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第1章 少年、冒険をする
第11話 ギルドからの特殊クエスト
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「見慣れた天井だ……」
ゆっくりと目を開く。すると、そこに見えた光景はもはや慣れ親しんでしまった焦げ茶色の天井。
なぜなら、あの初クエストクリアおめでとう会から、すでに十日が経っていたからだ。
僕は相も変わらず、ここ――“竜の羽休め亭”で部屋を借りていて、そろそろここを我が家と呼んでもいいんじゃないだろうかと思っている。というか、ティアちゃんにそう言ったら「いいよ? お金さえ払ってくれるなら」と、なんとも懐が寂しくなりそうな返事をいただくことができた。もうすでにお金払ってるけど。
「ピッ」
「ん、夜空もおはよう」
「ピィ」
バサバサテトテトと、僕の顔の横までやって来た夜空に手を伸ばし、その小さい頭を撫でてあげる。すると夜空は少しくすぐったそうに目を細めた。
これも、最近ではいつもやってることだ。夜空が喜ぶので、毎朝の挨拶ついで、という感じで。
ただ、その代わり、ここ数日は手足が動くかどうかの確認をしなくなった。夜空に手を伸ばせばわかる、というのもあるんだけど、だんだんと動くことが当たり前になってきたのかもしれない。本来はこの状態が普通……だけど、僕は忘れないでおこう。動けなかった頃のことを。
「ピィ?」
「あ、ごめんごめん。ご飯に行こっか」
「ピ!」
服を着替えて、手でペタペタと髪を整えた僕の肩に夜空が着地する。もはやお決まりの定位置といった感じに、夜空は左肩にとまるようになった。
彼女は、僕がクエストをしていても、回復魔法の練習をしていても、常にそこにいてくれて、無理をしないように、時折髪を引っ張って止めてくれる。常に見られてる気がして落ち着かない時もあるけど、それよりも安心出来るのがとても嬉しい。あ、トイレの時は離れてるよ?
「あ、リヒト。おはよう」
「ティアちゃん、おはよう」
「ちょっと待ってね、準備するから」
「うん。お願い」
階段を降りて食堂に行けば、今日も元気に働いているティアちゃんが迎えてくれた。あの日以来、朝食は僕らと一緒に食べることになったのか、ティアちゃんは僕らのご飯と一緒に、自分のご飯を持ってくるようになった。
だから今日もそれは変わらない。僕の前にプレートを置いて、テーブルへ降りた夜空の前にもお皿を置いて、そして僕の対面にある椅子の前にもプレートを置いて、ティアちゃんは椅子へと腰を落とす。けれど、良いんだろうか? ティアちゃんがご飯を食べる時間が、僕が起きてくる時間でズレる形なんだけど……お店の方は?
「大丈夫。ボクがこうしてご飯食べるのは、お母さん達も了承済みだから」
「そうなの?」
「そうなの。だから気にせず食べちゃってよ」
「うん。いただきます」
言って、パンを手に取りちぎって食べる。そして付け合わせの卵焼きらしき何かを食べて、スープを飲んだときに確信した! これ、ティアちゃんが作ったやつだ!
「今日も美味しいね。ティアちゃん、ありがとう」
「っ! あ、その……おそまつさまです……」
「ピィィ……」
毎日食べてるからか、ブランディさんとティアちゃんの料理の味が分かるようになってきていて、朝食は八割くらいティアちゃん、夕食は半々くらいでティアちゃんが作ってるみたいだった。
ブランディさんに聞いたところ、ティアちゃんは今までそんなに料理をしなかったらしいんだけど、僕が来てから料理をする回数が増えたらしい。同年代で、夜空以外仲間のいない僕のサポートをしたいから、ってティアちゃんは言ってたみたいだけど……。
「ピッ、ピッ!」
「わ、夜空。何、なんなの!?」
「ピィィ……!」
「ちょっと、夜空ってば! もう、恐いってば!」
呑気に思考の渦に入っていた僕を置いて、夜空とティアちゃんがまたしてもじゃれ合っていた。
夜空がティアちゃんの頭を翼で叩いてるのも、最近よく見るけど……二人(一人と一羽)とも仲いいんだなぁ。
「ねぇ、リヒト。今絶対、“二人とも仲いいんだなぁ……”とか考えてたでしょ?」
「すごい。よく分かったね」
「……リヒト、教会に行って目の治療でもして貰ってきたら? たぶん、かなりズレてるよ?」
「えぇ!? そんな……」
「まぁ、それは冗談だけど。ボクと夜空って仲良くはないから!」
「ピィ、ピー!」
「……仲良いじゃん」
それまで無差別級、大怪獣大決戦を繰り広げていた二人が、僕に反論する時だけは、結託して反論してくる。
どうみても仲が良い気がするんだけど……言ったらまた怒られそうだし、言わないでおこう。
夜空だけじゃない、僕だって空気は読めるんだ!
