また、つまらぬものを斬ってしまった……で、よかったっけ? ~ 女の子達による『Freelife Frontier』 攻略記

一色 遥

文字の大きさ
上 下
43 / 111
第二章『名前をつけるなら』

火花散る

しおりを挟む
「あ、セツナさん、お帰りなさい。グレンさん達の試合、もう終わっちゃいますよ?」

「うん、ちょっとね」

「……えっと、何かありました? その、ケートさんは」

「だーいじょーぶ。ちょっと宣戦布告されただけだから」

 そう言うと「えっ、えっ? 宣戦布告?」と、ワタワタし始めたミトに笑いつつ、試合を眺める。
 すると闘技場では、双剣を持ったミシェルが、グレンに追い詰められていた。
 あー、確かにもうすぐ終わりそうだねー。

「予想してたけど、ミシェルさんじゃグレンさんの防御を突破できなかった感じかな?」

「え、あ、はい。グレンさんが丁寧に一つずつ潰していった感じです」

「相性最悪」

「あはは、その通りかも。ミシェルさんの戦い方って、本来手数で押すタイプだもんね。防御重視のグレンさん相手は相性悪いだろうなぁ……」

 そんなこんな言っていれば、グレンがミシェルを倒し、三位をもぎ取っていた。
 順当順当っと。

「さてと……それじゃ、行ってくるかな」

 戻ってきたばかりだけど、そう言って私は席を立つ。
 すると後ろから「あの、セツナさん」と、ミトの声が掛かった。

「頑張ってきてください。私もカリンさんも、お二人のどちらが勝たれても、嬉しいですし、悔しいですけど……できれば全力で戦って、満足いく結果になって欲しいって思ってます。だから頑張ってきてください」

「ん、頑張れ」

「……うん、やってくる。ケートにも“本気で来い。叩き折ってやる”って言われちゃったしね」

 その返しに、ミトは「え!?」って驚いて、カリンは静かに頷く。
 だから私はちょっと笑っちゃって、締まらない声で「行ってきます」と、部屋を後にした。



 私がゲームでケートに勝ったことは、ただの一度もない。
 それこそ、フリフロ内の決闘システムでの勝利が、本当に初めての勝利だった。

「そういった意味では、本当に、初めてゲームで隣に立ててるのかもね」

 一人で呟いて、一人で笑って、一人で歩く。
 隣には誰もいない、でも、この先にケートがいるのは分かってる。
 だから私は行くんだ……ケートのところまで。


「や、セツナ。さっきぶりだぜい」

「うん、ケートも。作戦は考えてきた?」

「もちろんだにゃー。……足腰立たなくしてあげる」

「わ、こわこわー。……やれるものなら、やってみなさい」

 お互いに笑顔を張り付けながらも、目にだけは熱を灯らせて。
 きっとミトが見たら「あわわわ」と、またワタワタするんだろうなぁ、とか思っちゃう。
 でも、今はきっとそれでいい。

『それでは決勝戦、セツナ対ケートを始めます。両者準備は良いですか? それでは、試合開始です!』

「ふッ!」

「全面展開、『ウィンドウォール』! 【魔法連結】『クリエイトゴーレム』!」

「ふぎっ、風の壁は面倒だっ!」

「ぶん殴れ、ゴーレム!」

 行く手を遮るように発動された風の壁に動きが鈍る。
 ケートはその瞬間を逃さず、生み出したゴーレムを動かし、その土の腕を振るわせた。

「甘いッ! 【蝶舞一刀】水の型『水月』!」

「今ッ、モードチェンジ【魔法連結】『ダブルギガントハンマー』!」

 ゴーレムを両断すべしと振るった刃は、まさかのモードチェンジにて無に帰され、代わりに上下からのハンマー攻撃で返される。

「ちょっ! っととと!」

「ぐげ、あれ避けるの反則じゃん!」

 バックステップでなんとか回避すれば、ケートがムキーと怒りだす。
 いやいや、そんなこと言われても。

「むう。まあセツナ相手に、短期決戦はやっぱり無謀かー」

「そりゃ、すぐにはやられないって」

「なら次々いくべし! モードチェンジ【魔法連結】『ダブルスピニングランス』! シュート!」

 ハンマーから槍に変化したゴーレムが、私めがけて飛んでくる。
 とりあえずそれの片方を避けつつ、もう片方は弾き、回転するように前進。

「今度はこっちの番!」

「させないよ! 『アースウォール』!」

 ケートへと一直線に駆けていけば、目の前に土壁が現れる。
 ならぶっ壊して進むのが一番早い!

「【蝶舞一刀】火の型『発破』!」

「ッ対応が早い! 『ウィンドブロー』あんど、モードチェンジ【魔法連結】『リターンゴーレム』!」

 壁を壊した瞬間を狙うように風の塊が飛んでくる。
 さすがに避けれず、勘を頼りに刀を振るうも、横から攻めてきたゴーレムに吹っ飛ばされた。

「ッ! は、」

「ようやく一発……」

 かなり綺麗に入ったからか、たった一発と言えど、HPは二割ほど持っていかれた。
 ……さすがケートと言うべきか、【幻燈蝶】の弱点をしっかりと突いてきてる。
 しかし、とりあえず近づかないといけないけど……どうするかな?

「まあ、考えたところで、ケートには予想されてるか……」

「そういうこと。それじゃ次行くよ……『フレアバーン』!」

「ッ!」

 一息ついた直後に、足元からの火柱。
 それを咄嗟に前へ飛んで回避し、一気に距離を詰めていく。
  
「ぶっ飛べ、一極集中『ウィンドブロー』!」

「断る! 【蝶舞一刀】風の型『旋花ひるがお』!」

 襲い来る風の塊を、こちらも一点集中した斬撃で叩き割る。
 そして一気に距離を縮め、すれ違い様に斬りつけた。

「うぎッ! 『フレイムウォール』!」

「っと!」

 炎でできた壁を挟み、私とケートはまた距離を開ける。
 さっきの一撃がクリティカルに入って約二割。
 これはホントにキツいなぁ……。

-----

 名前:セツナ
 所持金:11,590リブラ

 武器:居合刀『紫煙』
 防具:戦装束『無鎧』

 所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.8】【秘刃Lv.2】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?

水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

動物大好きな子が動物と遊んでいたらいつの間にか最強に!!!!

常光 なる
ファンタジー
これは生き物大好きの一ノ瀬夜月(いちのせ ないと)が有名なVRMMOゲーム Shine stay Onlineというゲームで 色々な生き物と触れて和気あいあいとする ほのぼの系ストーリー のはずが夜月はいつの間にか有名なプレーヤーになっていく…………

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

処理中です...