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第3章

第345話 知られざる魔道具の世界?

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「お、アキさん! 珍しいところで」
「ん? 木山さん?」

 夜の帳が降りて暗くなったイルビンの街を歩いていると、横から聞き慣れた声が届く。
 その声に振り返ってみれば、最近よく会っている大工の木山さんが、ニカッと笑った顔で手を挙げていた。
 ……服装的に、作業が終わった後って感じだろうか?

「えっと、作業の帰りですか?」
「そうでい! アキさん達からもらった要望に添って、作業してるんで期待しといてくれい!」
「あ、はい。ありがとうございます。楽しみにしてます」

 ドンと胸を張る木山さんに頭を下げて見せれば、彼は少し照れたように笑い、「そういえば、アキさんはこんなとこで何してるんで?」と、いつもより少しうわずった声で訊いてくる。
 あまりにも聞き慣れない声に、少し笑ってしまいそうになるのをグッと我慢して、「地下古水路に行ってたんですよ」と返した。
 たぶん照れ隠しで話題を変えたんだろうし、ノッてあげる方がお互い良いはず。

「古水路? あそこはそんなに旨みが無かったと思うが」
「そうなんです? 僕はフェンさんに教えてもらったので、気分転換にって感じでしたけど」
「気分転換なら良いと思うぜい! 面白いところだしな!」
「それは確かに。ただ、鉱石を掘り出すのに時間はかかりましたけど……」

 言いながらツルハシを持ってはみるものの、ズシッとくる重さに一瞬身体が持っていかれる。
 ……筋力が足りないんだろうか?

 思いつつ木山さんを見てみれば、がっしりとした身体と服を着てても分かる太い腕。
 ……やはり時代は筋肉?

「……ふむ」
『アキ様……』
「あ、アキさん? どうしたんでい」

 見比べてみても、僕の腕とはまるで違う。
 木山さんが丸太だとすれば、僕の腕なんて細枝どころか針金レベル。
 っく! リアルの方ならもう少し太いのに!

「木山さんって、鍛えてるんですか?」
「は? なんでい、いきなり」
「いやほら、ツルハシって重たいじゃないですか。なので、もっと筋肉があれば掘り出すのが早くなるかなって」
「ああ、そういうことか。そりゃ俺の仕事はアレだからな。普段から木材だなんだと持ってるぜい! ただ……腕の太さは、初期ログインの時のキャラクタークリエイトの結果だからよ……」
「……それも、そうですね」

 リアルとゲームの姿が違うということは分かっていたのに、なぜかそこだけが頭から抜けていた。
 そうだ、そうだよ。
 ゲーム内で鍛えたって、腕の太さは変わらないんだ。

「では、ツルハシの扱いが上手くなる方法ってご存じですか?」
「ツルハシか。普通なら<採掘>スキルをゲットして、採掘行動でレベルを上げるって感じなんだが……」

 木山さんはそこまでいって、僕の方にチラッと目線を向け……「アキさんはそうじゃないよなぁ」と呟いた。

「えっと?」
「ああ、いや。アキさんは<採掘>スキル持ちってわけじゃないから、<採取>に<採掘>ほどの補助効果は望めないと思うんでい」
「ふむ」
「前にも言ったと思うんだが、<採取>スキルってのは他の採取系スキルと比べると、広く浅くカバーするスキルなんでい。色んな採取行動に対して補助が出る代わりに、特化型スキルに比べて、補助が弱い。ただ、多種多様な素材の入手に向くスキルだけに、アキさんの様な<調薬>や<魔道具作成>系のスキルとは相性が良いぜ」

 ……ん?
 魔道具作成?

「あの、木山さん。魔道具作成って?」
「ご存じないですかい? 魔力を込めると作動する道具を作るスキルですぜ。例えば……アキさんも持ってると思いやすが、“携帯コンロ”なんかも魔道具の一種ですぜい」
「え!? あれって、魔道具だったんですか!?」

 便利だなー程度に使ってたのに!?
 あ、もしかしてあのランタンも!?

「携帯コンロ以外なら、冷蔵庫や扇風機なんかもウチに置いてますぜい!」
「なんだろ……すごいはずなんだけど、手放しに喜べない気持ちですね」
「まあ、ゲームの世界観には合わないからなぁ……」
「ですねぇ……」

 だって、剣と魔法のあるファンタジーな中世風世界に冷蔵庫だよ?
 ファンタジー感がすごい薄れるよね?

「な、なんにしても、<魔道具作成>ってのは、そういったモノを作るスキルってことですぜ。俺のギルドには、<調薬>と一緒に持ってるやつも多いんで、アキさんも興味があれば取ってみればいいと思うぜい!」
「ふむ……。面白そうですし、また時間があれば」
「おう! そんときゃ、ウチのギルドメンバーに教わりゃいいはずでい! いつでも言ってくれい!」
「分かりました。……で、それは置いといて、本題はツルハシの扱いに関してなんですが……」
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