツナが使ってる戦闘スキルの中で、メインになる戦闘スキルは【抜刀術】と【蹴撃】だよね。刀と蹴りの合わせ技は、ナインとの試合で見れたから十分なんだけど……仮に、もし仮に、刀が使えない状況になった時、セツナは蹴りだけで戦える?」

「……無理じゃないけど、相手による、かな?」

「だよね。例えば相手が飛んでるとか、魔法使いでとか……いろんなパターンを考えると、今の戦い方だけじゃ、いつか手詰まりになる。だから早いうちに少しだけ刀を置いて、別の攻撃手段を模索してみるのがいいんじゃないかなって思うよー」

 「あと、別の攻撃手段が決まれば、装備の感じも少し変更せざるを得なくなるしね」と、ケートは笑う。
 まあ、一理ある……かな?
 遠距離戦闘向きの攻撃手段がないのは確かだし、ゴンザブローと同じ【投擲】じゃなくても、弓や魔法みたいな遠距離攻撃ができれば、かなり戦いやすくなるかも。

「……でもそう言うってことは、ケートにはなにか良い案があるってことだよね? オススメとかあったりするの?」

「ふっふっふ、ケートちゃんからはー、コレです!」

 ババーンと効果音がなりそうな感じにケートが取り出したのは、白地に赤い模様の……おふだ
 なんかお寺とかに貼ってあったりする感じなんだけど、これ呪われたりしない?

「大丈夫大丈夫! これは、呪符じゅふって言って、【符術ふじゅつ】スキルで使うお札だよー!」

「呪符って言ってるよね!? 呪いだよね!?」

「大丈夫だってば。これの凄いところは、かざして宣言すれば即発動で、MP消費しないってこと。他の魔法と違って、プレイヤーがイメージを固めたりする必要がないんだぜー」

「へー、便利だねー」

 でも、それだけ便利なら、いろんな人が使ってそうな気がするけど……今まで見たことないよね?
 なんで?

「……呪符代がかかる。ただそれだけにして、最大の欠点だ……」

「ああ、なるほど……」

 ケートいわく、呪符は一回使うと燃え尽きてなくなってしまうらしい。
 完全な使いきりタイプの魔法らしく、作成にも手間がかかることから、値段が高く……人気がない。
 ちなみにお値段は、【火魔法】の『プチフレイム』級で、一枚2000リブラ。
 うん、それは高いね。

「ただ、作成用の素材はそこまで面倒じゃないんだにゃー。だから、リンやミトちゃんの手が回せるなら、お願いできるんじゃないかにゃーって」

「なるほど。もし大丈夫って言ってもらえれば、格安で枚数が揃えられるかも?」

「そういうことだぜい!」

 なるほど、なるほど……。
 まあ、最終的にどうするかはわからないけど、ひとまずは試してみるべきかな?
 使い勝手とか、そういうの。

「にひひ、乗り気になったっぽいですな?」

「まあ、うん。ちょっと違うことするのも楽しそうだしねー」

「イエスだぜ。ゲームだし、いろんなことに手を出すのも醍醐味ってやつだにゃー! というわけで、これは私からプレゼント。火の呪符『鬼火』と、雷の呪符『天雷』、各10枚だぜー」

 ケートから差し出された札を受け取って、改めてしっかりと見てみる。
 両方とも白い紙に赤い模様なのは変わらないけど、火の呪符は、文字を囲ってる部分が、どことなく炎っぽい感じ。
 その点、雷の呪符はギザギザしていて、どことなく雷っぽい感じの模様になっていた。

 これは、他の属性の呪符も気になるねー。

「見た目、結構オシャレでしょ。お店の人に聞いたら、魔法のグレードが上がると、インクの色が変わるんだってさ」

「へー。面白いね」

「うむうむ。とりあえず、最下級の魔法は赤インクだから、ひとまずそれは覚えておいてねー」

「はーい」

 軽く返事をしながら、私はアイテムボックスに呪符をしまっていく。
 次の戦闘あたりで使ってみようかな。
 魔法かー、使うの初めてだなー。

「さて、セツナの新しいスキルも、一応固まったことだし……出よっか」

「ん、そうだね」

「もう外は日も落ちてるし、一旦ログアウトして、晩御飯食べたらまたログインかにゃ」

「あ、私、お風呂入ってからだから、ちょっと遅くなるかも」

 基本はご飯のあとにお風呂なのだ。
 でもそうなると、早くて夜9時過ぎなんだよねー。

「ほいほい。それじゃ、またあとでー」

「はーい。またね」

 会計を済ませ、エルマンの外で私達はログアウトした。
 とりあえず……ご飯までは、夏休みの宿題、かなぁ。

-----

 名前:セツナ
 所持金:210,740リブラ(-850)

 武器:居合刀『紫煙』
 防具:戦装束『無鎧』

 所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.9】【秘刃Lv.2】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?

水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

動物大好きな子が動物と遊んでいたらいつの間にか最強に!!!!

常光 なる
ファンタジー
これは生き物大好きの一ノ瀬夜月(いちのせ ないと)が有名なVRMMOゲーム Shine stay Onlineというゲームで 色々な生き物と触れて和気あいあいとする ほのぼの系ストーリー のはずが夜月はいつの間にか有名なプレーヤーになっていく…………

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

処理中です...