採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

一色 遥

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第2章 現実と仮想現実

第211話 もういいよ

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「ん……んぅ……」

 少し重たい瞼をゆっくりと開く。
 最初に飛び込んで来たのは、木で出来た天井。
 そして、すぐ近くで座ったまま眠っているラミナさんの顔だった。

「あれ……?」
「ん……あ、アキ。起きた……?」
「あ、ごめんね。起こしちゃった?」
「大丈夫」

 僕が身体を起こした音で起きたのか、眠そうに目をこすったラミナさんに、なんだか少し安心する。
 そんな僕に対して、目が覚めたらしい彼女が椅子から立ち上がって、口を開いた。

「アキが起きたって、みんなに伝えてくる」
「あ、ちょっと待って、ひとつだけ教えて」
「……なに?」
「僕らは、勝てたの?」

 今が、もうすでに決闘が終わった後だって事くらいは、聞かなくても分かってる。
 僕はまた足を引っ張ってしまったのかもしれないけれど……。

 そんなことを思いながらラミナさんへ、視線を送っていると、彼女は何かを考えるような素振りを見せてから……くるりと、身体の向きを変えた。

「大丈夫。勝ったよ」

 ぎゅっと、ベッドに半身を乗せるようにして、彼女は僕の身体を抱きしめる。
 優しく、語りかけるような声と一緒に。

「そっか……」
「アキ。信じてた……お疲れ様」
「ラミナさん……」

 一瞬だったのか、それとも数分だったのかは分からないけれど、ラミナさんの体温と一緒に、勝てたという事実が、身体に染みこんできた。
 
「そっか、勝てたんだ……」

 呟いた僕の言葉に反応するみたいに、ラミナさんが身体を離す。
 そうして見えた瞳は、少しだけ潤んでいるようにも見えた。

「ありがとう。信じてくれて」
「ん……。約束、待ってる」
「うん。いつか必ず」

 そう言って……2人、顔を見合わせて少し笑う。
 なんだかこんなに穏やかに笑うのも、すごく久しぶりな感じがする。
 イベントが開始してからずっと、色んな事があったからかなぁ……。

「……そろそろええか?」
「――ッ!?」
「と、トーマ君!? あの、いつから!」
「最初からや……。起きたタイミングで気付いとったんやけど……なんや、ええ雰囲気で入れんかったわ」
「あ、あはは……」

 大慌てで手を離し、曖昧に笑ってごまかす。
 いや、絶対にごまかせてないって言うか、最初から見てたならごまかしようが無いっていうか……。
 なんか、すっごい恥ずかしい……。

「それで、もうええか? もう少しやるんか?」
「も、もういいよ! 大丈夫だよ!」

 呆れ顔で聞いてきたトーマ君に、思わず出た大声で返す。
 ああああ、ラミナさんなんて取れそうなくらいに、首を上下して頷いてる……。

 結局、僕らが普段通りに話せるようになるまでに、約10分ほどかかってしまった……。



「そいで、さっきラミナさんから聞いたと思うんやけど、もう少し詳しゅう説明しとくわ」
「うん、お願い」
「外から見とったアル達が言うには、アキがシンシに服の依頼をした直後に、気絶してん。それから……」

 トーマ君の話を纏めると、決闘はこうなったらしい。
 僕が気絶して倒れる前に、シンシさんが受け止めてくれて、意識のない僕を抱いたまま、暴風を突き抜けて、トーマ君のところに行ってくれたらしい。
 そして、トーマ君に僕を預けた後に、ヤカタさんと共に棄権。
 あとは、それに気付いたフェンさんも棄権して、僕らの勝ちが確定したってことらしい。

「うーん……」
「なんや、浮かん顔やな」
「だって、それだと……PKの人達が納得しないんじゃないかなって」

 みんな棄権って勝ち方だと、なんだか決闘をした意味がないっていうか……。
 そんな僕の思いが通じたのか、トーマ君は少し、頷いてから「まぁ、確かにそうなんやけど、それに関しては」と、部屋の入口の方へと視線を送った。

「そんなことは気にせんでも良い。儂がきっちり締めといたわ」

 トーマ君が送ったその視線の先。
 そこにあった扉を開けて、リュンさんが部屋へと入ってきた。
 あれ、臭くない……?

「……臭いに関しては、決闘後にすぐ落とした。フェンのやつに言われての、決闘後に落とせば、誰も水場に来んとな」
「なるほど」

 そうなると、どのタイミングでPKの人達の相手をしたのかってなるけど……。
 まぁ、リュンさんがしたってことは、したんだろうし……大丈夫かな。

「あん? てことは、お前はあの後の放送は見てへんってことか?」
「うむ。そうなるな」
「マジかよ……。まぁ、アキに説明するついでや。お前も聞いてけよ」

 わざとらしい素振りを見せながら、トーマ君が溜息を吐く。
 あの後の放送って……そういえば、ツェンさんが告知があるって言ってたっけ?

 そもそも、あの決闘から……今って、何時間経ってるの……?
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