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神に魔王が勝つための唯一にして絶対の方法
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「神様ー! ばんざーい!」
「キャー! 神様ー! ステキー!」
興奮したように嬌声を上げる民衆に対し、白く彩られた建物のバルコニーから青年が手を振る。
いや青年は……彼ではない。
煌びやかな金の髪を揺らし、見目麗しい青年に見える……女性だった。
「ありがとう! 皆、ありがとう!」
賑やかな今日は、この世界における一年のリーダーを決める投票の最終結果発表日。
そう、毎年行われるこの行事は、神たる彼女と、魔王たる少年の戦い……その決戦終了の行事だった。
「また、負けた……」
「ま、魔王様! お気を確かに! おい、水。水を持ってこい!」
視界の端で、ガクリと膝を折る少年の姿が見えた。
そしてその彼が、魔王であることも……周りの反応から分かってしまった。
――――目を合わせないでおこう……。
そう俺ことビリーアムンソン(通称ビリー)は思い、急いで目を逸らす。
しかしその行動が、彼に俺という存在を覚えさせるきっかけとなってしまったことを、このときの俺は知らなかった。
◇
「お前、僕のプロデューサーになれ!」
「……はい?」
豪奢な椅子に座ったままの少年が、ズビシッと指を突きつけながら言った言葉に、俺はただ首を傾げることしか出来なかった。
そんな俺を見かねてか、彼はまたしてもズビシッと指を突きつける。
「僕が次のパフォーマンスでアイツに勝てるよう、お前が僕をプロデュースしてみろ、ってこと!」
「言わんとしてることは分かりますけど、どうしてそうなってるのかは全く分からないんですが!? あと、この状況なんですか!? なんで俺、簀巻きにされて魔王城に連れてこられてるんですか!? ただ買い物してただけなんですけど!」
そう俺は叫びつつ、魔王城の床をビッタンビッタン跳ね回る。
まるで緩くならないってことは、この簀巻き……かなりガチでやってる簀巻きだ!
「理由の説明? そこからいるの?」
「ええ、事細かにお願いします。納得いかないと手伝いませんから」
「メンドくさい人だなぁ……」
見た目はただの少年にしか見えない魔王様は、うーんと悩んでから、俺に説明してくれる。
神魔対決でここ十年勝てていない魔王様は、魔族からの要求を通しにくく、臣民たる魔族からの信頼が損なわれつつあるらしく、来年も負けてしまうと、いよいよもって魔王の座から引き釣り降ろされる可能性があるらしい。
だからこそ、中立種族中最も数の多い人族から、一人協力者を付けて、イメージチェンジに力を注ぎたいみたいだ。
「なるほど。それで、なんで俺ですか?」
「あの結果発表の日、僕から目を逸らしたでしょ? 気付いてないと思ったら大間違いなんだから」
「あー、あはは……バレてましたか」
どうやらあの状況でも、周りを見る余力程度は残してあったようだ。
なんとも抜かりない……これが魔王として魔族の頂点に立つ存在の力か。
「でも、そうですね……。イメージチェンジって言われても、何をすれば?」
「今のままだと、僕がどれだけ民衆のためを思って話をしても、インパクトの面で負けてしまう。同じ内容でも、見た目からしてインパクトがあって人気な神には勝てない……」
「なるほど。俺が手伝うってのは、魔王様の外見的なものですか。確かに魔王様、背も低いですし、年齢としては成人でも、童顔でまだまだ子供と思われても仕方ない見た目ですからね」
「うぐっ……そ、そうだろう……。この見た目では、説得力も何もあったものではないしな……」
俺の言葉で心にダメージを負った魔王様が、力なくうな垂れる。
そんな魔王様はほっといて、俺は彼の姿をまじまじと見て……ある妙案を思い付いた。
「魔王様、これなら勝てるかもしれません……!」
「……なんだと? 何か思い付いたのか!?」
「ええ、魔王様の男らしくない細くて小さい身体と、妙に綺麗な顔と、その銀の髪があれば……!」
「褒められてない気がするんだが」
「なにを言ってますか! 才能の塊じゃないですか!」
そう、俺のイメージ通りなら……勝てる!
