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第三章『君には届かない』
呪われそうなやつ
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「え、ケート……今、なんて?」
聞こえなかった訳ではないけれど、頭の処理が追い付かなかった私は、気づけばそう聞き返していた。
いや、だって、ねえ?
「だから、少しの間、刀を置いてみない? って言ってるの。もちろんずっとじゃなくて、一時的にね」
「な、なんで?」
「んー……説明しにくいんだけど、今のセツナって、刀に頼りすぎな部分がある気がするから、かな? ナイン君はアレとして、グレンさんやミシェルさんみたいに、トップを走ってる人達はみんな、複数の手を持ってる人達ばかりなんだよね」
言われてみれば、グレンは大盾と片手剣、ミシェルは双剣と弓を扱える。
それに実は、グレンのパーティーメンバーで刀使いのゴンザブローも、【刀術】と【投擲】の2種類を使い分けていたのだ。
……そうやって考えれば、たしかに攻撃手段が多ければその分戦術の幅は広がる。
でも、私にそれが出来るんだろうか?
「今、セツナが使ってる戦闘スキルの中で、メインになる戦闘スキルは【抜刀術】と【蹴撃】だよね。刀と蹴りの合わせ技は、ナインとの試合で見れたから十分なんだけど……仮に、もし仮に、刀が使えない状況になった時、セツナは蹴りだけで戦える?」
「……無理じゃないけど、相手による、かな?」
「だよね。例えば相手が飛んでるとか、魔法使いでとか……いろんなパターンを考えると、今の戦い方だけじゃ、いつか手詰まりになる。だから早いうちに少しだけ刀を置いて、別の攻撃手段を模索してみるのがいいんじゃないかなって思うよー」
「あと、別の攻撃手段が決まれば、装備の感じも少し変更せざるを得なくなるしね」と、ケートは笑う。
まあ、一理ある……かな?
遠距離戦闘向きの攻撃手段がないのは確かだし、ゴンザブローと同じ【投擲】じゃなくても、弓や魔法みたいな遠距離攻撃ができれば、かなり戦いやすくなるかも。
「……でもそう言うってことは、ケートにはなにか良い案があるってことだよね? オススメとかあったりするの?」
「ふっふっふ、ケートちゃんからはー、コレです!」
ババーンと効果音がなりそうな感じにケートが取り出したのは、白地に赤い模様の……お札?
なんかお寺とかに貼ってあったりする感じなんだけど、これ呪われたりしない?
「大丈夫大丈夫! これは、呪符って言って、【符術】スキルで使うお札だよー!」
「呪符って言ってるよね!? 呪いだよね!?」
「大丈夫だってば。これの凄いところは、かざして宣言すれば即発動で、MP消費しないってこと。他の魔法と違って、プレイヤーがイメージを固めたりする必要がないんだぜー」
「へー、便利だねー」
でも、それだけ便利なら、いろんな人が使ってそうな気がするけど……今まで見たことないよね?
なんで?
「……呪符代がかかる。ただそれだけにして、最大の欠点だ……」
「ああ、なるほど……」
ケートいわく、呪符は一回使うと燃え尽きてなくなってしまうらしい。
完全な使いきりタイプの魔法らしく、作成にも手間がかかることから、値段が高く……人気がない。
ちなみにお値段は、【火魔法】の『プチフレイム』級で、一枚2000リブラ。
うん、それは高いね。
「ただ、作成用の素材はそこまで面倒じゃないんだにゃー。だから、リンやミトちゃんの手が回せるなら、お願いできるんじゃないかにゃーって」
「なるほど。もし大丈夫って言ってもらえれば、格安で枚数が揃えられるかも?」
「そういうことだぜい!」
なるほど、なるほど……。
まあ、最終的にどうするかはわからないけど、ひとまずは試してみるべきかな?
使い勝手とか、そういうの。
「にひひ、乗り気になったっぽいですな?」
「まあ、うん。ちょっと違うことするのも楽しそうだしねー」
「イエスだぜ。ゲームだし、いろんなことに手を出すのも醍醐味ってやつだにゃー! というわけで、これは私からプレゼント。火の呪符『鬼火』と、雷の呪符『天雷』、各10枚だぜー」
ケートから差し出された札を受け取って、改めてしっかりと見てみる。
両方とも白い紙に赤い模様なのは変わらないけど、火の呪符は、文字を囲ってる部分が、どことなく炎っぽい感じ。
その点、雷の呪符はギザギザしていて、どことなく雷っぽい感じの模様になっていた。
これは、他の属性の呪符も気になるねー。
「見た目、結構オシャレでしょ。お店の人に聞いたら、魔法のグレードが上がると、インクの色が変わるんだってさ」
「へー。面白いね」
「うむうむ。とりあえず、最下級の魔法は赤インクだから、ひとまずそれは覚えておいてねー」
「はーい」
軽く返事をしながら、私はアイテムボックスに呪符をしまっていく。
次の戦闘あたりで使ってみようかな。
魔法かー、使うの初めてだなー。
「さて、セツナの新しいスキルも、一応固まったことだし……出よっか」
「ん、そうだね」
「もう外は日も落ちてるし、一旦ログアウトして、晩御飯食べたらまたログインかにゃ」
「あ、私、お風呂入ってからだから、ちょっと遅くなるかも」
基本はご飯のあとにお風呂なのだ。
でもそうなると、早くて夜9時過ぎなんだよねー。
「ほいほい。それじゃ、またあとでー」
「はーい。またね」
会計を済ませ、エルマンの外で私達はログアウトした。
とりあえず……ご飯までは、夏休みの宿題、かなぁ。
-----
名前:セツナ
所持金:210,740リブラ(-850)
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.9】【秘刃Lv.2】
聞こえなかった訳ではないけれど、頭の処理が追い付かなかった私は、気づけばそう聞き返していた。
いや、だって、ねえ?