「今、大体何を考えてるのかは分かるんだけど……とりあえず置いといて。リヒト、エスメラルダさんが、ギルドに来て欲しいって言ってたよ」
「エスメラルダさんが? わかった、ちょっと早めに行くようにするよ」
初クエストをクリアしてからは、毎日一回から二回はギルドでクエストを受けるようにしてたけど、こんな風に呼び出されたことはなかった。
もしかして白ランクから黄ランクに上がるのかもしれない。
でも、まだそんなにクエストクリアとかもしてないんだけどな……合計で十五回くらい?
「なんだろうね?」
「ピィ……?」
夜空と顔を向き合わせても、お互い首を傾げるだけ。
でも、夜空が可愛いからいいや! うん、可愛いは正義だからね!
「ほら、早めに行くならさっさと食べよ。冷めちゃうよ」
「あ、うん」
「ピッ!」
そんなこんなで今日も賑やかに朝食を食べて、ティアちゃんに見送られながら僕たちは宿から飛び出した。
空はいつも通りの快晴。今日も温かくなりそうだ!
◇
「エスメラルダさん。おはようございます。ティアちゃんから、ギルドに来るようにって言付けをもらったんですが……」
「リヒト君、それに夜空ちゃんもおはようございます。今日の呼び出しは私ではなく、ラトグリフからですので、彼の部屋に案内しますね」
「ラトグリフさんが……? わかりました、お願いします」
そう言って彼女はいそいそとカウンターから出て、僕の前までやってくる。ちなみに、話している最中から、カウンターは“休止中”。さすが準備が良い。
ラトグリフさんは、この“ビスキュイ冒険者ギルド”のギルドマスターをしている、龍人族だ。僕の初クエストクリアおめでとう会に来てくれた人であり、なおかつ八英雄の一人“片翼のラトグリフ”と呼ばれている。
ドラゴニュートの中でも見た目はほとんど人間に近いタイプで、見た感じからはあまりドラゴニュートって感じがしないんだけど、魔力を通すと現れる鱗と翼を持っているらしい。
普段は気の良い普通のおじさんって感じだ。本人もそう言ってたし。
「ちなみに、今回なんで僕は呼ばれたんですか?」
「うーん……まぁ、言ってもいいかな? 多分予想は付いてると思うけど、リヒト君の生活態度やクエストの姿勢なんかを鑑みて、白ランクから黄ランクに上げようって話になってるの」
「あ、やっぱりそうなんですね」
「うん。でもね、何点か問題があって……その事でラトグリフさんがリヒト君を呼んでる、かな?」
「問題、ですか?」
「うん。詳しい内容はラトグリフさんから言われると思うし、そこはお楽しみってことで」
エスメラルダさんは砕けた口調で、笑いながら話をしてくれる。
ティアちゃんの開いてくれたお祝い会で素を見せてくれてからは、仕事じゃない時は砕けた口調で話してくれるようになったのだ。年齢的にも、性格的にも……お姉ちゃんがいるとこんな感じなんだろうなって思う。
「……ポルカさんも同じくらいのはずなんだけどな」
「ん? 何か言った?」
「いえ、なんでもないです」
そんな風に談笑しながらギルド内を進めば、一番奥の部屋まで辿り着いた。どうやらここが目的地だったらしい。
エスメラルダさんは、意識を切り替えるためか小さく咳をして扉を叩いた。
「エスメラルダです。リヒト君を連れてきました」
「ああ、どうぞ」
「失礼します」
ガチャッと少し重たそうな扉を開くと、目の前に見えたのは木の机とその上にある紙束。紙が詰まれすぎていてラトグリフさんが見えない……!
