337 / 345
第3章
第338話 会議は特に踊らない
しおりを挟む
――――紙を探して回った日から、数日が経過していた。
その間、僕は学校に行っては、帰ってログインしてを繰り返し……特にこれといって何かが進歩したこともなく、日々を過ごしていた。
が、しかし……木山さん達、建築系プレイヤーの皆はそんな僕らを尻目に、毎日コツコツと作業を続け、僕らのギルドホームをほぼ8割完成させていた。
あとはほとんど内装だけらしい。
「てなわけで、アキさん達には、このタイミングで内見をしてもらいてぇ!」
「内見? 早くない?」
「ん、未完成。早い」
「だねー! 大丈夫、完成するまで楽しみに待ってるよー!」
木山さんのギルドである“クリエイター総合ギルド”に併設されたカフェに呼ばれた僕らは、呼び出した本人である木山さんと一緒にお茶をしながら、話を聞いていた。
ちなみに今いるメンバーは、リュンさんを除くギルドメンバー全員+木山さん。
フェンさん曰く、リュンさんは『話し合いなんざ、儂がおらんでも問題なかろう』って言ってたらしい。
……まあ、確かにその方がスムーズに進む可能性はあるけど。
等々、そんなことを考えていた僕の前で、木山さんが「いやいやいやいや、そうじゃねえんでさぁ!」と手を振りながら、声を上げる。
「内装入れる前だからこそ、見てもらいてぇんですよ!」
「……?」
「一応こちとら依頼って形で作らさせてもらってるわけで、設備を置く位置だとか細かい調節がありゃ、現場で聞いときたいんでい!」
「……えっと、僕らは家のことに関しては素人なんですけど、それでも意見って必要なんですか?」
「そりゃ、構造だとか導線だとか、俺が見て気になるところがありゃ、ちょいちょい口出しはさせて貰うぜい? ただ、やっぱり使い方は人それぞれだからなぁ……その辺を考慮して作られた家の方が、使う当人からしても使いやすいってもんだろ?」
言われてみれば確かにそうだ。
今のところ作業中に困ったことはあまり無いけど、もし作ってくれた人の想定と、僕の作業順が違えば、導線が合わずに困ったことになるかもしれない。
コンロの高さや、水道の位置、換気のための窓とか、道具をしまう棚などなど……こだわってないつもりだったけど、それは今までが"それなりに使いやすい状態"だったからなんだろう。
「……そういえば、コンロの高さが合わなくて腰が痛くなるとかって話、リアルで時々聞きますね」
「ん。高さは大事。洗い場の広さとか深さも」
「そうねぇ……。メンバーの中だと、ミーだけ身長が頭一つ高いからぁ……」
「そういえばそうですね。僕らの中だと、一番低いのがリュンさんで、次がラミナさん?」
「違う、姉さん」
「えー、私の方が高いよー! だってお姉ちゃんだし!」
「関係ない」
ワーワーと言い合いながらも二人は自然と立ち上がり、僕らが見ている前で背中合わせに直立する。
そしてあろうことか、僕に対して「アキちゃん! どっちが高い!?」と判断を委ねてきた。
……いや、僕としてはどっちでもいいんだけど。
でも、ここで"二人ともほぼ変わらないから、気にしなくても大丈夫だよ"とか言おうとも、絶対聞く耳持ってくれないどころか、余計にヒートアップしそうだし。
ふむ、それなら……。
「僕としては、背が低い女の子も可愛いと思うし、好きだけどね」
「……ん。低くてもいい」
「えー!? なら私もー!」
「姉さんの方が高い。姉さんだから」
「いや、お姉ちゃんだけど、それは身長に関係ないじゃん!?」
いやいや、ハスタさんがそれ言ってたよね?
