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第2章 現実と仮想現実
第278話 バカだろお前らァ!?
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今回の話は、ガロン視点となります。
――――――――――――――――
「……暇だな」
俺は今、巨大なトレントを囲む木の上で、トレント相手に行われている戦闘をただ眺めていた。
あそこに混ざったところで意味が無いからな。
だが、他のやつらはどうにも暇が辛いみたいだ。
「リーダー。あの戦闘に参加してきたらダメですかねぇ」
「お前みたいな狩人が参加したところで意味ねぇだろ。矢の無駄だ」
「しかし、暇なのは耐えがたいぞ」
「うるせぇ、黙ってろ」
狩人も武闘家も、じっとしてられないのか、さっきからずっとソワソワしていて……この質問もすでに何回されたことか。
ったく、考えりゃわかることだろ?
「そんな皆に報せがあるでござるよ! アキ殿が呼んでるでござる!」
そんな中、今まで沈黙を貫いていた忍者が突然そんなことを言い出した。
あのガキが呼んでるだァ?
……おい、どういうことだよ。
「り、リーダー、顔が恐いでござるよ!」
「あぁ? 俺は普段からこんな顔だろ?」
「そ、そそそ、そうでござったな! うむ、うむ!」
「リーダーの顔が恐いのはいつものことですし。それよりも、先ほどの件、詳しく教えてくださいよ」
「あい、分かった!」
ハガクレの話を集約すると、こういうことだ。
イベントアイテムの調合素材集めを手伝った際、特殊な笛を渡していた。
そして、それが吹かれた、と。
あの笛か……俺も持ってはいるが、使ったことはないな。
「それで、その場所はどこだ?」
「うむ。上でござる」
「上、ですか? ここより上空ってことですか?」
「左様。確かアキ殿は、世界樹のダンジョンを攻略する予定であったはず。しかし笛の音が聞こえたと言うことは、今はダンジョン外にいるのかもしれぬなぁ」
あの笛が特殊な笛だとしても、ダンジョンのような出入り口以外閉じられた空間であれば、その効果範囲は非常に狭くなる。
だが、こうして聞こえたということは、外にいる……ということなんだろう。
「だが上空となると、俺らでは行けないぞ? どうするのだ、ハガクレよ」
「決まっておるでござろう? 飛ぶでござるよ!」
「……アホだろお前」
「あ、アホではないでござる! それしか手がないでござるよ!」
そう言ってハガクレはインベントリから大型の折りたたみ凧を取りだすと、俺たちに手を繋ぐよう言ってきた。
何が悲しくて男と手を繋がなきゃいけねぇのかはわかんねぇが……まぁ、どうせ暇してたんだ。
さっさと返しときたい借りもあるからな。
「では飛ぶでござるよ! 気合いで耐えるでござるよ! ――忍法、包石火の術!」
◇
「見えたでござる! 見事に囲まれてでござるなぁ」
爆風を利用して飛び上がり、途中何度か爆風を足してある程度の高さまで辿り着くと、枝の上で戦うガキ共が見えた。
前後にトレント。
道を塞ぐ形でデカいやつがいて、邪魔になってるってことか。
「でもあそこ、赤鬼がいるみたいですけど。赤鬼なら全然余裕そうな相手ですよ?」
「いや、赤鬼にとって枝の上というのは、存外戦いにくい場所でござろう。武器を振るうには足場の安定が第一でござる」
「はっ。だから忍者にやれってことだろ」
「然り。ヤイチ殿、矢にこの紐を括り付けて飛ばせるでござるか?」
「了解。ジュウゴさん、お願いします!」
「おう!」
ハガクレが出した紐を矢に括り付け、その矢と反対側の先端をジュウゴが握る。
そして、ヤイチが矢をつがえ……放った。
直後、ハガクレが凧をインベントリに回収し、全員が宙へと投げ出されるが、ジュウゴが全員を両手で掴み、枝に巻き付いた紐を使ってターザンする。
「……バカだろお前らァ!?」
「はっはっは。上手くいくとは思わなかったでござるよ!」
「ホント、滅茶苦茶ですね」
「しっかり掴まってろよ! ――<空歩>!」
ドンッと音がして、ジュウゴの身体が空を駆ける。
いつ見ても意味がわからねぇ……どういう仕組みだよ。
なんて、そんなことを考えているうちに、ジュウゴはガキ共のいる枝の上まで駆け上がり、俺らを手放した。
「はっ、上出来だ。おい、ハガクレ、ヤイチ。お前らは後ろ側だ。ジュウゴは俺が斬ったやつをハガクレ達の方にぶん投げろ。戦況を破壊するぜ」
俺の指示に、各々が了解と意を返し、動き始める。
ハガクレはヤイチを掴み空中で方向転換し、ジュウゴは俺が狙うトレントの真上へと。
「まずは開戦の狼煙だ! 喰らってろ、落鳴」
空中で繰り出す兜割り――落鳴。
対人奇襲技ではあるが、トレントみたいな硬い相手には効果が出やすいはずだ!