「すまないね。少し面倒な案件が溜まっていて……いざとなれば私が出れば良いんだけど」
「あなたはここにいてください! いつもいつも勝手に外に出るんですから!」
「時には羽を伸ばさせてくれないか? 片翼しかないのだけれど」
「その大きさならこの部屋でも十分伸ばせるでしょう!?」
「ふっ、外の空気を吸いたがるのさ……こいつは……」
「なら早く書類仕事を終わらせて、換気をしましょうね」
「まるで鬼のようだね」
「女性に鬼って言うのは、ちょっと頂けませんね!?」
部屋に入って早々、目の前で繰り広げられる応酬に、僕はとりあえず夜空を撫でることにした。ああ、夜空の頭は柔らかくて気持ちいいなぁ……。そういえば転生初日以外は、ずっと街の中にいるからか、夜空を大きくしてないかも? ときには大きくして、首元とか、お腹とかの毛をもふもふしてもいいのかもしれない。というか、したい。いいなぁもふもふ……ふふふ気持ちいいだろうなぁもふもふ……。
「……リヒト君。戻っておいでー?」
「――ハッ!? ぼ、僕はいったい……」
「大丈夫かい? もし危ない薬をやってるなら、ランクアップはお預けだよ?」
「だ、大丈夫です! ちょっと大きい夜空をもふりたいなって思ってただけなので! なにも問題ないです!」
「それでトリップしてるのは、薬やってるのと変わらないんじゃないかな……?」
「そんなことないです、大丈夫です!」
「そうかい? では、そっちに座って」
半分呆れたような顔を見せつつも納得はしてくれたのか、ラトグリフさんは部屋に置いてあったソファを指差す。そして、自分は対面を位置取る形で座った。
言われた通りソファに腰を下ろすと、おお……慣れない……妙な感覚がお尻に感じた。包み込まれるような、引っ張りこまれるような……これは魔性のアイテム! 座ったらもう動けない!
「それで、リヒト君。君を白ランクから黄ランクに上げようと思うんだけれど、二点ほど問題があってね」
この部屋に到着してから十分が経過したところで、ようやく本題が始まった。ラトグリフさんは、少し真面目な顔をしながら僕へと一枚の紙を渡してくる。
これは……クエストの依頼書?
「見たら分かると思うけれど、ランクアップのクエストだよ。本来トパーズにはそういったものが無くても良いのだけど、君の場合は少し特殊でね」
「僕が特殊、ですか?」
「ああ、君はエルフで旅人だったと聞いてるから、知らなくても無理はないのだけど……おっと、エスメラルダ。説明をお願いするよ」
「はい。かしこまりました」
理由を説明しようとラトグリフさんが話し始めたタイミングで、ちょうど扉がノックされた。
その主はラトグリフさんに用があるみたいで、エスメラルダさんが代わりに説明してくれるみたいだ。何気に忙しいんだなぁ……。
「まず本来であればムーンは冒険者見習いという扱いのため、ある程度しっかり働ける者はすぐトパーズに上げる形となります。そこで、今回リヒト君もトパーズに、という事になったのですが、そうしようと思った場合、二点ほど問題があります」
「はい」
「まず一点は、年齢です。この国では英雄様達のおかげで、差別等が少なく、奴隷なども罪として裁かれる事になったため、成人として見られる年齢が少し高く、結婚をしていない人ならば、十八歳を目処に一人の大人として扱うこととなっています。リヒト君は確か十四歳でしたよね?」
「あ、はい。そうです」
「でしたらやはり問題になってきますね。元々、街の外に一人で出られるのは原則十八歳以上からです。これは冒険者でも同じであり、街の外に出るクエストが増えるトパーズランクからは、十八に満たない者はクエストを受けにくくなるため、基本的には禁止とする形になっています」
これはなんとなく納得は出来る。安全になったから引き上げられたっていうのはちょっとよく分からないけど、成人じゃないと街の外に一人で出れないっていうのはなんとなく分かるかも。
だって、危険だしね。
「また、召喚獣の件でも問題があります」
