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第3章
第326話 ギルドの名前と一口に言っても、多種多様な様子です。
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「どーも、初めましてはじめまして。トーマのギルド“裏道新聞編集部”のメンバー、ドールと申します」
スススッとトーマ君の隣を抜けて僕らへと顔を見せた男性は、そう言って人の良い顔で笑う。
身長はトーマ君とほとんど変わらないくらいで、あまり特徴的な見た目はしていない。
言ってしまえば、ウォンさんと同じく“どこにでもいそうな人”だった。
……まぁ、ウォンさんはそれをわざとやってるみたいだけど。
「トーマのギルドメンバーと言うからには、もっと癖があるのかと思っていたが……そんなこともないんだな」
「いやー、特徴ってのを求められるのはキツイですわー。ましてやアルやアキ、リアときて、我がリーダートーマと比べられるような特徴はさすがに」
「ドール、隠さんでもええで。こいつらにはある程度フェアでいた方が都合がええ」
「おっと、そうなのか? なら、ちょいと失礼して……よっと一発」
ドールと名乗った男性が、懐に隠していたらしき風呂敷的な布を投げるように広げ、僕らの視界を遮る。
数秒にも満たない時間の後、布の向こうに見えたのは……ジンさんの姿だった。
……いや、ジンさん、かな?
「ジン……? いや、ジンではないな」
「おっと、もう見破られるかー。さすがトーマの知り合い。鋭いねぇ」
「トーマ、まさかと思うが……」
「察しの通り、元PKや。今は足を洗っとるみたいやけどな」
トーマ君がPKと言った瞬間、アルさんの雰囲気が変わった。
他の人みたいに戦闘メインにしてない僕でも分かるくらいに、ビリビリとした雰囲気を纏ってる。
……迂闊に動いたら、なんか怒られそうだ。
「アル、大丈夫やで。今見せたんも、後々、なんか大事にならんためなんやから」
「……確かに。知らなければ、気づかないうちに侵入され、被害が出ていたかもしれないか」
「そんなことしませんって。トーマにすら負けた俺が、黒鉄の旦那に勝てる道理がないですわー」
「ふむ。そうなのか?」
ジンさんっぽい姿のままのドールさんが言った言葉を、アルさんは鵜呑みにせずトーマ君に確認する。
そんなアルさんの用心深さにトーマ君は苦笑しつつ、「イベントの時にな」と、切り返した。
イベントの時ってことは……トーマ君が拠点を守ってた時のことかな?
「てなわけで、これでオーケーですやなー? この姿でいるからか、黒鉄の旦那の威圧感がやっばいんで、さっさと戻らせてもらいますわー。……ほいっと」
床に落ちていた布を拾い上げて、ドールさんはバサッと一瞬の目隠しを作る。
その布が地面に落ちたときには、彼の姿は元の姿に戻っていた。
……いったいどういう仕組みなんだろう?
「……これにはタネも仕掛けもありませんよ、碧主」
「え? あ、あはは……」
「タネも仕掛けもあるやろ。アキ、騙されんなよ? あいつ、毎回適当な言葉で煙に巻こうとする癖があるからな」
「そうなんだ。わかった、気を付けとく」
……とは言いつつも、それはトーマ君も似たようなものでは? と思ったり。
「んじゃ、話を戻すで。他のギルドの名前やったな? 大きいとっから行こか。今んとこの最大ギルドは、生産職のギルド“クリエイター総合ギルド”やな。初心者でも入りやすいようにわざと分かりやすい名前にしてるみたいやなぁ」
「そこって、もしかして木山さん達のギルド?」
「せやで。参加人数は制限一杯の100人や。ま、メンバーとしては入ってなくとも、メンバーみたいなもんも多いみたいやけどな」
「あー……」
きっとギルドには参加してなくても、ギルドの協力者みたいなのは多いってことなんだろうなぁ……。
僕もそのうちお世話になるかもしれないし、今度ギルドホームは見にいっておかないと。
「んで、次はー……あー……」
「なんだ? 言いづらいところなのか?」
「まあ、ええか。一応注意喚起も兼ねてや。“隻眼の狼”……いわゆるPKギルドってやつやな」
「なっ……」
アルさんがあげた驚きの声に、僕が驚いた声も混ざる。
PKギルドってことは、イベントの時のPKの人たちのギルドってことだよね?
あ、もしかしてガロン達も参加してたりするのかな……。
「人数は80人ほどやな。ほとんどが前回のイベントで暴れてたやつらや」
「あの時も集落を作ったりと、協力して事に当たっていたからな……。この可能性は予想はしていたが、本当に出来るとは」
「ま、それでもイベントの時は100を越えとったからな。イベント後にPKやめたやつらは、大体赤鬼に殺されとるやつやし、そういった意味ではアキんとこのギルドは安全かもしれんな」
「リュンさん……」
僕をPK達の拠点から助ける際に、陽動をしてたって話はあとから聞いてたけど、その陽動でPKをやめたくなるくらいの衝撃を与えるってどういうこと……。
「ま、他のギルド名は“Fantasy World”だとか、“肉球くらぶ”だとか、いろんなのがあるで。ほとんどのギルドは活動方針や、メンバーの集まった理由みたいなもんを名前にしとるけどな」
「活動方針や、理由……?」
「クリエイター総合ギルドなんて、そのまんまやしな。もちろん俺のギルド“裏道新聞編集部”もそのまんまや」
「その点で言えば、私たちのギルド名は理由のほうかしら。黒鉄のアルと、鉄屑のテツのパーティーメンバーで構成されてるギルドだから、“黒鉄旅団”って感じね」
「なるほど」
そう言われてみれば、他のギルドもそんな感じなのかも。
となると僕らのギルドは……理由の方かな?