「ていうか、収拾付かないし、話を本題に戻そうよ。ね、ラミナさん、ハスタさん」
「ん、同意」
「むー、アキちゃんがそう言うなら。お姉ちゃんだし、寛大な心ってやつで!」
ふんっと胸を張ったハスタさんと対照的に、頷いただけでラミナさんは椅子へと座り直す。
そんな僕らを見て木山さんは「お、ようやく終わったか?」と、いつの間にか取り出していた家の図面をテーブルの上へと広げた。
家は地下1階+地上3階建て。
1階に玄関、リビングや台所、それに僕の作業室。
2階に僕の部屋とラミナさんの部屋、あとフェンさんの部屋があって、3階にハスタさんの部屋とリュンさんの部屋がある。
もちろんそれ以外にも、物置だったり、万が一人が増えた時用の空き部屋とか、僕の作業室が使えなくなった時のためのサブ作業室とか……なんだか色々あったりはするが。
あと、ハスタさんとリュンさんが希望していた訓練所兼、アスレチックエリアは、庭のほぼ八割を使って作ってくれるらしい。
いったいどんなモノが出来るのか……は完成までお楽しみに、と図面に書いてあった。
……いや、図面に書いてないっておかしいよね?
「とりあえず、今見てもらってる図面の通りに作ってはいるが、この後実際に部屋に入ってもらって、意見をもらいてぇ。もちろん実際の部屋って言っても、まだ未完成だが、なんとなくの雰囲気が分かる程度には作れてるはずだからよ!」
その間、僕は学校に行っては、帰ってログインしてを繰り返し……特にこれといって何かが進歩したこともなく、日々を過ごしていた。
が、しかし……木山さん達、建築系プレイヤーの皆はそんな僕らを尻目に、毎日コツコツと作業を続け、僕らのギルドホームをほぼ8割完成させていた。
あとはほとんど内装だけらしい。
「てなわけで、アキさん達には、このタイミングで内見をしてもらいてぇ!」
「内見? 早くない?」
「ん、未完成。早い」
「だねー! 大丈夫、完成するまで楽しみに待ってるよー!」
木山さんのギルドである“クリエイター総合ギルド”に併設されたカフェに呼ばれた僕らは、呼び出した本人である木山さんと一緒にお茶をしながら、話を聞いていた。
ちなみに今いるメンバーは、リュンさんを除くギルドメンバー全員+木山さん。
フェンさん曰く、リュンさんは『話し合いなんざ、儂がおらんでも問題なかろう』って言ってたらしい。
……まあ、確かにその方がスムーズに進む可能性はあるけど。
等々、そんなことを考えていた僕の前で、木山さんが「いやいやいやいや、そうじゃねえんでさぁ!」と手を振りながら、声を上げる。
「内装入れる前だからこそ、見てもらいてぇんですよ!」
「……?」
「一応こちとら依頼って形で作らさせてもらってるわけで、設備を置く位置だとか細かい調節がありゃ、現場で聞いときたいんでい!」
「……えっと、僕らは家のことに関しては素人なんですけど、それでも意見って必要なんですか?」
「そりゃ、構造だとか導線だとか、俺が見て気になるところがありゃ、ちょいちょい口出しはさせて貰うぜい? ただ、やっぱり使い方は人それぞれだからなぁ……その辺を考慮して作られた家の方が、使う当人からしても使いやすいってもんだろ?」
言われてみれば確かにそうだ。
今のところ作業中に困ったことはあまり無いけど、もし作ってくれた人の想定と、僕の作業順が違えば、導線が合わずに困ったことになるかもしれない。
コンロの高さや、水道の位置、換気のための窓とか、道具をしまう棚などなど……こだわってないつもりだったけど、それは今までが"それなりに使いやすい状態"だったからなんだろう。
「……そういえば、コンロの高さが合わなくて腰が痛くなるとかって話、リアルで時々聞きますね」
「ん。高さは大事。洗い場の広さとか深さも」
「そうねぇ……。メンバーの中だと、ミーだけ身長が頭一つ高いからぁ……」
「そういえばそうですね。僕らの中だと、一番低いのがリュンさんで、次がラミナさん?」
「違う、姉さん」
「えー、私の方が高いよー! だってお姉ちゃんだし!」
「関係ない」
ワーワーと言い合いながらも二人は自然と立ち上がり、僕らが見ている前で背中合わせに直立する。
そしてあろうことか、僕に対して「アキちゃん! どっちが高い!?」と判断を委ねてきた。
……いや、僕としてはどっちでもいいんだけど。
でも、ここで"二人ともほぼ変わらないから、気にしなくても大丈夫だよ"とか言おうとも、絶対聞く耳持ってくれないどころか、余計にヒートアップしそうだし。
ふむ、それなら……。
「僕としては、背が低い女の子も可愛いと思うし、好きだけどね」
「……ん。低くてもいい」
「えー!? なら私もー!」
「姉さんの方が高い。姉さんだから」
「いや、お姉ちゃんだけど、それは身長に関係ないじゃん!?」
いやいや、ハスタさんがそれ言ってたよね?