「夜空の?」
「ピィ?」
「ええ。リヒト君も体験したかと思いますが……召喚獣は野良の魔物と間違われ、攻撃される恐れがあります」
「あー、この街に来たときみたいな感じですか」
「そうです。ですが、召喚獣を使えないとなると召喚魔法を使う冒険者は非常に肩身が狭くなってしまいます。そこで、召喚獣をギルドに登録していただき、認可を受けた召喚獣とすれば、大手を振って召喚獣とクエストを受けられるようになりますので、それを行っていただきたいのです」
「なるほど! ちなみに、今までは……」
「今までは、ムーンであることと同時に、リヒト君の診断をしたモーガンさんの進言。また、この街にはラトグリフさんがいますから、最悪の場合は……」
なるほど、そういうことですね。つまり、他の街だったらそもそも夜空を外に出して歩けなかったってことなんだろうなぁ……。
その辺りを考慮して、神様もビスキュイの街に向かいなさいって言ったんだろう。
「わかりました。それで、僕はどうすれば良いですか?」
「それは私から説明しましょう。エスメラルダ、ありがとう」
「はい。ラトグリフさん、お願いします」
前提となる問題点の話が終わったタイミングで、ちょうどラトグリフさんの方も終わったらしく、エスメラルダさんの説明を引き継いだ。
そして、ソファに座ったラトグリフさんは先ほど渡してきた紙を持ち上げて、「そこでこのクエストだよ」と言った。
「クエスト、ですか?」
「そう、これはギルドから個人宛に出す特殊クエストというものでね。ある程度の責任をギルドが負う代わりに、冒険者側の特定の行動を罪に問わないようにするというものだ。基本的にこれが出される案件としては……暗殺とかね」
「暗殺……」
そうか、街中や街の外どちらにしても、殺人は基本的に罪になるんだろう。けれど、この特殊クエストというもので“ある人物の殺害を罪に問わない”となっていれば……これを受けている人はその人物を殺しても、罪に問われないんだろう。
もちろん、他の人を殺したりすれば問われるんだろうけど……そういった人には出さないようにしてるんだろうな。
「リヒト君にしてもらいたいのは、このクエストを受けた状態で、歩いて二日の距離にある“モンテスの街”に行って召喚獣の認可を受けてきてもらいたい。この街には召喚獣の認可に必要な魔道具がないからね。それで、クエストの内容は認可を受けた状態でこのギルドに戻ってくること。簡単だよね?」
「それは、たぶん大丈夫だと思います。道中は夜空に運んでもらえば半日くらいで着けるかと思いますし」
「よし、それなら大丈夫だね。このクエスト中に限り、リヒト君の年齢や召喚獣に関しては、当ギルドが認めたという形になる。でも……一人で大丈夫かい?」
「あー……。どうでしょう……」
外に出たり、人と話したりくらいなら大丈夫なんだけど、迷ったりしないかはちょっと不安かな? もし教会みたいな分かりにくい場所に行くってなると、さすがに今度は迷いそうだし。
「よし、じゃあエスメラルダ。一緒に行っておいで」
「「えぇ!?」」
あ、エスメラルダさんと反応が被った。
「わ、私ですか!?」
「うん。良い機会だから、こちらとしても夜空君の正確なデータを知っておきたいからね。一緒に飛べばその辺は分かるだろう?」
「それはそうですけど……」
慌ててるエスメラルダさんを横目に、夜空に「二人でも大丈夫?」と聞くと、「ピィィ……」と妙に嫌そうな声を出しつつも「ピー、ピ」と頷いてくれた。他の人を乗せても大丈夫ってことなら、今度ティアちゃんでも乗せてあげようかな……空から街を見るのも楽しそうだし。
とか、そんなことを考えてたら、夜空に頭をつつかれた。痛い。
「ほら、夜空君も大丈夫って言ってるみたいだし、よろしく頼むよ」
「仕方ありませんね……。リヒト君、夜空ちゃん、よろしくね」
「はい! お任せください!」
「ピッ!」
そんなこんなで、明日の朝からモンテスへと向かうことになった。
新しい街って、どんなところなのかな?