その証拠に、凄まじい音を立ててガキ共の道を塞いでいた大型のトレントが後ろへと倒れた。
「セイッ!」
俺が着地すると同時に、ジュウゴがトレントの頭をむりやり掴み、落ちる勢いを利用しつつ、一本背負いもとい、一本ぶん投げをかます。
見事にぶっ飛んでいき、後ろを塞いでいたトレント共をなぎ倒した。
「……ガロン」
「はっ、これで借りはチャラだぜ?」
「うん。その……ありが「礼はいらねぇ」……え?」
「さっきも言っただろ? 借りはチャラだってな。助けたわけじゃねぇ、借りを返しただけだ」
俺のその言葉に、ガキは間の抜けたような顔を見せて、直後に笑った。
そして、「わかった」と俺の横を抜けていく。
しかし――
「ガロン。また、拠点で」
「あ?」
「忍者さん達も交えて、みんなでご飯でも行こう。ね?」
「はっ……好きにしろ」
ガキ……アキがそう言ってハシゴを上り、どうやら先にあった木の割れ目から、世界樹の中へと入っていく。
それを見ていた俺の視界の端で、ようやくトレント達が動き出した。
「リーダー、いくでござるよ!」
「ええ、僕らに足場の条件なんて関係無いことを見せてやりましょう」
「ああ、全くその通り」
「うるせぇよ。ピーチクパーチク吠えんな。……やるぞ」
俺の言葉に奴らは各々の武器を構え、腰を落とす。
借りだからな、こっちはこっちでやってやる。
その代わり、お前は……お前のやることをやってこい、アキ。
――――――――――――――――
「……暇だな」
俺は今、巨大なトレントを囲む木の上で、トレント相手に行われている戦闘をただ眺めていた。
あそこに混ざったところで意味が無いからな。
だが、他のやつらはどうにも暇が辛いみたいだ。
「リーダー。あの戦闘に参加してきたらダメですかねぇ」
「お前みたいな狩人が参加したところで意味ねぇだろ。矢の無駄だ」
「しかし、暇なのは耐えがたいぞ」
「うるせぇ、黙ってろ」
狩人も武闘家も、じっとしてられないのか、さっきからずっとソワソワしていて……この質問もすでに何回されたことか。
ったく、考えりゃわかることだろ?
「そんな皆に報せがあるでござるよ! アキ殿が呼んでるでござる!」
そんな中、今まで沈黙を貫いていた忍者が突然そんなことを言い出した。
あのガキが呼んでるだァ?