だって、活動内容なんてみんなバラバラだし。
スススッとトーマ君の隣を抜けて僕らへと顔を見せた男性は、そう言って人の良い顔で笑う。
身長はトーマ君とほとんど変わらないくらいで、あまり特徴的な見た目はしていない。
言ってしまえば、ウォンさんと同じく“どこにでもいそうな人”だった。
……まぁ、ウォンさんはそれをわざとやってるみたいだけど。
「トーマのギルドメンバーと言うからには、もっと癖があるのかと思っていたが……そんなこともないんだな」
「いやー、特徴ってのを求められるのはキツイですわー。ましてやアルやアキ、リアときて、我がリーダートーマと比べられるような特徴はさすがに」
「ドール、隠さんでもええで。こいつらにはある程度フェアでいた方が都合がええ」
「おっと、そうなのか? なら、ちょいと失礼して……よっと一発」
ドールと名乗った男性が、懐に隠していたらしき風呂敷的な布を投げるように広げ、僕らの視界を遮る。
数秒にも満たない時間の後、布の向こうに見えたのは……ジンさんの姿だった。
……いや、ジンさん、かな?
「ジン……? いや、ジンではないな」
「おっと、もう見破られるかー。さすがトーマの知り合い。鋭いねぇ」
「トーマ、まさかと思うが……」
「察しの通り、元PKや。今は足を洗っとるみたいやけどな」
トーマ君がPKと言った瞬間、アルさんの雰囲気が変わった。
他の人みたいに戦闘メインにしてない僕でも分かるくらいに、ビリビリとした雰囲気を纏ってる。
……迂闊に動いたら、なんか怒られそうだ。
「アル、大丈夫やで。今見せたんも、後々、なんか大事にならんためなんやから」
「……確かに。知らなければ、気づかないうちに侵入され、被害が出ていたかもしれないか」
「そんなことしませんって。トーマにすら負けた俺が、黒鉄の旦那に勝てる道理がないですわー」
「ふむ。そうなのか?」
ジンさんっぽい姿のままのドールさんが言った言葉を、アルさんは鵜呑みにせずトーマ君に確認する。
そんなアルさんの用心深さにトーマ君は苦笑しつつ、「イベントの時にな」と、切り返した。
イベントの時ってことは……トーマ君が拠点を守ってた時のことかな?
「てなわけで、これでオーケーですやなー? この姿でいるからか、黒鉄の旦那の威圧感がやっばいんで、さっさと戻らせてもらいますわー。……ほいっと」
床に落ちていた布を拾い上げて、ドールさんはバサッと一瞬の目隠しを作る。
その布が地面に落ちたときには、彼の姿は元の姿に戻っていた。
……いったいどういう仕組みなんだろう?
「……これにはタネも仕掛けもありませんよ、碧主」
「え? あ、あはは……」
「タネも仕掛けもあるやろ。アキ、騙されんなよ? あいつ、毎回適当な言葉で煙に巻こうとする癖があるからな」
「そうなんだ。わかった、気を付けとく」
……とは言いつつも、それはトーマ君も似たようなものでは? と思ったり。
「んじゃ、話を戻すで。他のギルドの名前やったな? 大きいとっから行こか。今んとこの最大ギルドは、生産職のギルド“クリエイター総合ギルド”やな。初心者でも入りやすいようにわざと分かりやすい名前にしてるみたいやなぁ」
「そこって、もしかして木山さん達のギルド?」
「せやで。参加人数は制限一杯の100人や。ま、メンバーとしては入ってなくとも、メンバーみたいなもんも多いみたいやけどな」
「あー……」
きっとギルドには参加してなくても、ギルドの協力者みたいなのは多いってことなんだろうなぁ……。
僕もそのうちお世話になるかもしれないし、今度ギルドホームは見にいっておかないと。
「んで、次はー……あー……」
「なんだ? 言いづらいところなのか?」
「まあ、ええか。一応注意喚起も兼ねてや。“隻眼の狼”……いわゆるPKギルドってやつやな」
「なっ……」
アルさんがあげた驚きの声に、僕が驚いた声も混ざる。
PKギルドってことは、イベントの時のPKの人たちのギルドってことだよね?
あ、もしかしてガロン達も参加してたりするのかな……。
「人数は80人ほどやな。ほとんどが前回のイベントで暴れてたやつらや」
「あの時も集落を作ったりと、協力して事に当たっていたからな……。この可能性は予想はしていたが、本当に出来るとは」
「ま、それでもイベントの時は100を越えとったからな。イベント後にPKやめたやつらは、大体赤鬼に殺されとるやつやし、そういった意味ではアキんとこのギルドは安全かもしれんな」
「リュンさん……」
僕をPK達の拠点から助ける際に、陽動をしてたって話はあとから聞いてたけど、その陽動でPKをやめたくなるくらいの衝撃を与えるってどういうこと……。
「ま、他のギルド名は“Fantasy World”だとか、“肉球くらぶ”だとか、いろんなのがあるで。ほとんどのギルドは活動方針や、メンバーの集まった理由みたいなもんを名前にしとるけどな」
「活動方針や、理由……?」
「クリエイター総合ギルドなんて、そのまんまやしな。もちろん俺のギルド“裏道新聞編集部”もそのまんまや」
「その点で言えば、私たちのギルド名は理由のほうかしら。黒鉄のアルと、鉄屑のテツのパーティーメンバーで構成されてるギルドだから、“黒鉄旅団”って感じね」
「なるほど」
そう言われてみれば、他のギルドもそんな感じなのかも。
となると僕らのギルドは……理由の方かな?
だって、活動内容なんてみんなバラバラだし。
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