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第三章『君には届かない』
女子会っぽくない女子会(二人)
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「そういえば、ケート。ミトさんになにか頼んでなかった?」
喫茶エルマンで新作ケーキを堪能していた私は、箸休め……もとい、フォーク休めに、対面のケートへとそんなことを訊いていた。
ちなみに、エルマンの新作ケーキは、お茶に使われる茶葉を使った、少し大人なケーキだった。
ほんのりとした苦味と、柔らかな口溶けのクリームがマッチして、絶妙なハーモニーを奏でている。
……美味しい。
「んー? ああ、アレはなんていうか、使う機会が来なければいいなーって思ってるやつだねー」
「……わざわざ頼んだのに?」
「にっひっひ。それはほらアレですよ。もしもの備えってやつでさあ」
「まあ良いけど。そのもしもの備えは、そもそもなんのためにお願いしたのよ」
言って、甘いカフェオレ的な飲み物を飲み、私はホッと一息つく。
そんな私に少し笑いつつ、ケートは「それはまあ、その時のお楽しみってことで」と、ケーキにフォークを突き刺した。
ケートはこう見えて、少し渋めのお菓子も好きだったりする。
モンブランとか、抹茶のケーキとか。
「それよりもこの先どうすっかねー。二層のボスは未だ一体も見つからず、三層ゲートも見つからず、だぜー」
「だねー。例のあの人は何か言ってないの? ほら、一層を走り抜けた人」
「あー、あの人の報告はあったけど、なーんのヒントにもなりませんなー。二層は西側の大河以外全領域荒野で、ダンジョンがありそうな山も洞窟も谷も見当たらなかったってさー。ちなみに、大河の向こう側はエリアとして存在してなさそうだって」
「そっかー。それはもうどうしようもないね」
そもそも、ダンジョンもないってなると、本格的に困っちゃうよねー。
というか、ゲートってダンジョンの奥にあるものって認識で間違ってない……よね?
んー、一層の時みたいに、イーリアスのNPCが何か知ってたりしないのかな?
「ま、なんにしても、ひとまずはナイン君の装備が完成するのを待つ感じかな」
「そうなの?」
「あーゆーちょっと強くて、名が知られてるプレイヤーとは親しくなっとくのが吉なんだぜ。まあ、それが面倒事を呼ぶ場合もあるけど……」
「……それって本当に良いことなの?」
語尾が弱くなっていくケートに、じーっと目で圧力を掛けていけば、「たぶん、にゃ……」とケートは顔を逸らしていく。
その反応に私はため息をついて、「まあ、いいけど」と話題を断ち切った。
正直、ケートのことだから、ナインの装備が気になるってだけなんだろうけど。
「そういえば、生産イベントで優勝したアイテムが、課金ショップで販売開始されたんだぜ!」
「あ、そうなの?」
「うむー。課金アイテムだから、交換や譲渡は不可なんだけど、サンプルとして持っておきたいって生産プレイヤーは多いみたいだにゃー。ちなみに、リンの装備一式が3000円、ミトちゃんのジュースが一杯200円で、楽器が2000円だにゃー」
「へー、結構するんだねー」
といっても、高すぎるというほど高くはないのかもしれない。
特に、カリンの装備一式なんて、3000円で買えるならかなりお得感ある完成度だったし。
あと、ドリンク200円っていう微妙な値段設定は誰が考えたんだ……。
「さすがにオリジナルよりは、装備の能力が落とされてるっぽいけどにゃー。まあ、リンの本気装備が出回ったら、ちょっとバランス崩壊しちゃいそうだし」
「そこまで崩壊する? 使ってる素材も普通の素材だし、そんなにはならないんじゃない?」
驚く私に、ケートは「ノンノンだぜ」と、人差し指を揺らし、ニタッと笑う。
その顔、あんまりやらない方がいいと思うよ?
というか、ケートのドヤ顔とかキメ顔とかって、微妙にイラッとするレベルだから、その辺もまとめて封印した方がいい。
「普通の素材でも、縫製の質や裁断面の処理、鉄なら炉の温度調整などなど、職人の技術によって完成品の質は大きく変わるんだぜ。同じ木で同じ形の木彫りの熊を作っても、人それぞれ顔が違う、みたいな感じかにゃー」
「その例えはちょっと分かりにくいと思うけど、まあ、うん」
「だから、リンが本気で時間をかけて作り上げた装備は、ちょっとグレードがおかしいことになるんだぜ。もちろん私達の装備も、ちょっとおかしいことになってると思うにゃー」
その、ちょっとおかしいレベルの装備を常に着てたのか、私は。
……あんまり目立たないレベルの服を一着買っとこうかなー。
街を散策するときに目立ちすぎるのもアレだし。
「でも、私達の装備を作ったときって、まだカリンさんのスキルレベルは低かったんじゃないの? そんなにグレード高いのができる?」
「まあ、成功率は下がると思うけど、ある程度はプレイヤーの腕次第だからにゃー。そのくらいのハンデなら、ものともしない気がするぜ」
さすがカリン。
でもそうなると、私達の装備って、ここからしばらく変える必要がないってことなんじゃ……。
んー、ずっと同じ服着てるのもねー、かわいいけど。
「にひひ。セツナは今、ずっと同じ装備かーって思ってるでしょ?」
「そうだけど……?」
「そんなセツナに、ちょっとした案がありまして……」
そう言ってケートは、ちょいちょいっと手招きする。
そんなケートに首を傾げつつ、私は机の上に身を乗りだし、耳をケートに近づけた。
「セツナはん、少しの間刀を置く気はないかにゃ?」
「……え?」
-----
名前:セツナ
所持金:211,590リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.9】【秘刃Lv.2】
