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第2章 現実と仮想現実

第205話 風向き

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 そういえば、こうして人と戦うのは、何度目なんだろう?
 今日の戦いは、みんなが代わりをしてくれて、結局僕が戦ったものは無い。
 そうして思い返せば、たぶんあの森の戦い以降、人と戦うことはなかったんだ。
 全部……誰かが代わりをしてくれていた。

 だからだろうか?
 正直、あの時とはなんだか、感じが違う。
 人に武器を向けるってことが、とても――重く感じる。
 の時は、ラミナさん達を逃がすことにとにかく必死で、人を相手に戦っているって気が無かった。
 けど、今は――。

「姫……そう大きく逃げては、姫自身も反撃にうつれないのでは?」
「わかっては、いるんですけどね……」

 後退しては、向きをずらし……そんなことを、もう10分近く繰り返してるように思う。
 それもこれも、あの見えない突き。
 結局それを攻略しないことには、近づくことも容易じゃ無い。
 何か、何か変化を起こせれば……!

「そうだ!」

 変化が起きないなら、変化を起こせばいいんだ!
 そう思いついた僕は、すぐさま距離を取るために真後ろに飛び退き、強く念を飛ばす。
 大丈夫……僕の考え通りなら、繋がるはずだから。

(アキ様?)
(シルフ! 風を起こして!)
(え……えっと?)
(決まりとか無くても良いから、僕とシンシさんに向けて何度も風を起こして!)
(で、でもそれだと……!)
(……大丈夫だから!)

 状況の変化。
 風をぶつければ、僕もシンシさんも動きがブレるはず。
 ……僕も危険になるかもしれないけれど。

「おや……?」

 目の前のシンシさんの髪が揺れる。
 どうやらシルフが、僕らの方に風を送り始めたみたいだ。

「ふむ……風向き……。これは、姫の仕業ですか?」
「どちらとも言えないです。僕にだって、向きの予測は出来ないですから」
「周りを覆う暴風……そこから漏れるように流れ込んだ風。これはなかなか手強そうですね」

 そう言いながらも、シンシさんはしっかりと地面を踏みしめ……僕へと剣を向ける。
 しかし、その剣先は先ほどまでとは違い、風によって左右に振られているようだった。

「……なるほど」
「おや、カラクリがバレてしまいましたか?」
「多分、ですが」

 風のおかげで、見えない突きの正体が、なんとなく分かった気がする。
 これなら……避けれ……避け……。

 ……風が舞いすぎて、動きにくい!

「おやおや、そんな動きで大丈夫ですか? カラクリが分かったところで、その動きでは避けられないのではないでしょうか?」
「ふ、ふふ……心配、無用……です!」

 強がってみても、正直なところ……口を開くことすら躊躇うレベル。
 けど、それはシンシさんとしても同じなはず!
 その証拠として、突き出された剣はさっきまでの鋭さを失い、その剣身が僕の前に露わになっていた。

「……くっ!」

 突き出す度に風に取られる腕。
 そんな状況に苦戦しているのか、シンシさんの口からは苦々しいような声が漏れる。
 反面、僕の方は、次第に風が掴めるような……そんな不思議な感覚を掴みつつあった。

「シルフが、手助けしてくれた……?」

 小さく漏らした言葉に、彼女はハッキリと(していません)と念を飛ばしてくる。
 でも、シルフが手助けしてくれたんじゃないとすれば……僕に何が……。
 こんな、風を掴むような感覚……戦闘前に確認したスキルにはそんなものは無かったはずだ。

「姫……! なぜあなたはそんなに動ける!?」
「……僕にもわかりません。でも、これでやっと……反撃にうつれそうです」

 戦闘前に見たスキルには、こんな風を読むスキルも……ましてや<魅了>なんてスキルも無かった。
 だから、魅力でシンシさんを止めるとか、そんな力は僕には無い。
 けど、2つほどスキルが増えてはいたんだ。

 生産メインのプレイヤーなら、持っていることの多いスキル……<集中>。
 そして、トーマ君もまだ知らないと言っていたスキル……<喚起>。

「シンシさん。僕はあなたを止めます。……棄権するなら、今のうちですよ」

 人に対して、武器を向ける重さ。
 それはまだ、僕にはよく分からない……むしろ出来る事なら、これから先も分かりたくはないこと。
 そんな僕に、人を攻撃するために武器を取ることは、本当は許されないことなのかもしれない。

 でも、今だけは許して欲しい。
 だって今だけは、シンシさんを……彼女を止められるのは、僕しかいないから。



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名前:アキ
性別:女
称号:ユニーク<風の加護>

武器:草刈鎌
防具:ホワイトリボン
   <収穫の日ハーベスト>シリーズ・上
   <収穫の日ハーベスト>シリーズ・中
   <収穫の日ハーベスト>シリーズ・下
   <収穫の日ハーベスト>シリーズ・鞄
   トレッキングブーツ

スキル:<採取Lv.15><調薬Lv.20><戦闘採取術Lv.12><鑑定Lv.5><予見Lv.3><集中Lv.3>←New!! <喚起Lv.2>←New!!

精霊:シルフ
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