ゆっくりと目を開く。すると、そこに見えた光景はもはや慣れ親しんでしまった焦げ茶色の天井。
なぜなら、あの初クエストクリアおめでとう会から、すでに十日が経っていたからだ。
僕は相も変わらず、ここ――“竜の羽休め亭”で部屋を借りていて、そろそろここを我が家と呼んでもいいんじゃないだろうかと思っている。というか、ティアちゃんにそう言ったら「いいよ? お金さえ払ってくれるなら」と、なんとも懐が寂しくなりそうな返事をいただくことができた。もうすでにお金払ってるけど。
「ピッ」
「ん、夜空もおはよう」
「ピィ」
バサバサテトテトと、僕の顔の横までやって来た夜空に手を伸ばし、その小さい頭を撫でてあげる。すると夜空は少しくすぐったそうに目を細めた。
これも、最近ではいつもやってることだ。夜空が喜ぶので、毎朝の挨拶ついで、という感じで。
ただ、その代わり、ここ数日は手足が動くかどうかの確認をしなくなった。夜空に手を伸ばせばわかる、というのもあるんだけど、だんだんと動くことが当たり前になってきたのかもしれない。本来はこの状態が普通……だけど、僕は忘れないでおこう。動けなかった頃のことを。
「ピィ?」
「あ、ごめんごめん。ご飯に行こっか」
「ピ!」
服を着替えて、手でペタペタと髪を整えた僕の肩に夜空が着地する。もはやお決まりの定位置といった感じに、夜空は左肩にとまるようになった。
彼女は、僕がクエストをしていても、回復魔法の練習をしていても、常にそこにいてくれて、無理をしないように、時折髪を引っ張って止めてくれる。常に見られてる気がして落ち着かない時もあるけど、それよりも安心出来るのがとても嬉しい。あ、トイレの時は離れてるよ?
「あ、リヒト。おはよう」
「ティアちゃん、おはよう」
「ちょっと待ってね、準備するから」
「うん。お願い」
階段を降りて食堂に行けば、今日も元気に働いているティアちゃんが迎えてくれた。あの日以来、朝食は僕らと一緒に食べることになったのか、ティアちゃんは僕らのご飯と一緒に、自分のご飯を持ってくるようになった。
だから今日もそれは変わらない。僕の前にプレートを置いて、テーブルへ降りた夜空の前にもお皿を置いて、そして僕の対面にある椅子の前にもプレートを置いて、ティアちゃんは椅子へと腰を落とす。けれど、良いんだろうか? ティアちゃんがご飯を食べる時間が、僕が起きてくる時間でズレる形なんだけど……お店の方は?
「大丈夫。ボクがこうしてご飯食べるのは、お母さん達も了承済みだから」
「そうなの?」
「そうなの。だから気にせず食べちゃってよ」
「うん。いただきます」
言って、パンを手に取りちぎって食べる。そして付け合わせの卵焼きらしき何かを食べて、スープを飲んだときに確信した! これ、ティアちゃんが作ったやつだ!
「今日も美味しいね。ティアちゃん、ありがとう」
「っ! あ、その……おそまつさまです……」
「ピィィ……」
毎日食べてるからか、ブランディさんとティアちゃんの料理の味が分かるようになってきていて、朝食は八割くらいティアちゃん、夕食は半々くらいでティアちゃんが作ってるみたいだった。
ブランディさんに聞いたところ、ティアちゃんは今までそんなに料理をしなかったらしいんだけど、僕が来てから料理をする回数が増えたらしい。同年代で、夜空以外仲間のいない僕のサポートをしたいから、ってティアちゃんは言ってたみたいだけど……。
「ピッ、ピッ!」
「わ、夜空。何、なんなの!?」
「ピィィ……!」
「ちょっと、夜空ってば! もう、恐いってば!」
呑気に思考の渦に入っていた僕を置いて、夜空とティアちゃんがまたしてもじゃれ合っていた。
夜空がティアちゃんの頭を翼で叩いてるのも、最近よく見るけど……二人(一人と一羽)とも仲いいんだなぁ。
「ねぇ、リヒト。今絶対、“二人とも仲いいんだなぁ……”とか考えてたでしょ?」
「すごい。よく分かったね」
「……リヒト、教会に行って目の治療でもして貰ってきたら? たぶん、かなりズレてるよ?」
「えぇ!? そんな……」
「まぁ、それは冗談だけど。ボクと夜空って仲良くはないから!」
「ピィ、ピー!」
「……仲良いじゃん」
それまで無差別級、大怪獣大決戦を繰り広げていた二人が、僕に反論する時だけは、結託して反論してくる。
どうみても仲が良い気がするんだけど……言ったらまた怒られそうだし、言わないでおこう。
夜空だけじゃない、僕だって空気は読めるんだ!