「ていうか、収拾付かないし、話を本題に戻そうよ。ね、ラミナさん、ハスタさん」
「ん、同意」
「むー、アキちゃんがそう言うなら。お姉ちゃんだし、寛大な心ってやつで!」
ふんっと胸を張ったハスタさんと対照的に、頷いただけでラミナさんは椅子へと座り直す。
そんな僕らを見て木山さんは「お、ようやく終わったか?」と、いつの間にか取り出していた家の図面をテーブルの上へと広げた。
家は地下1階+地上3階建て。
1階に玄関、リビングや台所、それに僕の作業室。
2階に僕の部屋とラミナさんの部屋、あとフェンさんの部屋があって、3階にハスタさんの部屋とリュンさんの部屋がある。
もちろんそれ以外にも、物置だったり、万が一人が増えた時用の空き部屋とか、僕の作業室が使えなくなった時のためのサブ作業室とか……なんだか色々あったりはするが。
あと、ハスタさんとリュンさんが希望していた訓練所兼、アスレチックエリアは、庭のほぼ八割を使って作ってくれるらしい。
いったいどんなモノが出来るのか……は完成までお楽しみに、と図面に書いてあった。
……いや、図面に書いてないっておかしいよね?
「とりあえず、今見てもらってる図面の通りに作ってはいるが、この後実際に部屋に入ってもらって、意見をもらいてぇ。もちろん実際の部屋って言っても、まだ未完成だが、なんとなくの雰囲気が分かる程度には作れてるはずだからよ!」
0
お気に入りに追加
1,628
あなたにおすすめの小説
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
運極さんが通る
スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。
そして、今日、新作『Live Online』が発売された。
主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。
神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
インフィニティ・オンライン~ネタ職「商人」を選んだもふもふワンコは金の力(銭投げ)で無双する~
黄舞
SF
無数にあるゲームの中でもβ版の完成度、自由度の高さから瞬く間に話題を総ナメにした「インフィニティ・オンライン」。
貧乏学生だった商山人志はゲームの中だけでも大金持ちになることを夢みてネタ職「商人」を選んでしまう。
攻撃スキルはゲーム内通貨を投げつける「銭投げ」だけ。
他の戦闘職のように強力なスキルや生産職のように戦闘に役立つアイテムや武具を作るスキルも無い。
見た目はせっかくゲームだからと選んだもふもふワンコの獣人姿。
これもモンスターと間違えられやすいため、PK回避で選ぶやつは少ない!
そんな中、人志は半ばやけくそ気味にこう言い放った。
「くそっ! 完全に騙された!! もういっその事お前らがバカにした『商人』で天下取ってやんよ!! 金の力を思い知れ!!」
一度完結させて頂きましたが、勝手ながら2章を始めさせていただきました
毎日更新は難しく、最長一週間に一回の更新頻度になると思います
また、1章でも試みた、読者参加型の物語としたいと思っています
具体的にはあとがき等で都度告知を行いますので奮ってご参加いただけたらと思います
イベントの有無によらず、ゲーム内(物語内)のシステムなどにご指摘を頂けましたら、運営チームの判断により緊急メンテナンスを実施させていただくことも考えています
皆様が楽しんで頂けるゲーム作りに邁進していきますので、変わらぬご愛顧をよろしくお願いしますm(*_ _)m
吉日
運営チーム
大変申し訳ありませんが、諸事情により、キリが一応いいということでここで再度完結にさせていただきます。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる