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第3章
第330話 僕は足場を固めたい(希望)
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「あ、またあった」
しゃがみこんで茎を手折り、インベントリへ採ったものを放り込む。
たった15分程度で、インベントリの中には2桁を超える数の素材が溜まっていた。
「まあ、採ったとしても何が出来るのかは分かんないんだけどね」
「でもぉ、あって困るものじゃないでしょ?」
「それはそうなんだけど……」
インベントリはまだ十分に余裕があるし、ギルドホームが完成したら素材置き場も出来るから、余裕はもっと広がるだろう。
でも、何に使うか分からないものまで集めるって、犬とかカラスになった気分。
「ん」
「あ、うん。ありがとう?」
「ん」
僕の思いを知ってか知らぬか……いや、知ってるけど気にしてないって感じでラミナさんは僕に採取したものを渡してまた別の場所へ。
……やる気があるのは良いことってことにしておこう、うん。
「ぎゃー!?」
「ちぃっ!」
「ちぃって何!? ちぃってえぇぇぇぇ!?」
「ええい、ちょこまかと!」
ハスタさん達は相も変わらず、樹を伐るついでに遊んでる。
むしろ、遊ぶついでに樹を伐ってる感じになりつつあるけど、目標の数は伐れそうだ。
いざというときにはフェンさんが止めに入るだろうし、あっちのことは放っておこう。
「そうなると……本格的に何をしようかなってなるけどね……」
「えっと、アキ様。でしたら採取したものを鑑定してみてはいかがですか?」
「まあ、それくらいしかないよね。……そうしよっか」
シルフの言葉に頷いて、地面の上に座り込む。
そして、インベントリから採取した素材を出して……その多さに、今更ながらびっくり。
いやだって、何も考えずに放り込んでたのが悪いんだけど、こんなに多かったのか。
「えーっと、なになに……[黄薬草]に、[豚足花]、[ジキルの花]……。この[黄薬草]って絶対中級ポーションの材料だよね?」
「多分そうかと。中級ポーションの方が少し薄い色でしたが、近い色だと思います」
「だよねぇ」
[黄薬草:10秒かけてHPが15%回復
鼻に抜ける辛みが特徴的な薬草。料理にも使われる]
「……だってさ」
「料理にも使われるんですね……」
「まあ、からし菜みたいなものなのかも? もっとも、リアルの方のからし菜は、もっと薬草に近い緑色だけど」
ただそれでも、この[黄薬草]が中級ポーションの材料なのは、ほぼ確定かな?
問題なのは、おそらく"他にも一緒に混ぜるもの"がありそうってことなんだよね。
下級ポーションの[アクアリーフの蜜]みたいな、薬草の成分を溶け出しやすくする補助剤みたいなものが。
「ただ、それが今のところまーったく分からないから、困ってるんだけどね」
「ですね……。イルビンの街に、詳しそうな方がいれば良いのですが……」
「んー、おばちゃんみたいな雑貨屋とか、薬屋をやってる人を訪ねてみるかなぁ。……教えてくれるかは分かんないけど」
実際、プレイヤーで生産をメインにやっている人なんかは、あまりレシピを公開しないって前オリオンさんが言ってた気がする。
僕自身としては、お薬を作れる人が増えれば流通もするし、助かる人も増えるから、全然気にしないんだけど……これは生産者として考えるとやっぱりズレてるんだろうなぁ……。
でも木山さん達みたいに、お互いに助け合って成長していこうみたいな人もいるし、そのうち何かしらの動きがあるんじゃないかな。
ギルドも出来たわけだし、そのうちね、そのうち。
「……あんまりこういうことを考えてると、巻き込まれたりするから、考えないようにしとこう」
「アキ様……」
「いや、面倒ってわけじゃなくて。いや面倒なのは面倒なんだけど、なんていうかあの"ヨイショ"される空気が苦手っていうか」
木山さんもレニーさんも、シンシさんもヤカタさんも、悪い人じゃない……(シンシさんとヤカタさんは微妙なところもあるが)……んだけど、ああいうところだけは苦手なんだよねぇ。
僕って絶対人前に出るタイプじゃないから、みんなみたいに前に出るだけの実力を持ってる人からヨイショされると、もうそれだけで恐れ多いっていうか、怖い。
というか、アルさんとかトーマ君もどっちかっていうとあっち側だよね。
強いて言えば、僕だけが違うって感じかも?
