上 下
328 / 345
第3章

第329話 はじめてのきょうどうさぎょう

しおりを挟む
「それじゃ、頑張って伐っていきましょー」
「「おー」!」

 ギルドメンバー5人総出で、木山さんが教えてくれた伐採場に来た僕らは、さっそくと作業に取りかかることになった。
 というか、僕のかけ声に反応してくれたのが、ラミナさんとハスタさんだけっていうのはなんかちょっと寂しい気がするけど……。
 でも、フェンさんとかリュンさんが「おー!」って手を上げるのは、なんだか想像出来ない気もするし、そういうものなのかもしれない。

「それでアキ。どの辺りを伐れば良いのかのう?」
「えっと、僕らのいる辺りから、大体半径30メートルくらいかな? その辺りは伐っても大丈夫らしいよ」
「ふむ。なら儂は奥からやるかの」
「なら、私はリュンちゃんについて行くよー!」
「うん。お願い」

 「別に一人でも良いんじゃが……」と、ぶつくさ言いながらも、ハスタさんと一緒に奥へと向かうリュンさんを見送り、僕もインベントリから斧を取り出す。
 そして、勢いよく近くの樹へと斧を叩きつけた。

「よいっ、しょ!」

 ドコッ、ズコッと音を立てて樹に斧を入れていくものの……やはりなかなか伐れない。
 イベントの時にも伐ったけど、やっぱり結構大変だなぁ……。

「アキちゃん。ある程度まで伐ったら、次の樹に行ってくれていいわぁ。倒すのは、ミーとラミナちゃんでやっておくわ」
「ん? 良いんですか?」
「ええ、もちろん。こちらは任せてねぇ」
「アキ、任せて」

 柔らかく微笑むフェンさんの隣で、ラミナさんが“ふんっ”と力を入れてみせる。
 力強さよりも、可愛さのほうが際だって感じられたけど……せっかくやる気を出してくれてるんだし……お願いしとくかな。

「それじゃ、僕はある程度切れ込みを入れたら、次の樹に移っていくので」
「ええ、お願いねぇ」
「はい!」

◇◇◇

「つ、つかれた……」

 ドコッ、スコッ、カコーンと樹を伐ること一時間ほど。
 僕は手の痺れと共に、激しい疲労感に襲われていた。

「そういえば、前に伐った時は……オリオンさんが折ってくれたりしたんだっけ?」

 確か掌打でドゴッとやって、折ってくれてたはず。
 今から考えても、あの威力はすさまじい気がするなぁ……。

「でも、あの時の樹よりも、なんだか今回の樹の方が硬いような気がするんだよね。前は一発で、もう少し奥まで入ってた気がするんだけど」

 それこそ、修練を積めば一発で折れそうなくらいには。
 まあ、さすがにそれはムリだろうけどね。

「あのイベントもなんだかんだで楽しかったなぁ……。みんなでいろいろ考えて、知らない人とも会ったり話したりして、結構面白かったし」
「ん。面白かった」
「まあ、途中からいろいろ流されたり、任されたりで波乱しかなかったけど……」

 その結果、ドライアドを預かることにもなっちゃったわけだし、良いことばっかりじゃないのもアレだけどね……。
 入手したスキルだって今のところ使うこともできないし、なんだか有名人扱いされるようになっちゃったし……。

「アキ、走り回ってた」
「そう?」
「ん、そう」
「そんなに走り回ってた気もしないんだけど……いや、走り回ってたかな」

 それこそ、樹を伐りに行ったりとか。
 僕としては、そろそろ落ち着いて調薬の時間を取りたいんだけど……。

「家が出来れば落ち着けるかなぁ……」
「たぶん?」
「そこは断言してほしかったりするんだけども」

 ラミナさんと少しばかりの休憩に身を任せていれば、離れた場所からは「ちょ! 危険危険ー!」と慌てたようなハスタさんの声が聞こえ……直後にズドンッと大きな地響きが飛んできた。
 音量的に、数本まとめて倒れたって感じがするんだけど。

「相変わらず、あの子達は元気ねぇ」
「あの子達っていうか、主にハスタさんが、ですよね」
「ん」
「そうねぇ。でも、リュンも楽しそうに伐ってるみたいだわぁ」

 ほのぼのと話す僕ら……ではあるが、実際のところは「うひゃー!?」とか「しぬ、死んじゃう!」とか聞こえてきているので ハスタさんとしては楽しいどころの話ではなさそうだけども。
 でも、まあリュンさんが楽しそうっていうのは分かるかな?

「木山さんからは、丸太なら50本くらいで十分って聞いてるし、もういっそこのままリュンさんに任せておいたら終わらないかなーって思ってるんだけど……」
「ん。終わりそう」
「終わりそうねぇ。ハスタちゃんが死なない限りは大丈夫そうよぉ」
「言っといてなんですけど、まるで餌みたいな扱いですね」
「ふふっ、否定はしないわぁ」

 ……後でハスタさんには、なにか美味しいものでも奢ってあげよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

チート級スキルを得たゲーマーのやりたいことだけするVRMMO!

しりうす。
ファンタジー
VRゲーム【Another world・Online】βテストをソロでクリアした主人公──────雲母八雲。 βテスト最後のボスを倒すと、謎のアイテム【スキルの素】を入手する。不思議に思いつつも、もうこのゲームの中に居る必要はないためアイテムの事を深く考えずにログアウトする。 そして、本サービス開始時刻と同時に【Another world・Online】にダイブし、そこで謎アイテム【スキルの素】が出てきてチート級スキルを10個作ることに。 そこで作ったチート級スキルを手に、【Another world・Online】の世界をやりたいことだけ謳歌する! ※ゆるーくやっていくので、戦闘シーンなどの描写には期待しないでください。 ※処女作ですので、誤字脱字、設定の矛盾などがあると思います。あったら是非教えてください! ※感想は出来るだけ返信します。わからない点、意味不明な点があったら教えてください。(アンチコメはスルーします)

ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り

星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!? ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 注意事項 ※主人公リアルチート 暴力・流血表現 VRMMO 一応ファンタジー もふもふにご注意ください。

テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ

雪月 夜狐
SF
「強くなくても楽しめる、のんびりスローライフ!」 フリーターの陽平が、VRMMO『エターナルガーデンオンライン』で目指すのは、テイマーとしてモンスターと共にスローライフを満喫すること。戦闘や冒険は他のプレイヤーにお任せ!彼がこだわるのは、癒し系モンスターのテイムと、美味しい料理を作ること。 ゲームを始めてすぐに出会った相棒は、かわいい青いスライム「ぷに」。畑仕事に付き合ったり、料理を手伝ったり、のんびりとした毎日が続く……はずだったけれど、テイムしたモンスターが思わぬ成長を見せたり、謎の大型イベントに巻き込まれたりと、少しずつ非日常もやってくる? モンスター牧場でスローライフ!料理とテイムを楽しみながら、異世界VRMMOでのんびり過ごすほのぼのストーリー。 スライムの「ぷに」と一緒に、あなただけのゆったり冒険、始めませんか? 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】 『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/270920526】

生産職から始まる初めてのVRMMO

結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。 そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。 そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。 そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。 最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。 最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。 そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件

こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。 だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。 好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。 これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。 ※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...