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第3章

第318話 澱む魔力の溜まり場

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「というわけでして……」
「ええ、分かったわぁ。ラミナが急に部屋にきたからビックリしちゃったけど、その理由なら納得ね」
「仕方なかったから」

 僕は今、わざわざリアルでラミナさんが呼びに行ってくれた相手……ギルドメンバーのフェンさんと合流していた。
 全員揃えば良かったんだけど、ハスタさんもリュンさんも……やっぱりまだダメだったらしい。
 というか、こっちの世界でお昼前ってことは、現実の方では、すでにお昼過ぎになってるはずなんだけど。

「……まぁ、リュンさんだし」
「アキ?」
「いや、気にしないで。それでフェンさんには、僕らよりも先に向かっていただいて、様子を見ておいて欲しいんですが。可能ですか?」
「そうねぇ……この辺りの魔物なら大丈夫かしら。到着したら念話するわねぇ」
「分かりました。僕らも、ガザさんと一緒に向かいますので」

 僕の言葉に頷いて、フェンさんは「行ってくるわねぇ」と、のんびり歩き出した。
 ……ずいぶんのんびりだけど、大丈夫だよね?

「アキ、ラミナ達も向かう」
「ああ、うん。ガザさんも大丈夫ですか?」
「うむ、いつでもいけるぞ」

 ガザさんが弓を掲げて僕へと見せてくれる。
 門の外に住んでいるだけあって、魔物と戦うのは平気みたいだ。
 むしろ僕よりも強いのかもしれない……。

◇◇◇

「それでガザさん。手入れしていない土地から、いろいろ湧くっていうのは?」
「見てもらえば分かるんじゃが、なんといえば良いかのう。荒れた地には、悪いものが集まりやすくなるんじゃ」
「悪いもの? 魔物とかってことですか?」
「うむ。強いて言うならば、魔物の元になるものじゃな」

 ガザさんの言葉に、僕もラミナさんも首を傾げる。
 もっとも、ラミナさんはなんとなく言いたいことが分かってるみたいで、よく分からない顔をしている僕を見て、よく分からない気持ちになっているだけみたいな感じだけど。
 つまり、よく分かってないのは僕だけってことだ。

「あの、こんなことを聞くのは変かもしれないんですが……そもそも魔物ってなんなんですか? 聞いた話だと魔物じゃない動物もいるって」
「アキ。魔物は魔力に支配された動物。元は同じ」
「魔力に支配?」
「本能が攻撃的になってる」

 ラミナさんが説明をしてくれるもののよく分からない。
 魔力に支配されると攻撃的になるってことなんだろうけど、そもそも魔力に支配されるってなんだろう……。

「魔力とは、世界に溢れている空気のようなものじゃと思ってくれればよい。綺麗な森や草原じゃと空気も澄んでいる気がするじゃろ? 逆に荒れ地や人の手の入らない地下などは、空気も澱んでいるように感じるはずじゃ。それと同じで、魔力も場所によっては毒になるのじゃよ」
「ふむふむ」
「微量であれば特に害はないが、大量に浴び続けると、身体や精神に変化を起こす。そうして生まれるのが魔物であり、その魔物が子を成し……種族として増えたものが、いま世界中に溢れている魔物というわけじゃ」

 なるほど……と僕が思っていると、ラミナさんが耳元で「ゲームだから、絶滅はしない」と、身も蓋もないことを補足してくれた。
 ……要は、魔物っていうのはそういう設定があるものの、ゲームだから倒しまくっても減らないし、次々生まれるってことなんだろう。
 ほんとに身も蓋もないな。

「だから、今回の目的地には色々湧いてそうってことなんですね?」
「うむ。あの辺りに動物はおらんが、枯れ木や水溜まりも魔物に変化することがあるからのう……」
「トレントやスライム」
「あー、そうなるわけね。なるほど……」

 ただまぁ、トレントやスライムだったらそこまで脅威でもないんじゃないかな?
 スライムは一番最初にアクアリーフと戦ったくらいしかないけど、昔から一番弱い敵って扱いだし、トレントも前回のイベントで戦ってるし。

「でも魔物になるなら、こまめに手入れをするとかしておいた方がいいんじゃないですか?」
「まぁ、それはそうなのじゃが、門の外じゃからなぁ……。それに、荒れ地の魔物を倒しきれば、整地する手間も省けるぞ」
「あ、なるほど」
「もちろん街の中の場合は、持ち主が定期的に手入れをするのが決まりじゃ。街の中で魔物を生み出すわけにはいかんからな」

 まぁ、それはそうだと思う。
 そうなると、土地の持ち主としては空き地にしてるよりも、借りるか買うかしてくれる人が現れる方が良いんだろう。
 手入れの手間も省けるし、お金になるし。

 そんなことを話ながら歩いていると、僕の脳内にノイズがはしった。

『はぁい、アキちゃん。到着したわよぉ』
「フェンさん、お疲れ様です。そっちの状況、どうですか?」
『そうねぇ……地獄絵図って感じかしら』
「……え?」

 地獄絵図ってどういうこと?
 魔物がすごいいっぱいいるとか?

『見える限りでも、トレントが20体。スライムが……30を越えてるわねぇ。あと、クレイジーラットっていう鼠がスライムと同じくらいいるわ』
「ちょ、ちょっとまってください! それって、僕らだけで対処できます!?」
『ちょっと厳しいかもしれないわぁ。リュンがいれば楽でしょうけど、ハスタちゃんだとギリギリってところねぇ』

 そうきたかぁ……。
 そうなると今僕がするべきことは、戦力を増やすことだけど……リュンさんもハスタさんも捕まらないだろうし、さてどうしようかなぁ。

「アキ?」
「あー、ちょっと待ってね。――フェンさん、とりあえず一度戻ってきてもらってもいいですか? 今の状況じゃ対応出来ないでしょうし」
『了解よぉ』
「っと、それじゃラミナさんとガザさん……一度僕らも戻りましょうか。今の戦力じゃ無理っぽいので」

 僕の言葉に、ラミナさんもガザさんも頷いて、ひとまず来た道を戻る事に。
 しかしどうするかねぇ。

◇◇◇

「はぁい、アキちゃん。ただいま」
「あ、フェンさん。おかえりなさい。すみません、わざわざ行ってもらったのに」
「いいのよぉ。偵察もミーの役目だから」

 そう言って笑うフェンさんに、僕はもう一度だけ「すみません」と頭を下げてから、フレンドリストへと視線を落とす。
 今ログインしてるのは、オリオンさんとトーマ君、それにアルさん達もログインしてるみたいだ。
 でも、僕らのギルドのことだし、出来れば僕らだけで終わらせたいんだよね……。
 さて、どうするかな。
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