「……納得出来てしまう自分が悲しい」
「あ、あはは……」
「いや、いいよ別に。僕は静かに過ごすんだ……」
そんな風に結論付けた僕を笑うように、直後――――僕の真後ろの樹がボキィ! と折れたのだった。
しゃがみこんで茎を手折り、インベントリへ採ったものを放り込む。
たった15分程度で、インベントリの中には2桁を超える数の素材が溜まっていた。
「まあ、採ったとしても何が出来るのかは分かんないんだけどね」
「でもぉ、あって困るものじゃないでしょ?」
「それはそうなんだけど……」
インベントリはまだ十分に余裕があるし、ギルドホームが完成したら素材置き場も出来るから、余裕はもっと広がるだろう。
でも、何に使うか分からないものまで集めるって、犬とかカラスになった気分。
「ん」
「あ、うん。ありがとう?」
「ん」
僕の思いを知ってか知らぬか……いや、知ってるけど気にしてないって感じでラミナさんは僕に採取したものを渡してまた別の場所へ。
……やる気があるのは良いことってことにしておこう、うん。
「ぎゃー!?」
「ちぃっ!」
「ちぃって何!? ちぃってえぇぇぇぇ!?」
「ええい、ちょこまかと!」
ハスタさん達は相も変わらず、樹を伐るついでに遊んでる。
むしろ、遊ぶついでに樹を伐ってる感じになりつつあるけど、目標の数は伐れそうだ。
いざというときにはフェンさんが止めに入るだろうし、あっちのことは放っておこう。
「そうなると……本格的に何をしようかなってなるけどね……」
「えっと、アキ様。でしたら採取したものを鑑定してみてはいかがですか?」
「まあ、それくらいしかないよね。……そうしよっか」
シルフの言葉に頷いて、地面の上に座り込む。
そして、インベントリから採取した素材を出して……その多さに、今更ながらびっくり。
いやだって、何も考えずに放り込んでたのが悪いんだけど、こんなに多かったのか。
「えーっと、なになに……[黄薬草]に、[豚足花]、[ジキルの花]……。この[黄薬草]って絶対中級ポーションの材料だよね?」
「多分そうかと。中級ポーションの方が少し薄い色でしたが、近い色だと思います」
「だよねぇ」
[黄薬草:10秒かけてHPが15%回復
鼻に抜ける辛みが特徴的な薬草。料理にも使われる]
「……だってさ」
「料理にも使われるんですね……」
「まあ、からし菜みたいなものなのかも? もっとも、リアルの方のからし菜は、もっと薬草に近い緑色だけど」
ただそれでも、この[黄薬草]が中級ポーションの材料なのは、ほぼ確定かな?
問題なのは、おそらく"他にも一緒に混ぜるもの"がありそうってことなんだよね。
下級ポーションの[アクアリーフの蜜]みたいな、薬草の成分を溶け出しやすくする補助剤みたいなものが。
「ただ、それが今のところまーったく分からないから、困ってるんだけどね」
「ですね……。イルビンの街に、詳しそうな方がいれば良いのですが……」
「んー、おばちゃんみたいな雑貨屋とか、薬屋をやってる人を訪ねてみるかなぁ。……教えてくれるかは分かんないけど」
実際、プレイヤーで生産をメインにやっている人なんかは、あまりレシピを公開しないって前オリオンさんが言ってた気がする。
僕自身としては、お薬を作れる人が増えれば流通もするし、助かる人も増えるから、全然気にしないんだけど……これは生産者として考えるとやっぱりズレてるんだろうなぁ……。
でも木山さん達みたいに、お互いに助け合って成長していこうみたいな人もいるし、そのうち何かしらの動きがあるんじゃないかな。
ギルドも出来たわけだし、そのうちね、そのうち。
「……あんまりこういうことを考えてると、巻き込まれたりするから、考えないようにしとこう」
「アキ様……」
「いや、面倒ってわけじゃなくて。いや面倒なのは面倒なんだけど、なんていうかあの"ヨイショ"される空気が苦手っていうか」
木山さんもレニーさんも、シンシさんもヤカタさんも、悪い人じゃない……(シンシさんとヤカタさんは微妙なところもあるが)……んだけど、ああいうところだけは苦手なんだよねぇ。
僕って絶対人前に出るタイプじゃないから、みんなみたいに前に出るだけの実力を持ってる人からヨイショされると、もうそれだけで恐れ多いっていうか、怖い。
というか、アルさんとかトーマ君もどっちかっていうとあっち側だよね。
強いて言えば、僕だけが違うって感じかも?
「……納得出来てしまう自分が悲しい」
「あ、あはは……」
「いや、いいよ別に。僕は静かに過ごすんだ……」
そんな風に結論付けた僕を笑うように、直後――――僕の真後ろの樹がボキィ! と折れたのだった。
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