喫茶エルマンで新作ケーキを堪能していた私は、箸休め……もとい、フォーク休めに、対面のケートへとそんなことを訊いていた。
ちなみに、エルマンの新作ケーキは、お茶に使われる茶葉を使った、少し大人なケーキだった。
ほんのりとした苦味と、柔らかな口溶けのクリームがマッチして、絶妙なハーモニーを奏でている。
……美味しい。
「んー? ああ、アレはなんていうか、使う機会が来なければいいなーって思ってるやつだねー」
「……わざわざ頼んだのに?」
「にっひっひ。それはほらアレですよ。もしもの備えってやつでさあ」
「まあ良いけど。そのもしもの備えは、そもそもなんのためにお願いしたのよ」
言って、甘いカフェオレ的な飲み物を飲み、私はホッと一息つく。
そんな私に少し笑いつつ、ケートは「それはまあ、その時のお楽しみってことで」と、ケーキにフォークを突き刺した。
ケートはこう見えて、少し渋めのお菓子も好きだったりする。
モンブランとか、抹茶のケーキとか。
「それよりもこの先どうすっかねー。二層のボスは未だ一体も見つからず、三層ゲートも見つからず、だぜー」
「だねー。例のあの人は何か言ってないの? ほら、一層を走り抜けた人」
「あー、あの人の報告はあったけど、なーんのヒントにもなりませんなー。二層は西側の大河以外全領域荒野で、ダンジョンがありそうな山も洞窟も谷も見当たらなかったってさー。ちなみに、大河の向こう側はエリアとして存在してなさそうだって」
「そっかー。それはもうどうしようもないね」
そもそも、ダンジョンもないってなると、本格的に困っちゃうよねー。
というか、ゲートってダンジョンの奥にあるものって認識で間違ってない……よね?
んー、一層の時みたいに、イーリアスのNPCが何か知ってたりしないのかな?
「ま、なんにしても、ひとまずはナイン君の装備が完成するのを待つ感じかな」
「そうなの?」
「あーゆーちょっと強くて、名が知られてるプレイヤーとは親しくなっとくのが吉なんだぜ。まあ、それが面倒事を呼ぶ場合もあるけど……」
「……それって本当に良いことなの?」
語尾が弱くなっていくケートに、じーっと目で圧力を掛けていけば、「たぶん、にゃ……」とケートは顔を逸らしていく。
その反応に私はため息をついて、「まあ、いいけど」と話題を断ち切った。
正直、ケートのことだから、ナインの装備が気になるってだけなんだろうけど。
「そういえば、生産イベントで優勝したアイテムが、課金ショップで販売開始されたんだぜ!」
「あ、そうなの?」
「うむー。課金アイテムだから、交換や譲渡は不可なんだけど、サンプルとして持っておきたいって生産プレイヤーは多いみたいだにゃー。ちなみに、リンの装備一式が3000円、ミトちゃんのジュースが一杯200円で、楽器が2000円だにゃー」
「へー、結構するんだねー」
といっても、高すぎるというほど高くはないのかもしれない。
特に、カリンの装備一式なんて、3000円で買えるならかなりお得感ある完成度だったし。
あと、ドリンク200円っていう微妙な値段設定は誰が考えたんだ……。
「さすがにオリジナルよりは、装備の能力が落とされてるっぽいけどにゃー。まあ、リンの本気装備が出回ったら、ちょっとバランス崩壊しちゃいそうだし」
「そこまで崩壊する? 使ってる素材も普通の素材だし、そんなにはならないんじゃない?」
驚く私に、ケートは「ノンノンだぜ」と、人差し指を揺らし、ニタッと笑う。
その顔、あんまりやらない方がいいと思うよ?
というか、ケートのドヤ顔とかキメ顔とかって、微妙にイラッとするレベルだから、その辺もまとめて封印した方がいい。
「普通の素材でも、縫製の質や裁断面の処理、鉄なら炉の温度調整などなど、職人の技術によって完成品の質は大きく変わるんだぜ。同じ木で同じ形の木彫りの熊を作っても、人それぞれ顔が違う、みたいな感じかにゃー」
「その例えはちょっと分かりにくいと思うけど、まあ、うん」
「だから、リンが本気で時間をかけて作り上げた装備は、ちょっとグレードがおかしいことになるんだぜ。もちろん私達の装備も、ちょっとおかしいことになってると思うにゃー」
その、ちょっとおかしいレベルの装備を常に着てたのか、私は。
……あんまり目立たないレベルの服を一着買っとこうかなー。
街を散策するときに目立ちすぎるのもアレだし。
「でも、私達の装備を作ったときって、まだカリンさんのスキルレベルは低かったんじゃないの? そんなにグレード高いのができる?」
「まあ、成功率は下がると思うけど、ある程度はプレイヤーの腕次第だからにゃー。そのくらいのハンデなら、ものともしない気がするぜ」
さすがカリン。
でもそうなると、私達の装備って、ここからしばらく変える必要がないってことなんじゃ……。
んー、ずっと同じ服着てるのもねー、かわいいけど。
「にひひ。セツナは今、ずっと同じ装備かーって思ってるでしょ?」
「そうだけど……?」
「そんなセツナに、ちょっとした案がありまして……」
そう言ってケートは、ちょいちょいっと手招きする。
そんなケートに首を傾げつつ、私は机の上に身を乗りだし、耳をケートに近づけた。
「セツナはん、少しの間刀を置く気はないかにゃ?」
「……え?」
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名前:セツナ
所持金:211,590リブラ
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防具:戦装束『無鎧』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.9】【秘刃Lv.2】
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