……おい、どういうことだよ。
「り、リーダー、顔が恐いでござるよ!」
「あぁ? 俺は普段からこんな顔だろ?」
「そ、そそそ、そうでござったな! うむ、うむ!」
「リーダーの顔が恐いのはいつものことですし。それよりも、先ほどの件、詳しく教えてくださいよ」
「あい、分かった!」
ハガクレの話を集約すると、こういうことだ。
イベントアイテムの調合素材集めを手伝った際、特殊な笛を渡していた。
そして、それが吹かれた、と。
あの笛か……俺も持ってはいるが、使ったことはないな。
「それで、その場所はどこだ?」
「うむ。上でござる」
「上、ですか? ここより上空ってことですか?」
「左様。確かアキ殿は、世界樹のダンジョンを攻略する予定であったはず。しかし笛の音が聞こえたと言うことは、今はダンジョン外にいるのかもしれぬなぁ」
あの笛が特殊な笛だとしても、ダンジョンのような出入り口以外閉じられた空間であれば、その効果範囲は非常に狭くなる。
だが、こうして聞こえたということは、外にいる……ということなんだろう。
「だが上空となると、俺らでは行けないぞ? どうするのだ、ハガクレよ」
「決まっておるでござろう? 飛ぶでござるよ!」
「……アホだろお前」
「あ、アホではないでござる! それしか手がないでござるよ!」
そう言ってハガクレはインベントリから大型の折りたたみ凧を取りだすと、俺たちに手を繋ぐよう言ってきた。
何が悲しくて男と手を繋がなきゃいけねぇのかはわかんねぇが……まぁ、どうせ暇してたんだ。
さっさと返しときたい借りもあるからな。
「では飛ぶでござるよ! 気合いで耐えるでござるよ! ――忍法、包石火の術!」
◇
「見えたでござる! 見事に囲まれてでござるなぁ」
爆風を利用して飛び上がり、途中何度か爆風を足してある程度の高さまで辿り着くと、枝の上で戦うガキ共が見えた。
前後にトレント。
道を塞ぐ形でデカいやつがいて、邪魔になってるってことか。
「でもあそこ、赤鬼がいるみたいですけど。赤鬼なら全然余裕そうな相手ですよ?」
「いや、赤鬼にとって枝の上というのは、存外戦いにくい場所でござろう。武器を振るうには足場の安定が第一でござる」
「はっ。だから忍者にやれってことだろ」
「然り。ヤイチ殿、矢にこの紐を括り付けて飛ばせるでござるか?」
「了解。ジュウゴさん、お願いします!」
「おう!」
ハガクレが出した紐を矢に括り付け、その矢と反対側の先端をジュウゴが握る。
そして、ヤイチが矢をつがえ……放った。
直後、ハガクレが凧をインベントリに回収し、全員が宙へと投げ出されるが、ジュウゴが全員を両手で掴み、枝に巻き付いた紐を使ってターザンする。
「……バカだろお前らァ!?」
「はっはっは。上手くいくとは思わなかったでござるよ!」
「ホント、滅茶苦茶ですね」
「しっかり掴まってろよ! ――<空歩>!」
ドンッと音がして、ジュウゴの身体が空を駆ける。
いつ見ても意味がわからねぇ……どういう仕組みだよ。
なんて、そんなことを考えているうちに、ジュウゴはガキ共のいる枝の上まで駆け上がり、俺らを手放した。
「はっ、上出来だ。おい、ハガクレ、ヤイチ。お前らは後ろ側だ。ジュウゴは俺が斬ったやつをハガクレ達の方にぶん投げろ。戦況を破壊するぜ」
俺の指示に、各々が了解と意を返し、動き始める。
ハガクレはヤイチを掴み空中で方向転換し、ジュウゴは俺が狙うトレントの真上へと。
「まずは開戦の狼煙だ! 喰らってろ、落鳴」
空中で繰り出す兜割り――落鳴。
対人奇襲技ではあるが、トレントみたいな硬い相手には効果が出やすいはずだ!
その証拠に、凄まじい音を立ててガキ共の道を塞いでいた大型のトレントが後ろへと倒れた。
「セイッ!」
俺が着地すると同時に、ジュウゴがトレントの頭をむりやり掴み、落ちる勢いを利用しつつ、一本背負いもとい、一本ぶん投げをかます。
見事にぶっ飛んでいき、後ろを塞いでいたトレント共をなぎ倒した。
「……ガロン」
「はっ、これで借りはチャラだぜ?」
「うん。その……ありが「礼はいらねぇ」……え?」
「さっきも言っただろ? 借りはチャラだってな。助けたわけじゃねぇ、借りを返しただけだ」
俺のその言葉に、ガキは間の抜けたような顔を見せて、直後に笑った。
そして、「わかった」と俺の横を抜けていく。
しかし――
「ガロン。また、拠点で」
「あ?」
「忍者さん達も交えて、みんなでご飯でも行こう。ね?」
「はっ……好きにしろ」
ガキ……アキがそう言ってハシゴを上り、どうやら先にあった木の割れ目から、世界樹の中へと入っていく。
それを見ていた俺の視界の端で、ようやくトレント達が動き出した。
「リーダー、いくでござるよ!」
「ええ、僕らに足場の条件なんて関係無いことを見せてやりましょう」
「ああ、全くその通り」
「うるせぇよ。ピーチクパーチク吠えんな。……やるぞ」
俺の言葉に奴らは各々の武器を構え、腰を落とす。
借りだからな、こっちはこっちでやってやる。
その代わり、お前は……お前のやることをやってこい、アキ。
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