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第2章 現実と仮想現実

第244話 なんかすごそう

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「……といった感じです。アキ様、わかりました?」
「うん。細かく教えてくれてありがとう」

 正直、魔力が魔力がって言われるとよく分からなかったので、シルフの方に行って変化した魔力を、精霊力と言い換えて貰うことで、ようやく理解ができた。
 こんな事をいつも考えてるって、魔法を使う人は凄いんだなぁ……とか、再確認してしまった。

 ――僕は、調薬と採取の才能だけしか無さそうだけど、それで充分です……。

「でもそれだと、なんであんな魔法が使えたのかが分からないよね?」
「そうですね。あの魔法がなんなのかは、私にもわからないです」
「確か名前が、なんだっけ?」
暗雲を切り裂く一条の雷光ジャッジメント・レイ〕、だったかと……」

 僕は自分の体が勝手に詠唱して発動してって状態だったから、そっちに気を取られていて覚えてなかったけど、シルフは覚えててくれたみたいだ。
 こういうとき、一人じゃ無いって良いよね……!

 しかし、ジャッジメント・レイかー。
 裁きの光?

「おお、なんかすごそうな名前……」
「……?」
「いや、うん。なんでもない」

 首を傾げるシルフに手を振って、脳内から物騒な名前を削除する。
 そういえばあの時……たしかスキルが発動したような、してないような。

「そういえばこんな時に。たしか、システムのどこかに」

 あ、またシルフが「よく分からない」と言わんばかりに困惑した顔をしてる。
 ごめんね、ちょっと待ってね。

「あ、あった。えっと、ジャッジメント……ジャッジメント……」

 空中に呼び出したウィンドウを指でスクロールして、時間を遡って行く。
 あっ、ボス倒したからアイテムが色々増えてる。

「魔力不足。あ、あった。喚起?」
「<喚起>スキルですか?」
「そうそう、それがどうやら発動してるみたい。それに、制限解除で<そら魔法>って言うのも発動してる」
「……どういうことでしょう?」
「んー、多分だけど。<喚起>スキルを媒介に、まだ習得できないスキルを一瞬だけ使えるようにしたって感じかな? でもこれ、勝手に発動しちゃってたから、発動の条件とかは全く分からないんだけど……」

 それに、なんで<天魔法>スキルが解除されたのかも分からないし。
 スキル欄に<天魔法>が追加されてるって訳でもないし。

「あ、でも<喚起>のレベルが上がってる! 発動したからかな?」
「そうだとは思いますが……ちょっと怖いですね」
「そうだねぇ。あの魔法を使ったときって、僕の意識を無視して勝手に体が動いてたし」

 そもそも、この<喚起>は何が原因で習得したスキルなんだろう?
 喚起……喚び起こすって書くけど、何かを喚び起こしたことなんて……。

「うーん……。でもまぁ、今のところは置いておこうかな」
「だ、大丈夫ですか? 他の方に相談されてみたりは……」
「相談しようにも情報が少なすぎるからね。スキルの発動条件もよく分からないし、それに、こうしてレベルが上がるって事は、(システム的に)なにか問題があるってわけでも無さそうだし」
「アキ様が良いのでしたら、私からは何も言えないですけど……」

 言って、シルフは心配そうな顔を僕に見せる。
 それに対し、「話はここで終わり」と言わんばかりに、頭を撫でてから、僕は立ち上がった。

「そういえば土の神殿を攻略したら、何か起きるかもってハスタさんが言ってたよね?」
「え、ええ。4つの神殿全てを攻略したことになりますので」
「シルフ的にはどう? なにか変わった事ってある?」

 座り込んで固まっていた体を伸ばしつつ、話題を変えて彼女に問う。
 むりやり変えたわけではなくて、元々気にはなっていたことでもあるし……うん。
 そんな僕の思いも分かっているからか、彼女は一瞬だけ呆けつつもすぐに話に乗ってくれた。

「今のところは特には。今までと同じように土のマナが活性化しているだけですね」
「そっかー。イベントも残り4日だし、何も起きないようなら、残りの日はゆっくり採取にでも出かけようかな」
「そうですね。オリオン様が教えてくださった場所にでも足を運んでみては?」
「風の神殿付近だっけ? 結構距離があるから、誰かを誘って行かないとね」
「アル様達は、お時間の都合上難しいかと思いますので。ラミナ様達でしょうか?」
「そうなるかなぁ……」

 と言っても、確かラミナさん達は2学期から転校するとか言ってたし……忙しいかも。
 さすがに引っ越し自体は終わってるだろうけど、それ以外にも色々やることとかありそうだし?
 まぁ、聞いてはみるんだけどね。

「でも、ひとまず今日はそろそろ終わりかな?」
「そうですね。私も眠くなってきましたので……」
「……精霊って寝るの?」
「い、一応は」

 そっか、精霊も寝るんだ……。

「今度寝てる所を見てみたいかも」
「えっ!? だ、ダメです! 恥ずかしいです!」
「――ッ、だよね!? ごめん、忘れて!」
「は、はい!」

 妙な気恥ずかしさで慌てながらも、なんとかシルフに「また明日」と伝えて、僕はログアウトした。
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