「だから、少しの間、刀を置いてみない? って言ってるの。もちろんずっとじゃなくて、一時的にね」
「な、なんで?」
「んー……説明しにくいんだけど、今のセツナって、刀に頼りすぎな部分がある気がするから、かな? ナイン君はアレとして、グレンさんやミシェルさんみたいに、トップを走ってる人達はみんな、複数の手を持ってる人達ばかりなんだよね」
言われてみれば、グレンは大盾と片手剣、ミシェルは双剣と弓を扱える。
それに実は、グレンのパーティーメンバーで刀使いのゴンザブローも、【刀術】と【投擲】の2種類を使い分けていたのだ。
……そうやって考えれば、たしかに攻撃手段が多ければその分戦術の幅は広がる。
でも、私にそれが出来るんだろうか?
「今、セツナが使ってる戦闘スキルの中で、メインになる戦闘スキルは【抜刀術】と【蹴撃】だよね。刀と蹴りの合わせ技は、ナインとの試合で見れたから十分なんだけど……仮に、もし仮に、刀が使えない状況になった時、セツナは蹴りだけで戦える?」
「……無理じゃないけど、相手による、かな?」
「だよね。例えば相手が飛んでるとか、魔法使いでとか……いろんなパターンを考えると、今の戦い方だけじゃ、いつか手詰まりになる。だから早いうちに少しだけ刀を置いて、別の攻撃手段を模索してみるのがいいんじゃないかなって思うよー」
「あと、別の攻撃手段が決まれば、装備の感じも少し変更せざるを得なくなるしね」と、ケートは笑う。
まあ、一理ある……かな?
遠距離戦闘向きの攻撃手段がないのは確かだし、ゴンザブローと同じ【投擲】じゃなくても、弓や魔法みたいな遠距離攻撃ができれば、かなり戦いやすくなるかも。
「……でもそう言うってことは、ケートにはなにか良い案があるってことだよね? オススメとかあったりするの?」
「ふっふっふ、ケートちゃんからはー、コレです!」
ババーンと効果音がなりそうな感じにケートが取り出したのは、白地に赤い模様の……お札?
なんかお寺とかに貼ってあったりする感じなんだけど、これ呪われたりしない?
「大丈夫大丈夫! これは、呪符って言って、【符術】スキルで使うお札だよー!」
「呪符って言ってるよね!? 呪いだよね!?」
「大丈夫だってば。これの凄いところは、かざして宣言すれば即発動で、MP消費しないってこと。他の魔法と違って、プレイヤーがイメージを固めたりする必要がないんだぜー」
「へー、便利だねー」
でも、それだけ便利なら、いろんな人が使ってそうな気がするけど……今まで見たことないよね?
なんで?
「……呪符代がかかる。ただそれだけにして、最大の欠点だ……」
「ああ、なるほど……」
ケートいわく、呪符は一回使うと燃え尽きてなくなってしまうらしい。
完全な使いきりタイプの魔法らしく、作成にも手間がかかることから、値段が高く……人気がない。
ちなみにお値段は、【火魔法】の『プチフレイム』級で、一枚2000リブラ。
うん、それは高いね。
「ただ、作成用の素材はそこまで面倒じゃないんだにゃー。だから、リンやミトちゃんの手が回せるなら、お願いできるんじゃないかにゃーって」
「なるほど。もし大丈夫って言ってもらえれば、格安で枚数が揃えられるかも?」
「そういうことだぜい!」
なるほど、なるほど……。
まあ、最終的にどうするかはわからないけど、ひとまずは試してみるべきかな?
使い勝手とか、そういうの。
「にひひ、乗り気になったっぽいですな?」
「まあ、うん。ちょっと違うことするのも楽しそうだしねー」
「イエスだぜ。ゲームだし、いろんなことに手を出すのも醍醐味ってやつだにゃー! というわけで、これは私からプレゼント。火の呪符『鬼火』と、雷の呪符『天雷』、各10枚だぜー」
ケートから差し出された札を受け取って、改めてしっかりと見てみる。
両方とも白い紙に赤い模様なのは変わらないけど、火の呪符は、文字を囲ってる部分が、どことなく炎っぽい感じ。
その点、雷の呪符はギザギザしていて、どことなく雷っぽい感じの模様になっていた。
これは、他の属性の呪符も気になるねー。
「見た目、結構オシャレでしょ。お店の人に聞いたら、魔法のグレードが上がると、インクの色が変わるんだってさ」
「へー。面白いね」
「うむうむ。とりあえず、最下級の魔法は赤インクだから、ひとまずそれは覚えておいてねー」
「はーい」
軽く返事をしながら、私はアイテムボックスに呪符をしまっていく。
次の戦闘あたりで使ってみようかな。
魔法かー、使うの初めてだなー。
「さて、セツナの新しいスキルも、一応固まったことだし……出よっか」
「ん、そうだね」
「もう外は日も落ちてるし、一旦ログアウトして、晩御飯食べたらまたログインかにゃ」
「あ、私、お風呂入ってからだから、ちょっと遅くなるかも」
基本はご飯のあとにお風呂なのだ。
でもそうなると、早くて夜9時過ぎなんだよねー。
「ほいほい。それじゃ、またあとでー」
「はーい。またね」
会計を済ませ、エルマンの外で私達はログアウトした。
とりあえず……ご飯までは、夏休みの宿題、かなぁ。
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名前:セツナ
所持金:210,740リブラ(-850)
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.9】【秘刃Lv.2】
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