「今、大体何を考えてるのかは分かるんだけど……とりあえず置いといて。リヒト、エスメラルダさんが、ギルドに来て欲しいって言ってたよ」
「エスメラルダさんが? わかった、ちょっと早めに行くようにするよ」
初クエストをクリアしてからは、毎日一回から二回はギルドでクエストを受けるようにしてたけど、こんな風に呼び出されたことはなかった。
もしかして白ランクから黄ランクに上がるのかもしれない。
でも、まだそんなにクエストクリアとかもしてないんだけどな……合計で十五回くらい?
「なんだろうね?」
「ピィ……?」
夜空と顔を向き合わせても、お互い首を傾げるだけ。
でも、夜空が可愛いからいいや! うん、可愛いは正義だからね!
「ほら、早めに行くならさっさと食べよ。冷めちゃうよ」
「あ、うん」
「ピッ!」
そんなこんなで今日も賑やかに朝食を食べて、ティアちゃんに見送られながら僕たちは宿から飛び出した。
空はいつも通りの快晴。今日も温かくなりそうだ!
◇
「エスメラルダさん。おはようございます。ティアちゃんから、ギルドに来るようにって言付けをもらったんですが……」
「リヒト君、それに夜空ちゃんもおはようございます。今日の呼び出しは私ではなく、ラトグリフからですので、彼の部屋に案内しますね」
「ラトグリフさんが……? わかりました、お願いします」
そう言って彼女はいそいそとカウンターから出て、僕の前までやってくる。ちなみに、話している最中から、カウンターは“休止中”。さすが準備が良い。
ラトグリフさんは、この“ビスキュイ冒険者ギルド”のギルドマスターをしている、龍人族だ。僕の初クエストクリアおめでとう会に来てくれた人であり、なおかつ八英雄の一人“片翼のラトグリフ”と呼ばれている。
ドラゴニュートの中でも見た目はほとんど人間に近いタイプで、見た感じからはあまりドラゴニュートって感じがしないんだけど、魔力を通すと現れる鱗と翼を持っているらしい。
普段は気の良い普通のおじさんって感じだ。本人もそう言ってたし。
「ちなみに、今回なんで僕は呼ばれたんですか?」
「うーん……まぁ、言ってもいいかな? 多分予想は付いてると思うけど、リヒト君の生活態度やクエストの姿勢なんかを鑑みて、白ランクから黄ランクに上げようって話になってるの」
「あ、やっぱりそうなんですね」
「うん。でもね、何点か問題があって……その事でラトグリフさんがリヒト君を呼んでる、かな?」
「問題、ですか?」
「うん。詳しい内容はラトグリフさんから言われると思うし、そこはお楽しみってことで」
エスメラルダさんは砕けた口調で、笑いながら話をしてくれる。
ティアちゃんの開いてくれたお祝い会で素を見せてくれてからは、仕事じゃない時は砕けた口調で話してくれるようになったのだ。年齢的にも、性格的にも……お姉ちゃんがいるとこんな感じなんだろうなって思う。
「……ポルカさんも同じくらいのはずなんだけどな」
「ん? 何か言った?」
「いえ、なんでもないです」
そんな風に談笑しながらギルド内を進めば、一番奥の部屋まで辿り着いた。どうやらここが目的地だったらしい。
エスメラルダさんは、意識を切り替えるためか小さく咳をして扉を叩いた。
「エスメラルダです。リヒト君を連れてきました」
「ああ、どうぞ」
「失礼します」
ガチャッと少し重たそうな扉を開くと、目の前に見えたのは木の机とその上にある紙束。紙が詰まれすぎていてラトグリフさんが見えない……!
