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第3章

第342話 暗中模索

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 やれることをやれるだけ――――

「そうは言ってみたものの、そうなるとじゃあどうするのって話なんだけどね……」
『あ、あはは……』

 "人に訊くのはできる限り避けて"となると、やはり勉強する、というのが一番セオリーなのかもしれない?
 でもこの世界、紙の普及率……むしろ、読み書きのレベルがそこまで高くない世界っぽかったから、図鑑や教本みたいなものは手に入り難そう。

「あ、そういえば」

 記憶に引っかかるものを感じインベントリから、一冊の本を取り出す。
 それは何度も読み込まれたような、すごくくたびれた本。
 おばちゃんが譲ってくれた、大事な大事な本だ。

「折角貰ったのに、色々ありすぎて全然読んでなかった……」

 ものすごい申し訳ない気持ちになりつつ、気合いを入れてページをめくれば、見覚えのあるイラストが沢山。
 薬草を始めとして、今まで手に入れたことのある素材……そして、見覚えのない素材の数々。

 こ、これなら中級ポーションの材料も見つかるかも知れない!

「…………、ダメだ」
『アキ様?』
「読めない! 文字が、全然、分からない!!」
『あ、あぁ~……』

 前回見たときは、軽く見る程度だったから気付いてなかったけど、採取できる場所とか、薬効とか注意点とか、多分書いてあるであろう事柄がまるで読めない!
 あと、本の後半にあるレシピっぽい部分も全然分からない……。

「宝の持ち腐れが過ぎる……」
『えっと……文字の勉強、しますか?』
「読めるようにはなりたいけど、きっと途轍もない時間がかかると思う。文章だって、英語で言うところのローマ字表記って訳じゃなくて、単語単語で意味があるとかってパターンだろうし」

 そうなってくると、この本の解読だけでもどれだけの時間が掛かるか。
 違うページを見比べて同じ文字列を探したり、持ってる素材の名称なんかで文字を知ったりは出来そうだけど……可能ならば読める人に教わって勉強した方が良いだろう。
 勘違いとか間違いとかしてても、一人じゃ気付けなかったりするからね。

「でも今は少しの情報でも欲しいから、っと……」

 本に描かれている薬草の絵を探し出して、"薬草の名前"を頭に入れる。
 そして忘れないうちにレシピページをめくって、薬草しか使わないレシピを探せば、最下級ポーションだと思われるページが……。

「あった! ……たぶん、これ、かな?」

 確証は無いけれど、瓶っぽい絵が描かれてるし、材料も多分薬草と水だけ。
 いや、この文字列が水かどうかの確信はないんだけども。

 とりあえずそれは置いといて、レシピページの題っぽいところから"最下級ポーション"って文字列を覚えて……。

『"ポーション"という文字のあるレシピを探す、ですね?』
「うん、その通り。見つかったら、今度は使用素材の名前を確認して、その素材ページを探すって感じで」

 そうやって探せば、"○○ポーション"のレシピと、素材が見つけられるかもしれない。
 ……載ってれば、だけど。

「まあ、考えてるよりも前には進むかもだし、探してみよーっと」
『はい!』


◇◇◇


『アキ様? どうでしょうかー?』
「んー……」

 シルフの声に反応しつつ、周囲を見渡してみるも、視界に広がるのは一面の緑。
 前にラミナさんと来た風車小屋の最上階から<千里眼>を発動してみてはいるものの、僕が探しているものは影も形も見当たらなかった。

「やっぱり見当たらないねー。イルビンの周辺で取れるものじゃないのかも」
『なるほど……』

 事実、イルビンの街は商業都市だから。
 イルビンの街以外の村や街から持ち込まれた商品も、イルビンでは目にすることがある。
 それはつまり、イルビンで中級ポーションが買えたからって、イルビン近くに素材があるってことにはならないってことだ。
 ……素材も別の村や街から持ち込まれてるかもしれないしね。

「でも、何度か見て回ったけど、それっぽい素材はお店に並んでなかったし……かといって中級ポーションを売ってる人に訊くのも、営業妨害みたいな感じになりそうだし」
『皆様、作られるよりは、やはり買って頂きたいでしょうから……』
「だよねぇ」

 そうなるとやっぱり、プレイヤー同士での情報交換が良さそうだけど、製造方法に関しては結構デリケート部分になるから、迂闊には訊けないし。
 じゃあ生産に関わって無さそうなプレイヤーで、こういうのに詳しそうな人ってなると……。

『……トーマ様、でしょうか?』
「そうなるよね……」
『情報となると、どうしてもトーマ様がお強いかと』
「それはそうなんだけど。でも、トーマ君、トーマ君かー。んー……」

 彼なら知ってそうっていうか、多分知ってるだろうけど。

「でも、今回はやめとこうかな。別に急いでるわけじゃないしね」
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