ビッタンビッタン跳ねながら力説する俺に少し気持ち悪さを感じたのか、魔王様は目を逸らしつつ簀巻きから解くように命令を出してくれた。
「それで、どうすればいい?」
「簡単なことですよ。魔王様……女の子になりましょう!」
「……は?」
こうして男の娘としての道を歩み始めた魔王様は……次の戦いで見事勝利を収めることとなりました。
ただし、その時には……同時に、神から求婚されるという展開もセットで着いてきたのですが。
それはまた別のお話で。
「キャー! 神様ー! ステキー!」
興奮したように嬌声を上げる民衆に対し、白く彩られた建物のバルコニーから青年が手を振る。
いや青年は……彼ではない。
煌びやかな金の髪を揺らし、見目麗しい青年に見える……女性だった。
「ありがとう! 皆、ありがとう!」
賑やかな今日は、この世界における一年のリーダーを決める投票の最終結果発表日。
そう、毎年行われるこの行事は、神たる彼女と、魔王たる少年の戦い……その決戦終了の行事だった。
「また、負けた……」
「ま、魔王様! お気を確かに! おい、水。水を持ってこい!」
視界の端で、ガクリと膝を折る少年の姿が見えた。
そしてその彼が、魔王であることも……周りの反応から分かってしまった。
――――目を合わせないでおこう……。
そう俺ことビリーアムンソン(通称ビリー)は思い、急いで目を逸らす。
しかしその行動が、彼に俺という存在を覚えさせるきっかけとなってしまったことを、このときの俺は知らなかった。
◇
「お前、僕のプロデューサーになれ!」
「……はい?」
豪奢な椅子に座ったままの少年が、ズビシッと指を突きつけながら言った言葉に、俺はただ首を傾げることしか出来なかった。
そんな俺を見かねてか、彼はまたしてもズビシッと指を突きつける。
「僕が次のパフォーマンスでアイツに勝てるよう、お前が僕をプロデュースしてみろ、ってこと!」
「言わんとしてることは分かりますけど、どうしてそうなってるのかは全く分からないんですが!? あと、この状況なんですか!? なんで俺、簀巻きにされて魔王城に連れてこられてるんですか!? ただ買い物してただけなんですけど!」
そう俺は叫びつつ、魔王城の床をビッタンビッタン跳ね回る。
まるで緩くならないってことは、この簀巻き……かなりガチでやってる簀巻きだ!
「理由の説明? そこからいるの?」
「ええ、事細かにお願いします。納得いかないと手伝いませんから」
「メンドくさい人だなぁ……」
見た目はただの少年にしか見えない魔王様は、うーんと悩んでから、俺に説明してくれる。
神魔対決でここ十年勝てていない魔王様は、魔族からの要求を通しにくく、臣民たる魔族からの信頼が損なわれつつあるらしく、来年も負けてしまうと、いよいよもって魔王の座から引き釣り降ろされる可能性があるらしい。
だからこそ、中立種族中最も数の多い人族から、一人協力者を付けて、イメージチェンジに力を注ぎたいみたいだ。
「なるほど。それで、なんで俺ですか?」
「あの結果発表の日、僕から目を逸らしたでしょ? 気付いてないと思ったら大間違いなんだから」
「あー、あはは……バレてましたか」
どうやらあの状況でも、周りを見る余力程度は残してあったようだ。
なんとも抜かりない……これが魔王として魔族の頂点に立つ存在の力か。
「でも、そうですね……。イメージチェンジって言われても、何をすれば?」
「今のままだと、僕がどれだけ民衆のためを思って話をしても、インパクトの面で負けてしまう。同じ内容でも、見た目からしてインパクトがあって人気な神には勝てない……」
「なるほど。俺が手伝うってのは、魔王様の外見的なものですか。確かに魔王様、背も低いですし、年齢としては成人でも、童顔でまだまだ子供と思われても仕方ない見た目ですからね」
「うぐっ……そ、そうだろう……。この見た目では、説得力も何もあったものではないしな……」
俺の言葉で心にダメージを負った魔王様が、力なくうな垂れる。
そんな魔王様はほっといて、俺は彼の姿をまじまじと見て……ある妙案を思い付いた。
「魔王様、これなら勝てるかもしれません……!」
「……なんだと? 何か思い付いたのか!?」
「ええ、魔王様の男らしくない細くて小さい身体と、妙に綺麗な顔と、その銀の髪があれば……!」
「褒められてない気がするんだが」
「なにを言ってますか! 才能の塊じゃないですか!」
そう、俺のイメージ通りなら……勝てる!
ビッタンビッタン跳ねながら力説する俺に少し気持ち悪さを感じたのか、魔王様は目を逸らしつつ簀巻きから解くように命令を出してくれた。
「それで、どうすればいい?」
「簡単なことですよ。魔王様……女の子になりましょう!」
「……は?」
こうして男の娘としての道を歩み始めた魔王様は……次の戦いで見事勝利を収めることとなりました。
ただし、その時には……同時に、神から求婚されるという展開もセットで着いてきたのですが。
それはまた別のお話で。
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