「すまないね。少し面倒な案件が溜まっていて……いざとなれば私が出れば良いんだけど」
「あなたはここにいてください! いつもいつも勝手に外に出るんですから!」
「時には羽を伸ばさせてくれないか? 片翼しかないのだけれど」
「その大きさならこの部屋でも十分伸ばせるでしょう!?」
「ふっ、外の空気を吸いたがるのさ……こいつは……」
「なら早く書類仕事を終わらせて、換気をしましょうね」
「まるで鬼のようだね」
「女性に鬼って言うのは、ちょっと頂けませんね!?」
部屋に入って早々、目の前で繰り広げられる応酬に、僕はとりあえず夜空を撫でることにした。ああ、夜空の頭は柔らかくて気持ちいいなぁ……。そういえば転生初日以外は、ずっと街の中にいるからか、夜空を大きくしてないかも? ときには大きくして、首元とか、お腹とかの毛をもふもふしてもいいのかもしれない。というか、したい。いいなぁもふもふ……ふふふ気持ちいいだろうなぁもふもふ……。
「……リヒト君。戻っておいでー?」
「――ハッ!? ぼ、僕はいったい……」
「大丈夫かい? もし危ない薬をやってるなら、ランクアップはお預けだよ?」
「だ、大丈夫です! ちょっと大きい夜空をもふりたいなって思ってただけなので! なにも問題ないです!」
「それでトリップしてるのは、薬やってるのと変わらないんじゃないかな……?」
「そんなことないです、大丈夫です!」
「そうかい? では、そっちに座って」
半分呆れたような顔を見せつつも納得はしてくれたのか、ラトグリフさんは部屋に置いてあったソファを指差す。そして、自分は対面を位置取る形で座った。
言われた通りソファに腰を下ろすと、おお……慣れない……妙な感覚がお尻に感じた。包み込まれるような、引っ張りこまれるような……これは魔性のアイテム! 座ったらもう動けない!
「それで、リヒト君。君を白ランクから黄ランクに上げようと思うんだけれど、二点ほど問題があってね」
この部屋に到着してから十分が経過したところで、ようやく本題が始まった。ラトグリフさんは、少し真面目な顔をしながら僕へと一枚の紙を渡してくる。
これは……クエストの依頼書?
「見たら分かると思うけれど、ランクアップのクエストだよ。本来トパーズにはそういったものが無くても良いのだけど、君の場合は少し特殊でね」
「僕が特殊、ですか?」
「ああ、君はエルフで旅人だったと聞いてるから、知らなくても無理はないのだけど……おっと、エスメラルダ。説明をお願いするよ」
「はい。かしこまりました」
理由を説明しようとラトグリフさんが話し始めたタイミングで、ちょうど扉がノックされた。
その主はラトグリフさんに用があるみたいで、エスメラルダさんが代わりに説明してくれるみたいだ。何気に忙しいんだなぁ……。
「まず本来であればムーンは冒険者見習いという扱いのため、ある程度しっかり働ける者はすぐトパーズに上げる形となります。そこで、今回リヒト君もトパーズに、という事になったのですが、そうしようと思った場合、二点ほど問題があります」
「はい」
「まず一点は、年齢です。この国では英雄様達のおかげで、差別等が少なく、奴隷なども罪として裁かれる事になったため、成人として見られる年齢が少し高く、結婚をしていない人ならば、十八歳を目処に一人の大人として扱うこととなっています。リヒト君は確か十四歳でしたよね?」
「あ、はい。そうです」
「でしたらやはり問題になってきますね。元々、街の外に一人で出られるのは原則十八歳以上からです。これは冒険者でも同じであり、街の外に出るクエストが増えるトパーズランクからは、十八に満たない者はクエストを受けにくくなるため、基本的には禁止とする形になっています」
これはなんとなく納得は出来る。安全になったから引き上げられたっていうのはちょっとよく分からないけど、成人じゃないと街の外に一人で出れないっていうのはなんとなく分かるかも。
だって、危険だしね。
「また、召喚獣の件でも問題があります」
「夜空の?」
「ピィ?」
「ええ。リヒト君も体験したかと思いますが……召喚獣は野良の魔物と間違われ、攻撃される恐れがあります」
「あー、この街に来たときみたいな感じですか」
「そうです。ですが、召喚獣を使えないとなると召喚魔法を使う冒険者は非常に肩身が狭くなってしまいます。そこで、召喚獣をギルドに登録していただき、認可を受けた召喚獣とすれば、大手を振って召喚獣とクエストを受けられるようになりますので、それを行っていただきたいのです」
「なるほど! ちなみに、今までは……」
「今までは、ムーンであることと同時に、リヒト君の診断をしたモーガンさんの進言。また、この街にはラトグリフさんがいますから、最悪の場合は……」
なるほど、そういうことですね。つまり、他の街だったらそもそも夜空を外に出して歩けなかったってことなんだろうなぁ……。
その辺りを考慮して、神様もビスキュイの街に向かいなさいって言ったんだろう。
「わかりました。それで、僕はどうすれば良いですか?」
「それは私から説明しましょう。エスメラルダ、ありがとう」
「はい。ラトグリフさん、お願いします」
前提となる問題点の話が終わったタイミングで、ちょうどラトグリフさんの方も終わったらしく、エスメラルダさんの説明を引き継いだ。
そして、ソファに座ったラトグリフさんは先ほど渡してきた紙を持ち上げて、「そこでこのクエストだよ」と言った。
「クエスト、ですか?」
「そう、これはギルドから個人宛に出す特殊クエストというものでね。ある程度の責任をギルドが負う代わりに、冒険者側の特定の行動を罪に問わないようにするというものだ。基本的にこれが出される案件としては……暗殺とかね」
「暗殺……」
そうか、街中や街の外どちらにしても、殺人は基本的に罪になるんだろう。けれど、この特殊クエストというもので“ある人物の殺害を罪に問わない”となっていれば……これを受けている人はその人物を殺しても、罪に問われないんだろう。
もちろん、他の人を殺したりすれば問われるんだろうけど……そういった人には出さないようにしてるんだろうな。
「リヒト君にしてもらいたいのは、このクエストを受けた状態で、歩いて二日の距離にある“モンテスの街”に行って召喚獣の認可を受けてきてもらいたい。この街には召喚獣の認可に必要な魔道具がないからね。それで、クエストの内容は認可を受けた状態でこのギルドに戻ってくること。簡単だよね?」
「それは、たぶん大丈夫だと思います。道中は夜空に運んでもらえば半日くらいで着けるかと思いますし」
「よし、それなら大丈夫だね。このクエスト中に限り、リヒト君の年齢や召喚獣に関しては、当ギルドが認めたという形になる。でも……一人で大丈夫かい?」
「あー……。どうでしょう……」
外に出たり、人と話したりくらいなら大丈夫なんだけど、迷ったりしないかはちょっと不安かな? もし教会みたいな分かりにくい場所に行くってなると、さすがに今度は迷いそうだし。
「よし、じゃあエスメラルダ。一緒に行っておいで」
「「えぇ!?」」
あ、エスメラルダさんと反応が被った。
「わ、私ですか!?」
「うん。良い機会だから、こちらとしても夜空君の正確なデータを知っておきたいからね。一緒に飛べばその辺は分かるだろう?」
「それはそうですけど……」
慌ててるエスメラルダさんを横目に、夜空に「二人でも大丈夫?」と聞くと、「ピィィ……」と妙に嫌そうな声を出しつつも「ピー、ピ」と頷いてくれた。他の人を乗せても大丈夫ってことなら、今度ティアちゃんでも乗せてあげようかな……空から街を見るのも楽しそうだし。
とか、そんなことを考えてたら、夜空に頭をつつかれた。痛い。
「ほら、夜空君も大丈夫って言ってるみたいだし、よろしく頼むよ」
「仕方ありませんね……。リヒト君、夜空ちゃん、よろしくね」
「はい! お任せください!」
「ピッ!」
そんなこんなで、明日の朝からモンテスへと向かうことになった。
新しい街って、どんなところなのかな?
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